アイキャッチ画像:ポンチョ
現在地、把握していますか?

現在地の把握。それは道迷いや遭難を防ぐ、山では常に行なうべきことです。少し前までは登山地図や地形図とコンパスで、近年はスマホの登山地図アプリで行なっていると思います。
登山地図アプリでの現在地把握は、スマホやPCの操作ができれば問題なし!アプリ上でルートを作成し、訪れる山の地図をダウンロードするだけなので、難易度が低く手間もかかりません。地図を読む必要がなく、GPS衛星が現在地をマップ上でお知らせしてくれるのだから、自分がどこにいるかは一目瞭然です。
特に近年増えているソロハイカーにとって登山地図アプリは、これ以上ない味方だと思います。私自身も、愛用しています。
登山地図アプリを使っている人の次のステップに!
今回提案したいのは、その登山地図アプリの次のステップ、GPSウォッチの活用です。

スマホを取り出さなくても、腕を返すだけで上画像のような登山地図アプリ同様の地図情報を表示し、現在地の確認ができるのです。スマホを取り出すことが億劫で、曲がるべき分岐を見過ごした……という経験のある人、GPSウォッチなら、その億劫さを解消できます。
それに、これまで高価だったり、操作方法の複雑さだったりで二の足を踏んでいた人にも朗報です。今回紹介する「Amazfit T-Rex3(アマズフィット ティーレックス スリー)」が、すべてを解決してくれます。
大きめの1.5インチディスプレイは、はっきり見やすい2000ニトの高輝度モデル。少し前なら10万オーバーのハイエンドモデルにしか装備されていなかったオフラインマップを表示するGPSウォッチが、なんと\39,900なんです!
もちろん安価だからといって、機能がイマイチなんてことはありません。いや、むしろハイエンドモデル同等の機能も装備しているから、この記事で取り上げることにしました。
ミルスペック準拠のタフモデル

Amazfit T-Rex3のスペックは、次の通りです。
- 価格
- ¥39,900
- 重量
- 約68.3g(バンド含む)
- サイズ
- 約48.5×48.5×13.75mm(心拍ベース除く)
- 駆動時間
- 一般的な使用/27日間、マルチ衛星デュアルバンドのGPS精密モード/42時間
- ディスプレイ
- 1.5インチAMOLEDディスプレイ 最大輝度2,000ニト
- 使用温度域
- -30℃~70℃、100m防水
分厚いケース、ディスプレイを囲むベゼルはステンレススチール製。衝撃に強く、ミルスペック準拠のタフモデルです。使用温度域も広く、登山で使っても問題ありません。

第一印象は無骨。バリエーションルートやクライミングをする人なら、このタフさは重宝すると思います。一般登山道を歩き、トレイルランニングをするレベルの私には、オーバースペックな堅牢さとも思えます。シリコンバンドはソフトでよくフィットしてくれます。でも、装着感はやや重めです。
ウォッチとしての存在感があるようで、街で使っていると、知り合い数人から「よさそうな時計ですね!」と声を掛けられました。いかにもアウトドアな雰囲気は、それを趣味にしている人のイメージともマッチしているようです。
ちなみに、スマートウォッチ的な機能もしっかり装備。LINEやSMSの受信、返信、光学式心拍計による健康&睡眠管理もしてくれます。
GPSウォッチの課題、駆動時間はなんと高精度GPSモードで42時間!

GPSウォッチ選びで気になるのは駆動時間です。しかし最近のGPSウォッチの多くは、課題だったGPSモードでの駆動時間の短さをクリアしてきています。
なかでもT-Rex3は、図抜けた駆動時間の長さを誇るモデルです。スマートウォッチのような一般的な使用であれば、なんと27日間!6つの衛星を捕捉して2つの信号を受け取るGPS精密モードで42時間も駆動します。
最新アップルウォッチが1日充電なしで動くようになった!と喜ばれている時代。T-Rex3は充電なしで約1ケ月使用でき、GPSによるルート案内を1日8時間の行動で機能させても、無充電で3泊以上の山行でも使えます。
実際に今回、フル充電後、7時間のルート案内をGPS精密モードで行なった後のバッテリー残量は70%もありました。単純計算すると42時間は駆動しませんが、3泊程度なら動いてくれるでしょう。
GPSの精密さは、ハイエンドモデル同等

(左)ファーウェイウォッチ、(中)FIT 4 Pro、T-Rex3、(右)スント・レースS
T-Rex3は、6つの衛星、2つの信号で測位します。それはハイエンドモデル同等の測位精度です。
上画像は、新作のファーウェイウォッチ・FIT 4 Pro(左)、T-Rex3(中)、スント・レースS(右)の3台のGPSウォッチを浅間山外輪山・黒斑山~蛇骨岳を登山した時の記録です。いずれも、マルチ衛星捕捉デュアルバンド受信の高精度なGPS機能を装備しています。
左のファーウェイウォッチはT-Rex3よりもさらに安価で驚きの¥39,380。マップの縮尺の関係で他に比べてトラックが滑らかに見えますが、他2つと大きな違いは感じません。ただし、駆動時間が18時間と短めです。
右のスントは6万円台半ばのミドルクラス。高精度GPSモードで30時間駆動、トラックの精度も十分です。
T-Rex3は、精度と駆動時間、さらに価格も含めてのバランスのよさを感じさせます。トラックがカクカクして見えるのは、マップをかなり拡大したからだと思いますが、ファーウェイウォッチに比べると測位間隔が長く、精度と駆動時間のバランスを取っているようです。
予定ルートは、ヤマレコやYAMAPのデータを使用可能

T-Rex3は、登山での使用を意識しています。なぜなら、登山地図アプリを代表する、ヤマレコとYAMAPで作成したルートのGPXデータをアマズフィットのアプリから取り込んで、T-Rex3に同期して使用すことができるからです。
上画像は、登山時に使うハイキングモードを立ち上げ、設定→ナビゲーション→マイルートに保存したGPXデータです。私はヤマレコをメインで使用していて、らくルートを使って予定ルートを作成。そのGPXファイルをダウンロードして、アマズフィットのアプリZEPPで開いて保存。マイルートから開いて、T-Rex3に送信しました。
慣れないと少しあたふたするかもしれませんが、覚えてしまえば難しいことはありません。なにより、いつも通りに作成した予定ルートをそのまま使えるのはありがたいこと。とはいえ、最近のナビゲーション機能付きGPSウォッチのほとんどは、ヤマレコやYAMAPで作成したルートを使えるようになっています。それが日本での登山向けGPSウォッチの基本となっているのでしょう。
マップ以外にも登山で使えるデータを多数表示!

T-Rex3のハイキングモードをスタートすると、まず上画像のような運動時間、距離、心拍数と心拍ゾーン、高度がデフォルトで表示されます。
これらのデータで重要なのは高度と心拍数。特に心拍数はペース配分に有効です。私であれば150を超え続けないようにチェックしながら進みます。人によっては130の場合もあるでしょう。個々人で、ある程度の負荷を維持できる心拍数で進めば、長い距離や高低差も一定のスピードを維持して登り、下ることができるんです。心拍数はその指標になります。
高度はルートが頭に入っていれば、その数字だけでおおまかな現在地を想像できます。

ですが、T-Rex3には高度の概要が表示され、しかも全行程を表す高低図のどこにいるのかの現在地も示してくれます。また、全上昇距離のうちの獲得標高も教えてくれます。上画像がその画面で、全行程で993m登らねばならないうち、この地点で累積標高482m登ってきたことを表示してくれています。
同様の表示は登山地図アプリでもありますが、T-Rex3のほうが見やすい印象です。

さらに、勾配に応じた詳細な情報もT-Rex3は表示してくれます。上画像の時のルートは全長12キロありましたが、それを6つの勾配に分けて、登り下りの勾配、その残り距離、上昇(下りは下降)高度がわかります。
前述の高度の概要はまさに概要で、おおまかにどれくらいまで登ってきたのかを知り、ざっくりと頑張ろう!という気分にしてくれるもの。
一方でこの勾配情報は、かなり精細。直面する勾配のデータと体感、残り距離や高度を計算しながら、自身のペースをつくっていくのに機能します。そして勾配情報とマップとを脳内で組み合わせることで、これまでの2次元的な山の把握が、かなり立体的に3次元的に捉えられるようになりました。
これって登山地図アプリには見られない機能で、登山者にとって、またはトレイルランナーにとって、かなり重要なGPSウォッチの進化に思えます。