アイキャッチ画像:ポンチョ
OGAWANDのフラッグシップパック「OWN」とは?

背負い心地のよさ、軽さを謳うバックパックは、多くあります。実際、それらを背負ってみれば、「確かに!」 「不思議!?」と秀逸さに驚きます。
ところが、実際に登山を体験してみると、ただ背負った時には感じられなかった、違和感が出てきたりします。
急登や岩場では足上げがしにくかったり、歩き続けると肩にストレスを感じたり、長い下りで腰への重さが強くなったり……。

今回レビューするバックパックは、日本の最初期のガレージブランドとして知られるOGAWANDの「OWN」です。2013年の創業した時からラインナップされているモデルで、マイナーチェンジは施されていますが、基本構造はそのまま。発売から10年以上経った現在でも定番パックとして、ULハイカーを中心に高い評価を得ています。
都合3回の山行で、重量13キロのテント泊装備を背負い、合計距離約40キロを歩いてテスト。最初に背負った時に感じた「身体の自由さ」は、登り、歩き、下った後でも変化なし!完成度の高さに驚きました。
その「身体の自由さ」は、「動きやすさ」ともいえ、同容量の中~大型のバックパックが背負い心地の軽さを得るために動きを制限するのとは正反対の特長があります。
そこで、なぜOWNは動きやすいのかを考え、以下にまとめました。
スペックからわかること

まずはOWNののスペックを紹介しましょう。
- ブランド名/商品名
- OGAWAND/OWN
- 価格
- ¥41,800
今回は+¥6,600で本体素材にUltra200xを使用したモデル。さらにオプションのADC-Front mesh Pocket(¥4,620)、Extra- Bottle holder(¥4,180)を左右に装着。合計¥61,380 - 素材
- 今回テストしたパックはUltra200x
他に210デニール HDPE Xグリッド、X-Pac VX21の計3種類から選択可能 - 重量
- 650g(M)
- サイズ
- ショルダーハーネスは、XS~XLの5サイズ、身長、体格に応じて選択可能
- 容量
- 25L~50L対応
- 推奨荷重
- 13キロまで(10キロ以上はオプションパーツ併用を推奨)
これらスペックからわかる特長は、大きく3つあります。
①2025年から“Ultra 200x”も選択可能に!

2025年モデルから、本体素材にUltra200xを選べるようになりました。この素材は、表面が和紙のような手触りで軽量。裏面に格子の入ったシート状のフィルムが貼り付けられ、確かな剛性と強固な防水性を備えています。
現在Ultra200xを使ったULパックは他にも多くあって、いずれも軽さ、強度、防水性の高さを採用理由に挙げています。私はそれらのULパックのいくつかを背負って、山行したことがあります。その時には気が付きませんでしたが、今回OWNを背負ってみて、荷物を収納した際のUltra200xの生地の伸びのなさが、背負った際のブレのなさに貢献、安定感を出しているように感じられました。もしかしたら、バックパックがデザインされた形のままでパッキングできるからなのかもしれません。
他のUltra200x製パックでそうしたことを感じなかったのは、OWNが絶妙なバランス、計算によってデザインされている、という証ともいえます。
②唯一無二、小型から大型サイズまで容量変更可能!

OWNは、25L~50Lと容量を大きく変えて使うことができます。デイハイクから山小屋泊、さらにはテント泊縦走までOWNひとつで対応できるのです。
その容量可変を可能にしているのが、本体の表裏に配されたADC=アジャスタブル・デイジーチェーンと呼ぶ2本のテープです。このテープにはループが備わり、フックを掛けてストラップを引くことで、パック本体を圧縮バッグのように機能させられます。
実に面白いギミックです。道具好きには、たまりません。
ちなみに上写真の右側がデイハイク容量ですが、パックサイドのコンプレッションループをもっと引いて、下部に荷物が溜まらないようにした方が、背負い心地がよくなることに後から気が付きました。パック本体を細くして、収納物の高さを出すと、ショルダーハーネスと連動するショルダースタビライザーを、より機能させることができるからなのですが、その詳細は後述します。
③表裏に配された2本のデイジーチェーンは、拡張性も提供

ADCのループにボタン留めしたり、ストラップを通すことで、オプション装備のADC-Front mesh Pocketやギアループ、ウエストベルト等のパーツを追加できます。もちろんその他に自分好みの小物類をADCを使って装着することもでき、その拡張性の高さは、ADCを装備したOWNならではの特長といえます。
通常のハイクだけでなく、ロングトレイル、岩場、雪山、撮影山行、ファストハイク等々、登山シーン、目的に応じて使い勝手を変更できることは、さまざまな山を楽しむ人にとって、容量可変機能同様に、OWNを選ぶ強い動機になりそうです。
OWNのキモは、ショルダーハーネスとスタビライザー

次に、背負ってみてわかった特長を紹介しましょう。
まずお知らせしておきたいのは、OWNは、背面にフレームが入っていないフレームレスパックだということです。
フレームレスパックの多くは、肩を包むショルダーハーネス上部からパック上部を繋ぐショルダースタビライザーが装備されていなかったり、採用されていてもパック本体を身体側に引き寄せてブレを抑えるだけの機能にとどまりまっています。
一方でフレームの入ったフレームパックの多くは、ショルダースタビライザーとフレームを連動させ、その剛性によってショルダーハーネスに掛かる荷重を上方向に逃がします。つまり、肩への負荷、荷重を軽減する構造になっています。
では、OWNはどうか? ショルダースタビライザーを見ると、上画像の通りパック背面上部へと伸び、フレームパックと同じように機能する構造を装備しています。つまり、肩への負荷、荷重を軽減するつくりになっているんです!
フレームレスパックで、こうした構造を装備しているのは、OWN以外ではほとんど見たことがありません。
荷重方向を計算した快適バランス

さらによくよく見てみると、ショルダースタビライザーの肩側の始点がOWNの場合、普通とは少し異なっていることに気が付きました。
多くのフレームパックでは、ショルダースタビライザーの始点が上画像の白い★印を付した、肩の頂点にセットされています。対して、OWNは鎖骨よりも下。黄色の☆印を付した、少し胸前側にセットさせているんです。
肩への荷重を軽くしたいなら、スタビラザーの始点は肩の頂点からの方が合理的に思えます。
なぜ、前方の胸側からなのか?

実際に山を登ってわかったのは、胸荷重を得るためだろうということです。
肩の頂点よりも身体の前側からスタビライザーを引くと、チェストストラップに掛かる荷重、つまり胸に掛かる荷重が増えるように感じられるんです。対して、肩に掛かる荷重は軽減。さらにショルダーハーネスを適切に引くと、背中の中央あたりから腰にパック本体がグイっと引き寄せられます。尻部のでっぱりにパック本体が載り、背中の真ん中にピッタリとフィットします。
それらのの荷重方向の体感を矢印で表してみたのが、上画像です。
一般的に肩荷重、腰荷重等、どこに荷重が掛かるのかでバックパックの特長を示し、選択の基準にしています。OWNの場合は肩・胸・背面の3点荷重といえます。なかなか他パックにはない、荷重の特長です。