フライシートで風雨をしのぎながら、先にインナーテントを撤収!
フライシートの下でインナーテントが平らになったら、はじめにインナーテントをたたんでいきます。
フライシートを外してからインナーテントをたたもうとすると、インナーテントの濡れていなかった部分までが雨で濡れてしまうため、フライシートが立体的な状態で雨を防いでいるうちに、その内部でインナーテントをたたんでしまうというわけです。
はじめからインナーテントのボトムは地面を流れる雨で濡れているでしょうが、ボトムよりも上部のパネル(壁)の部分だけでもドライに保つことができれば、すべてがズブ濡れのテントよりもだいぶ軽く、撤収後に持ち運ぶときに楽になります。
また、テント泊山行をこのまま続けるようなスケジュールであれば、再びテントを設営するときに少しでも乾いた状態から使用することができるでしょう。
3.インナーテントをポールから外していく

インナーテントの角からポールの末端を外していきます。このときペグは地面に刺したままでフライシートのみを固定している状態です。
4.インナーテントを畳む

インナーテントをポールから取り外したら、インナーテントを先にたたんでしまいます。
インナーテントを外すとフライシートがポールのテンションで少し広がるかもしれませんが、その際は内部に入ったままでペグの位置を変えて打ち直すと形状が保たれます。
インナーテントをたたんだら、それだけをドライバッグ(防水のスタッフバッグ)や持参したビニール袋などに入れるとよいでしょう。

これ以降に撤収するフライシートは雨で全面的に濡れた状態で、これらをいっしょに収納するとインナーテントにフライシートの水分が移ってしまいます。それを避けるためにインナーテントのみを別に防水してしまうのです。
インナーテントがもともと濡れていたとしても、ずぶ濡れのフライシートといっしょに収納するよりはマシです。
ポールの取り外しも、フライシートのなかに入ったままで
次に、ポールを外していきます。ペグさえ打ってあればフライシートは風で飛ばされず、落ち着いて作業ができます。
5.フライシートからポールを外す

ペグでフライシートを固定したまま、フライシートからポールを外していきます。
金属製のポールは風で飛ばされる可能性は低く、また濡れても大きな影響はないので、そのままフライシートの外に出してかまいません。
6.バックパックにレインカバーをつけて外へ

レインカバーをかけたバックパックを外へ出し、木陰などの濡れにくい場所に移動します。このとき、外に出しておいたポールなどを踏まないように注意。
7.フライシートはペグダウンしたまま、ポールを片付ける

フライシートはペグで固定されているうえに地面に広がっているため、風で飛ばされにくい状態をキープ。
この状態を活かして破損しやすいポールを手早くたたんでしまうとよいですが、状況によってはポールの撤収は後回しにしてもかまいません。
要注意! 風向きを考えてのペグを抜く順番
さて、ここからとうとうペグを抜いていきます。ますます気を付けて作業しなければいけない大事な段階です。
8.「風下」のペグから抜く

.つぶれた状態のフライシートの風下側に行き、まずはそちら側のペグを抜きます。その後、フライシートが飛ばないように手で押さえながら、風上側へ移動して残りのペグを抜いていきます。
風下→風上の順番であれば、フライシートが風で飛ばされる可能性は低くくなります。
【ここに注意】 ペグを抜くときは常にフライシートを押さえながら!

風向きが急に反対になることも想定し、ペグを抜くときは膝などで体重をかけてフライシートをつねに押さえつけておきましょう。
雑に体重をかけるとフライシート内側の防水コーティングが傷むので、注意深く!
ペグを抜いたら、あとは風の力を利用してスピーディにたたむ!
ペグから外されたフライシートは、手で持つか足で押さえつけていないと、瞬間的に吹き飛んでいきます。
周囲に落ちている石や岩を上に置いて吹き飛ばないようにすることもできなくはありませんが、ゴツゴツした岩はフライシートへ簡単に穴をあけてしまうため、あまりお勧めはできません。
さて、ここからはフライシートの撤収です。
フライシートはもともと雨除けが役割ですし、悪天候時は結露によって内側も完全に濡れているのが当たり前です。いまさら濡れることを気にしても意味はないですが、吹き飛ばされることだけは注意してたたんでいきます。
9.「風上」からフライシートを持つ

風上からフライシート中央部を持ち、そのまま立ち上がります。
10.風を利用して畳んでいく

風によってフライシートは風下側になびくので、その状態を利用して宙に浮かせたままで何度かたたんでいきます。
悪天候時はきれいにたためなくてもかまいません。とにかく大事なのは、飛ばされないこと。

一方で、風雨が弱くて余裕があるようでしたら、途中でフライシートをバタバタと振り、いくらかでも水分を飛ばすと持ち運ぶときに軽くなり、バックパック内の濡れも抑えられます。
撤収が完了したら、防水してバックパックヘ
ここまで「たたむ」という言葉を多用してきましたが、悪天候時は「たたむ」ことにこだわる必要はありません。
時間をかけないことを優先するならば、適当に丸めてドライバッグなどに入れてもいいですし、なんなら丸めすらせず、ただそのまま押し込んでもいいのです。
ただ、濡れているものですから、そのことだけは念頭に入れつつ、臨機応変にいきましょう。
11.「フライシート」は防水性の袋へ

バックパック内部を濡らさないように、フライシートははじめになんらかドライバッグやビニール袋へ入れ、それから付属のスタッフバッグなどへ入れましょう。
このときインナーテントも別の袋に入れ、フライシートと完全に分離して収納すれば、インナーテントを無駄に濡らすことがありません。
悪天候時はさまざまなことに気を取られ、忘れ物が多くなります。ポールやペグもしっかりと確認し、すべてバックパック内へ収めましょう。あまりに濡れている場合は小型カラビナやストラップ類で確実に固定できるようにしたうえで、バックパックに外付けする手もあります。
忘れないものがないことを確認したら、さあテント場をあとにしましょう!
すぐに帰宅するのか、さらに宿泊するのか? 撤収の優先順位
悪天候時の設営に比べれば、撤収作業自体はそれほど難しくありません。破損と紛失にだけ注意しながら作業して、最終的にバックパックへ収納できればいいのです。
とはいえ、ここまででも少し触れてきたように、すぐ帰宅するのか、それともその日もどこかでテント泊をするのかで、撤収作業の優先順位は多少変わります。最終的にはその人にとっていちばん都合がよい状態での撤収を目指しかなく、あと現場の判断です。

すぐに帰宅する場合はテントをたたまず、インナーテントとフライシートをスタッフバッグに突っ込むだけでも十分。
たたむ場合と比べれば収納時に多少かさばりはしますが、そんなことも想定して大半の海外メーカーはもともとかなり大きめの専用スタッフバッグを用意しています。
それに対して日本メーカーにはきれいにたたまないと入らないスタッフバッグが多いため、別の袋を用意しておくといいでしょう。大きめのドライバッグがベターですが、30Lくらいの丈夫なゴミ袋をつねにテントといっしょに持っていくと重宝します。
あとは帰宅してから汚れを落とし、乾燥させればOKです。

それに対し、長期縦走などのときは考えどころです。テントというものは想像以上に速く乾いていくものであり、時間がたつにつれて晴れてきそうであれば、到着後に乾かせば夜は快適に過ごせるかもしれません。
しかし悪天候が続くようであれば、これまでの説明のようにせめてインナーテントだけでもあまり濡らさないように心がけましょう。そのために、フライシートをかけたままでインナーテントを撤収したり、インナーテントとフライシートを分離してドライバッグや防水性があるゴミ袋に入れたりといった作業が重要になってくるのです。
というわけで「吊り下げ式テントの撤収方法」でした。
以前の「スリーブ式テントの撤収方法」の記事にも吊り下げ式テントに応用できる内容が含まれていますので、ぜひ併せて読んでみてください。
▼「ずっと書きたかったけれど、いまだ書いていない」という、バラエティに富む話もあわせてチェック!