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ヤマダパックス バックパック40

日本の山に最適化したライトウェイト・パック「yamada packs」のスゴいところ

東北の山や自然に惹かれた山田さんが、山形県に移住。そこでひとりバックパックをデザインし、縫製しているガレージブランド「ymada packs(ヤマダパックス)」。

そのベースになっているのは背負い心地のよさで人気の「ミステリーランチ」と、軽さとスタイルがハイカーの定番となった「ULパック」。相反する性格のバックパックを融合させ、背負い心地のよさと軽さを併せ持つ“ライトウェイト・パック”というジャンルを切り開く、yamada packsに注目です。

目次

アイキャッチ画像:ポンチョ

できれば軽くてラクな方がいい……テント泊用バックパック選びの最適解は?

ヤマダパックス40
撮影:ポンチョ

テント泊用のバックパック選びで、皆さんはなにをポイントにしていますか?

私は3つのポイントを重視しています。
「容量」 「背負い心地」 「軽さ」です。

バックパックは、背負い心地をよくするパッドを薄くしてフレームを省略すると、軽くなります。逆に、しっかりとしたパッドやフレームを装備すると、重くなります。また容量が小さければ軽くなり、大きくなると重くなります。

テント泊用であれば、容量50リットル前後が定番。軽さを重視して、防寒アイテムを減らせる夏なら30リットルでもテント泊が可能です。
でも、装備を軽量コンパクトにするために、テントは非自立型、寝袋を薄手にして防寒着で対応する等、道具を使いこなす経験値が必要になってきます。それでも2~3泊程度にしか対応しません。

軽さと背負い心地のよさを求めた、「ライトウェイト・パック」がマイベスト

だから私がテント泊用に選ぶバックパックは、容量40~50リットル長時間の行動でも苦にならないしっかりしたパッドと荷重分散に機能するフレームを装備、重量は1kg前後ということをポイントにしています。

ヤマダパックス40
撮影:ポンチョ(yamadapacks / バックパック40)

そうしたバックパックを、私は「ライトウェイト・パック」と呼んでいます。
なぜならウルトラライト・パック(ULパック)以上、トラディショナル・パック未満の背負い心地、重量、対応する総重量を装備しているからです。

ライトウェイト・パックは、ULパックほど装備の軽量化を図る必要はなく、パッド、ウエストベルト、フレームも装備されていて背負い心地を重視。また大手バックパックメーカーが手掛けるトラディショナル・パックよりもデザインはシンプルなので軽量。フレームも軽量化のため動きを邪魔しないフレキシブルなものが多く、その分対応する総重量が軽めに設定されています。

装備するテントで例えれば、ULパックには1kg以下の非自立型テントやツエルト、トラディショナル・パックには1.5kg以上ある山岳テントを選択。対して、ライトウェイト・パックには1kg前後の自立型ダブルウォールの軽量テントを装備。

ライトウェイト・パックは、軽さと快適さを融合させたスタイル。岩稜帯を登るアルパイン・クライミングのようなハードな登山向きではありませんが、登山道を行く多くのハイカーに対応したものだと思います。

ヤマダパックス40
撮影:ポンチョ

私が考える「ULパック」 「ライトウェイト・パック」 「トラディショナル・パック」のスペックの違いや基準を、表にまとめてみました。以下は容量50リットル前後のバックパックでの、おおまかなスペックです。

また、ライトウェイト・パックはULパックメーカーが手掛けるフレームを装備したバックパックも含めています。だから、メーカーの考え方としてはULパックなのかもしれませんが、フレームありで、実際に背負ったときの総重量が11~13kgほどに対応しているバックパックを、ライトウェイト・パックに分類しています。

モデル
ウルトラライト・パック
ライトウェイト・パック
トラディショナル・パック
重量
0.6kg前後
0.9~1.2kg前後
1.5~2.0kg前後
水、食料、燃料以外の装備を収納した総重量
4~5kg
8~9kg
10kg以上
実際に背負ったときに快適な総重量
6~8kg
11~13kg
15~20kg
フレーム有無
なし
あり
あり

さて、ここで考えるのが8~9kgのライトウェイト装備を、トラディショナル・パックに収納してもよいのでは?ということです。

「トラディショナル・パック」は、重い装備を背負うときに有効

トラディショナル・パックは、ライトウェイト・パックよりもパック自体の重さがあるので、同じ装備だと総重量は増えます。けれども、高い荷重分散機能や剛性によって、15kgの総重量を12kgや13kgに感じさせてくれ、歩行がラクになるのではないか?と思うのです。

ヤマダパックス40

試しに、ライトウェイト装備をトラディショナル・パックに収納して山を登ってみたことがあります。

結果は、総重量を12kg前後に抑えられれば、感じる軽さ・重さに大きな違いはありませんでした。
とはいえ、総重量が15kg以上、さらには20kg近くになってくると、その高い剛性によって、背負った重さを軽く感じさせてくれます。
ただし、トラディショナル・パックは、剛性の強いフレームを内蔵し、腰をガッシリと包むウエストベルトを装備しているので、カラダをフレームのようにします。そのため、動きにくいと感じるパックがあります。

つまり、トラディショナル・パックは、重い装備を背負うときに有効なもの。ライトウェイト装備のような軽めの荷物を背負うには、ややオーバースペックだと感じました。

ヤマダパックス
撮影:ポンチョ

一方でライトウェイト・パックは、軽量でフレキシブルなフレームを採用しているため、荷重分散だけでなく、歩く、登るといった動きを邪魔しません。

登山時に動きやすいというのは、荷物が軽く感じることと同じくらいに大切な機能です足を上げたり、腕を伸ばして岩を掴んだり、普通に歩くときにも身体を制限されずに動けることで、安全性が高まるだけでなく、長時間の移動による疲労も軽く済みます。

「ULパック」を快適に背負うには、荷物の軽量化が必須

ちなみにULパックも、身体を制限せず、動きやすいものが多くあります。しかし、12kgの重さを背負うと、肩に荷重が強く掛かったり、重さを感じるバックパックが多いというのが、私の印象です。もちろん、フレームレスのバックパックで12kgを背負っても、ストレスの少ないバックパックも存在します。

ヤマダパックス バックパック40
撮影:ポンチョ

でもライトウェイト・パックは、対応する重量が11~13kgということもあり、重すぎない荷物を動きを制限せずに背負って歩けるバックパックなのです。

そんなライトウェイト・パックの見本とも言える、おすすめのバックパックがあります。
それが、今回紹介する「yamada packs」です。

ミステリーランチとULパックに影響されたギア好きが手掛けた「yamada packs」

yamada packs(以下、ヤマダパックス)が手掛けるのは、フレームやウエストベルト等を装備した腰荷重の軽量バックパックで、上記したライトウェイト・パックの見本となるスペックを装備しています。

ヤマダパックスが目指したもの

yamada packs

提供:yamada packs

ライトウェイト・パックに分類できるバックパックは、大きく2種類あります。

ひとつは、ULパックメーカーが、対応する総重量を上げたり、荷重分散をよくするためにベルト類のパッドを厚くし、フレームを内蔵させたものです。前述の通り、こうしたパックは現在、ULパックとして認識されています。

もうひとつは、トラディショナル・パックのメーカー(大手バックパックメーカー)が、軽量性を求めてフレームや素材を軽量化。対応する総重量を下げたものです。例えば、今シーズンにブラックダイヤモンドが発売したベータライト45は、同社初のULパックとしてレビューする記事を書きましたが、私の基準ではライトウェイト・パックに該当するスペックです。

yamada packs山田さん

提供:yamada packs

一方、ヤマダパックスのはバックパックは、トラディショナル・パックメーカーの雄「ミステリーランチ」好きのデザイナーさんが、その構造を丹念に調べ、同じく愛好していたULパック的に仕上げたもの。

デザイナーの山田耕右さん曰く、「シンプルで軽量だけれども、ULパックではあまり見られない背負いやすい機能を多く装備しています!」
両者のよいところが活かされているのです。

そしてミステリーランチの短所ともいえる、「バックパックの重さが3kgにもなるのは重い。背負い心地はそのままに、自重を1kg以下、できれば900g以下に抑えたUL的バックパックが欲しい」と自作を開始したのが、ヤマダパックスの第一歩です。

ロングトレイルを歩いた経験から自作パックをアップデート

PCTスルーハイカー 山田さん

提供:yamada packs

自作したバックパックを背負い、山田さんはULハイカーの聖地=北米3大ロングトレイルのひとつPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)へ。約5ヶ月のロングトレイルハイクの経験は、ボロボロになった自作パックの改善に活かしたそう。

yamada packs Backpack45 / Backpack50

提供:yamada packs(左)Backpack45、(右)Backpack50

そうして完成したのが、バックパック45。そして2023年にはバックパック40と50の2つの容量のモデルにアップデート。

私がテント泊登山におすすめしたいライトウェイト・パックこぞが、
「ロングトレイルに向けて作ったパックを、日本国内の登山に合わせて最適化。しっかりと腰で背負える構造を備えつつ、無駄を削ぎ落したシンプルなデザインで軽量。実用と軽量化の比率に対するyamada packsからの答えです」」
という、バックパック40です。

ヤマダパックス バックパック40
撮影:ポンチョ(yamadapacks / バックパック40)
商品名
ヤマダパックス/バックパック40
価格
49,000円(税込み)
容量
40L相当(本体/33L、サイドポケット/2.2L(左右各1.1L)、フロントポケット/3.5L)
重量
0.8kg
推奨する総重量
12kg前後(耐荷重15kg)

“日本国内の登山に最適化”とは、UL道具ではなく、一般的な寝袋や山岳テントを収納して使用することを想定。その装備で2泊程度のテント泊山行ができるパック。つまり、縦走登山を当たり前にできるパックなのです。

荷重を受け止め、身体に伝えるギミックがいい!

ヤマダパックス フレーム
撮影:ポンチョ

バックパック40は、テントのポールにも使われるA7075というアルミニウム合金をフレームにして、X字に配しています。上端はショルダーハーネス、下端はウエストベルトに直結。荷重を腰で受け止めながら、肩へも分散します。

しなやかで復元力の高いフレームは、歩行時に身体が捻れるような動きにも追随。荷重分散だけでなく、動きやすさもしっかりと兼ね備えています。

クビキ=ヨークに見られる、ミステリーランチと古民具の影響

yamadapacks バックパック40 ショルダーハーネスの仕様

提供:yamada packs

ショルダーハーネスは、背面から肩を包み込み、脇下へと続く一体型。

ミステリーランチも荷重分散を適切に行なえる同様のヨーク形状を採用していますが、ヤマダパックスは日本の古民具「バンドリ」の要素も装備。センターストラップによって、背負った荷物の重さを背中にも伝え、肩への負担を軽減する機能を持たせています。

※バンドリとは、荷物を背負うときに使う背中当てのこと。藁を主材料とし、背中のクッションの役割を果たすもの

ヤマダパックス 背面構造
撮影:ポンチョ

さらにこのショルダーハーネスは、背負う人の身体に合わせてXS、S/M、L/XLのサイズを用意。背面長に合わせて本体と面テープで接続します。フィット感を高める役割を担いながら、フレームに荷重を伝えるトップスタビライザーとも連動。背中側にパック本体を近づけられるので、歩行時の安定感も高めてくれています。

ちなみに、このショルダーハーネスの形状、厚さ、フィット感が絶妙なんです。長時間背負っていても、違和感がまったくありません。山田さんによれば「体型の異なる友人やユーザーの要望に応じて、形状を修正。現在は3サイズを用意しています」とのこと。これにより、男女問わず、フィット感の高い背負い心地を実現しているのです。

しかしシンプルさを求めてショルダーハーネスにはポケット類が装備されていないので、他ブランドのショルダーハーネスポケットを追加して、テスト山行では使用しました。こうした追加ポケットをオプションで用意してもらえると、さらにこのパックの魅力が増すように感じます。つくられる方は、大変だとは思いますが……。

軽量化とフィット感を併せ持つウエストベルト

ヤマダパックス ウエストベルト
提供:yamada packs

背面だけでなく、ウエストベルトの構造もユニークです。
腰の背面部分はベルトを排して軽量化。とはいえ、X字フレームの下端が開いている部分なので、フレームがたわんで荷重を吸収、寝袋などのパック内の収納物がパッド代わりになる仕組みです。

yamada packs40 ウエストベルト

提供:yamada packs

また、ベルト部分は二重構造を採用。厚めのパッドと、その外側に配されたフレームに直結したスタビライザーで、腰骨付近を包み込む仕様です。

ヤマダパックスは、デザイナーの山田さんがひとりでデザイン、縫製を行なう、いわゆるガレージブランド。こうした二重構造のウエストベルトは大手バックパックメーカーでは見かけますが、ガレージブランドでは手間が掛かるためか、ほとんど見かけません。

こだわりを感じる、というレベルに収まらず、よいモノをつくる熱意と決意が感じられます。

背負う人の身体にフィットさせるためのセミオーダー

yamada packs オーダー会での採寸の様子

提供:yamada packs

よいモノをつくる熱意ということでいうと、このバックパックは、店頭での販売はせず、全国各地のアウトドアショップや登山用品店で展示受注会を開き、購入希望者を採寸して、後日お届けという販売方法を採用しています。

いわば、セミオーダーのようなバックパック。身体によくフィットするので、ストレスがないんです!

私自身もベルト類を選んでもらい、身体にフィットするように取り付けてもらったバックパック40で、フィールドテストをしてきました。

実際に山で使ってみて、感じたこと

ヤマダパックス
撮影:ポンチョ

今回は、奥秩父テント泊山行で使用。撮影機材もあって14kgの総重量になってしまったこと、さらに、フレームの下端と連動するストラップの引きが甘かったため、ウエストベルトの背中側が下がってしまったのですが……。その修正を行なってからは、十分に快適になりました。

自分好みの荷重で背負える!

ヤマダパックス
撮影:ポンチョ

腰に荷重がしっかり乗って、肩の痛みや食い込みはありません。またショルダーハーネス、トップスタビライザーのストラップの引き加減によって、しっかり腰荷重から、より肩や背中に分散させることも可能なことを発見。慣れてくると、シーンに応じて自分好みの荷重にして背負うことができます

備わっている機能を使えているようで、使えていないことは案外多いもの。使い方を覚えて、道具のよさを最大限に引き出すことは、どんな道具でも必要なことだと改めて実感しました。

ヤマダパックス
撮影:ポンチョ

デザインは、まさにULパック。雨蓋がなく、大きなフロントポケットを装備。左右のサイドポケットもボトル2本が入る大型です。本体内はリザーバーを収納するポケットもなく、シンプルなつくり。

ですが、腰荷重はトラディショナル・パック同様。でも800gと軽量。装備が多い場合は、本体下部を大きくしたバックパック50を選ぶのもありです。

ヤマダパックス
撮影:ポンチョ

でも、ULスタイルまでトガらず、軽さと快適性を求めるなら、このバックパック40が、ライトウェイト・パックならではのよさを体感させてくれると思います。そして、これまで背負ってきたどのパックにもなかったフィット感のよさで、登山に出掛けるのが一層楽しみになるでしょう!

デザイナー山田さんが語ってくれた、バックパックづくりへの情熱

提供:yamada packs

最後に、yamad packsを手掛けるデザイナーの山田耕右さんが語ってくれた、バックパックとその製作への想いを紹介しましょう。

私が登山を始めた頃が10年ちょっとほど前で、「ウルトラライト・パック」がどんどん頭角を現しはじめた時期でした。
一方で、テント泊登山では「トラディショナル・パック」としてGregoryのバルトロを一押しされているタイミングでもありました(バックパックのロールスロイス的なキャッチコピーで紹介されていました……)。

それからあれよあれよとUL旋風が巻き起こって、私的偏見かもしれませんが、『トラディショナルなバックパックのガチ登山勢 VS おしゃれU.Lハイカー』 な二項対立になってきてしまっているような雰囲気を感じています。

提供:yamada packs

私自身、米国バックパックブランドの『mysteryranch』をお師匠さん=お手本として育ててもらった経緯があり、決してUL一辺倒が正義だと思えない頑固な部分がありました。だから、自分の作るバックパックにもそれが表れていると思っています。

一方でどっちつかずのわかりにくさがあるニッチなバックパックでもあり、ポンチョさんの「ライトウェイト・パック」という尺度で、二項背反のグラデーションを作ってもらい、私自身の立ち位置をわかりやすく解説いただけて、本当にありがたいです。

バックパックの深淵にどっぷりハマってしまった身として、「最先端素材」と「バックパックの重さ」だけがザック選びの基準じゃないと熱く思っています。トラディショナルなザックにも、それに見合った道具選びの正解あると思います。

それは山に向かう登山者それぞれの経験や、山での過ごし方、さらには旅の仕方まで、自分で自由に考えて、自由に選びとるというアウトドア遊び全体に通底する本質につながるもの。
そんな自由な道具選びの世界が広がって、自由な発想で道具づくりができる雰囲気ができるといいなぁと思いながら、yamada packsのバックパックを日夜製作しています。

それでは皆さん、よい山旅を!