十分以上! どこにも不足がない快適空間
次に実際の使用感について述べていきましょう。

内部スペースは、フロアが220×60~90cm、高さが100㎝。一人用としては、過不足ありません。
むしろこれ以上大きすぎると無用に重くなりすぎて、山には持っていきたくなくなるかもしれません。



内部にはいくつかのポケットもつけられています。ごく普通のディテールとはいえ、こういう点でも過不足ない機能性を感じます。前室やフライシートの使い勝手も問題ありません。




簡素すぎることもなく、ユニークな工夫もあり
このように基本的にはシンプルな構造のマウンテンネストですが、おもしろい工夫も加えられています。いわゆる「前室」だけではなく、「後室」のようなスペースも使うことができるのです!


この「後室」側は人が出入りできるわけではないのですが、インナーテントのなかからモノを出し入れでき、収納スペースとして活用可能! ただ、ファスナーは一直線につけられているために開口部が狭く、出し入れしにくいものもないわけではありません。それでもなんだかうれしい空間ですよね。



たんにテントをもっと軽量にしようとすれば、このような「後室」の工夫は省いたほうが良いはずです。
後室にアクセスするためのファスナーや、後室を広くするために生地を余分に使うことになり、それらがなければ少なくても50gは軽くなったように思えます。
しかし軽量化よりも、ちょっとした遊び心を残して設計したのが、マウンテンネストというテントなのでしょうね。
インナーテントを外し、タープ的な使用も!
マウンテンネストはさらにもうひとつ、“ポールとフライシートだけで、タープのように使える”という機能まで持っています。
だから、その気になれば暑い時期は内部にシートを敷き、インナーテントなしで通気性をマックスにして眠ることもできるわけです。


このように使うためには付属のコードを2本加えるだけで、基本的な重量が変わるわけではありません。
なかなかよく考えられていますよね。
軽量性とのトレードオフで生まれた「簡単には破損しない」という安心感
さて、こんなマウンテンネストを実際に使ってみて、僕がいちばん感じたのは、“安心感”でした。
価格を抑えるために、軽量テントよりも分厚くて重い生地を使っているわけですが、その結果として耐久性が高くなり、手荒に扱っても穴が空きにくいというメリットが生まれます。
僕も1kgを切る超軽量テントをいくつか持っていますが、破損しないように使うためには気を使わねばならず、それがときどき面倒になることがあります。
また悪天候時は強風で生地が破けたり、ポールが折れたりしないかヒヤヒヤしたりもしています。

先に書いたように、テントというものは“トレードオフ”の要素が強い山道具です。
持ち運びをラクにするために重量を軽くすれば、使用生地は耐久性が低い薄手のものになり、反対に耐久性を高くしようとすれば、生地が分厚くなって重くなりがちです。
なかには軽量で軽い生地もありますが、その分だけ価格がかなり跳ね上がってしまうのは避けられません。
いまや一般的な山岳テントは一人用で60,000万円以上でも普通であり、超軽量タイプは軽く10万円を超えてきます。
ザ・ノース・フェイスには「マウンテンショット1」という山岳テントもあり、そちらは総重量約1.34㎏で税込み58,300円。それに比べ、「マウンテンネスト1」は総重量約1.63㎏で、税込み30,800円。重量差は約290gで、価格差は27,500円。
290g重くても、27,500円も安ければ、マウンテンネスト1には強力な存在意義があるのではないでしょうか?
- 総重量
- 価格
- マウンテンネスト1
- 約1.63kg
- ¥30,800(税込)
- マウンテンショット1
- 約1.34kg
- ¥58,300(税込)
他のブランドにもある! リーズナブルで機能“十分”なテント
このように同じブランド内で似たタイプのテントを作り分けている例は、他にもあります。
たとえば、アメリカのブランド、ニーモ。アメリカのテントメーカーながら、日本の山の中での使用者が非常に多いことでも有名です。
そのフラッグシップモデルの「タニオズモ1P」は税込み88,000円 で、それに対し、「アトムオズモ1P」は税込み53,900円。
ちなみに、僕は昨年からアトムオズモ1Pを使っています。これまで10年以上も「タニ」シリーズを使い続けていたこともあり、新作のタニオズモ1Pにもものすごく惹かれるのですが、あえて昨年はアトムオズモ1Pを選びました。
- 最小重量
- 価格
- アトムオズモ1P
- 約 1.35kg
- ¥53,900(税込)
- タニオズモ1P
- 約 1.12kg
- ¥88,000(税込)
また、もともとリーズナブルな価格で知られるモンベルのテント。
日本でいちばん人気のテントといって過言ではない「ステラリッジ1」は、テント本体(インナーテント)が税込み35,200円で、別売りのフライシートが税込み17,700円であり、合計金額は税込み52,900円。両者を合わせた総重量は約1.14㎏になります。
それに対し、同社の昔からの大定番である「ムーンライト1」は税込み38,500円で、総重量は約1.49㎏。
どちらも山で有用なテントですが、僕が愛用しているのはムーンライト テント1。フレームの構造がユニークで簡単に立てられ、なかなかよいテントです。
- 最小重量
- 価格
- ムーンライト1
- 約 1.49kg
- ¥38,500(税込)
- ステラリッジ1
- 約 1.14kg
- ¥52,900(税込)
リーズナブルな道具で、登山をいつまでも続けよう!
繰り返しますが、“山岳テント”は、“トレードオフ”の山道具。だから、使う人自身の価値観によって機能や価格を考え、選び分ければいいのです。
軽量なテントだけが正義なのではありません。むしろこの驚異的な物価上昇のなかでは、リーズナブルな価格のほうが重要に感じる人が増えてくるに違いありません。

僕自身は、状況によって使い分けをするつもりです。ハードなルートでは、やはり超軽量タイプ。
いうまでもなく、少しでも荷物を軽くすれば体力の消耗を抑えられますし、岩場などの難路では重い荷物で体のバランスを崩し、事故を起こすこともあるからです。
でも、一日に歩く距離が少なく、のんびり楽しめる山であれば、少々重くても丈夫なテントのほうが気楽です。
地面に石が多いテント場で生地が薄いテントを恐る恐る使うくらいなら、重くても丈夫なテントのほうがストレスを感じませんしね。
ここではザ・ノース・フェイスのマウンテンネスト1を代表例としてピックアップしましたが、無理に高価な装備を集めたりせず、こういうリーズナブルな装備で済ませるのは、長く登山を続けていくためのひとつの手段。
なにかと物価が上がっている現在、これからはこういう視点でモノを選んでいくことが重要になってきそうです。
ザ・ノース・フェイス マウンテンネスト1
素材 | <キャノピー>15Dナイロン <フロア>75Dポリエステルタフタ2,000mm PUコーティング <フライシート>75Dポリエステルタフタ2,000mm PUコーティング |
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総重量 | 約1.67kg、(インナーテント、フライシート、ポール):約1.5kg |
カラー | フォレストシェイド×メルドグレー、バンフブルー×メルドグレー、サフランイエロー×メルドグレー |
収納サイズ | 直径15×L50cm |
フロアサイズ | W220×D90cm |
フロア面積 | 2.26m² |
高さ | 100cm |
ザ・ノース・フェイス フットプリント/マウンテンネスト1
素材 | 75Dポリエステルタフタ2,000mm PUコーティング |
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サイズ | H214×W84cm |
2名用のマウンテンネストはこちら
ザ・ノース・フェイス マウンテンネスト2
素材 | <キャノピー>15Dナイロン <フロア>75Dポリエステルタフタ2,000mm PUコーティング <フライシート>75Dポリエステルタフタ2,000mm PUコーティング |
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総重量 | 約2.19kg、(インナーテント、フライシート、ポール):約2.01kg |
カラー | フォレストシェイド×メルドグレー、バンフブルー×メルドグレー、サフランイエロー×メルドグレー |
収納サイズ | 直径17×L60cm |
フロアサイズ | W223×D129cm |
フロア面積 | 2.88m² |
高さ | 108cm |
ザ・ノース・フェイス フットプリント/マウンテンネスト2
素材 | 75Dポリエステルタフタ2,000mm PUコーティング |
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サイズ | H217×W123cm |