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つらそうな登山者

「登山はつらい!」を解決する”ちょっとした”積み重ねって?山好き芸人が実感したこと

重い荷物を背負って、キツイ登りや長い道のりを進んでいく登山。しんどい思いをしながら歩くのが当たり前だと思っていませんか?確かにそういったつらさもありますが、実はそれってちょっとしたことで改善できるんです。登山が好きなお笑い芸人のやついさんが体験した「山をもっと楽しむ方法」を見ていきましょう。

目次

記事内の写真撮影:吉本悠哉

我慢はおさらば!あなたの登山はもっと楽しくなる

山頂で楽しそうにする二人

きれいな景色を見て感じる気持ちは、何物にも代えがたい登山の楽しみです。

だけど、そこまでたどり着くまでに何時間も歩いたり、急な道を上ったりと正直しんどい……。とくに登山慣れしていない初心者ほど、つらい思い出が多くなりがちです。

登山はつらいものって諦めてない?

つらそうな登山者

普段よりも重い荷物を背負って、長い時間、険しい道を歩いたり登ったり。たしかに山登りにはそんな一面もあります。だけど、「登山はしんどいもの」と思い込んで、多くの人が登山を楽にするためのチャンスを見逃しているのかもしれません。

余裕ができれば、もっと山を楽しめる

出発のポーズ

ここ数年登山にハマっている芸人のやついさんとその山仲間たち。「登山はしんどいことをやるものだ」というイメージを持っているので、普段の登山はしんどくても我慢&我慢!

もちろん、しんどさを乗り越えた先に感じるものもあるので、つらいことが絶対NG!というわけではありません。

でも、ちょっとしたことを見直すだけであなたの登山が少し楽になるとしたらどうでしょう?余裕ができる分、もっと景色を楽しむことができるはずです。

今回はやついさん&山っぺ御一行に登山ガイドの吉野時男さんと一緒に千葉県の鋸山に登ってもらいました。そこで見えた「やっちゃいがちなしんどくなること」「登山を少し楽にしてくれること」を振り返っていきましょう。

やついいちろう さん

やついさん

お笑いコンビ「エレキコミック」のボケ担当。お笑い芸人としてだけでなく、「DJやついいちろう」として音楽フェス「YATSUI FESTIVAL!」を主催するなど、活躍の幅は多岐に渡る。ここ数年、仲間と一緒に「チーム山っぺ」という登山部を作り、山に登っている。

登山ガイド:吉野時男さん

吉野時男さん

千葉県の人気アウトドアショップ「ヨシキ&P2」で働く名物スタッフ。登山道具の知識が豊富なだけでなく、日本山岳ガイド協会・登山ガイドステージ2の登山ガイドであり、一般社団法人千葉県山岳・スポーツクライミング協会の理事。

「全然違うじゃん!」を作るのは、登山のキホンの積み重ね

驚いているやついさん

登山を長く続けている人だったら当たり前でも、山を始めたての人や誰にも教わっていない人だと、実は知らないことって多いんです。

やついさんたちも周りの知り合いに聞いたり、ネットで調べたりして、道具を揃えたようですが、初めて登山ガイドと一緒に登ることでさまざまな発見がありました。

とくに知ったときの感動が大きかった、「道具の使い方」と「山での歩き方」について見ていきます。

大切なのは道具を正しく使いこなすこと

バックパックの背負い方説明

体力があっていろんな山に登っているけど、意外に多いのが「自分の道具の使い方」を知らないという人。

例えば、バックパックをお店で買うときに背負い方の説明をしてもらったものの、いざ使う時にはあまり覚えておらず、正しいフィッティングができていないことも。ましてや、インターネットで買った場合、そもそも「正しい背負い方」があるということすら知らないで、道具の機能を引き出せずにいる人もいます。

バックパックの背負い方

バックパックの背負い方を説明

この日のメンバーのバックパックは、ヒップベルト(腰の位置にあるベルト)のついた登山用ザック、トレラン用バックパック、ナップザックなど、さまざまなタイプがありました。ヒップベルトの位置があってなかったり、荷物を引き寄せるためのストラップが使われていなかったりと課題感はさまざまです。

やついさんは荷物を厳選して10Lくらいの小さなバックパックでしたが、ショルダーベルトのフィットがやや甘い様子。吉野ガイドからはこんなアドバイスをもらっていました。

吉野ガイド

ショルダーハーネスをフィッティングする時は、ストラップを真下に引くのではなく、バックパック本体を目指して斜め後ろ方向に引っ張るといいですよ。

これにはやついさんも目からウロコが落ちたようです。

やついさん

やついさん

ストラップを真下に引っ張っていたけど、全然フィット感が違いますね。
そもそも、どれくらい引っ張ればいいのかがわかっていなかったので、こんなにフィット感が上がるなんてびっくりしました。

吉野ガイド

お店で接客する時は、きちんと背負い方まで伝えているのですが、なかなか覚えていないっていうのが現実です。
最近では、ネット通販で接客なしで購入される人も多いので、そういう方は正しい背負い方があることすら知らないことも……。これは、店側の課題でもあります。

きちんと背負えていないと荷物がとても重く感じて疲れやすくなってしまいます。きちんと背負えているか、機会があればチェックしてみましょう。

トレッキングポールの使い方

トレッキングポールの使い方

バランスをとったり、歩行をサポートしたりするために使われるトレッキングポール。種類も豊富でそれぞれによって、組み立て方や調整の仕方も違うため、初心者が使い方を悩む道具でもあります。

やついさんは、トレッキングポールを使うタイミングにも悩んでいるようです。

やついさん

やついさん

とある先輩から、「トレッキングポールは疲れてから使え」と聞いていて……。

吉野ガイド

使うタイミングは人それぞれですが、やっぱり疲れる前に使ったほうがいいですよ。疲れると景色も楽しめなくなってくるので。

やついさん

やついさん

組み立て方や使い方はお店で教えてもらったとは思うんですが、店でやると忘れてしまいますね。
リアルにシミュレーションできていないからかなぁ。

吉野ガイド

いろんなタイプはあるものの、基本的に複数箇所で長さが調整できるタイプであれば、それぞれの長さは均等にしましょう。
先端側に調整する箇所がくると、テコの原理で少し重く感じるので注意してください。

お店で聞いたけど、いざやってみると忘れてしまっている!ってことは多いので、山で使う前に家でちゃんとできるか予習は忘れずに。

「疲れるのが当たり前」を疑ってみよう!

つらそうな登り

道具の使い方以上に、山での歩き方や行動についてのレクチャーは盛り上がりを見せました。次はその様子を紹介します。

準備体操は忘れずに

準備体操


集合後、まずはみんなで軽く準備体操をして、朝イチのかたい体をほぐしていきます。

吉野ガイド

しっかり足や股関節、背中など全身をまんべんなくほぐしていきましょう。体が冷えている場合は、軽く歩いて身体を温めてから体操を行うのもありです。

やついさん

やついさん

今までいきなり登っていました……。

一見、ゆっくり歩いているだけに見える登山ですが、大きく足を上げたり、重い荷物を背負ったりと、体への負担も大きいです。慌てず、しっかりと体をほぐしてスタートしましょう。

しんどいを感じないためのペース配分

登り

やついさん

やついさん

今日はゆっくり登っているからか、なんかあんまり疲れないな。

吉野ガイド

1日の行動全体で考えると、最初の登りはその日で一番ゆっくりペースを意識してスタートします。しばらく歩いて体が慣れてきたら、無理ない程度にペースを上げていきましょう。

やついさん

やついさん

「登山って疲れて当然」だと思っていたから、最初から全力で登っていました。疲れたら休んで、また登って。で、また疲れたら休んでを繰り返していました。

吉野ガイド

ですよね。でも、特に最初は疲れないようにゆったり登って、疲れる前に休憩しましょう。
水分も一気に飲むのではく、ちょこちょこ飲みます。1回の水分補給で約100mlにしてみてください。多すぎても吸収されずにおしっこなどで出ていってしまうので、それくらいが目安です。

やついさん

やついさん

疲れて喉が乾いていたので、休憩の時にガブガブ飲んじゃっていましたね。

元気なうちに飛ばしたくなる気持ちもわかりますが、「疲れない」程度を意識しながら歩きます。

「なんか前回より充実していた感じがします」

景色に驚くやついさん

「登山はしんどいもの」という思い込みで、実は楽になれるポイントを見逃してしまっていたやついさん。吉野ガイドから教えてもらった歩き方を試したり、ペース配分に気をつけたりすることで、以前、山っペメンバーで来た時よりも疲れをコントロールできて満足げな様子。

しかも、今回は体力だけじゃなく、どうやら他の「満足度」も高かったようです。

景色の解像度を上げるための”知識”

石切場の解説


かつて石切場(土木建築に使う石材を採掘する場所)として栄えていた鋸山には、変わった形の石壁がたくさんあります。この石壁、何気なく見えているだけでも十分な迫力ですが、その背景を知るともっと素晴らしいものになるんです。

やついさん

やついさん

こんな屋根みたいな形にどうやって掘ったんですか?足場とか組んだんですかね。

吉野ガイド

今、僕たちは下から見上げているので「下から掘っていった」と思っちゃいますよね。
でも実はこれ、上から削っているんですよ。で、良い層があると横に掘り進めていく。なので、こういう屋根のような形状になっているんです。

吉野ガイド

こういう岩肌にもおもしろいポイントがあるんです。昭和以降、石を切り出すのに機械化が進みました。なので、機械化以降に削られた岩肌はとても滑らかで、それ以前の場所は少し表面が荒いんですよ。

やついさん

やついさん

へぇ~!教えてもらわないと、違いがわからなかったですね。でも、ちゃんと知るとただの「石を掘った跡」じゃなく、ありがたいものに見えます。

山には美しい景色はもちろん、歴史的や文化的にもおもしろいものがたくさん。そういったものは事前に調べたり、詳しい人に教えてもらったりすることで知ることができます。

そうすると、「ただの岩肌」が「機械化以前の岩肌」や「機械化後の岩肌」のように、見えるものの解像度があがっていくのです。

しんどい思いだけをして歩くのではなく、少し余裕を持って歩くことで、より多くの楽しみを山で見つけられるようになるといいですね。

山で「楽しい」を見つけられるようになろう!

山の歩き方や道具の使い方。そして、鋸山の歴史を学びながら歩くことで、充実した山歩きができた山っぺの皆さん。

最後に今回の感想をもらいました。

やついさん

やついさん

前回と比べて、今回は疲れずに歩けました。「しんどいのは当たり前」 「山って、9割はしんどいもの」って思っていたので、すべらずに歩く方法やバックパックの背負い方の理論を知れたし、体験もできたので、次からはもう少し楽しく歩けそうです。
山でテント泊もしたいので、時男さんのお店でいろいろ教えてもらおう!

吉野ガイド

登山は確かに疲れるものだし、その疲れが達成感につながる事もあります。
ただ、やはり「楽しい」と感じることがとても大切です。
疲れないように歩く事で気持ちに余裕ができて、より山を楽しむことができると
思います。
疲れないようにするための知識や技術や道具など、山や道具の事をよく知ってい
るガイドや経験者の人から色々と学ぶことでより山の楽しさも増しますよ。
より山を楽しむためにも是非僕らと一緒に山に行きましょう!

やついさんが言う通り、登山には「しんどさ」という面もあり、それがその後の景色をより素敵な思い出にしてくれるスパイスであることも間違いありません。

しかし、しんどすぎて山がつらいものにならないように、正しい知識や技術をつけていくことも大切です。適度な達成感を感じながら山に登り続けられるように、必要なことを身に着けていきましょう。

山をはじめたきっかけは、景色の良い場所でカップラーメンが食べたかったからだそう。この日のラーメンは美味しかった!