重くてもラクに背負えるのは、なぜか?ミレーに突撃取材

今回はサースフェー NXを開発したミレー・ジャパンに突撃取材。
取材に応えてくれたのは、ミレー・ジャパンのブランドマネジメント部マーケティング マネージャー、林勲さんです。長年ミレーのPRを担当し、サースフェー NXについても構造を細部まで熟知しています。
・大型ザックの背負い心地にまつわるポイント
・サースフェー NXならではのこだわりポイント
について聞きました。
それではさっそく、教えてもらったポイントをひとつずつ見ていきましょう!
その工夫にうなる、大型ザックの「背負いやすさ」の秘密

まず質問したのは、「大型ザックの背負い心地にまつわるポイント」について。背負い心地を良くするには、2つの要素が重要とのこと。
林さん:たとえば、20kg近い重量を何時間も背負い続けなければいけないとき、体への負担を少なくするには、
「背面システムの剛性(硬さ)」
「背負ったときの重心位置」
が重要です。
サースフェー NXの大容量モデルは、とくにこの2点を意識して開発されました。
体に負担をかけないつくり

背面システムの硬さにおいて、とくに意識したパーツはショルダーハーネスとウエストハーネスだそう。
林さん:重い荷物を背負う場合、ショルダーハーネスとウエストハーネスがしっかりしているほうが、体への負担を減らすことができるんです。
重い荷物をショルダーハーネスやウエストハーネスが柔らかいザックで背負ってみると、肩や腰にハーネスが食い込むことがあります。
荷重を腰で支えられず、すぐに肩が痛くなってしまうことも。
あえて硬めのクッション材を使うことで、荷重が体への負荷になりにくい

林さん:サースフェー NXの50L以上のモデルの場合、ショルダーハーネスとウエストハーネスには、あえて硬めのクッション材(EVA)を使っています。
そこにプレート状の合成樹脂の芯材を組み合わせることで、想定する荷重に耐えられる硬さにしました。

さらにパッドの厚みも増やしているため、重たい荷物を背負っても高い反発性で各パーツが体にくい込むことはありません。
重さを跳ね返してくれるので荷重が分散され、どこか一部分が食い込むということもありません。
高反発の素材を配置して、背負いやすさを優先

50L未満のサースフェー NXのショルダーハーネスとウエストハーネス、背面パッドのクッション材には、「フィルターフォーム」という素材が使われています。
「フィルターフィーム」は水分を保水しにくく通気性が高いため、汗抜けがいい点もサースフェー NXの特徴です。
しかし、サースフェー NX 50+、60+、75+の大型ザックには、このフィルターフォームを背面パッドに限定。
代わりにショルダーストラップとウエストハーネスには、高反発性をもつEVAを採用しているのです。
カーブ形状を維持していることで背負いやすくなっている


合成樹脂の芯材を使うことで、ショルダーハーネスとウエストハーネスが体に沿う形状を維持し、これも体への負担を減らす効果があると言います。
林さん:これは子どもを背負ったときをイメージするとわかりやすいかもしれません。寝ているときより、起きているときのほうが軽く感じますよね?
子ども自身が起きていて、おぶさる側につかまってくれると軽く感じます。
これはザックにも同じです。ショルダーハーネスやウエストハーネスが柔らかいものは「寝ている子」の状態です。
でも、ハーネスが硬くて形状を維持していると、「起きている子を背負う」のと同じ状態になります。
そのため、同じ重さの荷物を背負っても軽く感じられるはずです。
なで肩が多い日本人向けに考えられた角度

より一層背負い心地をよくするために、ショルダーハーネスは本体への縫い付け角度をハの字型の斜めにしています。
日本人に多いなで肩の人もフィットしやすくなりました。
重い荷物が体に寄り添うことで、軽さを感じる

「大型ザックの背負い心地にまつわるポイント」のもうひとつが、「ザックを背負ったときの重心位置」です。
林さん:重心の位置は、なるべく肩甲骨の位置あたりで、体に近いほうが背負い心地は軽くなるんです。
逆に、低くて体から離れるほど重さを感じやすくなってしまいます。
これも、先ほどの子どもの例で説明したのと同じです。起きている子どもはしっかり肩にしがみついて背中に近いところに重心位置があるのに対して、寝ている子どもは背中にしがみつけず、体から離れてしまい重く感じるんです。
荷物を体に引き寄せて、体感の重さを軽減するボディフィットストラップ
この重心位置を体に近づけるため考えられたのが、サースフェー NXのすべての容量に搭載されている、ボディフィットストラップです。
重心位置を体に近づける工夫は3つあります。
1)ショルダーハーネスの肩に触れる部分とザックをつなぐストラップ(スタビライザー)
2)両サイドのコンプレッションストラップ
3)両サイドの最下部のボディフィットストラップ
林さん:サースフェー NXを背負った状態で左右にあるボディフィットストラップを前方に引き込むと、メイン荷室の下部が圧縮されて、ザックが体に近づきます。
サイドのコンプレッションストラップは3本ずつ。グッと体に引き寄せる

林さん:サイドのコンプレッションストラップについては通常、両サイドに2本ずつ備わっているものが多いです。
しかし、容量の多いサースフェー NX 60+と75+については、両サイドに3本ずつ取り付けました。
より広範囲にメイン荷室を圧縮でき、なるべくザックを体に引き寄せられるように考えられています。
サイドの左右ストラップは、フロントでつないで荷物を挟むこともできる

林さん:3本あるサイドストラップのうち、上下の2本を使ってワカンやスノーシューなどをフロントに取り付けることも可能です。
この場合でも、真ん中の1本はコンプレッションできているので、メイン荷室を圧縮して重心位置を近づけることができます。
細かい工夫がここにも。ザックの「背」が伸びても、頭に当たらない

体への負担の少ない背負い心地という点では、感じるストレスも少ないほうがいいですよね。
その点、サースフェー NX 60+、75+は背負ったときに後頭部がザックと接触しないように、背面フレームの上部とトップリッド(雨蓋)を頭から逃げるように設計。

背面フレームの上部は真ん中がカーブを描きながらくぼみ、トップリッドも横から見ると後ろに反り返っています。
細部に至るまで背負い心地を良くする配慮を怠らない作りも、サースフェー NXのこだわりです。
荷室へのアクセスやポケットも大型だからこその工夫あり

サースフェー NXの魅力は背負い心地の良さだけではありません。
荷物の取り出しやすさ、収納のしやすさにもこだわって作られています。
ここからは、引き続き林さんに教えてもらった「サースフェー NXならではのこだわりポイント」を中心に見ていきましょう。
荷物が多くても取り出しがラク

ザックの使い勝手を左右する性能に、荷物の取り出しやすさがあります。
とくに容量の大きいザックは収納する荷物が増えるため、奥にしまったアイテムを取り出しにくい、なんてことも珍しくありません。
そのため、荷物を取り出せる箇所が複数あると出し入れをスムーズに行うことができ、使い勝手が大幅に向上します。
好みに合わせて、1気室または2気室に切り替え可能

荷物はメイン荷室の下部からも取り出すことができ、内部はパネルで仕切りを作ることができます。
内部は好みに合わせて、1気室、2気室、どちらにも切り替えられる仕様です。
大きく開けられるファスナーにマチがあると中身がこぼれない

たくさんの荷物を出し入れする際に感じるちょっとしたストレスにも、細かい工夫で対応しています。
林さん:サースフェー NX 60+と75+にはフロントに逆U字状に開くファスナーを取り付けて、荷物の素早い出し入れを可能にしました。
さらに、両サイドにメッシュ生地のマチを設けることで、ファスナーを開いたときに中から荷物がこぼれ落ちないように工夫している点も注目してもらいたいポイントです。
ファスナーが勝手に開かないから、圧力がかかってもしっかりガード

林さん:さらにこだわったのが、メイン荷室の下部にあるファスナー。
荷物をパンパンに詰めると下部に圧力がかかり、ファスナーが勝手に開いてしまう可能性が開発段階で指摘されました。
そのため、引手を持って操作しない限り動かないロック式のファスナーを採用。
ファスナーが勝手に開いて中から知らぬ間に荷物が落ちていた、などといった心配がありません。
多いだけでなく、「使いやすい」ポケット

サイドポケットやショルダーポケットなど、収納ポイントの多さもサースフェー NXの特徴です。
林さん:ちょっとした休憩の度にザックを下ろして担ぎ直すだけで体力は削られてしまいます。
なるべくザックを背負ったまま行動できるように、サースフェー NXはあえて収納ポケットを多くしました。

ショルダーポケットは左右に搭載。伸縮するメッシュ生地で作られていて、サイズは500mlまでのペットボトルがぴったり。
ヒップポケットも左右に備わっていて、紙の地図や行動食、スマートフォンなどの収納に役立ちます。
林さん:サースフェー60+と75+に関しては、すべてのヒップポケットがベルクロテープで折りたたまれていて、必要なとき縦に拡張することが可能です。

林さん:さらに外側にもメッシュポケットを配置したので、収納性は非常に高いと思います。
日焼け止めやリップクリーム、手袋など、行動中に手に取りたいさまざまなアイテムを効率よく整理できます。

両側にはサイドポケットがあり、深さを変えている点がこだわりポイント。
林さん:右手側のサイドポケットは薄手のウィンドシェルやボトルなどを入れる想定で、しまった荷物を落とさないように深めに設計しました。
横にも開口部があり、慣れるとザックを背負ったままペットボトルなどを取り出せるようになります。

林さん:左手側のサイドポケットの深さは、テントポールやトレッキングポール、三脚などの長いものを差し込む想定で考えたので、浅めに設計されています。
撥水生地と浸水させない工夫は、中型モデル同様

大型ザックを背負うほどの計画は、おそらく何泊もしながら山を歩く予定のはず。
毎日晴れればベストですが、ときには終日の雨や突然強く降る夕立などに遭うこともあるでしょう。
そこで、サースフェー NX はコンセプトに「水や汗に対する強さ」を掲げて開発。
冒頭で触れた耐久撥水性や浸水を軽減する縫製を少なくした設計、通気性の高いフィルターフォームを使っているのはそのためです。
シリコン撥水生地が水を弾く

耐久撥水性をもつ生地は、従来のコーデュラナイロン素材にシリコン加工をほどこしたもの。
サースフェー NXは耐久撥水性のほかに、優れた耐久性も兼ね備えています。
林さん:耐水圧は1,500mm以上もあり、これは一般的なレインカバーがもつ耐水圧に匹敵する数値です。
付属のレインカバーを使うことで、より一層内部への浸水を防ぐことができます。

林さん:トップスカート(荷室上部の拡張する部分)の生地もメイン荷室と同じ素材が使われています。
なので、荷物が増えてトップスカートを引き伸ばした場合も、浸水に対する強さは変わりません。
なるべく水が入ってこないようにする工夫
浸水を軽減する縫製を少なくした設計については、50L以下の容量に採用されています。
林さん:浸水を軽減する目的でメイン荷室を筒型に設計し、縫製箇所をできるだけ減らしました。
60+、75+のフロントにはダイレクトアクセスの開口部がついていますが、なるべく縫製を減らす方向性は変わりません。
背負いやすさの工夫を知るとわかる大型ザックの魅力

テント泊などで重くなるザックからの負担を減らすには、ザック自体に荷重に負けない硬さがあり、重心位置を体に近づける機能が必要です。
その両方を備えるサースフェー NX 60+、75+は、ザック本体の重さは決して軽くないですが、まさに「ラクに背負える大型ザック」の代表格。
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