アイキャッチ画像撮影:橋爪 勇志
ニーモが新作ULテントを投入してきたぞ

提供:イワタニプリムス
テント選びにおいて、「軽量性をとるか、居住性をとるか」は両立の難しい問題です。
「軽さも快適さも、どっちも捨てがたい」
そんなテントユーザーの悩みをスパッと解決してしまったのが、今回登場するホーネットオズモです。

撮影:橋爪 勇志
ホーネットオズモは、アメリカのアウトドアブランド<NEMO(ニーモ)>の半自立型ダブルウォールテント。同ブランドのUL(ウルトラライト)バックパッキング向けに展開する「ホーネット」シリーズの最新モデルで、2023年春に発売されました。
バリエーション | 1人用(1P), 2人用(2P), 3人用(3P)の3パターン |
参考価格 | [1人用]¥61,600(税込),[2人用]¥68,200(税込),[3人用]¥89,100(税込) |
最小重量 | [1人用]820g,[2人用]950g,[3人用]1.28kg |
タイプ | ダブルウォールテント(半自立型) |
対応シーン | ロングトレイルなどの森林限界を超えない環境 |

提供:イワタニプリムス
スペックをみて、まず目につくのが、1人用で820gという重量。ギアの軽量化が進む近年では1kg以下のテントも増えてきましたが、現在登場しているダブルウォールテントの中ではトップクラスの軽量性を誇ります。
ライター橋爪
でも、めちゃくちゃ軽い分、いろんな機能が削がれているんじゃない?
そんな疑問を解消すべく、2人用のホーネットオズモ 2Pを実際にフィールドで使ってみました。
使ってみたら、軽さも快適さも、妥協のないテントだった!

撮影:橋爪 勇志
今回、1泊2日のテント山行でホーネットオズモ 2Pを使用しました。率直な感想としては、超軽量なダブルウォールテントが欲しい方は候補の一つにして間違いないと感じます。
軽量性を突き詰めながらも、居住性と使いやすさもこだわり抜いたテントで、ULハイカーに限らず、軽い荷物でテント泊を快適に楽しみたいユーザーであれば、誰でも納得できる仕上がりになっています。
印象に残ったポイントを詳しくみていきましょう。
※フィールドテストの日は強風と雨であまり撮影ができませんでした。ここからは別日に撮影した写真も交えて紹介します
ゆったり空間を生み出す“技”におどろき
さっそく設営して驚いたのが、公式スペックの「フロア面積2.6㎡」という数値以上にテントの空間が広く感じられたことです。その秘密は、テントの各所に施された、空間を極限まで広げるための仕掛けにありました。
半自立型で軽さと広さが“好バランス”

撮影:橋爪 勇志(自立しない側がイエロー、自立する側がグレーと、直感的にわかりやすいポールカラーを採用)
ホーネットオズモは「半自立型」というテントの形状が採用されています。
一般的な自立型テントのフレームは「X字状」になっているのに対し、半自立型のホーネットオズモは、フレームが「Y字状」になっているのが特徴。片側はペグやガイロープなしでも立ち上がりますが、もう片側は両端をペグダウンしないと形になりません。
撮影:橋爪 勇志
ポールの片側を1本に削ぎ落とすことで軽量化を図りつつも、固定することで、自立式テントと変わらない室内空間を生み出しています。
ライター橋爪
設営方法は、一般的なダブルウォールテントとほとんど変わりませんでした。
ポールの差し込みやインナーテントとの連結なども、特に力を必要とすることはなく、女性でも安心して設営できそうです。
立ち上がるフロアで足元が広々

撮影:橋爪 勇志
テントの足先側(自立しない側)の両端は支柱が入っており、底面とその10cmほど上の二点からV字状にテンションがかかるシステムを採用。これにより、バスタブが垂直に近い状態で立ち上がり、足元に広い空間が生まれます。
ライター橋爪
足元のデッドスペースがなくなるので、結露したテントに触れて、シュラフが濡れるようなリスクも軽減できそうです!
独自のクリップにより頭上空間もゆったり

撮影:橋爪 勇志
インナーテントの上部には「フライバー™ボリューマイジングクリップ」と呼ばれる、トンボの羽のような留め具が備わっています。これにより、上部のテンションを二点に分散し、頭上に広い空間を生み出します。
ライター橋爪
これはナイスアイデア!
室内高は98cmと、一般的なダブルウォールテントよりも低めですが、それを感じさせないゆとりある空間が広がっていました。
また、留め具は簡単に脱着できるのもいいところ。軽量素材が使われているので、重量にも影響はなさそうです。
インナーとフライを接続すると、側面に張りが出て美しい

撮影:橋爪 勇志
さらには側面にも画期的なアイデアが組み込まれています。
テント内の側面空間を広げる「ボリューマイジングガイアウト」は、インナーテントのドア横に付いているコードをフライシートにフックすることで、インナーテントの側面が引っ張られる仕組みになっています。
ライター橋爪
空間が大きく広がるというよりも、“側面にハリが出る”印象です。
雨の中過ごしても、室内がキレイなシルエットに保たれていました。
居住空間にも工夫がいっぱい

撮影:橋爪 勇志
2Pと3Pは、両側2箇所に前室付きのドアが設けられているのが特徴。状況に応じた自由な使い方ができそうです。

撮影:橋爪 勇志
前室は奥行きが61cm(3Pは71cm)。そこまで広くはありませんが、バックパックや靴、トレッキングポールなどのギアを置いておくには十分なスペースだと感じます。
開閉のラクさがストレスを軽減
撮影:橋爪 勇志
「これは便利」と感じたのがドアの開閉がとにかく滑らかなこと。インナーテントのドアは半円に近い形になっており、片手で操作しても詰まることはなく、とても使いやすかったです。
撮影:橋爪 勇志
また、フライシートのドア部分には、ニーモ独自の「ゲートキーパー™️」が採用されており、まくり上げや下ろす際も、片手で簡単に操作ができました。
ライター橋爪
従来のループに通すタイプと比べて手軽さが段違い!すごい便利です。
テント内をやさしく照らす、癒しの光りが◎
撮影:橋爪 勇志
頭部側の上部には「ナイトライトポケット™︎」という、ライト専用のポケットが備わっています。白い光を放つLEDライトでも、ポケットに入れることで、電球色のようなやさしい色味に変わりました。
ライター橋爪
こういったユニークな仕掛けは、ニーモのさまざまなテントに共通する機能です。
細かな部分にも配慮が感じられ、ストレスなく使うことができました。
コンパクト収納でパッキングの自由度が高い

撮影:橋爪 勇志
収納も非常にコンパクト。テントやポールは小ぶりなサイズ感になっています。
テントのスタッフサックはお弁当型のロールアップ式。これがまた使いやすく、撤収を急いでいる時など、雑に詰め込んでも収納することができ、圧縮することで上記写真の半分近くまでコンパクトになります。
ポールは従来よりも短く折りたためるコンパクトな設計で、バックパックのスペースを圧迫することなくパッキングできました。

撮影:橋爪 勇志
またスタッフサックにはループがついており、カラビナ等でバックパックの外側に取り付けることも可能。大きなポケットが備わったバックパックと相性が良さそうです。
ライター橋爪
コンパクト性や、工夫されたスタッフサックなど、収納機能はあらゆるテントの中でもかなり優秀です。
防水性や耐久性、結露はぶっちゃけどう?

撮影:橋爪 勇志
フィールドテストの日は、強風&雨と検証にうってつけの悪天候。ザーッと横殴りの雨が降ったり止んだり、時折ビューッと突風が吹くような環境が翌朝まで続きました。
テントの防水性や強風に対する安定性、翌朝の結露具合など、リアルな使用感をお伝えします。
雨をしっかり弾き、ハリも持続

撮影:橋爪 勇志
今回使った限りでは、防水性は「信頼できる」と言えるでしょう。フライシートは十分に水を弾き、縫い目も防水処理がされているため、水が侵入している形跡はありませんでした。
また、湿った地面の上にテントを張りましたが、フロアに水が染み込んでいる様子もなし。耐水圧も問題なさそうです。
機能&環境に優れた「オズモ™︎ ファブリック」の長所が活きたのでは

撮影:橋爪 勇志
ちなみに、モデル名にも使われているオズモとは、ニーモが独自に開発した生地「オズモ™️ ファブリック」のこと。
フライシートとフロアにこの素材が採用されており、従来の生地と比べて、
- ①撥水性が約4倍長持ち。ドライをキープしやすい
- ②濡れた状態での伸縮性を3分の1に抑え、風雨による弛みを軽減
- ③強度を20%向上させ、そして軽い
という大きく3つの機能的特徴を持っています。

撮影:橋爪 勇志
さらには、ブルーサイン認証で100%リサイクルかつPFCフリーで生産されており、機能だけでなく環境にも優れた次世代素材です。
※PFCフリーとは、環境汚染への懸念がある「PFC」というフッ素化合物を使用しない撥水加工技術のこと。
風にも強いが、デメリットも理解しておこう

撮影:橋爪 勇志
半自立型テントということもあり、耐風性は気になっていた部分でした。
今回試してみた感覚からすると、テントがしっかり固定されていれば、風速10〜15m程度の風でも、安心して過ごせる範疇かと感じました。
「稜線でも使えるか?」はケースバイケース

撮影:橋爪 勇志(ポールには、高強度と軽量性を両立したDAC社の「FEATHERLITE NSL」を採用)
稜線でも使えるかどうかは、その時々の状況によると思います。
穏やかな天候であれば問題はないでしょうが、稜線ではとつぜん猛烈な風にさらされることも。半自立型のため、しっかりペグダウンすることがとても大切になります。
ライター橋爪
稜線はペグが刺さらないテント場も多く、そういった場面では、非自立側の固定は工夫が必要でしょう。
ホーネットオズモが、森林限界を超えない地帯での使用を想定したモデルであることからも、無茶な使用は控えた方が良いでしょう。
通気性バツグンで結露知らず

撮影:橋爪 勇志(頭部側のバスタブは高い位置にあり、上半身は風から守られる設計になっている)
朝を迎え、テント内の結露を確認しましたが、足先の側面がわずかに濡れている程度でした。夏の雨のコンディションで考えると、結露はかなり少ないと感じます。
その理由は、通気性に優れたメッシュのインナーテントと、空気を取り込みやすい形状のフライシートによるもの。空気が循環しやすい構造により、結露を軽減します。
ライター橋爪
通気性が良いので夏のテント泊にもおすすめ!
逆に、春や秋などの気温が低い時期は、防寒対策も考える必要がありそうです。
ほかのホーネットシリーズとの違いは?

提供:イワタニプリムス
ホーネットシリーズは、「ホーネットオズモ」「ホーネットエリートオズモ」「ホーネットストーム」の3モデルが販売されています。
ホーネットストームは、オズモファブリックが採用される前のモデルで、ホーネットオズモの旧モデル的な位置付けです。
「ホーネットエリートオズモ」はアスリート向け超軽量テント
ホーネット オズモ(2P) | ホーネット エリート オズモ(2P) | |
重量 | 950g | 779g |
価格 | ¥68,200(税込) | ¥81,400(税込) |
素材 | オズモ ファブリック | オズモ ファブリック |
フロア面積 | 2.6㎡ | 2.5㎡ |
室内高 | 98cm | 94cm |
前室面積 | 0.7㎡+0.7㎡ | 0.6㎡+0.6㎡ |
スペックを比べると、ホーネットエリートオズモの方が軽量性に優れている一方、居住空間は少しだけ小さいのがわかります。
ホーネットエリートオズモをひとことで表すと、「極限まで無駄を省いたテント」。アドベンチャーレースでの使用など、軽量性を突き詰めたエクストリームテントです。
ここでは細かな違いは紹介しませんが、一般的なテント泊を楽しむ方であれば、ホーネットオズモの方が使いやすいでしょう。
ホーネットオズモを背負って、より遠くへ

撮影:橋爪 勇志
ダブルウォールテントながらも、圧倒的な軽量性と居住性を両立するホーネットオズモ。半自立型なので、使用シーンの見極めは必要ですが、テント泊初級者から、じっくりトレイルを楽しむ上級者まで、幅広いユーザーを満足させるテントだと感じました。
ホーネットオズモを背負い、まだ行ったことのない遠くの山へ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
ホーネットオズモが気になった方はこちら
NEMO ホーネット オズモ 1P
就寝人数 | 1名 |
---|---|
最小重量 | 820g |
本体素材 | 15Dナイロン/メッシュ |
フライ・フロア素材 | OSMO™ リップストップ(ナイロン、ポリエステル) |
面積 | フロア:2.1㎡ 前室:0.7㎡ 室内高:98cm |
NEMO ホーネット オズモ 2P
就寝人数 | 2名 |
---|---|
最小重量 | 950g |
本体素材 | 15Dナイロン/メッシュ |
フライ・フロア素材 | OSMO™ リップストップ(ナイロン、ポリエステル) |
面積 | フロア:2.6㎡ 前室:0.7㎡+0.7㎡ 室内高:98cm |
NEMO ホーネット オズモ 3P
就寝人数 | 3名 |
---|---|
最小重量 | 1.28kg |
本体素材 | 15Dナイロン/メッシュ |
フライ・フロア素材 | OSMO™ リップストップ(ナイロン、ポリエステル) |
面積 | フロア:3.7㎡ 前室:0.8㎡+0.8㎡ 室内高:111cm |