食材が増える3~4泊くらいのテント泊にも。65Lサイズをリポート
はじめにお伝えしたいのは、ブリッジャーには容量違いで2タイプあり、僕がここで選んだのは容量63Lの「ブリッジャー65」ということ。
バックパックというものは、ある程度「大は小を兼ねる」ため、ひとまわり小さい「ブリッジャー55」ではなく、こちらをテスト用に使用しました。
容量が65L近くあれば、週末の1泊2日はいうまでもなく、食材が増える3~4泊くらいのテント泊登山にまで対応できます。また、分厚いスリーピングバッグや防寒着で荷物がかさむ寒い時期にも余裕をもって使用できるでしょう。
「軽さが正義」とは言えない。バックパックの真の実力
ブリッジャー65の重量は2.5㎏。現代の大型バックパックとしては、それほど軽くはありません。だが、特別重いわけでもなく、いわば「普通」といったところです。
だが、「ウルトラライト」などの流れを汲むバックパックを知る人には、それでも重いと思うかもしれません。
しかし、バックパックという登山ギアは、単純に「軽さが正義」とは言えない一面があります。
背負ったときに重さを感じず、長時間歩いて疲れにくいのが「正解」
大型バックパックの真の実力は、「各部のハーネス」や「背面パネル」などの工夫により、荷物の重さを背中、肩、腰などへ適切に分散することで、「“背負ったときの重さ”を軽く感じさせる」ことにあります。
バックパック自体があまり軽くなくても、背負って歩いたときに体への負担が少なく、長時間歩いても疲れにくければ、それが正解。そんなことを証明するバックパックが、まさにブリッジャーなのでしょう。
必要にして十分。フィット感も極上な背面構造
こちらは、ブリッジャーの背面構造。背面のパッドは背中と腰に分割され、背中のパッドはショルダーハーネスと、腰のパッドはヒップハーネスと連結しています。
そして、それらのパッドのあいだに隙間を生み出すことで、バックパックの重量を減らすと同時に通気性も向上させてあります。
一般的な大型バックパックには、もっと面積が広い背面パネルをもつモデルが多く、それらに比べるとブリッジャーの背面パネルはいくぶん華奢で頼りなく見えるかもしれません。
しかし、実際に背負うとわかりますが、これは必要にして十分。フィット感も極上なのです。
独自のフレームシートが荷重を分散してくれる
すばらしいフィット感を生み出す秘密は、ミステリーランチ独自の「フューチュラヨークシステム」。
背面パッドの裏に内蔵されたフレームシートを取り出し、これでバックパック本体と背面パッドを固定していたベルクロを引きはがすことで、背面長の調整が無段階ででき、一人ひとり異なる背中にぴったり合わせられるため、重い荷物を楽に背負えるようになります。
それだけではなく、この程よく湾曲したフレームシートを背面パッドに戻すと、背負ったときに背中から肩への曲線にきれいに沿い、ますます荷重を分散する効果が高まります。
これは既存のミステリーランチの大型バックパックにも搭載されていた非常に効果的な機能です。
ブリッジャーにはフューチュラヨークシステムのなかでもシンプルなタイプが使われていますが、その効果はまったく変わらず、ミステリーランチらしい背負いやすさがいつものように表現されていることを実感しました。
日本でのメインサイズであるMサイズは、背面長38㎝~51cmのユーザーに適し、日本人男性の大部分をカバー。実際の調整可能範囲はさらに広く、背面長が51cmを超えるユーザーでも実用上の大きな問題はありません。
直感的に調整できるヒップベルト
腰まわりにも背負いやすさを向上させる、見逃してはいけない仕組みをもっています。
ブリッジャーのヒップハーネスは一見シンプルですが、そのフィット感の調整のための重要な工夫は、見えないところに隠されています。
このヒップベルトの調整方法も、発想自体は以前のミステリーランチの製品と同様です。
しかし、ブリッジャーのシステムは少しシンプルに変更され、従来のモデルよりも直感的に調整できるようになって、使い勝手がアップしています。
フィット感の良さが荷重を分散し、「行動中の背負いやすさ」につながる
バックパックが肩、背中、腰へ完全にフィットしていると体の全体に荷重が分散され、それだけで行動が楽になります。
とくにブリッジャーは背中側にバネのような効果をもつ「スプリングスチール」が組み合わせられ、これがバックパック本体の形状を整えるフレームになり、同時に体の動きに合わせて適度にたわんでくれます。
そのために行動中に体を傾いたときに荷物の重さによって体が無用に振られる感覚が少なく、姿勢が安定します。
これは従来のミステリーランチのモデルでは感じられなかった背負い心地でした。
荷重分散効果を維持しながらも、「行動中の背負いやすさ」に関して、ブリッジャーは明らかに進化しているようです。
収納性が行動時のストレスを軽減してくれる
細かいところではチェストストラップにも注目してください。一般的な登山用バックパックのチェストストラップは1本ですが、ブリッジャーのチェストストラップは2本。
まるでトレイルランニング向けのバックパックのようなディテールです。
左右のショルダーハーネスにはかなり大きなポケットが設けられており、チェストストラップ2本という仕様は、その部分が揺れ動きにくいようにするためでもあるでしょう。
バックパック本体が体にフィットする効果も高まるため、これもまた背負いやすさの向上につながっているようです。
500mlのボトルまで入る大きなポケット
この胸元のポケットは500ml程度のボトルやソフトフラスコも入れられ、なかなか便利です。ただ、その大きさの分だけ深さもあり、小さいものを入れると出しにくくなることも。
僕は左右にコンパクトカメラとスマートフォンを入れていましたが、とくにカメラが取り出しにくくなりました。
しかし、このポケットの上部はドローコードで締められるようになっています。
そのために、コードでカメラを留めるように収納すれば、深く落ち込むのを防ぐことがで、大きな問題にはなりませんでした。
随所に配置されたポケットでモノの出し入れがスムーズ
このまま他の部分のポケットについても見ていきましょう。
ヒップハーネスの上のポケット、サイドのポケット、そしてリッドのポケットと、どれもよく考えられた形状になっており、ストレスなくモノを出し入れできることがわかるはずです。
大きいバックパックだからこそポケットで使い勝手が分かれる
大量の荷物を入れる大型バックパックは、各部のポケットやリッドの収納性が使い心地を大きく左右します。
すぐに取り出したい細かいものは、ヒップハーネスのポケットに
メッシュ素材のヒップハーネスのポケットは縦11×横17㎝くらい。伸縮性もあり、行動食や地図などを入れるのに適しています。
伸縮性があるサイドポケットはどんなモノを入れても収まりがいい
トレッキングポールとボトルがいっしょに入るほど大きめのサイドポケットはストレッチ性の高い素材。きめが細かく、行動中に周囲の岩や枝に引っかかりにくくなっています。
トップリッド内にも大型ポケットを配置
リッドの収納スペースの裏側にも大型ポケット。その内側にはフックがあり、カギのような貴重品をキープできます。
生地のタフさと重量のバランスが秀逸
ところで、僕がミステリーランチを愛用している理由のひとつが、「タフであること」。
このブランドの特徴を説明するときに、僕はいつも「質実剛健」という言葉を使いますが、その剛健さを象徴するのが、生地に代表される使用素材です。
ミステリーランチは以前からアウトドア向けでもミリタリー用に匹敵するほど強靭極まる素材が大半のモデルに採用されており、生地は分厚くて重く、それがバックパックの重量増に直結していました。
しかし、近年は耐久性があまり必要ではない部分には薄く軽量な素材も「適材適所」で併用され、各部のパーツも小型で丈夫なものに変更されるなど、大型バックパックでも昔ほど重くはなくなっています。
ブリッジャーもその流れを汲み、質実剛健ながらも重量を抑えていました。
山慣れしていない人が手荒に扱ってしまうことも。だからこそ、このタフさは心強い
ブリッジャーに代表される現在のミステリーランチは軽量化を十分に実現しつつも、いまだに他ブランド以上の耐久性を備えています。
だから、登山に慣れない初心者が手荒に使って岩にこすれたり、不適切な使い方をして小さなパーツに大きな負荷がかかったりしても、よほどのことでは破損しません。
むしろビギナーこそ安心して使えるモデルが、現在のミステリーランチ・アウトドアラインのメインストリーム。もちろん経験者がハードに使っても傷みにくいのです。
サッと荷物が取り出せる。それだけで確実にラク!
僕はブリッジャー65を背負って山を歩き続け、使い勝手をしっかりとチェック。明るいうちに山中のテント場へと向かいました。
その後、無事にテント場へ到着。山中で一晩過ごす準備をするためにバックパックから荷物を出していきます。
荷室へのアクセスがワンアクションで済む
このときブリッジャー65がもつ、メインの荷室へ簡単にアクセスできる工夫が役立ちました。
フロントに開閉可能な大きなパネルがあり、バックパック上部以外にここからも荷物の出し入れが可能なのです。
このパネルには2本のファスナーがつけられており、普通に考えれば1本ずつ、計2回引き下げないと開くことができないはず。しかし、このパネルはもっと簡単にワンアクションでオープンし、実に簡単です。
その理由は、上に向かって伸びる2本のファスナーの滑りがよく、しかもそれら2本の間がわずかに狭まっていくように絶妙な位置に縫い付けられているからです。
その工夫により、一方の手をパネルにかけ、もう一方の手をバックパック本体にかけて一気に手を広げると、ほとんど抵抗なく瞬間的にパネルが大きく開きます。
説明するとどうにも小難しくなりますが、やってみると非常に簡単で、直感的に使用できる便利な構造だとわかります。
また、パネルを下げたときにバックパックの荷室が広がりすぎないように、上部はわざわざスライド式の固定パーツで留められるようになっています。こんな細部もぬかりありません。
二重構造のパネルで荷物の仕分けも
なお、このパネルは二重構造。先ほど説明した荷室にアクセスできるパネルの上に、さらにもう1枚、同じようにワンアクションで開くパネルがあり、こちらは巨大なポケットとして機能し、荷物を仕分けできます。
ちなみに、このパネルが開閉するフロントのポケットはブリッジャー65のみの仕様です。ブリッジャー55のほうはパネルではなく、ストレッチ性のポケットが採用されています。じつは容量以外の「65」と「55」の違いは、この部分のみなのです。
大きく開くファスナーで取り出しやすい
メインの荷室にはボトム部分からもアクセス可能。下部の2つのバックルを外すと折り畳まれたファスナーが広がり、その部分を開くだけです。
長いファスナーが折り畳まれていた分だけ開口部は大きくなり、内部のモノがとても取り出しやすいデザインです。
バックパック内のメッシュポケットで大事なものを「定位置」に
バックパック内の収納方法で、もうひとつユニークな部分を紹介しましょう。それは内部の両サイドに設けられたメッシュポケットです。
洋服でいえば内ポケットにあたる存在で、この部分にポケットをもつバックパックはあまりありません。
しかし、これによって大事な荷物を「定位置」に収めることができ、予想以上に重宝しました。
僕はこのとき、左側にファーストエイドキット、右側にバックパックカバーを入れておきましたが、今回は幸い、怪我もしなければ、雨もなし。
とはいえ、大事なものの収納場所が決まっていると行動中の安心感は格段に高まるものです。
トップリッドはヒップバッグに。テント場付近での散策などに
さて、大きく広げたフロントパネルから荷物を取り出し、テントを設営しました。これでこの日の行動は終了です。
こうなると、この日はもうブリッジャーには出番がないと思われるかもしれません。しかし、テントの設営が終わっても、活躍の機会はまだ残されていました。
じつはブリッジャーのリッド(雨蓋)は、取り外して付属のベルトを引き出すと、ヒップバッグに変身!
テント場の周辺で活動するときなどに便利なのです。
山小屋へ受付や買い物に行ったり、近くの山頂へ往復したり、周囲を散策するときなど、非常に重宝します。帰宅前に温泉に行くときなどにも、サブバッグとして活躍しそうなのでした。
背負った荷物を軽く感じさせる工夫が詰まったバックパック
ミステリーランチ代々の名作に与えられてきた「ブリッジャー」の名を冠するだけあり、ブリッジャー2022年バージョンは、やはりすばらしい出来栄えです。
体にフィットして背負った荷物を軽く感じさせるフューチュラヨークシステムや各部のハーネス、バリエーション豊富で使い勝手がいいポケット類や便利な内部へのアクセスシステム、そしてリッドがヒップバッグとして使えるといううれしいアイデアなど、重要ポイントから細かい工夫まで、じつに気が利いていました。
以前からミステリーランチを愛用してきた登山者はもちろん、大型バックパックを初めて購入し、これからテント泊に挑戦しようという初心者も大いに満足するでしょう。僕にとってもブリッジャーは新しい愛用品の一員となったことはいうまでもありません。
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