「探る登山」のおもしろさを教えてくれるのは…
寅吉が師と仰いだ杉山僧正や弟子たちが修行をしていた岩間山(愛宕山)を一緒に歩いてくれたのは、探検家の髙橋大輔さん。
今まで、京都丹後で浦島太郎について調べたり、剱岳に登頂した修験者を探すなど、文献をもとに伝説をひもとく活動をしています。
その活動は、ミレーがさまざまな新しい登山の価値を提供する「PLAY!」サイトの中でも紹介されています。
探求活動としての「探る登山」は、新しい山登りのスタイル。学びや調べをしながら歩くフィールドワークは、さながら大人の自由研究です。
天狗=修験者の行場を探す登山
今回の舞台は、寅吉が壺に入って飛んでいったという愛宕山から近くの難台山。そこは筑波山、加波山と並んで「天狗の修行場」として知られる場所でした。
「探る登山」のコースは、あたご天狗の森(フォレストハウス)〜難台山のピストンコース。途中にある団子石、獅子ヶ鼻、屏風岩などの巨岩ポイントがあり、どうもその辺りが「天狗の修行場」としてあやしい……とか。

岩間十三天狗の修行場であったという伝説
登山口近くのフォレストハウスには「十三天狗」のお面が並びます。岩間十三天狗の伝説とは……
昔、愛宕山が岩間山といわれていた頃、 筑波山、加波山と並んで、ここは天狗の修験道場のひとつでした。 ここには最初5人の天狗が住んでいましたが、 12人となり、やがて長楽寺からひとりの天狗が加わり、 13人の天狗が住むようになり、「十三天狗」と呼ばれるようになりました。
天狗たちは、羽団扇を持って雲にのり、大空を矢よりも早く飛び妖魔を打ち払い、厳しい修行で身につけた術によって重い病人を救ったり、天候を予知して作物の豊凶を占ったりして、人々を幸せにしていました。
このエリアは修験者の修行場でもあったと思います。

動物から変化した天狗。ここに生息している動物たちからヒントを得る
フォレストハウスにいた、地元在住の方々に聞き込みをする髙橋さん。
「仙境異聞」には、十三天狗はワシやトンビ、イノシシやシカ、サルなどから変化したという記述があったので、地元の方にこの土地にはどんな動物がいるのかを聞いていました。
トンビはこの日も見かけましたが、ワシは少し離れた沼から飛来するそう。
登場した動物がその地域に実際に生息しているのかは重要です。

こうやって物語や伝説のウラを取っていく(証拠を見つけていく)のが「探る登山」の醍醐味。
では、山に入って天狗の修行場を探しに行きましょう!
巨岩、火山岩がある場所に、天狗伝説があることが多い
駐車場から数分歩いたところに登山口があり、ここから難台山へ向かいます。
歩き進めていくと少しずつ大きな岩が出てくるように。修行場は大きな岩の下や上にあることが多いそう。
山道に岩が出てきたことで、髙橋さんの目の鋭さが増していきます。
岩があるところに、謎のヒントあり
このコースにはいくつかの巨岩があるのですが、最初に登場した団子岩はホルンフェルスと呼ばれる変成岩。元々ある岩が熱や圧力で変化したものです。
通常の登山では「大きな岩があるね」くらいで通り過ぎてしまうことが多いですが、髙橋さんはじっくり岩の周りを歩き、観察します。
ここは修行場ではなさそうですが、岩の切れ目に仏像や神に見立てた石が置いてあったりすることもあります。

山道を歩いて変化に気づくことが、「探る登山」のキモ
石の面が直線的であれば、城壁に用いられたかもしれないと推測することも。「人工的な痕跡」を見出しながら歩いていくそう。
そんなポイントを素人でも見つけられるのでしょうか?
行程をピストンコースにすると、行きでは目に入らなかったものが帰りに気づくことがありますよ。

獅子ヶ鼻で修行場の痕跡を発見!?
さらに難台山へ向かうと、大きく突き出た獅子ヶ鼻が登場します。花こう岩でマグマが冷えて固まった岩です。
そのため、天狗は火のイメージ、火山やマグマなどとも結びつきがあるのではないかと考えています。ここも火山性の山域なので、天狗エリアとも言えそうですね。

地学的見地からも天狗との関わりを推測していく髙橋さん。
例のごとく、獅子ヶ鼻をぐるっと調べていると、「あっ!」と驚く声が……!
発見!?修験者がいた証拠?

確かに見るとこんな金具が数カ所設置されています。錆びており、かなり古いものです。

岩に近づかないとわからない発見です。登山道をただ歩いていては絶対に目につかないものを見つけた感動!
しかしながら、後日、髙橋さんがクライミングに詳しい方に問い合わせたところ、1960年代に設置されたと考えられるクライミング用のものでした。
とはいえ、「クライマーが登るところに修験者あり」と髙橋さん。
岩影にちょうど座れる場所があったので、ここで瞑想をしたり、休んだりしていただろうと容易に推測ができます。
そして、岩の上もちょうど坐して瞑想するのにちょうど良さそうな場所が。ここが天狗=修験者の修行場だったのは濃厚ではないでしょうか。
天狗が舞い降りた?筑波山や加波山を望む「奥庭」
獅子ヶ鼻からほど近いところに、「天狗の奥庭」という案内板が。進んでいくと、岩が3段ほど重なったこじんまりとした空間が出現。
ここから加波山を望めます。この日は山が雲に隠れてしまっていましたが、天気の良い日には筑波山まで見えたかも知れません。
さらに、飛行機やドローンがない時代には周囲の様子が見渡せるところはかなり重要な場所です。

そしてこの不自然にも思えるポッカリ空いた空間。天狗がヒラリと降り立ったのなら、この場所ではないか?と思わせる場所です。
寅吉が壺に入って連れてこられたのもここだったかもしれない……。『仙境異聞』での証言が少しリアルに感じられました。
「失われたピース」を求めて歩く
この後、大きな屏風岩にも立ち寄りつつ、難台山山頂へ。そして同じ道を引き返してあたご天狗の森へ戻りました。
天狗=修験者の修行場を探す山歩き。物語の舞台を巡れるワクワクは通常の登山は全く違う楽しみです。
そんな物語の「失われたピース」を現地を見ながら埋めていくのが面白いんです。

「探る登山」に欠かせない七つ道具?とは
髙橋さんが「探る登山」をする際に必要なものを教えてもらいました。
地形を調べられるアプリやコンパスなどは通常の登山でも重宝しますが、各種メジャーなど木や岩の大きさを測るものを持参。大きさを調べておくと、他の情報との因果関係がわかる場合があるそうです。
他、地図や資料を挟むボードやルーペなど「調べる」アイテムも持参していくのが「探る登山」スタイルです。
愛宕神社の天狗に挨拶して「探る登山」終了
あたご天狗の森から愛宕神社へ。奥社のさらに奥にある天狗の祠を参拝。十三天狗と同じく13個の祠が立ち並びます。
さらに、ここでも天狗の修行場だと伝わる「石尊(せきそん)」を探すことに。現在は、「石尊」への道には入れないようになっていました。
最後まで天狗にまつわる場所を巡って、今回の「探る登山」は終了。
歩くことでわかることもあれば、更なる謎が出てくることもあるため、髙橋さんは何回か同じ場所を歩くのだそうです。
髙橋さん愛用のミレーのアイテムは…
ミレーのアイテムを愛用している髙橋さん。秋の登山にもぴったりなアイテムを紹介します。
強力な撥水性と通気性。湿気が多い天気でも快適なソフトシェル
独自素材「ブリーズバリヤー™」を使ったソフトシェル。裏側はメッシュ生地になっており、適度な保温効果も。
また、半袖のウエアの上から着るときも汗などでベタつくことなく快適です。
風が強いときでも心強い軽量サーマルジャケット
ベースレイヤーの上から着て風を防ぐプルオーバータイプのジャケット。
ストレッチ性を兼ね備えた3層生地「コールドフロントバリヤー™」を使用し、防風機能と耐水性があり暖かい。
しかし、透湿性もありムレを逃がしてくれます。
ウインド プルーフ イン アンド アウト ジャケットを詳しく見る
起毛生地で保温性抜群。なのに空気も通って快適
薄手の生地を起毛した素材「スルーウォーム™」を採用したライナー。
起毛しているので、着用して動くと暑くなるのでは?と思いきや、通気性が確保されているため、アクティブシーンでも快適です。
日帰り登山だけでなく、普段使いに便利なデイパック
スリムな厚さの20Lからジッパーを開いて8L容量を増やせるデイパック。PCスリーブや随所にあるポケットが便利で、ビジネス用にも使えます。
今回のコースは…
最高点の標高: 536 m
最低点の標高: 247 m
累積標高(上り): 579 m
累積標高(下り): -579 m
今回、歩いたコース地図です。標高差はあまりないものの、アップダウンがあってそれなりに歩きがいのあります。
難台山から足を伸ばし、吾国山まで行くこともできます。
大人の「聖地巡礼」登山。新しいスタイルで登ってみては?
『仙境異聞』という古典をもとに、天狗伝説の謎を追った登山。物語にちなんだ場所でテーマをもって歩くことの魅力を感じました。
物語がより立体的になり、その世界に没入できる大人の「聖地巡礼」。山登りプラスαの楽しみがまた一つ広がりそうです。
Sponsored by ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社