登山に欠かせない防水アイテム。有名なのが「ゴアテックス」
山の天気は急変しやすく、いつ突然雨が降り出してくるかわかりません。そんなとき、サッと羽織れるレインウェアや足を濡らさない登山靴はとても便利です。
このような“防水”をうたう製品といえば「GORE-TEX(以下、ゴアテックス)」をイメージする方も多いのではないでしょうか。
ゴアテックスのこと、知ってる?
そんなゴアテックスのことが気になっているのは、登山をはじめたばかりのAくんとBさん。


ゴアテックスを「みんながおすすめしているから」という理由だけで選ぶのはもったいないですよ。



ということで、突如現れた素材博士に、気になる疑問を一つずつ教えてもらうことにしました。
ゴアテックスって一体なんなの?


機能の秘密はゴアテックスメンブレンにあり!
ゴアテックスの機能を語る上で外せないのが「ゴアテックスメンブレン」と呼ばれるフィルム状の薄い膜。PTFEと呼ばれるフッ素樹脂から作られたこの素材に【防水・透湿・防風】の機能が備わっています。
ゴアテックスメンブレンは、人の目ではわからないほどの微細な孔(あな)が無数に空いた構造になっています。この孔は水滴が通過できないほど小さく、逆に水蒸気の分子は通り抜けれるほどの絶妙なサイズ。
この孔の作用により、雨や雪などの侵入を防ぎ、内側の水蒸気を外側へ逃すというメカニズムが生まれます。さらにクモの巣状に張り巡らされた構造が、空気の流れのかたまりを分散し、風の侵入を防ぐ仕組みになっています。
“層構造”にも種類がある
私たちが普段目にするゴアテックス製品は、いくつかの生地が貼り合わさって出来ています。もっともベーシックなのは、表地と裏地でゴアテックスメンブレンをラミネートした「3層構造(または3レイヤー)」。
このほかにも、裏地の代わりに保護シートやコーティングを施した「2.5層構造」、表地とメンブレンのみの「2層構造」があります。
それぞれの層構造によって、特性にも違いがあるので覚えておきましょう。

なので、耐久性を上げるために表地を、着心地をよくするために裏地を貼り合わせているんです。

どんなところがスゴいの?




ゴアテックスマークは信頼の証!
つまり、ゴアテックス製品に付いているロゴマークは“厳しいテストを通過した証”でもあるということ。
主にテストは以下の3段階で実施されます。
1.マテリアルテスト
生地がゴア社の基準どおりに機能するかを確認する工程。ベースとなる素材を実験室でテストします2.ヒューマンテスト
さまざまな条件に合わせて、人の手で製品を触って確かめ、機能や着心地を検査します3.フィールドテスト
最終テストは実際のフィールド。ゴア社のアスリートや専門家など、多くの人が製品化される前の試作品でテストを実施しています
ウェアのテクノロジーは8種類。それぞれの機能や特徴は?


2022年現在、ゴアテックスウェアのテクノロジーは8種が展開されています。その機能や特徴、向いているアクティビティを種類ごとにみていきましょう!
▼ゴアテックスウェアのテクノロジー▼ | ▼こんな人におすすめ▼ |
---|---|
1.GORE-TEX(ゴアテックス) | バランスの取れたスタンダードを求める人に |
2.GORE-TEX PRO(ゴアテックス プロ) | 過酷な登山に挑戦する人に |
3.GORE-TEX PERFORMANCE(ゴアテックス パフォーマンス) | 長雨の快適性を求める人に |
4.GORE-TEX PACLITE®︎(ゴアテックス パックライト®︎) | 軽量・コンパクト性を求める人に |
5.GORE-TEX PACLITE®︎ PLUS(ゴアテックス パックライト®︎プラス) | 軽く持ち運びしやすく、着心地と耐久性も欲しい人に |
6.GORE-TEX ACTIVE(ゴアテックス アクティブ) | 蒸れにくい快適性を求める人に |
7.GORE-TEX SHAKEDRY™(ゴアテックス シェイクドライ™) | スピードを求める人に |
8.GORE-TEX INFINIUM™ WINDSTOPPER®︎(ゴアテックス インフィニアム™️ウィンドストッパー®︎) | 防水性よりも快適性を優先したい人に |
テクノロジーの種類を知りたいときはタグをチェック!
ちなみに、「この製品はどのテクノロジーを使っているの?」を知りたい場合は、商品タグを見るのが手っ取り早い方法。通常の「GORE-TEX」以外のテクノロジーの場合、写真のようにタグの右下に表記される仕組みになっています。
1.ゴアテックス|汎用性に優れたスタンダードタイプ
ゴアテックスでもっともスタンダードなのが「ゴアテックス」テクノロジー。防護性や耐久性、透湿性などがバランスよく保たれていて、幅広いアクティビティに適しています。
素材の特徴
3層もしくは2層の製品を展開。3層は快適な着心地とともに耐久性が強化され、アウトドアでの長時間の運動をサポート。2層は軽量で汎用性に優れ、街やオフィスでの使用にもおすすめです。
層の間にインサレーション(中綿)が入っているモデルもあり、秋冬などの気温が低い季節に活躍します。
こんなアクティビティにおすすめ
・縦走登山
・トレッキング
・スキー&スノーボード
・ゴルフやキャンプなど、アウトドアレジャー など
こんなアイテムに使われています!
モンベル|レインダンサージャケット
モンベルの人気レインウェア。縫製箇所を極限まで減らす独自のパターンにより、優れた着心地の良さを生み出します。一万円台で購入できるコスパの良さも魅力。
2.ゴアテックス プロ|極限に挑むフラッグシップモデル
本格派の登山者・クライマーにおすすめしたいのが「ゴアテックス プロ」。ゴアテックスの中でもっとも堅牢で耐久性に優れ、極めて優れた透湿性と防水性、防風性を兼ね備えたハイスペック素材です。
非常に頑丈な表地と、耐久性に優れ自在な動きを可能にする裏地を貼り合わせた高強度の3層構造。モデルによっては従来のゴアテックス製品の弱点ともいわれていた「ストレッチ性」も搭載。あらゆる山岳において、最高のパフォーマンスを発揮します。
こんなアクティビティにおすすめ
・登山
・冬季登山
・クライミング
・アイスクライミング
・バックカントリースキー&スノーボード
こんなアイテムに使われています!
アークテリクス アルファSVジャケット
アークテリクスのラインナップでもっとも厳しいコンディションに対応したモデル。圧倒的な堅牢性を持ち合わせ、嵐にも対応する保護性能を実現します。
3.ゴアテックス パフォーマンス|雨に強くてタフ
長引く雨の行動にめっぽう強いのが「ゴアテックス パフォーマンス」。高い防水性と防風性、優れた透湿性と強固なプロテクションを備え、過酷なアドベンチャーをより快適にサポートします。
保水しにくい高密度で織られた表地と、表面の撥水加工の組み合わせにより、高い透湿性を長時間維持。表地は擦れや破れにも強く、タフさを求められるアクティビティに最適です。
生地は3層と2層のタイプを展開。中綿を入れて保温性を持たせたインサレーションモデルもあります。
こんなアクティビティにおすすめ
・登山
・ハイキング
・トレッキング
・バックカントリースキー&スノーボード
こんなアイテムに使われています!
ザ・ノース・フェイス クライムライトジャケット
ザ・ノース・フェイスの定番レインウェア。2022年モデルからはサイズ感が見直され、身幅や丈にゆとりを持たせた設計になりました。3層構造により優れた耐久性とハリ感のある着心地を実現します。
4.ゴアテックス パックライト®︎|持ち運びしやすい軽量コンパクト性が魅力
突然の雨でサッと羽織れるのが「ゴアテックス パックライト®︎」。軽さと持ち運びやすさにコンセプトを置きながらも、悪天に対応する防水性・透湿性・防風性の機能を持ち合わせます。
素材の特徴
裏地に代わり、特殊コーティングを施した2.5層構造が特徴。貼り合わせる生地を減らすことで優れた軽量・コンパクト性を実現します。
こんなアクティビティにおすすめ
・ランニング
・ハイキング
・サイクリング
・ゴルフやフィッシングなどのアウトドアスポーツ全般
こんなアイテムに使われています!
フォックスファイヤー ミズリープジャケット
軽量で透湿性に優れ、立体裁断によりアクティブな動きにも対応します。フードは取り外し可能で、レインウェアはもちろんウィンドブレーカーとしても活躍。落ち着いた風合いでタウンユースにもおすすめです。
5.ゴアテックス パックライト®︎プラス|万が一に役立つ、軽量コンパクトでタフな素材
山の上では、突然悪天に晒されることも少なくありません。そんな不測の事態に活躍するのが「ゴアテックス パックライト®︎プラス」。軽量コンパクトで収納しやすく、耐久性や着心地にも優れているので、ザックからサッと取り出せて雨でも快適に行動できます。
素材の特徴
軽量コンパクトな裏地のない2.5層構造。「ゴアテックス パックライト®︎」の裏面に凹凸状の耐摩耗加工が施されたのが「ゴアテックス パックライト®︎プラス」です。この加工により、さらに肌に付きづらく快適な着心地を実現し、耐久性も向上。内部の滑りも良いため、楽に脱ぎ着ができるのも魅力です。
こんなアクティビティにおすすめ
・登山
・ハイキング
・フィッシングなど
こんなアイテムに使われています!
パタゴニア|カルサイトジャケット
軽量・コンパクトで収納性にも優れ、頑丈な生地が夏山の厳しいコンディションをサポートします。2.5層の生地は裏打ちにより快適な着心地を実現。ヘルメットにも対応するフードが良好な視界を保ちます。
6.ゴアテックス アクティブ|山を爽快に楽しみたい人へ
「ゴアテックス アクティブ」は、悪天候下での激しい運動と、1日で終える活動を想定して開発されたテクノロジー。卓越した軽量性と透湿性を持ち、肌触りもとても快適で、山を素早く、爽快に楽しみたい方におすすめです。
素材の特徴
着心地のよさに重点を置いた、優れた軽量性と透湿性をもつ3層構造。軽量に開発されたゴアテックスメンブレンと13~30デニールの薄い表地、裏地には丸編みニットで作られた柔らかく軽量な「C-KNIT™バッカー」という技術が採用されています。
こんなアクティビティにおすすめ
・登山
・ハイキング
・サイクリング
・ランニング
・クロスカントリースキー
こんなアイテムに使われています!
フォックスファイヤー クレストクライマージャケット
軽量で透湿性の高いレインジャケットです。特殊加工の裏地により、しなやかな着心地を実現。持ち運びを考慮したコンパクトな設計で、スタッフバッグも付属しています。
7.ゴアテックス シェイクドライ™|“走る”に特化した、持続的な撥水性をもつ革新的素材
ゴアテックスの中で、もっとも透湿性が高く軽量性に優れた素材が「ゴアテックス シェイクドライ™」。ゴアテックスメンブレンを表面に採用する革新的な仕組みにより、ほかにはないユニークな機能を実現。
雨のランニングやトレイルラン、サイクリングでの激しい運動をサポートします。
素材の特徴
表地のない、ゴアテックスメンブレンと裏地の2層構造。ゴアテックスメンブレンの水を寄せ付けにくい性質により永続的な撥水性が保持され、ウェアを数回振るだけでほとんどの水をはらうことが可能です。またこの構造により、水蒸気の通り抜けがよく、極めて優れた透湿性を実現します。
一方で耐摩擦性や耐久性は高くないので、重いザックを背負った登山や、擦れる場面が多い場所での使用は注意が必要です。
こんなアクティビティにおすすめ
・ランニング
・トレイルランニング
・サイクリング
こんなアイテムに使われています!
ザ・ノース・フェイス ハイパーエアーGTXフーディ
トレイルランニング向けの軽量な防水ジャケット。トレランパックの上から羽織ることのできる、背中の広い特殊パターンを採用しています。ジッパーやポケットの開閉は、走っている最中でもスムーズな操作を実現。
8.ゴアテックス インフィニアム™ウィンドストッパー®︎|街も、アウトドアも、冷たい風をシャットアウト
白いロゴマークが目印の「ゴアテックスインフィニアム™️ウィンドストッパー®︎」は、ゴアテックスの代名詞とも言える“防水性”よりも、ドライで快適な着心地を優先した非防水のシリーズ。
防風性と透湿性に優れた、アクティブに使い込める素材。耐水性も備えています。冷たい風が吹く日や小雨の日、街でも山でも、快適な活動をサポート。
薄い保護膜に軽量の生地を重ねることで、高い防護性を実現した3層もしくは2層構造の素材。メンブレンテクノロジーにより、汗の水蒸気を素早く排出。風を防ぐことで体感温度の低下が抑制され、低温下でも快適な行動が可能となります。
こんなアクティビティにおすすめ
・ライフスタイル
・ビジネス
・登山
・ハイキング
・ランニング
・サイクリング
・フィッシング
・スキー&スノーボード
こんなアイテムに使われています!
モンベル|バーサライトジャケット
極薄の軽量・コンパクトなレインウェア。万全の防風性に加え、高い透湿性と耐久撥水性を兼ね備えています。少しでも荷物を減らしたい登山やスピードハイクにおすすめ。
フットウェア&グローブのテクノロジーもあり!

フットウェアやグローブにはどういったものがあるんですか?
フットウェアとグローブの素材もサクッと紹介しますね。

ゴアテックスフットウェアのテクノロジー
ゴアテックスフットウェアテクノロジーは以下の3種類があります。
◆ゴアテックス フットウェア
あらゆるシーンで足を蒸れから解放し快適さを実現します◆ゴアテックス インビシブルフィット フットウェア
心地よいフィット感が特徴。ランニングや日常使いにおすすめ◆ゴアテックス サラウンド®︎ フットウェア
もっとも透湿性に優れたゴアテックスフットウェア。足の全方向から水の侵入を防ぎ、1日中足をドライに保ちます

ゴアテックスグローブのテクノロジー
ゴアテックスグローブテクノロジーは大きく3種類に分類されます。
◆ゴアテックス グローブ
ウィンタースポーツやアウトドアなど、幅広いアクティビティに対応。さらに、保温性に優れた「GORE-TEX PLUS WARM」、透湿性の高い「GORE-TEX ACTIVE」、手の操作性を高めた「GORE-TEX 2in1」などに細分化されています◆ゴアテックス インフィニアム™️ ウィンドストッパー®︎
防風性と透湿性に優れ、激しいアクティビティでも手がベタつかず、温かく快適な状態を保ちます◆ゴアテックス インフィニアム™️ ストレッチ グローブ
フィット感がよく操作性に優れ、グローブを付けたままストレスのないデザインに設計されています

ゴアテックスで気を付けることは?

定期的なメンテナンスが必要
ゴアテックスを長持ちさせる秘訣はどんどん洗濯すること。使用後は汗や皮脂、泥などが付着したままになっているので、そのままの状態では機能が低下し寿命も短くなってしまいます。
下記にてメンテナンス方法を紹介していますので、参考にしてみてください。
火の近くでの使用は注意
機能面で死角なしのゴアテックスですが、火には弱いので注意。焚き火などの火の粉がウェアに飛ぶと、あっという間に焦げ穴があいてしまいます。
キャンプなどで使用する際は、場面に応じて着脱するなど、取り扱いに気をつけましょう。
買い替えのタイミングは?
ゴアテックスを買い替えるタイミングは「シームテープが剥がれたら」。シームテープを貼り直せばまだまだ使えないこともないですが、生地に汚れが染みこんでいる可能性があり、またすぐに剥がれてしまうこともあります。
シームテープは長時間濡れたままだったり、皮脂が残っていたりすると剥がれやすくなってしまうので、そういった意味でも洗濯が大切です。
ゴアテックスで登山をもっと快適に!


ゴアテックスで、登山をもっと快適に楽しんでみてください!

取材協力:日本ゴア合同会社
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