小さい秋見つけた!高原に咲く「マツムシソウ」は秋の訪れを告げる風流な花

2022/09/12 更新

高山のお花畑が百花繚乱のピークを過ぎた8月下旬、「マツムシソウ」は薄い紫色の花を咲かせます。名前から想像する姿とは違う柔らかな花は、高原に秋の訪れを告げる高山植物。残暑厳しい都会を離れ、涼しい風が吹く高原に小さい秋を見つけに行きます。

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KaoA

神奈川県在住。登山歴は十数年。 夏は登って冬は滑って…まだまだ山の楽しみは尽きません。 忙しくても山には行きたい!日帰りでも充実の山遊びを日々計画しています。 好きなエリアは八ヶ岳。トレーニングは丹沢大倉尾根。冬は白馬や群馬に遠征します。

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アイキャッチ画像出典:PIXTA

一輪だけ咲くユニークな形状の花、マツムシソウはどんな花?

マツムシソウ
出典:PIXTA(マツムシソウ)
マツムシソウは、スイカズラ科(マツムシソウ科)マツムシソウ属の越年草。北海道から九州まで全国に分布する日本の固有種で、山地の草原に自生しています。
開花時期は8月から10月、夏の終わりから秋にかけて見頃を迎え、険しい登山ではなく高原散策でも花を楽しめます。

上品な薄い青紫色の花びらは儚げな美しさがあり、吹く風に揺れる景色は情緒たっぷり。なかなか見分けが難しい高山植物ですが、マツムシソウの花はよく見ると個性的なつくりをしているので、特徴が分かればすぐに見つけられそうです。

花が咲いていなくても楽しめるマツムシソウ

マツムシソウ
出典:PIXTA(マツムシソウ)
花の高さは60~90センチ。茎の先に直径4センチほどの花を1輪咲かせます。
花の中心は菊のような筒状の小花が半球状に集まり、おしべが飛び出た立体的な形状。周りに一重の花びらがフリルのように囲んでいます。

さらに、咲く前の蕾と花が落ちた後も個性的な姿に。

マツムシソウの蕾
出典:PIXTA(マツムシソウの蕾)
上品な雰囲気の花を咲かせるマツムシソウですが、蕾は、球体がぎゅっと集まっていて幼い魅力があります。
可憐な花とは雰囲気が違い、なんだか可愛らしいですね。

花びらが落ちると…

マツムシソウの花のあと
出典:PIXTA(花びらが落ちたマツムシソウ)
そして、花のあとはコロンと丸い、ねぎぼうずのような姿に変化。ここから種を作り始めます。
花が咲いている間だけでなく咲く前~花が散ったあとまで、それぞれの時期でしか見れない特徴があるので、花の時季とずれてしまっても観賞を楽しめそうですね。

ところで…きれいな花なのに、どうしてマツムシ?

鈴虫のイラスト
出典:PIXTA
マツムシソウは美しい花ですが、名前の印象は野性的。どうしてこのような名前になったのでしょうか。
その由来は…

マツムシの鳴く頃に

鈴虫のイラスト
出典:PIXTA
マツムシとは鈴虫のこと。
鈴虫の鳴く頃に花が咲くことから、この名前が付いたと言われています(諸説あり)。鈴虫といえば秋を象徴する虫。由来が分かると風情を感じますね。

そして、マツムシソウの花言葉は、「風情・魅力」。季節を感じる花に相応しい、情緒あふれる花言葉です。

マツムシソウ、漢字で書くと「松虫草」

秋の高原
出典:PIXTA
「松虫草」は、俳句の世界では秋の季語。秋を象徴する虫の名前が付いた、秋の訪れを告げる花です。
心地よい風が吹く高原で、一句詠んではいかがでしょうか。

マツムシソウのよもやま話

マツムシソウ
出典:PIXTA(マツムシソウ)
花も名前の由来も魅力的なマツムシソウ。
そんなマツムシソウの、仲間の品種や知っておくべき現在の生育状況をまとめました。

園芸品種「スカビオサ」

スカビオサ
出典:PIXTA(スカビオサ)
マツムシソウは日本の固有種ですが、外来種の「セイヨウマツムシソウ」はアジアやアフリカ、ヨーロッパなど世界中に分布。
外来種を改良した園芸品種は「スカビオサ」と呼ばれ、切り花や鉢植え、ガーデニングでも親しまれています。

ブーケやアレンジメントを華やかに彩るスカビオサは色もとりどり、秋に限らず春に咲く品種もあるなど、その種類は豊富。
高原に行けない時は、街のフラワーショップを覗いてみるのも楽しそうです。

高山には変種の「タカネマツムシソウ」が

タカネマツムシソウ
出典:PIXTA(タカネマツムシソウ)
マツムシソウの高山型変種の「タカネマツムシソウ」は、高山の尾根や風衡地など基本種のマツムシソウよりも厳しい環境に生息。こちらは本格登山で出合える高山植物です。別名「ミヤママツムシソウ」。

基本種に比べると茎の高さが低く、30~35センチ程。花の大きさはほぼ同じで、色は濃い紫色。花だけだとかなり似ているので、マツムシソウと見分けるには総合的な判断が必要です。

自生する花は減少傾向…レッドリストに載る希少種に

絶滅危惧のイラスト
出典:PIXTA
レッドリストとは、絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト。マツムシソウは32の都道府県でリストに入り、その中の4県では絶滅種とされています。
全国的な草地の減少が原因のようですが、歴史のある美しい花、長く楽しめることを願います。

夏の終わりに、情緒あふれる植物観賞を!

マツムシソウ
出典:PIXTA(マツムシソウ)
風情があり魅力的なマツムシソウの花。これからは見られる場所が少なくなってしまうかもしれません。夏の余韻にひたりつつ、秋を感じられる花を見に行きたくなりませんか?
手軽に行ける、主な観賞地を紹介します。

車山高原~霧ヶ峰

車山
出典:PIXTA(車山高原)
広大な車山高原に揺れるマツムシソウは秋の風物詩。
車山から霧ヶ峰は、散策路も整備されているのでビーナスラインドライブのついでに鑑賞できます。
見ごろは8月下旬。

美ヶ原高原

美ヶ原高原
出典:PIXTA(美ヶ原高原)
美ヶ原も手軽に散策が出来る高原。
美ヶ原高原美術館の屋外展示場でも群生を見られます。
見ごろは8月から9月。

入笠山

入笠山
出典:PIXTA(入笠山)
富士見パノラマリゾートのゴンドラを使えばあっという間に高山へ。
山頂まで登らなくてもお花畑を歩けますよ。
見ごろは8月。

飯盛山

飯盛山
出典:PIXTA(飯盛山)
最高の八ヶ岳ビューを楽しめる飯盛山も、周辺は高山植物の名所。
牧歌的な雰囲気で、のどかな登山を楽しめます。
見ごろは8月~9月。

マツムシソウ
出典:PIXTA(マツムシソウ)
季節の移ろいを感じるのも登山の魅力のひとつ。吹く風を体感し、咲く花を愛で、日本の自然をたっぷり感じたいですね。
「マツムシソウ」は、山が紅葉に色づく前、高原にさわやかな風が吹く頃に咲く美しい花。
暑かった夏の終わりに、小さい秋を見つけに行きませんか。


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