毒ヘビに咬まれないための対策
露出を避けた服装

山に入る際には、しっかりした靴とゆったりした長ズボンを着用するようにしましょう。ヘビに咬まれた時のために、ズボンの下にスパッツなどを着用するのも有効。また、毒牙の長さは約4mmほどあるため、登山靴の厚さが4mm以上あるものを履いているだけで、咬傷事故を防げます。
「しっかりと靴をはく」だけで、大きな事故予防にもなるでしょう。
むやみに登山道以外に踏み込まない

不用意に登山道以外の藪の中や、草むらに踏み込まないように注意してください。茂みなどのヘビがいそうな場所を通過する際は、心配であれば棒などで前を払いながら進むのも有効な手段でしょう。
日中であれば、日当たりの良いところに出現する傾向がありますが、密度が高く生息していることは稀です。
実際に出会ってしまったら

もしヘビに偶然出会ってしまったら、まずこちらからは絶対に近づかないようにしてください。興味本位でちょっかいを出して咬まれるケースも多いので、決して手を出さないように。基本的に向こうから襲ってくることはありません。
マムシの攻撃範囲は全長の半分程度なので、長くても30cm程度。ヤマカガシでは、全長の2/3程度までが攻撃範囲になりますが、全長が120cmくらいのものが多いので、2/3で計算しても80cm程度になります。
ヘビはジャンプもしないので、長くみても1.5mほど離れていれば被害を受けることはないでしょう。
毒ヘビに咬まれた時の応急処置
万が一ヘビに咬まれてしまったら、再度咬まれないようにすぐにヘビから離れてください。その上で、無害のヘビか、もしくは毒ヘビのマムシかヤマカガシかを判断してください。ヘビの種類は、病院で治療を受けるにあたっても大切な項目となります。
流水で患部を洗う

咬まれた患部の毒を少しでも出すように、流水をかけながら患部を絞るようにして洗いましょう。
マムシに咬まれた場合、30分ほどで大きく腫れ上がるので、指輪や腕時計などの締め付けているものがある場合は、すみやかに外すようにしてください。
一刻も早く病院へ

毒ヘビに咬まれた場合は一刻を争う状況なので、すぐさま下山を開始し、急いで病院を受診してください。以前は「毒蛇に咬まれたら安静にして病院へ」が常識でしたが、安静にする必要性がないことがわかり、対処法が見直されました。
登山中は、下山しきれない場合など、様々な状況が考えられますが、救出してもらいやすい位置までいくのか、電波が届く位置に行くのかなど、今どのようにしたら助かる可能性が最も高いかを考え行動する必要があります。
登山ではエスケープルートを設定しますが、毒ヘビ対策においてもこうした登山の基本計画は重要。
安全に登山するために毒ヘビのことを学ぼう

登山中にもしもヘビに遭遇してしまったら…とっさのことできっとパニックになってしまうことでしょう。当然、咬まれる被害が発生することもゼロではありません。事前にヘビの知識を得てから登山することで、自分や仲間の大切な命を守ることができます。
まずは、毒ヘビであるマムシとヤマカガシの2種だけでも、事前に学ぶことをおすすめします。
今回教えていただいたのはこの方
\教えてくれた専門家/

一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍に『すごく危険な毒せいぶつ図鑑』(世界文化社)。
著書に、『身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本』(明日香出版社)など。
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