大人気ブランド<パタゴニア>から新作ウェアが登場!
夏から秋冬に向かう端境期のシーズンは、新製品の話題で物欲がビシビシ刺激される季節。年末に支給されるボーナスで何を買おうか、品定めに余念がない人も多いのではないでしょうか。
さまざまなブランドから多くの新着情報が発信されるなか、カジュアルシーンにも多くのファンを持つ大人気アウトドアブランド<パタゴニア>からも、気になるニューモデルの便りが届きました。
漁網から生まれた「アルプライト・ダウン・ジャケット」
2021年秋冬にリリースされた「アルプライト・ダウン・ジャケット」は、800フィルパワーのダウンを使い、270g(Mサイズ)という軽さの中に保温性能をバランス良く備える注目作。シェルと裏地にも特長があり、廃棄予定だった漁網を100%再利用して作られている、環境に優しいエコなウェアでもあります。
発色のいいカラー、無駄のないシルエット、引き込まれるようなシンプルなデザイン。どれを取っても、これがゴミから作られたなんて想像できないですよね。
環境に配慮したこだわりはほかにもあり、「強制給餌や生きたまま羽毛が採取されていないことが保証されたダウンを使う」「過フッ素化合物を使わない耐久撥水加工を施す」など、長年環境問題の解決に取り組むパタゴニアらしいウェアとなっています。
そして、パタゴニアが開発したとあれば、品質の高さは確かなはず。軽くてコンパクトに収納できて、しかも暖かい。そんな理想を絵に描いたような優秀なダウンジャケットだと予想できます。
でも12月以降、気温はどんどん下がる一方。「ライトダウン」という商品名からも分かるように、あえてボリュームを抑えたこの超軽量ジャケットに、とびきり高い保温性があるとは思えません。アルプライト・ダウン・ジャケットの出番は、これからの季節にあるのでしょうか? もしかしたら「冬は寒すぎて使えない」なんてこともあり得るかも……。
気温10度以下のバリエーションルートで試してみた!
気になる保温性能を確かめてみようと、長野県の川上村にある天狗山でアルプライト・ダウン・ジャケットを使ってみました。
今回登ったのは、「天狗山ダイレクト」と名付けられたアルパインクライミングの入門ルート。写真の山頂から真っ直ぐ下に伸びて、途中で右下に折れる尾根のところです。
登山口に向かう夜明けの道中、道路脇に表示されていた外気温表示はマイナス3度。それから1時間後に登山口に到着したとはいえ、先ほどの場所よりも標高は高いので、スタート時の気温は0度に近かったと思われます。
意外や意外。ほどよい暖かさで快適に行動できた!

クライミング中はずっと動き続けるわけではありません。仲間が先に登っているときは、写真のように止まってロープで安全を確保します。この状態だと体を動かせないので内側から熱を作ることができません。
最初、アルプライト・ダウン・ジャケットだけだと寒いかなと思っていました。でも、蓋を開けてみると、これが意外。予想以上に保温性があって、けっこう強い風が吹いていたのにガタガタ震えるほど体温が下がることはありませんでした。
そうして、気が付けばアルプライト・ダウン・ジャケットを着たまま山頂に到着。風が収まり日差しもあったのですが、ダウンジャケットを脱ぐと寒いので、やっぱり着たまま休憩。
そして下山。下り坂なのでそんなに暑くならないだろうと思い、アルプライト・ダウン・ジャケットを着たまま歩き始めたら、案の定、一度も脱がずに登山口に到着しました。
ちなみに行動中の気温は測っていないので正確には分からないのですが、帰宅途中、標高1,000mの地点が10度であることを確認。登山口の標高が約1,600m以上なので、山の中は10度以下であったことは明らかです。
これは日帰りの山行にぴったりでは?
リアルな状況で着用してみて、こんな感想を抱きました。
「アルプライト・ダウン・ジャケットは、秋冬シーズンの日帰り登山にちょうどいい保温着では?」
同じ800フィルパワーでも、アルプライト・ダウン・ジャケットよりもダウン量が多く、保温性が高い製品はたくさんあります。でも、それらを着たままでは、さすがに暑くて行動できません。「じゃあ、脱げばいいじゃないか!」とツッコまれそうですが、それだと今度は寒いと感じるときも、状況によってはあると思うんです。それと、中綿量が多いジャケットって単純に重たいですよね。
そこで、アルプライト・ダウン・ジャケットが優秀だなと感じたのは、関心するほど軽いのに、休憩時にはしっかりと体を暖めつつ、適度な保温性で行動中も着続けられる点。つまり、荷物にならず、保温着でありつつ行動着としても活躍する、便利なマルチプレーヤーだということです。
ただし、日帰りという条件付き。それは、さすがに夜の寒さから体を守るには物足りなさが否めないから。氷点下になる状況では、もっと暖かいウェアが欲しくなると思います。
同様に、雪が多い山でも冷気を凌ぐのは難しいはずなので、そういったフィールドで登山を楽しむ場合は、より保温性の高いジャケットを用意しましょう。
後から知った「アルプライト・ダウン・ジャケット」の開発背景
実はまだ記事を書くつもりがなかったので、山行中に知っていたのは、使われているダウンやシェルの素材情報のみでした。帰宅後、どんな特徴があるのかパタゴニアの公式HPで調べてみると、なんでもこの商品、ダウンウェアの可能性を再考する「アルパイン・ダウンラボ」という新しいカテゴリーから誕生した、アルパインクライミングに特化したウェアなのだとか。しかも、中間着(=行動着)としてもアウターとしても機能するように計算されているらしいのです。
つまり、天狗山で使ってみて、期せずしてその本質を実感できたということ。これにはちょっと驚きました。