プロ目線で何を選ぶ? SHOPスタッフが愛用する山道具【カモシカスポーツ編】
山道具の買い物でいつもお世話になる専門店のSHOPスタッフ。お店では商品を勧める彼ら彼女らも、プライベートでは商品を買う側に回ります。知識豊富なスタッフたちは、一体どんな山道具を購入するのか? 取材で分かったお気に入りアイテムと愛用ポイントを紹介します!
2022/11/09 更新
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編集者
YAMA HACK編集部
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制作者
山岳ライター
吉澤英晃
群馬県出身。大学時代に所属した探検部で登山を開始。以降、沢登り、クライミング、雪山、アイスクライミング、山スキーなど、オールジャンルで山を楽しむ。登山用品の営業職を経て、現在はフリーの編集・ライターとして活動中。
吉澤英晃のプロフィール
アイキャッチ撮影:筆者
どのアイテムがぶっちゃけお気に入り? 愛用の山道具を教えてください!

撮影:筆者
日々、山道具に囲まれた店頭に立ち、的確なアドバイスで訪れるお客様の悩みに応える専門店のSHOPスタッフたち。豊富な知識を持つ彼ら彼女たちは、プライベートではどんなアイテムを購入し、普段の山行で愛用しているのでしょうか?
気になる愛用品をインタビューして、オススメポイントを聞き出す当企画。さっそく、お気に入りの山道具を教えてもらうべく、専門店を訪れました!
第二弾は<カモシカスポーツ>山の店・本店の前田 工さんにインタビュー!

撮影:筆者
カモシカスポーツ 山の店・本店 前田 工(たくみ)さん
1978年生まれ。愛知県出身。大学卒業後は他業界の仕事に10年ほど携わり、30代半ばを過ぎてから趣味が高じてアウトドア業界に転職。無積雪期は沢登りとクライミングを楽しむ一方、雪が降ると目の色が変わるバックカントリースキーヤーでもある
ズバリ、プライベートで愛用している山道具は?

ぼくは沢登りが大好きで、今年も12本くらい沢を遡行しました。そういった山行で愛用しているのが、この<ミゾー>の「チコ」です。
けっこうマニアックな道具を愛用しているのですね(笑)。なんのために使う道具か分からない読者のために、まずはどういったアイテムなのか説明をお願いします。
これは沢登りで滝などを登るときやクライミングで、岩壁の途中に滑落を防ぐためのピトン(※1)を打つための道具です。お店では持ち手が短いものを“ハンマー”、長いものを“バイル”と呼んでいて、沢登りに向いた商品をいくつか扱っています。
ハンマーやバイルは土や草の斜面を登るとき、打撃面の反対側にある尖った部分を突き刺して手がかりにすることもあります。
ハンマーやバイルには“沢ヤの魂”的なカッコ良さがあるかなと思っていて、“俺の相棒だよね!”みたいな愛着感がありますね。
※1:岩溝に打ち込むクサビのような登攀具
【愛用ポイント①】共に突破口を切り開く唯一無二の存在

提供:前田 工さん/沢登りのハイライト、大滝登攀を収めた一枚
ハンマーやバイルって、クライミングや沢登りじゃないとなかなか使わないじゃないですか。そして、これがあるから難しいルートも突破できるっていう感覚があります。
ピトンを打ち込んで安全を確保するとか、手がかりにして急斜面を登るとか、そういうシビアな場面で使うことが多いので、命を預けるみたいな、頼りにしている部分が大きいです。
※2:沢登りに精通した人のこと。”山屋”の沢登りバージョン

撮影:筆者/打撃面に浮かぶ無数の凹凸が過酷な登攀を物語る
難しい沢ではハンマーやバイルがないと困りますよね。ロープを出すほどじゃないけど急な斜面を登るときはハンマーやバイルだけを使って手がかりにすることもあるので、遡行中の使用頻度は多いです。
それと、かたち的にもカッコ良いというか、武器っぽいじゃないですか。そういうところもいいですよね。
【愛用ポイント②】沢登りに向いたハンマーの中で最軽量!

撮影:筆者
沢登りに向いたハンマーはほかにも種類がありますよね。どうしてチコを選んだんですか?
理由のひとつは軽さです。チコは
いま市場にある沢登りに向いたハンマーの中で最軽量なんです。
同じミゾーのハンマーだと「ロカ」というモデルが465gなのに対して、チコだと310gしかありません。
軽いとピトンを打つときに、腕力が必要になるのでは?
それは重さと反比例するものなので、仕方ない部分ではありますよね。
たまにピトンを打つリス(岩の溝)が狭くて硬いと感じるときは打つ回数が増えているかもなって思うこともありますけど、何もないところに穴をうがつわけではないので、大体の場合はそんなに苦労しないですね。
【愛用ポイント③】短いサイズが携行性に優れる

撮影:筆者/左が愛用の「チコ」(全長27.5cm)。右は同じミゾーの「明星」(全長38cm)
同じ用途の商品では、持ち手の長いバイルもありますね。
バイルはスパイク(石突き)を使うのにすごく適した形になっていて、スパイクの先端が尖っているので、ここを突き刺して杖のように使いやすいです。ただ、腰のホルスターに付けて斜面を登るときは邪魔だなと感じることもありますよね。
逆に短いハンマーだと、腰に付けっぱなしにしても足さばきの妨げにならない良さがあります。
最初は両方持っていたんですけど、長いやつは使わないときに邪魔なのでバックパックに取り付けていたんです。
ただ、必要なときにいちいち取り外すのが面倒になってしまって。やっぱり腰に付けっぱなしにできる短い方がいいなと思うようになりました。
【愛用ポイント④】末広がりのグリップで振り下ろしやすい

撮影:筆者
あと細かい特長ですが、チコのグリップは下に向かって膨らんだ形状をしているので、ピトンを打つときにすっぽ抜けづらいというか、とても握りやすいですね。
細すぎず太すぎず、ちょうどいい大きさも握ったときにしっくりきます。
余談ですけど、チコは家族でキャンプに出かけてテントのペグを打つときにも役立っています。撤収するときは先端の尖っている方でペグを抜けるので、すごく便利です(笑)。
ミゾー チコ
【材質】
ヘッド:ステンレス
シャフト:クロモリ鋼+メッキ
グリップ:熱収縮ラバー
【長さ】
27.5cm
【重量】
310g
カモシカスポーツ| ミゾー チコ
お店のイチオシも聞いてみた! これが今季の注目アイテム

撮影:筆者/サイズ比較用のスマートフォンはiphone se2
せっかくなので、ぜひお店のイチオシも教えてください!
自立型ツエルトとして販売している、シングルウォールのヘリテイジ「クロスオーバードーム2G」がオススメです。
“自立型ツエルト”とは聞き慣れないワードです。いわゆる山岳用テントとは違うんですか?
山岳用テントとはまったくの別物です。山岳用テントと間違えて購入しないように注意してください。
クロスオーバードーム2Gは軽さがメリットで、2人用でも630gしかありません(ガイラインは別売)。
でも、確実に使う環境を選びます。この雨の中でシングルウォールを立てたらどうなるんだろう、この風の中で薄い生地と細いポールがどこまで耐えられるのか、なんとなく想像できる人に向いていますね。
トレイルランニングで使う、クライミングの遠征で使うなど、いちばん最初に買うものではなくて、一般的な山岳用テントを持っていて、さらに荷物の軽量化を図りたい方にピッタリかなと思います。

提供:カモシカスポーツ/入口があるのは長辺側。フライシートがないシングルウォールになる
2Gはセカンドジェネレーションの意味で、生地に使われている糸の太さが一世代目から細くなり、15デニールから10デニールになりました。
ただ、耐水圧は1.5倍、透湿性は1.9倍、引き裂き強度も上がっているんです。なので、自立型ツエルトと呼ばれる同等の商品のなかでも、現代的に味付けされたモデルと言えます。

撮影:筆者/縦糸に特殊な強力糸を使うことで引き裂き強度を向上
とくに
透湿性は“空気が通気する”と言えるほど良くなっています。
以前は本体をたたむときに空気をはらんでタコみたいになっていたのが、2Gになってからは空気が生地からスーッと抜けていくのが分かるほど。おかげで撤収もしやくすなりました。
ヘリテイジ クロスオーバードーム2G(1人用)
【素材】
パネル、フロア:10dnナイロン高強度ミニリップストップ・透湿防水PUコーティング(日本製)
ポールスリーブ:10dnナイロン高強度ミニリップストップ・ACコーティング(日本製)
ポール:アルミ合金中空ポール(7001-T6)7.5mm径ショックコード内蔵
【重量】
630g(本体、ポール、スタッフバッグ込)
カモシカスポーツ|ヘリテイジ クロスオーバードーム2G(1人用)
ヘリテイジ クロスオーバードーム2G(2人用)
【素材】
パネル、フロア:10dnナイロン高強度ミニリップストップ・透湿防水PUコーティング(日本製)
ポールスリーブ:10dnナイロン高強度ミニリップストップ・ACコーティング(日本製)
ポール:アルミ合金中空ポール(7001-T6)7.5mm径ショックコード内蔵
【重量】
690g(本体、ポール、スタッフバッグ込)
カモシカスポーツ|ヘリテイジ クロスオーバードーム2G(2人用)相棒と呼べる山道具がうらやましい! 次の取材に乞うご期待
第二弾の愛用品は、沢登りで使うマニアックなギア。数々の登攀を共にしてきたという話から、愛用品がまさに魂が宿る相棒ということが伝わったかと思います。こういう思い入れの深い山道具を持っているって、すごく幸せなことですよね。
今度はどんな愛用品と出会えるのか、次回もぜひご期待ください!
▼第一弾、好日山荘スタッフを直撃!
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