毒液を分泌!アオカミキリモドキとは
登山中に出会う可能性のある危険な昆虫のひとつとして、今回は「アオカミキリモドキ」をご紹介します。特徴や生態を知り、接触した際の対処や応急処置の方法を学びましょう。
アオカミキリモドキってどんな虫?
アオカミキリモドキは、体長が10〜16mmほどの大きさで、頭部や脚が明るいオレンジ色をしています。前翅は青緑色に輝やき、細くて長い触覚を持つ甲虫の仲間です。他の甲虫と違って体が柔らかく、飛び出たように見える黒い複眼が特徴。カミキリモドキは、学説にもよりますが日本で50~60種が知られ、その一部が毒を持つといわれています。
誤ってその体液に触れると、火傷の様な皮膚炎を引き起こすことから「ヤケドムシ」とも呼ばれる衛生害虫です。寿命は、はっきりしていませんが1〜2ヶ月程度といわれています。
体から出る体液に要注意
アオカミキリモドキを誤って潰したり、つまむなどの刺激を加えると、体から毒を含んだ透明の液体を分泌。脚の節や背面を覆う前翅など、体の各所から毒液が分泌され、皮膚に付着するとその毒成分によって火傷に似た症状である「水疱性皮膚炎」を引き起こします。
くれぐれも、接触しないように注意する必要がある昆虫です。
アオカミキリとは別物
「カミキリモドキ」の名称のもとになったカミキリムシの中に、「アオカミキリ」という昆虫もいます(写真は「アカアシオオアオカミキリ」)。こちらも鮮やかな緑色をしていますが、体長も20〜30mmとアオカミキリモドキと比べると倍ほど大きいので、両者を間違えることはあまりないでしょう。
毒成分「カンタリジン」の被害
アオカミキリモドキの毒は「カンタリジン」という有機化合物で、皮膚に触れるととても危険。ちなみに、カンタリジンを持っているのは、ツチハンミョウ科とカミキリモドキ科の昆虫で、天敵の小鳥に食べられないよう、体内に毒を持っていると考えられています。
アオカミキリモドキは、卵、幼虫、さなぎ、成虫の全ての過程において毒を持ち、襲ってくる外敵から自分の身を守っているのです。
毒液が引き起こす怖い被害
カンタリジンが皮膚に触れると、数時間から半日くらいで淡い「紅斑」が現れます。ヒリヒリとした痛みを伴って、水ぶくれが生じることもあり、その見た目が火傷とよく似ています。程度にもよりますが、一般的に完治するまでには10日~2週間ほどかかります。
また、被害を広げないためにも、カンタリジンが付いた手で、他の場所を触らないように注意しましょう。
アオカミキリモドキの行動傾向
灯りに集まる習性あり
アオカミキリモドキは、全国の平地から山地まで多くの場所に生息しています。この虫は、日中でも花などで見つかることもありますが、基本的には夜のほうが活動的になり、灯りに集まってくる習性があります。
登山時は、山小屋の電灯やテント内の灯り、懐中電灯などにも寄ってくることがあるので、接触しないよう注意が必要です。
また、自然環境の多い場所に隣接した街中では、街灯や自動販売機、コンビニなどの身近な灯りにも集まっていることがあるので、できるだけ覚えておきたい昆虫です。
活動時期と遭遇しやすい時間帯
日中に不活発なアオカミキリモドキは、昼間は木の葉の裏などで休んでいますが、夕方頃になってくると花粉を食べに花の周りで活動し始めます。
成虫に関しては、5〜9月の初夏から真夏にかけて多く出現。過去の研究では、25~30℃程度の気温で、19~21時頃が最も灯火に集まりやすい傾向があったことが確認されています。
アオカミキリモドキに触るべからず
もしも、アオカミキリモドキが服などに止まってしまったら、体液が付かないように「潰さない!刺激しない!」ことを必ず守り、ティッシュ等でそっと取り除いてください。または、フッと息を吹きかることによって、吹き飛ばすことも有効でしょう。
とにかく、アオカミキリモドキの体液が皮膚につかない触れないことが肝心。
見つけても消して触れないで
危険な虫であることは事実ですが、アオカミキリモドキ自体が、私たちを攻撃してくることは基本的にありません。そのため、知っているだけで被害を防ぐことができる虫です。
触覚も長く、見た目がカミキリムシに似ているところもありますが、興味本位で触ることだけはやめてください。また、光に向かって飛んでくる習性があるため、特に懐中電灯などを使用している時も注意が必要です。
毒液に接触した時の応急処置
アオカミキリモドキの体液が、皮膚に付いてしまった際の応急処置手順をお伝えします。
患部を水洗い
もし、アオカミキリモドキの体液が皮膚に付いてしまったら、すぐに患部を流水でよく洗ってください。毒液を素早くしっかり洗い流すことが、その後の回復にも影響してきます。
洗う際は、さっと流す程度ではなく、時間をかけてしっかり洗ってあげてください。
ステロイド軟膏を塗布
市販薬としては虫刺され用のステロイド軟膏を利用することができます。毒液をよく水洗いした後は、火傷の時と同じように軟膏を患部に塗ることで、症状の緩和が期待できます。
重い症状の場合は病院へ
皮膚についた体液で命の危険にさらされることはありませんが、水ぶくれや皮膚炎症状が重い場合は、無理せずに病院を受診することをおすすめします。
痛みやかゆみにまかせて患部をいじったり掻いたりしてしまうと、症状の悪化や化膿などの二次的な被害につながるおそれもあるので、無理しないほうが賢明です。
灯りに飛来するアオカミキリモドキに要注意
カンタリジンを持つアオカミキリモドキは、全国に広く分布しており、自然の多いところでは誰もが出遭う可能性のある虫です。だからこそ、しっかり覚えておきたい昆虫のひとつといえるでしょう。
「灯りに寄ってきたとしても、アオカミキリモドキには触れない」。
正しく知って、被害を防いでいきましょう。