山好き鞄職人が理想をカタチにした〈Vlaminck〉のバックパックから見る、ガレージブランドの底力とは?

2021/11/22 更新

昨今、ますます個性豊かなガレージブランドが生まれています。そんな中でひときわ目立つ存在のブランド〈Vlaminck(ブラマンキ)〉。ブランドを立ち上げた新屋さんは、鞄職人として多くの鞄を作ってきました。そこで培った技術を使って作られたバックパック「BLANC」は販売開始から1年経たないものの、既に多くのユーザーがオーダーをいれる人気っぷり。今回は今アツイVlaminckの工房にお邪魔して、山好き鞄職人のものづくりについて訊いてきました。


出典掲載のない写真はすべて編集部撮影

Instagramで見かけるようになったバックパック

ブラマンキバックパック
提供:Vlaminck
2021年4月頃からInstagramで見かけるようになったバックパックブランドがあります。

その名は「Vlaminck(ブラマンキ)」。

細かな違いはあるものの「ロールトップ」「背面ポケット」という特徴から、「また、近年増えている軽さ重視のバックパックができたのかな?」程度に見ていました。

その実は「質実剛健」なバックパックだった

ブラマンキザックを背負っている人
バックパック重量は約1.2kgと、十分な軽さ
Vlaminckの代表的なアイテムが「BLANC(ブロン)」と呼ばれる大型(60L )のバックパック

商品を手に取る機会があり実物を見てみてビックリ!事前に想像していた「いわゆるフレームレスの軽量バックパック」とは、まったく別ものであることがわかりました。

約20kg(テント泊の荷物+多めの水)になったバックパックを背負ってテストをしたところ、その安定感に感動。フレームレスのバックパックには一見不釣り合いにも思える肉厚のショルダーベルトとヒップベルトが、しっかりとサポートしてくれました。

奇抜な見た目に目を奪われがちですが、これはなかなかの逸品。
さっそく工房にお邪魔して、ものづくりの姿勢について話を訊いてきました。

山好きの鞄職人が持つ、理想をカタチにするチカラ

ブラマンキの取材の様子 Vlaminckのバックパックを作るのは、日本鞄ハンドバッグ協会認定の技能士として大手バックメーカーや鞄問屋で活躍した新屋彰平さん。
小さな頃から、アウトドア好きの家族と一緒に登山やキャンプをして過ごしてきました。

そんな新屋さんが「自分がいちばん欲しいバックパック」を追い求めてできたのがBLANC。ブランドの顔とも言えるこの商品には一体どんな機能と思いが込められているのでしょうか。

鞄職人であることへの自信と誇り

ブラマンキの工房「デザイナーだったり、バックパックが作れる人がブランドを立ち上げていますが、その中に鞄職人はいなかったんです」

ブランドの特徴を伺ったときの新屋さんの言葉です。
「鞄職人」と聞いてもざっくりと「カバンを作る人」というイメージで、バッグデザイナーとの違いが明確にわからず「ブランドとしての強みになることなのか?」という印象でした。

「例えば、僕は山で感じたバックパックの不満をどういう風に作れば解決できるかが、下山するときには頭の中でわかるんです」

つまり、今自分が感じている不具合は、バックパックのどの部分が原因なのかを理解し、それをどのように作れば解消されるかの具体策がわかっているということです。

さらに、一般的なデザイナーの場合は解決策のアイディアをバッグ職人に伝えて、それをカタチにしてもらわないといけません。イメージを伝えるデザイナーとそれをカタチにする職人という二人の異なる人間がいる場合、その間で共有されるイメージが100%のカタチを目指すことはとても難しいそうです。

しかし、鞄職人である新屋さんは、自分のイメージしたアイディアを自らの手でカタチにすることが可能。それこそが鞄職人がやっているVlaminckの強みなのです。

職人に嫌がられるデザイン

ブラマンキの取材の様子 元々使っていた既製品のバックパックにどうしても合わないところがあり、「鞄職人なんだし、自分で作ってしまおう」とバックパック制作を開始。
ああしたい、こうしたい、と理想を追い求めていった結果、BLANCができあがりました。

新屋さんはBLANCを背負った時の重心の位置を少しでも高くするために、ヒップベルト部分の縫いかたに強いこだわりがあります。
しかしそれは同時に、ものづくりで大事な生産性にマイナスの影響を与えてしまうものでした。

「BLANCはいざ作るとなると結構面倒な仕様になっているので、これを職人さんに依頼するとサンプル制作の段階で嫌がられると思います(笑)」

商品として生産性を上げる工夫がなされることはもちろん大切です。しかし、鞄職人である自分が作るのなら、生産性だけじゃなく背負心地にとことん工夫をすることこそ意味があると言う新屋さん。

「ヒップベルトの縫いかたに工夫をすると、だいたい3cmくらい背負い位置が上がります。その少しの差が背負心地に大きな違いを生んでくれるので、こだわりたいですね」

自分の理想をカタチにするため、とことんこだわる姿勢はガレージブランドの魅力そのもの。その結果、BLANCは生まれ、現在100名以上のオーダー待ちが出るほどの人気商品に成長しました。

「軽さ」ではなく「軽量感」が体感できる工夫

ブラマンキザック
昨今の人気の軽量バックパック。荷物の重量を軽くすることが大きなポイントになっていますが、そのシンプルな作りゆえ、中には上手く使いこなせず肩に痛みを感じたり、疲れやすさの元になってしまうことも。

そこに課題を感じ、Vlaminckが作ったのがしっかりとした従来型のフレーム入りザックと軽量バックパックの両方の良さをバランス良く落とし込んだBLANCです。

バックパックそのものの軽さよりも、背負った時の軽量感のための工夫が詰まっています。

背負った時にわかる圧倒的な軽量感

ブラマンキザックを背負っている人 パッキングは下に軽いものを入れ、肩甲骨あたりの体に近い場所に重いものを入れるのが基本。
BLANCには、登山者が頭を悩ませなくても、この基本に沿ったパッキングができるような工夫がされています。

例えばテント泊装備の場合、底に収納するシュラフやテントはコンパクトになるものが多く、底が平らで広いと次に入れる重いギアたちも下にきてしまいがち。それを防ぐために、下部を斜めに狭くして少しでも上に重いものがくるようにしています。

底を斜めにすることは重心を上にするメリットだけでなく、下りの大きな段差で底面を擦りにくくなるため、バランスを崩しにくくなるのです。

ブラマンキザックを背負っている人 バックパックのカタチは逆台形。歩いた時に腕が当たりにくいだけでなく、正しくパッキングできた時に横ブレしにくくなります。

また、下部に向かって細くなる形状は、バックパックが膨らまずきれいなカタチを保つことが可能。本体も四角ではなくラウンド状になっており、パッキングをしたときに美しい背負姿になります。

ブラマンキのザック BLANCの軽量感に欠かせないのが、「引き寄せ」の機能。ロールトップを止める役割の細引きをショルダーハーネスと連結させることで、背負心地の向上や肩への負担軽減に寄与します。
調整に慣れが必要ですが、BLANCの軽量感の実現に欠かせません。

引き寄せの場所も前側(背中の反対側)から引っ張ることでカラダへのフィット感を向上させます。

ショルダーハーネスの厚みはグレゴリーやカリマーの大型ザックのような肉厚タイプなので、軽量バックパックを背負って肩が痛くなる人にも、ぜひ試してもらいたいバックパックです。

ブラマンキのザック カラダに触れるヒップベルトと背面メッシュは異なる素材を採用。
ヒップベルト部分は肉厚ですべりにくい素材を使っており、左右にカラダを振ってもズレにくく、しっかりと荷重を腰に乗せてくれます。背面のメッシュは抗菌仕様で汗対策もバッチリ。

必要な機能だけだから、見た目も美しい

ブラマンキのザック「必要だと思ったものを必要な部分に配置しただけなので、正直前側はデザインしていないんです。なので、リリースした時は売れるのか心配でした(笑)」
と新屋さんはBLANCのデザインについて語ります。

バックパックの強さを出すため、素材は強度のあるコーデュラナイロンを採用。クラシックな見た目のBLANCにピッタリの質感です。

slider image
slider image
slider image
slider image
{"pagination":"true","pagination_type":"bullets","autoplay":"true","autoplay_speed":"3000","direction":"horizontal","auto_stop":"false","speed":"300","animation":"slide","vertical_height":"","autoheight":"false","space_between":"0","loop":"true"}

左右大きさ違いのメッシュポケットは大きいほうにウェア類、小さいほうに水筒など、形状からそこに入れるものが想像しやすくなっています。決まった部分に荷物を入れておくことで、「あれ?どこにいったかな?」なんて無駄な時間を減らすことも可能です。

ショルダーハーネスには歩行時に親指をかけておくループもあるので、楽に歩けますよ。

slider image
slider image
{"pagination":"true","pagination_type":"bullets","autoplay":"true","autoplay_speed":"3000","direction":"horizontal","auto_stop":"false","speed":"300","animation":"slide","vertical_height":"","autoheight":"false","space_between":"0","loop":"true"}

ヒップベルトのポケットは大型で、行動食やスマートフォンを入れるのにピッタリ。

ブラマンキザックに荷物を入れている 前側には、バックパック内にアクセスできる大きなチャックがついており、スムーズに荷物の出し入れができます。

よく使うものを右側(距離が短いほう)に入れおくと、出し入れが楽です。

快適に山を楽しむための道具づくりに挑んでいく

ブラマンキのザック Vlaminckのロゴは、登山ブランドには珍しい「ミシン」をモチーフにしたデザイン。

「ミシンはベタだなって、最初は思っていたんです。やっぱり山なので三角っぽいデザインにしようと思っていたんですけど、最終オーダーの直前にやっぱりこっちだなって変更しました。結果、自分の原点である職人というものを表せたと思います」

ミシンの上には旗と登山者が描かれています。そこにはこんな思いが込められていました。

「自分の人生において仕事や職人であるということが9割で、残りの1割が遊びなんです。でも、仕事よりも遊びである登山が上ということを表しています」

職人として、確かな技術でものづくりをしつつ、遊び手としての気持ちを大切にしている新屋さんらしいブランドの姿勢です。

機能性と軽量性を両立させる

ブラマンキの取材の様子「開発に時間をかけたのは、表のデザインではなく背中側の機能や全体の形状。ルックスや重量については重視せず、あくまでも軽量感を作り出すことを大切にしています。

ある意味バックパックは命を預かると言っても過言ではないので、デザインや重量だけがフォーカスされる昨今の傾向にとても不安を覚えました」

一見奇抜にも見えるデザインは、自身もアウトドアを楽しむ新屋さんが必要だと思ったものを落とし込んだ必要最低限の機能。
また、重量を重視していないと言いながらも、縫製や不要なパーツを減らすための細かな工夫がデザインに落とし込まれています。

「父親が山好きで、それこそ母親が僕をおなかの中に抱えながら山に行ってる写真もあって(笑)。昔からアウトドアはやっていたので、そのころからフレーム入の無骨なデザインのバックパックが好きでした。

最近は素材の進化でフレームなしでも成立するものが増えてきましたけど、せっかく自分がつくるならしっかりしたものを作りたくて」

流行りのものではなく、自分の好みや信念が商品には反映されています。

職人としての確かな技術を発揮していく

ブラマンキの工房
ロゴのもととなったミシン
「鞄職人はそれなりの伝統技術をきちんと学んでなるものなので、いろいろガレージブランドがある中でも、作ることには絶対の自信を持っています

命を預かるといっても過言ではない、山の道具。確かな技術を持った人の商品であれば安心です。
Vlaminckのアイテムには、鞄職人としてのものづくりへの自信とアウトドア好きとしての道具への探究心が備わっています。

2021年11月末より、新たに「BLANC quatre」という40L (BLANCは60L)のバックパックのウェブオーダーを開始予定。
こちらもBLANC同様細かなところまで気が配られており、「軽量感」を感じられる仕上がりになっています。

まだ、若いブランドであるVlaminckが今後どのようになっていくのか、注目していきましょう。

Vlaminck HPVlaminck Instagram

この記事を読んでいる人にはこちらもおすすめ


関連する記事

関連する山行記録 byヤマレコ

ブラマンキザックを背負っている人
この記事が気に入ったら
「いいね!」をしよう
YAMA HACK編集部 大迫

YAMA HACK運営&記事編集担当。六甲山で山歩きをはじめ、関西・中四国の山を中心に歩き回る。 ボルダリングやトレランも好きですが、無心で山をひたすら歩くのが一番好きです。 読んだ人に行動のきっかけを与えられるコンテンツを届けていきます。

  • COCOHELI ココヘリ入会金1000円OFF
登山専用コミュニティサイト「ヤマレコ」