得意なのは「品揃え」だけではない⁉
品揃えが豊富なオンラインの山道具店。ほしいときにワンクリックですぐ自宅へ届くので、急な山行にもとても便利ですよね。その利便性から、ネットで購入する人も増えています。
でもネット通販の場合、そのギアのサイズ感や使用感が自分に合っているかがいまいちわからないので、物足りなさを感じることも事実……。
注目したいのは、地方の山道具店!
そんな便利なネットショップの物足りなさを埋めてくれるのが、「店主とのやりとり」です。とくに、地方に店舗を構える山道具店では、店主やスタッフがフィールドに熟知しているなど、ギアの知識だけに留まらない価値の高い「情報力」をもっています。
今回は、そんなローカルショップをピックアップして、改めて魅力をお届けしたいと思います。
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ローカルショップの持つメリット
人気山域の情報ならおまかせ!|山麓密着のショップ
大雪山、立山、日本アルプス、八ヶ岳など、登山者に人気の高い山域の近くに店舗を構える山道具店4店舗を紹介します。山行前に訪ねれば、地元ショップならではの通な情報を得られるはず。
プロライターならではの「伝える力」|Transit 東川(北海道上川郡東川町)
北海道、大雪山連峰の北西に位置する東川町。街中にはカフェや雑貨屋など、センスのよい店舗が点在しています。この大雪山麓の町に、スキー&スノーボードやアウトドア関連のメディアで活躍するフリーライター/フォトグラファーの林拓郎さんが「Transit東川」をオープンしたのは2018年のこと。店内には「原稿になるようなストーリーや明快な製品コンセプトがあること」を基準にセレクトされたギアが並びます。
SNSでの情報発信を充実させていることも、「伝えること」のプロである林さんのこだわり。入荷した製品の特徴などについて、自身が取材で得た知見も交えて、なるべく詳しく伝えるよう心掛けているとか。
またバックパックでもウェアでも、自分のアイテムを持ち込めば、実際の使用状況を丁寧に聞き取りながら、より適切なギア選びのアドバイスを行ってくれます。シーズン前にギアを見直したいときに、林さんのアドバイスを聞きに立ち寄ってみては?

田んぼの中にポツリ。ガイドが店主の本格ショップ|山の店 チロル(富山県魚津市)
富山駅前に長く店舗を構えた後、2020年に魚津市ののどかな田園地帯に移転オープンした「チロル」。この店舗のなによりの特徴は、日本山岳ガイド協会の理事であり、現役で山岳スキーや登攀ガイドを行っている佐伯岩雄さんが店主を務めていることです。
店舗は2階建てで、各フロアには、アルパインクライミングに対応可能な本格ギアはもちろん、日常使いもできるおしゃれなウェアやギアも並びます。佐伯さんの商品セレクトのこだわりは「利益率などは度外視で、自分が使いたいと思うもの」を選ぶことだとか。
店内には佐伯さんも制作に携わったという、ルートを細分化して区間毎の難易度を設定した『富山県グレーディング ピッチマップ』などもあり、剣岳など難易度の高い山が多い富山県の山域の詳しい情報を得ることができます。

チロル|公式サイト
「街と人と山」をクライマー店主がつなぐ|NATURAL ANCHORS(長野県長野市)
オープン当初は善光寺の近くの路地裏にある隠れ家的な名店として、コアなファンに親しまれていた「ナチュラルアンカーズ」。2020年6月に、現在の大通り沿いに移転しました。
店主の戸谷悠さんは長野市出身で、若いころは海外と国内の岩場を行き来していたほどの本格的なクライマー。店頭のギアは、戸谷さん自らが使ってみて良いと思ったものが中心にセレクトされていて、コロナ禍以前は海外から約9割ほど直接仕入れをしていました。今は<山と道>や<ロウロウマウンテンワークス>など、国内のガレージブランドのギアが中心に取り揃えられています。
ヴィンテージの家具を取り扱う「P.h.D.(フッド)」と「NSEW」の3社で共同で運営している2階のフロア「Lighthouse」では、ユーズドのギアを販売。売り手自身が値を付けるシステムなので適正価格での売買が可能になっていることも、山好きにはうれしいところです。
なにより地元出身の店主を訪ねれば、長野市周辺の登山情報からクライミングスポットまで、コアで幅広い情報を得ることができるはず。

▼お店ができるまでの経緯を綴った戸谷さんの日記はこちら(画像をクリック!)
購入後のサポートで気づいたら常連に!?|ELK(山梨県甲府市)
八ヶ岳・奥秩父・富士山・南アルプスと、人気の山域が全方位にある山道具店「エルク」。関東からのアクセスもよく、さまざまなフィールドの情報が集まってくる山道具店です。
広々とした店内に並ぶのは、スタッフがフィールドで実際に使ってみて良かったもの、または使ってみたいもの。そしてその道具の良さを伝えられるものが厳選されています。
ツアー会社を併設していることも、エルクの大きな特徴のひとつ。月に2~3回ほど、店長の中込真太郎さんなどガイド資格を持つスタッフが同行する登山ツアーも開催されています。
また店内に修理コーナーが設けられていて、購入した後も道具のメンテナンスをしっかりと行ってもらえることも、うれしいポイント。エルクに何度も足を運ぶことで、新しい山仲間や知識を得ることができ、登山の幅が広がることは間違いなし。
