【フィールドに強く頼れる存在】山麓&地方都市の「個性派山道具店」に行ってみよう!
オンラインで注文すれば、山道具が翌日届く便利な時代。そんな中、山麓や地方で店舗を構える山道具店があります。地元の山やフィールドを知り尽くした店主やスタッフは、モノだけでなく「リアルな山情報」の発信者でもあり、登山者の強い味方。今回は頼れる存在の個性的な山道具店を紹介します!
2023/05/16 更新
編集者
YAMA HACK編集部
月間350万人が訪れる日本最大級の登山メディア『YAMA HACK』の運営&記事編集担当。山や登山に関する幅広い情報(登山用品、山の情報、山ごはん、登山知識、最新ニュースなど)を専門家や読者の皆さんと協力しながら日々発信しています。
登山者が「安全に」「自分らしく」山や自然を楽しむサポートをするため、登山、トレイルランニング、ボルダリングなどさまざまなアクティビティに挑戦しています。
YAMA HACK編集部のプロフィール
制作者
ライター
松元麻希
信州在住のライター。アウトドア専門誌の編集&営業経験を経て独立。現在は登山メディアを中心に、グルメ、住宅など幅広いジャンルのメディアでライター修行中。夏と秋は南アルプス北部周辺で登山、冬と春は白馬や木曽のゲレンデでスキーと、アウトドアを満喫している。
松元麻希のプロフィール
アイキャッチ画像提供:山の店 チロル
得意なのは「品揃え」だけではない⁉

提供:GRiPS(こだわりの山道具店には、店主の目利きで揃えられたアイテムが所狭しと並ぶ)
品揃えが豊富なオンラインの山道具店。ほしいときにワンクリックですぐ自宅へ届くので、急な山行にもとても便利ですよね。その利便性から、ネットで購入する人も増えています。
でもネット通販の場合、そのギアのサイズ感や使用感が自分に合っているかがいまいちわからないので、物足りなさを感じることも事実……。
注目したいのは、地方の山道具店!
そんな便利なネットショップの物足りなさを埋めてくれるのが、「店主とのやりとり」です。とくに、地方に店舗を構える山道具店では、店主やスタッフがフィールドに熟知しているなど、ギアの知識だけに留まらない価値の高い「情報力」をもっています。
今回は、そんなローカルショップをピックアップして、改めて魅力をお届けしたいと思います。
★
ローカルショップの持つメリット
・特定の山域に近く、その山域の最新かつ詳細な情報が集まりやすい。
・量販店には流通していない、レアなガレージブランドのギアが豊富に揃う店舗も。
・店舗主催のイベントなどを通して、同じ趣味の仲間に出会える。
人気山域の情報ならおまかせ!|山麓密着のショップ
大雪山、立山、日本アルプス、八ヶ岳など、登山者に人気の高い山域の近くに店舗を構える山道具店4店舗を紹介します。山行前に訪ねれば、地元ショップならではの通な情報を得られるはず。
プロライターならではの「伝える力」|Transit 東川(北海道上川郡東川町)

東川町は、旭川市街地から車で約20分ほどの場所にある。
北海道、大雪山連峰の北西に位置する東川町。街中にはカフェや雑貨屋など、センスのよい店舗が点在しています。この大雪山麓の町に、スキー&スノーボードやアウトドア関連のメディアで活躍するフリーライター/フォトグラファーの林拓郎さんが「Transit東川」をオープンしたのは2018年のこと。店内には「原稿になるようなストーリーや明快な製品コンセプトがあること」を基準にセレクトされたギアが並びます。

登山からバックカントリーまで、幅広いアイテムが揃う。
SNSでの情報発信を充実させていることも、「伝えること」のプロである林さんのこだわり。入荷した製品の特徴などについて、自身が取材で得た知見も交えて、なるべく詳しく伝えるよう心掛けているとか。
またバックパックでもウェアでも、自分のアイテムを持ち込めば、実際の使用状況を丁寧に聞き取りながら、より適切なギア選びのアドバイスを行ってくれます。シーズン前にギアを見直したいときに、林さんのアドバイスを聞きに立ち寄ってみては?

商品紹介のひとつひとつに、ライター林さんの文章が添えられている。
週末にかけての金〜月曜は朝7時からオープンしています。登山前でも立寄りやすいかと思いますので、大雪エリアに遊びにいらした際は、ぜひともお立ち寄りください。
CHECK!
得意ジャンル:無雪期の一般登山、バックパッキングを主体にした縦走・キャンプ、バックカントリースキー&スノーボード
主なフィールド:大雪山
取扱いブランド:ティートンブロス、ミステリーランチ、アウトドアリサーチ、メレル、クリーンカンティーン、ベアボーンズ リビング、ベルモント、MSR、SPARK R&D、ボルテージデザインほか
Transit東川 |Facebook
田んぼの中にポツリ。ガイドが店主の本格ショップ|山の店 チロル(富山県魚津市)

富山地方鉄道本線「西魚津」駅から車で5分、北陸道「魚津」ICから車で7分ほどの場所。
富山駅前に長く店舗を構えた後、2020年に魚津市ののどかな田園地帯に移転オープンした「チロル」。この店舗のなによりの特徴は、日本山岳ガイド協会の理事であり、現役で山岳スキーや登攀ガイドを行っている佐伯岩雄さんが店主を務めていることです。

梁が見える天井があり、開放感のある2階。
店舗は2階建てで、各フロアには、アルパインクライミングに対応可能な本格ギアはもちろん、日常使いもできるおしゃれなウェアやギアも並びます。佐伯さんの商品セレクトのこだわりは「利益率などは度外視で、自分が使いたいと思うもの」を選ぶことだとか。
店内には佐伯さんも制作に携わったという、ルートを細分化して区間毎の難易度を設定した『富山県グレーディング ピッチマップ』などもあり、剣岳など難易度の高い山が多い富山県の山域の詳しい情報を得ることができます。

1階の一角にはソファーも置かれていて、ちょっと腰掛けて寛ぐことも可能。
山や川など自然の中で遊び、活動することはとても大切で有意義な時間です。同時に危険も内在することは確かです。少しずつでも経験を積んで安全に楽しむことができるようお手伝いさせていただきます。
CHECK!
得意ジャンル:登山全般、岩登り、沢登り、山スキー、レスキュー用品
主なフィールド:立山・剣岳方面、ほか富山県内全般
取扱いブランド:ペツル、ブラックダイヤモンド、スカルパ、スポルティバ、K2、BCA、マムート、ノローナ、ザ・ノース・フェイスほか
チロル|公式サイト「街と人と山」をクライマー店主がつなぐ|NATURAL ANCHORS(長野県長野市)

真っ赤な壁が目印。すぐ隣にはマフィンやカレーが人気のカフェ「NorthSouthEastWest(略称:NSEW)」がある。
オープン当初は善光寺の近くの路地裏にある隠れ家的な名店として、コアなファンに親しまれていた「ナチュラルアンカーズ」。2020年6月に、現在の大通り沿いに移転しました。
店主の戸谷悠さんは長野市出身で、若いころは海外と国内の岩場を行き来していたほどの本格的なクライマー。店頭のギアは、戸谷さん自らが使ってみて良いと思ったものが中心にセレクトされていて、コロナ禍以前は海外から約9割ほど直接仕入れをしていました。今は<山と道>や<ロウロウマウンテンワークス>など、国内のガレージブランドのギアが中心に取り揃えられています。

店内の壁には、店主が得意とするクライミング用のホールドが飾られている。
ヴィンテージの家具を取り扱う「P.h.D.(フッド)」と「NSEW」の3社で共同で運営している2階のフロア「Lighthouse」では、ユーズドのギアを販売。売り手自身が値を付けるシステムなので適正価格での売買が可能になっていることも、山好きにはうれしいところです。
なにより地元出身の店主を訪ねれば、長野市周辺の登山情報からクライミングスポットまで、コアで幅広い情報を得ることができるはず。

レアなお宝も眠る、2階のユーズドギアコーナー。
長野という山に囲まれた地で「山と街と人を繋ぐ」ための山道具屋として立ち上げました。購入前のご相談や一部ギアのレンタルなども行いつつ、山やアウトドアフィールドの情報などをより多くのお客様と共有できるように、店主・スタッフも外遊びを楽しんでいます!
CHECK!
得意ジャンル:一般登山、クライミング、ULハイク
主なフィールド:北アルプス、北信五岳
取扱いブランド:山と道、ロウロウマウンテンワークス、クラックス、スタティック、トークス、マウンテンキング、ゼログラム、アルトラ、サンゾクプロダクツほか
NATURAL ANCHORS|公式サイト
▼お店ができるまでの経緯を綴った戸谷さんの日記はこちら(画像をクリック!)

購入後のサポートで気づいたら常連に!?|ELK(山梨県甲府市)

甲府昭和I.C.から車で2分、甲州街道にも近くアクセス抜群の立地。
八ヶ岳・奥秩父・富士山・南アルプスと、人気の山域が全方位にある山道具店「エルク」。関東からのアクセスもよく、さまざまなフィールドの情報が集まってくる山道具店です。
広々とした店内に並ぶのは、スタッフがフィールドで実際に使ってみて良かったもの、または使ってみたいもの。そしてその道具の良さを伝えられるものが厳選されています。

天井が高く、広々とした店内。品数の多さに物欲が刺激される。
ツアー会社を併設していることも、エルクの大きな特徴のひとつ。月に2~3回ほど、店長の中込真太郎さんなどガイド資格を持つスタッフが同行する登山ツアーも開催されています。
また店内に修理コーナーが設けられていて、購入した後も道具のメンテナンスをしっかりと行ってもらえることも、うれしいポイント。エルクに何度も足を運ぶことで、新しい山仲間や知識を得ることができ、登山の幅が広がることは間違いなし。

ウェアからギアまで幅広く対応可能な修理コーナー。
地元でもある山梨は、山の魅力がいっぱいだと感じています。私自身もUTMFなどトレランの大会にもよく参加していますし、最新の山情報やギアに精通したスタッフが親切丁寧にアドバイスしますので、どうぞお気軽にお立ち寄りください!
CHECK!
得意ジャンル:登山、トレイルランニング、クライミング、キャンプ
主なフィールド:南アルプス、八ヶ岳
取扱いブランド:パタゴニア、ザ・ノース・フェイス、アークテリクス、スカルパ、スポルティバ、サロモン、ブラックダイヤモンド、ペツル、グリベルほか
ELK|公式サイト