九州屈指の人気の山「福智山」
標高 | 所在地 | 最高気温 (6月-8月) | 最低気温 (6月-8月) |
900.5m | 福岡県北九州市小倉南区、直方市、田川郡福智町 | 25.6℃ | 12.6℃ |
福岡県北部の筑豊地方から北九州市にいたる福智山系の最高峰「福智山(ふくちやま、ふくちさん)」。九州百名山、日本の水源の森百選にも選ばれる名峰です。なおウェブ上で、漢字表記を「福知山」と書いている人が意外といるようですが、正解は「福智山」です、お間違いなく。
登山者年間20万人!九重山を越える人気
福智山の登山者は年間20万人。九州を代表する山「九重山」でも約11万人(平成26年実績)なので、およそ倍の登山者が訪れていることになります。大都市からのアクセスが良く、初心者からベテランまで楽しめることから、休日は駐車場が満車になることもあり、その人気がうかがえます。
福智山の見どころや魅力は?
登りやすくて人気の福智山ですが、見どころや魅力がたくさんあることも人気の理由。その中から、いくつかをピックアップしました。
樹齢600年以上の桜「虎尾桜」
福智山中腹に咲く虎尾桜(とらのおざくら)は、推定樹齢600年以上の一本桜。高さ17メートル、幹周り3.8メートルのエドヒガンです。例年3月下旬から4月上旬頃に満開を迎え、多くの登山者や観光客が訪れます。
福智山には、これ以外にも、赤い花の「源氏桜」と白い花の「平家桜」を総称する「源平桜」など、多くの山桜が自生しており、春には桜めぐりを楽しむこともできます。
滝がたくさん「白糸の滝」「大塔の滝」「七重の滝」
福智山は麓に2か所ダムがあることでもわかる通り、水量が多い山です。場所によっては、険しい岩場になっていることから、滝も多く、観光名所である「白糸の滝」「大塔の滝」や「七重の滝」が登山コース沿いにあり、登山の見どころになっています。
山野草の宝庫
福智山周辺は、山野草の宝庫としても知られています。春はニリンソウやキンラン、夏はミヤマウズラやナツエビネ、秋はセンブリ、アキノキリンソウなどを見る事ができます。
360度の大パノラマ山頂。下山は方向をよく確認して!
山頂は広く周りを見渡せる360度ビュー。眼下に遠賀川(おんががわ)が流れる直方市街や北九州、遠くに英彦山、東には周防灘、西には玄界灘など、素晴らしい景色が広がります。高い樹木がなく、広々として開放感抜群の山頂部はランチスポットとしても人気です。
福智山山頂は、四方に登山道があり、また、多くの脇道が作られているので下山方向を間違える人が多くいます。特に、悪天候時は不明瞭になり見誤りやすいので、よく確認して下山しましょう。
地図は必ず携帯しよう!
福智山登山する際、地図は必ず携帯しましょう。コースタイムなどが見やすい登山地図がおすすめです。
登山する前は天気もチェック
福智山登山する前は、必ず天気をチェックしましょう。
上野越コース|福智山のメインルート、初心者におすすめ
最高点の標高: 874 m
最低点の標高: 170 m
累積標高(上り): 1293 m
累積標高(下り): -1293 m
- 【体力レベル】★☆☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:2時間50分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
上野登山口を出発
登山口下の駐車場から坂を登って約10分。登山口が現れます。ここは、後述する白糸の滝コースの登山口でもあるので、道が二手に分かれます。今回は上野越コースなので、左方向へ。
山頂まで全体によく整備された登山道。道が広いのですれ違いにも困りません。樹林帯の中、しばらく沢沿いを歩きます。
春は虎尾桜を見に行こう
春の虎尾桜が咲く季節は、ほとんどの登山者が途中から道を外れ見学に行きます。登山口から15分程度で分岐があり右折。5分程度で大きな一本桜が目の前に。保護のためロープで囲っていますので、外から見学しましょう。見学が終わったら分岐へ戻り、先へ進みます。
上野越に到着
途中、林道を横切りながら、ゆるく登る登山道を登りつめると上野越。ここは、四方から登山道が交わる分岐、福智山は右方向です。ここから山頂までは、ちょっとだけ急な登りになります。ベンチがあるので、休憩しましょう。
福智山山頂へ
9合目付近、白糸の滝コースからの道と合流すると、山頂は目の前です。このあたりは、樹林帯を抜けササ原になり、一気に展望が開けます。最後の急登を上がると山頂へ。さえぎるもののない絶景を楽しみましょう。
下山は往路を戻ります。
下山途中には鷹取山へ寄り道
下山途中、上野越分岐を上野登山口方向へ下らず、まっすぐ進むと15分程度で鷹取山(たかとりやま、633m)へ寄り道しましょう。鷹取山は福智山のすぐ下に位置する山で、併せて登る人が多い山。黒田官兵衛ゆかりの「鷹取城」の跡で、山頂は平坦で広々としています。3月から4月にかけ、スイセンが咲くことでも知られる人気スポットで、虎尾桜とともに花見ルートにもなっています。
白糸の滝(八丁越)コース|ちょっと険しい急登の連続
最高点の標高: 874 m
最低点の標高: 170 m
累積標高(上り): 1087 m
累積標高(下り): -1087 m
- 【体力レベル】★☆☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:2時間40分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
上野登山口を出発
上野越コースと同じく、上野登山口より出発。今回は「白糸の滝」と書かれた右方向へ進みます。すぐに渓谷になり濡れた岩場を慎重に進むと、白糸の滝へ出ます。
白糸の滝
上野峡の滝「白糸の滝」。落差25m、細長く一筋の滝が流れ落ちる姿が「白糸」のように見える名瀑です。滝周辺の登山道は岩場続きの危険箇所、手を使い岩場をよじ登ります。滝の上にくると岩場は終わりますが、狭く険しい道は続きます。
木の根や岩が連続する急登の登山道
滝の先、木の根や岩の急登が連続する険しい道を慎重に登っていきます。気を抜けない道が続きますので、焦らず少しずつ登りましょう。
八丁を越えると気持ちいい尾根歩き
八丁と呼ばれる尾根を越えると木々が低くなり、やがて草原の道になります。路傍にはたくさんの花、展望が開け、目の前には福智山山頂。ここまでの苦労が報われる一瞬、このままずっと歩いていたいと思わせる場所です。
福智山山頂へ到着。下山は上野越コースへ
上野越コースと合流し、山頂へ。360度ビューの絶景を楽しみましょう。
下山は、往路を戻ることもできますが、急な下りになるので少々危険。登山口は同じなので、上野越コースを下山することをおすすめします。
大塔の滝コース|自然豊かな樹林のコース
最高点の標高: 850 m
最低点の標高: 172 m
累積標高(上り): 896 m
累積標高(下り): -896 m
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:3時間10分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
福智山ダム登山口(大塔入口)を出発

福智山ダム周回道路脇より登山道へ入ります。登山口らしくないので、見落としがちですが黄色の標識があるので、ガードレールの後ろに入ります。
ガードレールから入るとこんな感じです。
大塔の滝
林道を横切り、しばらくすると大塔別れ。大塔の滝方向に歩くと、「大塔の滝(おおとうのたき)」が現れます。落差10m程度ですが、苔むした岩の造形美の中、神秘的な雰囲気が漂います。たっぷりのマイナスイオンを浴びましょう。
烏落を通過
樹林帯を抜けると、「烏落(からすおち)」。ここは4方向からの分岐で、ちょっとした広場になっています。福智山山頂まであと少し。ちょっと休憩しましょう。
福智山山頂へ
烏落から20分ほどで福智山山頂。山頂のすぐ下には小さな祠があります。登山させていただいた挨拶をしておきましょう。
下山は往路を下ります。
避難小屋「荒宿荘」で山泊も可能
今回の内ヶ磯コース、烏落近くに避難小屋「荒宿荘(こうしゅくそう)」があります。九州では数少ない避難小屋のひとつで、宿泊は無料。水場やバイオトイレ(100円/1回)もあり、周辺でテント泊することもできます。ここを起点に福智山や周辺の山への縦走など楽しむこともできます。
地元の山岳会(筑豊山の会)で管理されています。使用する際は丁寧に、退出するときは掃除しましょう。
筑豊山の会
鱒淵ダムコース|七重の滝や九州自然歩道を歩くロングコース
最高点の標高: 878 m
最低点の標高: 156 m
累積標高(上り): 1814 m
累積標高(下り): -1814 m
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:4時間26分
- 【技術的難易度】★★★☆☆
- ・ハシゴ、くさり場を通過できる身体能力が必要
・地図読み能力が必要
ダム周回道路より吊橋(ます渕橋)へ
ダム堰堤より周回道路へ。ダム周回道路は自転車道になっているので、クルマは通らず、のんびり歩くことができます。赤い吊り橋の「ます渕橋」が出発点。
往路は渡らずまっすぐに。ます渕橋は帰りに渡ることになります。
七重の滝登山口へ
ダム周回道路を歩くこと約30分七重の滝登山口に到着。ここからは本格的な登山道になります。
七重の滝
1時間程度で七重の滝。名前の通り、一の滝から七の滝まで、様々な七つの滝が連続した滝の総称です。途中、鎖場があるので慎重に。
豊前越に到着
七重の滝を通過し、樹林帯を登ると豊前越(ぶぜんごし)に到着。ここから先は環境省管轄の九州自然歩道なので道はしっかりとしています。福智山山頂まであと1時間ちょっと。ベンチもあるので休憩していきましょう。
福智山山頂へ到着

烏落ちを通過し、福智山山頂へ到着です。
復路は九州自然歩道を下りますが、下山方向を間違えないように道標を確認して下りましょう。
ホッテ谷別れを下る
1時間程度でホッテ谷別れへ到着。ここは、ホッテ谷新道という烏落へ戻ることができる道との分岐。そちらへは行かずに、鱒淵ダム方向を確認し下りましょう。下山路は九州自然歩道なので、道はしっかりしており、道標も整備されています。
九州自然歩道の登山口に下山
九州自然歩道の登山口へ下山。ここから、登山時とは対岸のダム周回道路を歩き、ます渕橋を目指します。
鱒淵ダム周回道路を歩き、ます渕橋を渡る
赤い吊り橋の「ます渕橋」を渡れば出発点に戻り、鱒淵ダムコースの終了です。
福智山から牛斬山縦走コース|福智山山系5つのピークを越える
最高点の標高: 878 m
最低点の標高: 88 m
累積標高(上り): 1414 m
累積標高(下り): -1498 m
- 【体力レベル】★★☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:5時間47分
- 【技術的難易度】★★☆☆☆
- ・登山装備が必要
・登山経験、地図読み能力があることが望ましい
1つ目のピークへ。福智山山頂から牛斬山方面を目指す
1つ目のピーク、福智山山頂から牛斬山方面へ一旦下ります。間違えやすいのでよく確認しましょう。
2つ目のピーク。赤牟田の辻
福智山から1時間ほど、念仏坂と呼ばれる急坂を登ると2つ目のピーク、赤牟田の辻(790m)へ到着。福智山を振り返るとこんな感じ。縦走路らしいアップダウンを繰り返しているのがよくわかります。
3つ目のピーク。焼立山
赤牟田の辻から10分、3つ目のピーク、焼立山(標59m)。木々の間から麓の街が見えます。
4つ目のピーク。山犬の峠
焼立山から1時間程度、4つ目のピーク 山犬の峠(625m)に到着。展望はありません。
5つ目のピーク。牛斬山
5つ目のピークであり、このコース最後となる牛斬山(580m)に到着。ちょっと怖い山名ですが、はっきりとした由来はないようです。別名「薄霧岳」とも言われます。ここは360度見渡せる展望がよく、筑豊の山や田川盆地を見渡せる絶景ポイントです。
採銅所駅へ下山
牛斬山から草原状の登山道を下ること約1時間、採銅所駅へ下山します。お疲れさまでした。
皿倉山から縦走するロングコースもあり
今回は、上野登山口からスタートしましたが、「皿倉山(622m)」から歩く縦走コースもあります。その場合、10時間を超える、健脚者向けのロングコースになります。福智山の避難小屋「荒宿荘」に1泊する人も多いようです。
福智山へのアクセス情報
上野登山口
上野越コースと白糸の滝(八丁越)コースの登山口。駐車場とバス停からは、上り坂を歩いて10分程度かかります。
【クルマの場合】
九州自動車道「八幡」IC―国道200号―上野峡入口
入口の駐車場は駐車台数が少ないため、満車の場合は200m程度離れた赤池町無料駐車場へ
【公共交通機関の場合】
平成筑豊鉄道「ふれあい生力」駅―福智町巡回バス(福祉バス)「上野・市場コース」で「上野峡入口」バス停下車
福智山ダム登山口
【クルマの場合】
九州自動車道「八幡」IC―国道200号―福智山ダム駐車場
ダム周回道路は一方通行。行き過ぎてしまうと、再度、回ってくる必要があるので注意。
【公共交通機関の場合】
平成筑豊鉄道「直方」駅―タクシー利用
吊橋(ます渕橋)
【クルマの場合】
九州自動車道「小倉南」IC―鱒渕公園・徒歩約20分
【公共交通機関の場合】
JR鹿児島本線「小倉」駅―西鉄バス「小倉駅入口」バス停(6:社ノ木二-平和通-徳力団地-中谷行き)乗車―「徳光橋」バス停下車―北九州市おでかけ交通「徳光橋」バス停(小倉南区合馬・道原地区行き)乗車―「道原」バス停下車・徒歩約50分
※ただし、土日祝日は運休、その場合、JR日田彦山線「呼野」駅―タクシー
採銅所駅
【クルマの場合】
九州自動車道「小倉南」IC―国道322号経由
駅駐車場は駅利用者専用のため、登山者利用不可。付近に駐車場はないため、できるだけ公共交通機関を利用しましょう。
【公共交通機関の場合】
JR日田彦山線「採銅所駅」
下山後のおすすめ立ち寄りスポット
福智山下山後のおすすめ立ち寄りスポットを紹介します。
直方がんだびっくり市
上野登山口・福智山ダム登山口からクルマで約15分、直方がんだびっくり市は、市場風の生鮮食品販売施設です。活気あふれるアジアンマーケットのような施設内には、屋台が並んだようなフードコートがあり、和洋中華、様々な食事を楽しむことができます。もちろん、食品や雑貨もたくさん売ってあり、しかも激安。福智山登山のあとは、ぜひ、立ち寄ってみてください。金土日のみ営業なのでご注意を。
直方がんだびっくり市|公式サイト
何度行っても飽きない福智山