中央アルプス三大岩峰のひとつ「宝剣岳」
標高 | 所在地 | 最高気温 (6月-8月) | 最低気温 (6月-8月) |
2,931m | 長野県木曽郡上松町・大桑村・ 駒ヶ根市・上伊那郡宮田村 | 15.6℃ | 1.6℃ |
宝剣岳は、中央アルプス(木曽山脈)の最高峰である木曽駒ヶ岳(標高2,956m)のすぐ南に位置する山。景勝地の「千畳敷カール」から大岩峰として眺めることができ、その迫力に圧倒されます。
氷河により削られた鋭く荒々しい姿は、空木岳(標高2,864m)、仙涯嶺(標高2,734m)とともに、中央アルプス三大岩峰といわれています。
油断は禁物!ピークまでの岩稜登りは防寒対策も
宝剣岳は、その見た目通り急峻な岩峰で、危険な箇所が多く、たびたび滑落事故が起きています。鎖やステップが整備されていますが、岩場を登るための基本知識と登攀技術(三点支持法など)が必要です。
また、登山ルートが険しいうえに、人気のエリアということで、しばしば渋滞が発生し停滞を余儀なくされます。体が冷えないようにすぐに防寒できる態勢や、対策を取っておきましょう。
地図は必ず携帯しよう!
宝剣岳登山する際、地図は必ず携帯しましょう。コースタイムなどが見やすい登山地図がおすすめです。
登山する前は天気もチェック
宝剣岳登山する前は、必ず天気をチェックしましょう。
てんきとくらす 宝剣岳
宝剣岳の見どころや魅力は?
宝剣岳の見どころや魅力をいくつか紹介します。
氷河が作った景勝地「千畳敷カール」
宝剣岳登山で、ほとんどの人が登山口として利用するのが「千畳敷カール」。標高2,600m以上でありながら、ロープウェイで訪れることができるため、一般観光客も多い景勝地です。初夏から夏は高山植物が咲き乱れ、秋は紅葉で染めあげられた山肌が、美しい絶景を見せてくれます。
北アルプスから引っ越してきたライチョウ
宝剣岳を含む木曽駒ヶ岳周辺には、北アルプスから移送したライチョウが生息しています。元々、中央アルプスにはライチョウが生息していましたが、半世紀前に絶滅しました。
近年、北アルプスでも減少傾向のライチョウの生息域を増やそうと、環境省が、2019年から中央アルプスに移送し繁殖を試みています。今では、20羽程度生息していると見られ、もし見かけたら、遠くからそっと見守りましょう。
ゴリラに見える?!天狗岩
千畳敷右回りコース|ロープウェイ利用の最短ルート
最高点の標高: 2874 m
最低点の標高: 2642 m
累積標高(上り): 412 m
累積標高(下り): -412 m
- 【体力レベル】★☆☆☆☆
- 日帰り
- コースタイム:2時間30分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
駒ヶ岳ロープウェイで千畳敷まで行き、宝剣岳へ登る最短ルート。行程が短いので、木曽駒ヶ岳もセットで登る人も多くいます。なお、標高2600m付近まで、ロープウェイで一気に登り、登山開始するので高山病になる可能性もあります。最初は、ゆっくり体を慣らしながら歩くようにしましょう。
千畳敷からスタート
駒ヶ岳ロープウェイを下りると、そこが登山口。準備をして出発します。しばらくは整備された遊歩道、景色を見ながらのんびりと歩きます。
浄土乗越へ向けて八丁坂をひたすら登る
遊歩道が終わると、浄土乗越に向けて、八丁坂という坂の登りが始まります。30分程度、階段が続く登りですが、意外と転倒者があり落石も発生するので、気を付けて歩きましょう。
浄土乗越へ到着
八丁坂を登り上がり浄土乗越へ到着です。宝剣山荘が見えると宝剣岳は左方向。段々険しくなっていきますので、一旦ここで休憩し、装備を整えましょう。
宝剣岳手前で荷物をデポ
宝剣岳へは短い往復になりますので、分岐付近に荷物をデポ(※)し、最低限の荷物だけ持って登ります。なお、ここからはヘルメット推奨エリア。できれば、チェストハーネス、カラビナなどの登攀装備も用意しておきたいところです。
※デポ・・・荷物を登山ルートの途中に置いておくこと。
宝剣岳核心部へ登山開始
宝剣岳核心部への登山開始。滑落事故多発の看板が立っています。登攀技術がない人や、自身がない方はここで引き返すことをおすすめします。
切り立った岩場 鎖場の連続
宝剣岳山頂へ
やっと山頂に到着。岩場の連続でしたが、山頂も尖った岩。よじ登る人もいますが、無理をしないように。山頂は狭いので、長居しないで下山しましょう。下山は往路をそのまま戻ります。岩場は下りのほうが危険、登りより慎重に。
木曽駒ヶ岳登山もおすすめ
宝剣岳から、中岳へは50分、木曽駒ヶ岳へは約1時間20分。ちょっと歩き足りないと思ったら、それらもセットで登山することもおすすめです。
北御所コース|山歩きも楽しめるロングルート
最高点の標高: 2874 m
最低点の標高: 1388 m
累積標高(上り): 3842 m
累積標高(下り): -3842 m
- 【体力レベル】★★★★☆
- 1泊2日
- コースタイム:11時間35分
- 【技術的難易度】★★★★☆
- ・岩場、雪渓を安定して通過できる技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
北御所登山口(70分)→蛇腹沢登山口(60分)→清水平(40分)→うどんや峠(60分)→小屋場(50分)→七合目(80分)→伊那前岳(15分)→浄土乗越(5分)→宝剣山荘
前出の千畳敷コースは、人気の木曽駒ヶ岳へのルートでもあり、登山者が常に多いコースです。したがって、
・静かに歩きたい
・ロープウェイ待ちはしたくない
・木曽山脈の自然を楽しみたい
という人は、北御所コースをおすすめします。ただし、片道6時間以上のロングコース。健脚者以外は1泊するのが通常です。宝剣岳核心部まで特に危険な箇所はありません。
北御所登山口を出発
北御所登山口を出発。しばらく林道を歩きますが、許可車輛以外通行止めなので、のんびり歩けます。
蛇腹沢登山口を通過
林道が終わり、蛇腹沢登山口へ到着。ここから本格的な登山道が始まります。しばらくは、森の中を登ります。
うどんや峠
登山口から約3時間、伊那前岳までの5合目にあたる「うどんや峠」に到着。
うどんや峠とはちょっと変わった名前ですが、由来は、大正時代、このあたりのナナカマドの老木に「お休み処、ちょっと一杯ウドン・ソバあります」と落書きされていたことからだとか。さらに樹林帯を登り続けます。
七合目森林限界を越える
七合目を過ぎ森林限界越え。展望が良くなり、遠くにカールが見えるようになります。ここから気持ちがいい稜線歩きです。
伊那前岳
伊那前岳(標高 2,883.4m)に到着。先には、中岳と宝剣山荘が見えます。今日のゴール、宝剣山荘まであと一息!
宝剣山荘へ到着
浄土乗越で千畳敷コースの登山者と合流。一気に人が増えます。すぐに青い屋根の宝剣山荘に到着。お疲れさまでした。明日の宝剣岳登山に備え、今日はゆっくり休みましょう。
宝剣岳へ
翌朝、宝剣山荘から宝剣岳へ。ここから先は、前述した①千畳敷右回りコースと同じ。ここまでとは違い、一気に危険な登山になりますので、気を引き締めて登りましょう。下山は、往路を戻ります。
ロープウェイを使用すると日帰りも可能
登りまたは下りのいずれかで駒ヶ岳ロープウェイを使用すると、日帰りも可能です。ロープウェイ駅の「しらび平」から登山口へのアクセスは徒歩で約50分です。
宝剣岳へのアクセス
今回紹介したどちらのコースもアクセスは同じ。菅の台バスセンターまたはJR駒ヶ根駅を起点とします。ロープウェイは「しらび平」駅より乗車します。
クルマの場合
中央自動車道「駒ヶ根」IC−県道75号−菅の台バスセンター駐車場にて駐車−菅の台バスセンターより、駒ヶ岳ロープウェイバス乗車−「北御所登山口」もしくは「しらび平」バス停下車
公共交通機関の場合
JR飯田線「駒ヶ根」駅−伊那バス「駒ヶ根駅」バス停より、駒ヶ岳ロープウェイバス乗車−「北御所登山口」もしくは「しらび平」下車
伊那バス|駒ヶ岳ロープウェイバス
駒ヶ岳ロープウェイ
駒ヶ岳ロープウェイの「しらび平」駅から「千畳敷」駅までは約8分の乗車になります。
駒ヶ岳ロープウェイ|公式サイト
各主要都市からの直行バス
なお、各主要都市から駒ヶ根バスターミナルへの高速バスも運行されています。駒ヶ根バスターミナルからは、駒ヶ岳ロープウェイバスに乗り換えることになります。
伊那バス|高速バス
周辺立ちよりスポット情報
宝剣岳登山の際に立ち寄りたい、おすすめスポットを紹介します。
早太郎温泉郷
菅の台バスセンター周辺は、風光明媚な「草太朗温泉郷」でもあり、日帰り温泉や、温泉旅館、食堂などが点在しています。バスセンターから歩いて行ける距離にも多くの施設があるので、下山後の温泉や、食事に便利です。
ご当地グルメの「ソースカツ丼」と「信州そば」
菅の台バスセンターがある駒ヶ根市には、おいしいものがたくさんありますが、特に人気なのが「駒ヶ根ソースカツ丼」と「信州そば」。どちらも、前述の草太朗温泉郷や、駒ヶ根市に提供するお店がたくさんありますので、食べ比べもできますね。
駒ヶ根ソースカツ丼|公式サイト
怖いけど登ってみたい宝剣岳
宝剣岳は、同じ山域にある木曽駒ヶ岳とは違い、危険度が高く、登攀技術や装備を必要とします。とはいえ、鎖やステップはよく整備され、基本に忠実に慎重に登れば登頂できる山でもあり、達成した時の満足感も格別。怖いけど登ってみたい宝剣岳、準備をしっかりして、挑戦してみては?