アルパインクライマーかつ森林で働く林業家。馬目弘仁さんが案内する「里山の魅力」(2ページ目)

釣り好きから世界的なアルパインクライマーに

若かりし頃の馬目さん

提供:馬目弘仁さん(若かりし頃のクライミング)

1969年生まれ、福島県いわき市出身。最高峰は1,000m足らずという海沿いのまちで育った馬目さんが登山に目覚めたきっかけは、意外にも釣りだったそうです。

「僕が小学生の頃にルアー釣りブームが来て、渓流でイワナやヤマメを釣ってみたいという思いで、高校で山岳部に入ったんです。その部室に転がっていた雑誌『山と溪谷』でヒマラヤ登山やロッククライミングを知り、アルペン的な雰囲気に憧れて行きたいと思うようになりました。それからずっと山登りです」

大学は登山のフィールドが近い長野県の信州大学に進学。農学部で林学科を専攻し、あえて大学山岳会には入らず、社会人山岳会に入会しました。

「大学山岳会では山の基礎から学びますが、僕はすぐに岩登りがしたかったんです」

そんな前のめりの発言どおり、入学後は本格的にロッククライミングの世界に没入。大学3年次には半年間休学して初の海外ツアーであるヨーロッパアルプスへ遠征し、さらに22歳の時には初のネパール・ヒマラヤへ。エベレストを中心とするクーンブ山群のクスムカングル峰(6,367m)北稜を登攀したのです。

就職後も止まない登山愛、再び信州へ

大学卒業後は就職し、埼玉県に移住するも、アルパインクライミングは継続。その後4年半勤めた会社を退職して長野県松本市に移住。以来、20年以上、いまも同市を拠点に活動しています。

移住後は松本広域森林組合に就職し、現在はクライミング技術を応用しながら高木を安全に伐採する「特殊伐採」のチームに所属。また、近年は伝染病によるマツ枯れの伐採作業にも携わり、森林現場作業歴は20年以上に及びます。

テンカンポチェ峰遠征

提供:馬目弘仁さん(テンカンポチェ峰遠征時)

その間、2006年には足掛け12年、4回目の挑戦でインド・ヒマラヤのメルー中央稜(6,330m)シャークスフィンに第2登。2008年にはネパール・ヒマラヤのテンカンポチェ峰(6,460m)北東壁に初登攀しました。

そして2012年、「ピオレドール」受賞の対象となったキャシャール峰(6,770m)南ピラーに初登頂。さらに2017年には5,612mの無名岩峰にも初登攀しています。

アルピニストが里山の森林ガイドに。その理由とは?

世界の山々で先鋭的な初登攀を重ねてきた馬目さんですが、本業の林業ではチェーンソーを担いで毎日のように里山に行き、次第にその魅力を実感するようになったといいます。

「一緒に仕事をしている仲間から山菜やきのこを教えてもらったり、時にはブヨに刺されたりウルシにかぶれたりもしながら、面白いばかりではなく時期によっては不快なこともたくさんあるものの、里山もなかなかいいなと思っていました」

2 / 4ページ