山の生い立ちを知ればもっと山が好きになる!山の歩んできた歴史を知って思い出深い山旅にしませんか?そんな山旅の提案をする企画が「歴史を知るともっと楽しくなる!」。
第2回は、八ヶ岳の天狗岳。都心からのアクセスもよく、苔の森や高山植物を楽しめ、ステップアップにも最適な天狗岳は四季を通して八ヶ岳でも人気の山のひとつ。
今回はこの天狗岳の秘密に迫ります。
西面と東面、こんなに違う!天狗岳の地形の謎
実は、八ヶ岳はここ百数十万年の間に何度も噴火をしてできた火山です。
大まかに言うと南の方が古い火山、北の方が新しい火山。
そのため、南八ヶ岳は山体崩壊や浸蝕によって元の形が失われて険しい山並みになっているのに対して、北八ヶ岳は活火山の北横岳周辺をはじめとして火山らしい景観が広がっています。
天狗岳に登る場合、多くの人が茅野から唐沢鉱泉や渋ノ湯に入り、黒百合平を経て天狗岳に登頂する道筋を辿ると思います。
車でも高速道路があり、電車でも特急が通っているので、西側の茅野から登る方が便利。
茅野からしか登ったことのない人は、”苔の森をのんびり登り、岩場を登ったり急斜面を登ったりするのは山頂直下の岩場だけ”というイメージの方が多いと思いますが、実は東側の稲子湯や本沢温泉の方から登ってくると印象がだいぶ異なります。
熔岩が作ったなだらかな山並みの西麓
渋ノ湯や唐沢鉱泉から登ってくると、地表に岩がごろごろして苔むした森を登ってくることになります。これはいずれも熔岩。
天狗岳周辺の熔岩は、約18万年前~4万年前の噴火によってできたと考えられています。
噴火後にまだ時間があまり経っていないので、岩を覆うほどの土壌がまだできておらず、苔むした岩の森が北八ヶ岳の名物となっています。
すりばち池は、溶岩流の凹凸の間にできた窪地に水が溜まってできました。
東側は崖。落ちたら助かりません!
一方、東側から見ると印象は全く異なります。
西麓から見ると、赤岳や阿弥陀岳、あるいは蓼科山といったもっと目立つ山の陰に隠れがちですが、東麓から見ると「天狗岳ってこんなにかっこいい山だったっけ?」と思う方も多いのではないでしょうか。
東から見ると、崖の上に聳えています。
なぜこんなにも西側と東側とで、山容が違うのでしょうか。
千曲川沿いに残る地名の謎
他にも天狗岳東麓には色々な謎があります。たとえば奇妙な地名。
海も大きな湖もないのに、「海」のつく地名が多いのです。「小海」「海ノ口」「海尻」がそれ。
海ノ口には「湊神社」まであります。さらには、なぜか古墳時代までの遺跡が発見されない地域もあります。
何か関係はあるのでしょうか。
地震で天狗岳が崩れ、大洪水が起きた!
天狗岳東麓と西麓の山容の違い、そして海の名前が多いという謎。
そこには歴史的大災害が関係していました。