【あのギザギザの正体は??!】富士山の謎は「五合目」にあり!日本一の山を解き明かそう

2021/06/09 更新

富士山の絵にはつい「ギザギザ」を描いてしまう。そんなことありませんか?実はあのギザギザは、みなさんが登山口として利用する「五合目」ととても深い関係があるのです。富士山の噴火の影響が及ぶ範囲や、積雪と富士山の関係など、「五合目」をキーワードに見てみると、貴方の知らない「富士山の素顔」が見えてくるかもしれませんよ!

制作者

登山ガイド・山伏・応急手当普及員

田村茂樹

生き方に悩んでいた自分を救ってくれたお山に恩返ししたいと登山ガイドになる。街道歩きや里山登山からバリエーションルートや雪山登山まで幅広いフィールドを案内している。山の歴史や信仰や古道、地理・地形・地質の解説が得意。

田村茂樹のプロフィール

...続きを読む


アイキャッチ画像出典:PIXTA

富士登山のスタート地点「五合目」の謎

出典:PIXTA(吉田口五合目)
富士山には人気のある吉田口や富士宮口をはじめとして、御殿場口や須走口、他にもいくつか登山口があります。一合目から登ることも可能ですが、多くの方は五合目から登ることでしょう。

登山者
五合目まで車で行けるのなら、もうちょっと高くまで車で行けないものだろうか。


そんな風に思ったことはありませんか。この記事ではそんな五合目にまつわる謎を解き明かしていきます。

そもそも「◯合目」はどのように決まっているのだろう?

撮影:筆者
ところで、そもそも「◯合目」はどのように決められたのでしょうか?

今ではいろんな山に「◯合目」という目安がありますが、その発祥は富士山と言われています。その意味のいわれの代表的なものをご紹介します。

・一升の米をあけた形を富士山に見立てたときに、◯合の米が積もったあたりを◯合目とした。
・登りを生涯にたとえて、山頂到達で一生(一升)、それを十に分けて◯合目とした。
・富士山は修行で登る山でもあったため、仏教で説かれる、解脱に至るまでに超えていく十の世界を各◯合目に当てた。
・登るときに道に迷わないようにお米を落としながら登り、その1合分が無くなったところを一合目と呼んだ。

では「五合目は?」というと、いろいろな紆余曲折を経て、今では車道の終点としているようです。

実はあのギザギザは「五合目」に関係あり?!

なんで五合目までしか車で行けないのか?それは車で行ける限界を五合目としているから。


では答えになっていないので、なんでその高さまでしか車で行けないのかをここから考えていきましょう。

出典:PIXTA
雪の積もった富士山を描くと、イラストのように雪をギザギザに描くことが多いと思います。このおなじみのギザギザ、実は富士山の地形や五合目と深い関係があります。


謎解きその1|噴火の後遺症で木が生えておらず、地面が安定していない

富士山のギザギザ
出典:PIXTA、加工:編集部
写真は空から見た富士山です。よくよく見ると、富士山の下半分に広がる森の上側の縁、つまりは森林限界がギザギザになっていて、右側にジグザグに登っている富士山スカイラインは森林限界のところで止まっていて、そこが五合目になっています。

富士山は活火山なので、噴火が起こると地表には火山岩が堆積して、植物はいったん死に絶えてしまいます。噴火が落ち着いて下から再び生息範囲を広げてきたところ(つまり森林限界以下)は地表が比較的安定していて、自動車道路を造ることができますが、それ以上になるとまだ地表が安定しておらず、道路を造っても結局崩れて埋まってしまうのです。

謎解きその2|小さな沢沿いに雪崩や土砂崩れが起きて木が生えられない

出典:PIXTA
ところで、緑のギザギザに加えて、雪の積もっている下側の縁もギザギザになっていることに気づきませんか?

よくよく見ると、沢の部分には緑がなく白くなっています。これには、沢沿いには雪崩や土砂崩れ、雪代といった災害が起こりやすいことが関係しています。
出典:中部地方整備局富士砂防事務所ホームページ (https://www.cbr.mlit.go.jp/fujisabo/bosai/bosaimanabu/bosaimanabu-dosekiryu.html)内「土石流の映像」より
「雪代」というのは聞き慣れない言葉ですが、動画のような大規模な雪崩が土石流となり流れ下るものです。

これだけものすごい土石流が起きるようなところでは、当然ながら木は生えられないので、雪のない時期には緑色ではなく茶色に見えます。

冬に向けて雪が積もっていくと、樹林帯は木に雪が積もるのでそこまで白く見えませんが、このような沢には地面に直接雪が積もり、白が際立って見えるようになります。冬に見える五合目の白いギザギザの正体はこういうことだったのです。

出典:PIXTA

方角を変えて見ると・・・

富士山の方角
出典:PIXTA(北側から見た富士山)、いらすとや
写真は北側から空撮した富士山です。左側が東、右側が西です。

東に雪がたくさん積もっている理由は、ひとつには冬の季節風の影響があります。日本海を渡って西から吹いてきた季節風が富士山に当たると雪を降らせますが、風上の西側は強風で飛ばされてしまって積もりにくく、東側に吹きだまる傾向があります。その影響がよく見えます。

もうひとつの理由は、五合目と関係があります。五合目に森林限界があり、その上の裸地に積もったところが白く見えやすいというお話をしました。

ということは、東側にはこれだけ低いところまで森林がないということ。いったいなぜなのでしょうか?

「五合目の標高が同じじゃない」って知っていましたか?

富士山五合目の標高
出典:YAMAP、加工:編集部
「五合目」というと、どの登山口も同じ標高かと思ってしまいそうですが、実は登山口によってかなり違います

いちばん高い富士宮口の五合目が2380mなのに対して、御殿場口の標高は1440m。なんと1000m近い標高差があります。登る距離にしても、富士宮口は4.3kmに対して、御殿場口はなんと10.5kmです。


300年前に起こった大噴火が原因

なんでこんなことになったのでしょうか。これには富士山の噴火の歴史が関わっています。


出典:PIXTA(東側から見た富士山)

富士山を東側から眺めると、山腹に空いた大きな火口が目に入ります。富士山の噴火ではかなり大きな部類で、噴火が起きた時代の元号にちなんで宝永火口と呼ばれています。今からおよそ300年前の江戸時代、1707年冬のことです。噴火は約2週間続きました。

火山灰は東へ。登山道が埋まった!

出典:宝永四年富士山噴火絵図、提供:静岡県立中央図書館歴史文化情報センター
絵図や文書など当時の史料を見てみると、火山性の地震や噴火の衝撃波による空振が起こり、立ち上がった噴煙の中で火山性の雷が起こる様子も記されています。

火山灰や火山弾の多くは山腹に降り積もり、当時のメジャールートであった村山口や須山口といった富士山の東南面に位置していた登山ルートも大打撃を受けました。いちばん影響の大きかった須山口では登山道が火口で寸断されてしまったため、復旧にはは73年の月日がかかっています。

御殿場口があるのはこの宝永火口の東側で、300年前に埋まってしまった森林がまだ復活しておらず、森林限界が低くなっています。五合目もそれに合わせて低くなっているというわけです。

火山灰は江戸まで到達!

吹き上がった火山灰や軽石は偏西風に乗って遠く100km以上にまで届きました。江戸でも火山灰が約4cmも積もり、直径1mm程度の軽石が降ったことが発掘調査で確認されています。

出典:神奈川県山北町文化財調査報告 1 河村城跡(噴火前の農地の土と火山灰を入れ替えて畑を復旧した跡)
火山灰や軽石は麓にも降り注ぎ、多いところで3m以上も降り積もり壊滅状態となった村もあります。

写真の場所(神奈川県西部)はそこまでひどくはありませんでしたが、なんと数十cmも畑に積もった火山灰をそれまでの畑の土と天地返しして畑を復旧した痕跡が見つかりました。想像もできないほど当時の人々が苦労した跡が忍ばれます。

さらに追い打ちをかけたのが洪水です。降り積もった堆積物が雨で流されて川底に堆積し、川の高さ(河床)が上がって洪水が起きやすくなってしまったのです。こうした状況を乗り越えて農作物の収量が回復して立ち直るのに80年ほどかかったことが、年貢などの記録からわかるそうです。

きれいな左右対称の円錐形に見える富士山ですが、実はよく見るとそうではなく、過去の大きな噴火による影響が「五合目」にも現れているのです。

五合目だけでも面白い富士山

出典:PIXTA
さすが富士山は日本一だけあって、五合目だけをとっても、歴史や植生や地質などの違いが見れて面白いですね。

自然の営みの面白さ、人間の営みとの関わり。そんなことに興味を持ってみると、また富士登山の面白さが倍増します。皆さんも味わってみてはいかがでしょうか。

 

こちらの記事もどうぞ


関連する記事

関連する山行記録 byヤマレコ

この記事が気に入ったら
「いいね!」をしよう
登山専用コミュニティサイト「ヤマレコ」