暗殺にも使われた毒成分!?黄色の体液を出す「ツチハンミョウ」の対処と応急処置」

2021/06/08 更新

黄色の体液を分泌する、ツチハンミョウという昆虫を知っていますか?大きめのアリにも似た姿で、出会うことはあまりないかもしれませんが、かなりの猛毒を有する昆虫なんです。今回は、そんなツチハンミョウ、また仲間でもあるマメハンミョウの生態・毒液に触れた際の応急処置をご紹介します。


アイキャッチ画像出典:PIXTA

黄色の毒液を分泌する「ツチハンミョウ」

メノコツチハンミョウの雌
出典:PIXTA(メノコツチハンミョウの雌)
「ツチハンミョウ」は、コウチュウ目ツチハンミョウ科に属する昆虫の総称。
この虫、生息密度が高い生物ではないため、遭遇するのは稀な昆虫。そのため虫好きの人であれば、青光りするその独特の姿に思わず触ってみたくなるかもしれません。
ですが…実はこのツチハンミョウ、有毒生物のため注意が必要です。

大きめのアリに似たツチハンミョウ

ツチハンミョウ
出典:PIXTA(ツチハンミョウの雌)
ツチハンミョウの大きさは1〜3cm程度。頭部と比べて腹部が大きく膨らんでおり、見た目は”青光りする大きなアリ”といった印象です。
ボテっとした体についている羽は退化しており飛ぶことができないので、ひたすら地面を歩いて移動します。ちなみ触覚にコブがあるのが雄。

ヒメツチハンミョウのオス
出典:PIXTA(ヒメツチハンミョウの雄)
ツチハンミョウは危険を感じると、関節から毒を含んだ黄色い体液を分泌します。
その体液は「カンタリジン」という成分を含み、毒性がとても強く皮膚に触れると赤くただれたりするので要注意。

エサを横取り?横着な幼虫時期

シロスジヒゲナガハナバチ
出典:PIXTA(シロスジヒゲナガハナバチ)
ツチハンミョウは幼虫の時期、「ハナバチ」に寄生する生態があります。幼虫たちは茎をよじ登り、咲いている花の上でハナバチの飛来を待機。運良く訪れたハナバチにしがみつき、そのまま巣まで連れていってもらいます。
海外のツチハンミョウでは、ハナバチの雌のフェロモンに似せたにおいを発して、雄を呼びつける種もいるとか。一度雄にくっつき、次に雌につく機会を狙っています。

そして巣に潜り込んだら、ハナバチの卵やハナバチが集めた花を捕食すことで成長。その後成虫になると、林や草原を徘徊しながら葉物を食す生活を送ることになります。

ツチハンミョウの行動傾向を探ろう

遭遇しやすい場所

ヒメツチハンミョウ
出典:PIXTA(ヒメツチハンミョウ)
北海道から九州まで、全国的に分布しているツチハンミョウ。主に低地から山地の雑木林などに生息しており、日中に地面を歩いているところを発見する形で遭遇することが多い虫。

アオカミキリモドキ
撮影:西海太介
ちなみに同じ毒成分を持つ生物に「アオカミキリモドキ」という虫もいます。花粉を食べ光に集まる性質があることから、花の上や夜のトイレ、自動販売機などで遭遇するケースが多いため、あわせて注意しましょう。

ツチハンミョウの活動時期

メノコツチハンミョウの群れ
出典:PIXTA(メノコツチハンミョウの群れ)
ツチハンミョウは春~初夏、だいたい3月〜5月ごろに活動的になります。日本に生息するツチハンミョウの仲間は15種類。
標高や地域によって活動時期が変化することもありますが、大抵のツチハンミョウは秋を過ぎると越冬します。

同じコウチュウ仲間、マメハンミョウ

マメハンミョウ
出典:PIXTA(マメハンミョウ)
ツチハンミョウと同様にコウチュウ目に分類される「マメハンミョウ」についても少し学んでいきましょう。
ツチハンミョウと同じ毒成分を体に秘めているので、こちらも注意が必要な昆虫です。
マメハンミョウ
出典:PIXTA (マメハンミョウ)
マメハンミョウは、本州から九州まで分布しており、その大きさは12〜20mm程度。頭部が赤く、背中の白黒のストライプ模様が特徴的な昆虫です。
幼虫期は、イナゴやバッタなどの卵を食べる肉食性。成虫になるとシロツメクサなどの野草を食べる草食性で、ソラマメを育てているような畑やマメ科植物の多く生えるエリアに生息し、農業害虫としても知られています。
ただツチハンミョウと同じく、特別密度高く生息するタイプの虫ではありません。

食べたら死ぬ!?強烈な毒性

毒イメージ
出典:PIXTA
マメハンミョウも、カンタリジン成分を含んだ黄色い毒液を関節から分泌します。以前は、マメハンミョウを乾燥させて粉にし、食事に混ぜることで暗殺に使われたという怖い説も…。
1〜2匹ほどで致死量に至るという恐ろしいマメハンミョウですが、微量使うことでかつては薬として活用されていたこともあります。
もし遭遇しても、触れることはもちろん間違っても口にしてはいけません。

毒液が引き起こす怖い被害

ただれのイメージ
 出典:PIXTA(ただれのイメージ)
ツチハンミョウやマメハンミョウが分泌する毒成分のカンタリジンが皮膚についても、直後の自覚症状はありません。
しかし、数時間後には火傷のような赤くヒリヒリとした痛みを伴うようになり、ただれたり水ぶくれなどの症状につながる場合もあります。

見つけても決して触れない

メノコツチハンミョウの雌
出典:PIXTA(メノコツチハンミョウの雌)
ツチハンミョウは毒を持つ危険な虫ではありますが、普段は地面を歩き回り飛ぶことがないので、向こうから襲いかかってくることはありません。
そのため、こちらから触れない限り被害に遭うことはないでしょう。もし見つけても、珍しい姿に興味本位で触らないようにしてください。

もしもの時はそっと排除

危険
出典:PIXTA
「手をついた柵」、「座ったベンチ」に危険生物がいて被害に遭う…こんなケースも珍しくはありません。できれば、登山時にベンチや柵などに触れる際、危険生物がいないかよく確認する習慣を持ちたいですね。
ツチハンミョウが有毒で触れてはいけないことを知っていると、事前に事故を予防することができます。
万が一、偶発的にツチハンミョウがウェアなどについた場合は、体液がつかないようにそっと取り除きましょう。

毒液に接触した時の応急処置手順

登山中に、運悪くツチハンミョウに触れてしまった時の応急処置の手順をご紹介します。
しっかり処置することで予後も変わってきますので参考にしてください。

①患部を水洗い

水洗い
出典:PIXTA
黄色い体液がついてしまったら、すぐに患部を水でよく洗い流してください。体液がついたままでいると、炎症症状が現れるため、できるだけ素早くしっかりと洗い流すことが大事な応急処置になります。

②抗ヒスタミン薬を塗布

抗ヒスタミン薬
出典:PIXTA
よく洗い流したら、ステロイド配合の抗ヒスタミン薬を患部に塗りましょう。こうした薬剤を塗布することによって、ただれや水ぶくれなどの症状の軽減が期待できます。

③重い症状の場合は病院へ

病院イメージ
出典:PIXTA
上記の応急処置をしても、ただれや痛み、水ぶくれが酷い場合には、下山後に病院を受診するようにしましょう。基本的に命の危険につながることがないとはいえ、無理は禁物です。

出会っても触らなければ大丈夫!うっかりに気を付けて

雌のヒメツチハンミョウ
出典:PIXTA(ヒメツチハンミョウの雌)
こわい毒液を分泌するツチハンミョウですが、飛ぶことができないので、向こうから襲いかかってくる心配はありません。
そのため、出会ってもこちらからちょっかいを出さなければ心配無用。ツチハンミョウを知っているだけで、未然に事故を防ぐことが可能です。珍しい…とうっかり触らないように注意しましょう!

今回教えてくれた人

ウミ先生
提供:西海太介
一社)セルズ環境教育デザイン研究所|西海太介氏
神奈川県横浜市生まれ。
『危険生物対策』や『アカデミックな自然教育』を専門とする生物学習指導者。
 
昆虫学を玉川大学農学部で学んだ後、高尾ビジターセンターや横須賀2公園での自然解説員経験を経て、2015年「セルズ環境教育デザイン研究所」を創業。
現在、危険生物のリスクマネジメントをはじめとした指導者養成、小中学生向けの「生物学研究コース」などの専門講座を開講するほか、メディア出演や執筆・監修、中華人民共和国内の自然学校の指導者養成を行うなど幅広く携わる。
監修書籍に『すごく危険な毒せいぶつ図鑑』(世界文化社)。
著書に、『身近にあふれる危険な生き物が3時間でわかる本』(明日香出版社)など。

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emi

山や自然が大好きで、今までにたくさんの楽しみや感動をもらってます。山で見る満天の星空と朝焼は格別!大自然のパワーを多くの人に感じて欲しいです。読んだ人が、山に行きたくなるような記事を執筆できるよう頑張ります。

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