『ランドネ』編集長が立ち上げた登山コミュニティ『KUKKA party』両方の活動から伝えていきたい想いとは?(2ページ目)

佐藤 泰那さん

撮影:YAMAHACK編集部

ーーーでも登山やアウトドアは、佐藤さん自身が当時心から興味を持ってやりたいと思っていたから、どんどんハマっていったのではないでしょうか。

佐藤さん
実は、大学までは完全にインドア派で、特に趣味と言えるようなものもなくて。好きなことと言えば読書くらいで、ずっと家にいました。
アウトドアは初めて夢中になれたものなんです。

ーーーいくら自分から好きになったこととはいえ、10年以上もずっと同じ雑誌を続けてこられたのはすごいことだと思います。
『ランドネ』を作り続けていることはもちろん、ご自身が登山を続けてスキルアップし続けている。なぜモチベーションを保ち続けられるのでしょうか?

佐藤さん
まず『ランドネ』の仕事は、ずっと同じ仕事をしているという意識がないんです。その時々で読者層も変わるし、伝えたいこと、伝えなければならないことも変わっていきます。

また、『ランドネ』に関わってくださっているプロの方々が、常に素晴らしい世界を見せてくださるから、楽しく続けてこられたのだと思います。

ーーー確かに私も『ランドネ』でたまにお仕事させていただいていますが、様々なプロの方に取材させてもらうと、自分もそこに行ってみたくなったり、やってみたくなったりしますものね。

とはいえ、私は低山をゆるっとハイキングをするのが好きなので、2,000メートルを超える山などは行ったことがないのですが(笑)。
佐藤さんは、ここ数年は難易度の高い山にも挑戦されてます。恐怖心などはないのでしょうか?

初めて挑戦したアイスクライミング

提供:バーチャルアイスキャンディフェスティバル2021(初めて挑戦したアイスクライミング)
佐藤さん
実は先日、真冬にアイスクライミングに初めて挑戦したんです。
八ヶ岳の山小屋、赤岳鉱泉で毎年開催されている「アイスキャンディフェスティバル」というイベントがありまして、今年はオンライン開催だったんですが、ご主人の柳沢太貴さんからオファーを受けました。

初心者がアイスクライミングに挑戦するという企画に出てもらえないか、と。

ーーーえー!アイスクライミングですか!でもオファーを受けたからといって「じゃあ出よう!」とはならないと思うのですが…(笑)。その度胸はどこから湧いてくるのでしょうか?

佐藤さん
そうですよね。
でも、オファーをしてくれるということは「この人ならできそう」と思ってくれているということなのかな…と。だったらやってみよう!と。
いつもそんな感じで、できるだけお誘いには乗ってみることにしています。

ただやっぱり不安だったので、ガイドの天野和明さんに相談し、事前に岩登りの練習に連れていってもらいました。
山梨と丹沢で二度とほど岩登りをやって本番に挑んだのですが、その二度の練習だけでもアイスクライミングに生かせた気がしました。

自ら起業して登山コミュニティを立ち上げ

KUKKA ロゴ

ーーー昨年(2020年)に『ランドネ』とは別に会社を起業し、登山コミュニティ「KUKKA Party」を立ち上げられたんですよね。その経緯と活動内容を教えてください。

佐藤さん
「KUKKA Party」を立ち上げたのは、
アウトドアをもっと楽しみたいという方を応援するのに、『ランドネ』という軸で活動するだけで十分なんだろうか…という思いを抱いていたことがきっかけでした。

ーーーそれは読者の皆さんからそういう声があったのでしょうか?

佐藤さん
ランドネでも「ランドネ山大学」という読者参加型のイベントなどはやってきました。
そういう時に、参加者の方にアンケートを取ると、必ず「登山に一緒に行ける友達が欲しかったから参加した」という声をもらっていたんです。

私自身、登山を続けてこられたのは、山のプロの方や先輩、仲間に恵まれたからなので、これから登山を始めたいと思っている人にもそういう機会を提供したいと思いました。

佐藤さん
ランドネでやることも考えたのですが、チームを巻き込むとなると、プロジェクトをスケールさせることが必要になる。
そうではなく、興味を持ってくださった方、一人ひとりの気持ちに寄り添える形を考えたかったんです。

それで、フィールドアンドマウンテンの山田淳さんをはじめ、いつもお世話になっているアウトドア関係の方に相談して、起業を決めました。

六甲山系 須磨アルプス

提供:KUKKA Party(2020年9月にKUKKA Partyのメンバーと訪れた六甲山系の須磨アルプス)

ーーー確かに登山は誰と行くかで楽しさが変わってきますよね。

佐藤さん
私が登山を始めて心が豊かになったと感じるのは、一歩先を見せてくれる仲間や先輩と出会えたことが大きいんです。そんな仲間や先輩がいるからずっと登山を続けてこられました。

だから、これから登山を始める人に仲間作りと先輩作りをお手伝いしたかったんです。それも、”大事な人に大事な人を紹介する”ような感覚でできるといいな…と思いました。


佐藤さん
そういう場があることによって、登山をやってみたい。幅を広げたいと思いながらも躊躇している人に、一歩を踏み出してもらえたら…と思っています。

ーーー佐藤さんが雑誌の仕事とは別にコミュニティを立ち上げると聞いたとき、雑誌を作っているだけでは物足りなくなったのかな…と思いました。
次のステップに進みたいといった気持ちもあったのですか?

佐藤さん
そういうのは全然なかったのですが、
会社だと自分がいくら面白いと感じても、いろんな事情ですぐに始められないこともありますよね。
それは大きな組織だとしかたのないことだし、悪いことだとは思っていません。大きな組織だからこそできることもありますから。

だけど、もっと小さな規模なら、とりあえずやってみてトライ&エラーを繰り返していくこともできます。
人生のなかで、言い訳せずに自分でやってみる場を持ちたかったというのも、立ち上げた動機の1つとしてはあります。

”ステップアップしたいわけではない”人も山を楽しめるように

八ヶ岳 硫黄岳

提供:KUKKA Party(2020年9月に登った八ヶ岳の硫黄岳)

ーーー「KUKKA Party」には誰でも入れるのでしょうか? また、主な活動内容を教えてください。

佐藤さん
立ち上げた昨年7月に第1期のメンバーを、今年4月に第2期の募集をしました。現在は45名ほどです。今後も定期的にメンバーの募集はしていくつもりです。

主な活動は月に2回のオンライン定例会と、月に1回程度のペースで、日帰りか1泊2日ほどで登山に行っています。

※現在は募集期間は終了しています。

ーーー月1回の登山はどれくらいの難易度の山に行くのですか?

佐藤さん
去年は八ヶ岳、六甲山、栗駒山などに行きました。
日帰りと1泊2日の山小屋泊、テント泊など日程はさまざまですが、ガイドさんに同行してもらうことが多いです。

須川湖キャンプ場

提供:KUKKA Party(栗駒山に登った時には、前日に須川湖キャンプ場に泊まった)

ーーーちなみにメンバーの方の登山経験はどれくらいの方が多いのですか?

佐藤さん
登山を始めて1〜2年くらいの方が多いですね。経験ゼロで入ってくれる方もいます。
今回第2期のメンバーを募集してみたら、「経験ゼロでも入れますか?」という問い合わせが何件かあったので、やっぱり登山仲間がいなくて一歩を踏み出せないという方が多いのかな、と。

ーーー確かに経験ゼロで登山を始めたいと思っても、誰か経験者が身近にいないとなかなか始めにくいですよね。山岳会に入るか、アウトドアショップなどが主催するツアーに参加するくらいしか方法がないかも。

佐藤さん
女性で山岳会に入る方が最近増えていると聞きます。
KUKKA Partyも「コミュニティ」と言ってますが、どちらかというとイメージは山岳会のほうが近いかもしれません。

ーーー山岳会って、私の勝手なイメージですけど、ベテランの方が多くて、厳しく指導されそうな気がしてハードルを感じてしまうんですが(笑)、初心者が登山を始める場としては最適かもしれないですね。

佐藤さん
山岳会もいろいろあるとは思いますが、KUKKA Partyは”スキルアップしなくてもいい”場所です。人によっていろんな楽しみ方があっていいと思っています。

ただ、プロのお話を聞いたり、メンバーの山行に刺激をもらったりして、新しい景色を見てみたい、そのためにステップアップしたいと思うようになる方も多いですよ。

オンラインお茶会の様子

提供:KUKKA party(イレギュラーで開催したオンラインお茶会の様子。GOMAの中村亮子さんにレクチャーしてもらい、手作り行動食を作ってみんなで食べておしゃべりする楽しい時間を過ごしました)

ーーー定例会はコロナ禍だからオンラインで開催しているのでしょうか?

佐藤さん
第1期の募集の時には、実は対面でやるかオンラインでやるかは決めていなかったんです。
東京近郊の方だけだったらリアルな場で集まるのがいいかなと思っていたのですが、メンバーの方の居住地のエリアが広いという理由でオンラインにしました。

それに、子育て中の方や仕事が忙しい方もオンラインの方が参加しやすいと言っていただいています。

ーーーどんな内容なのですか?

佐藤さん
毎回ゲストに来ていただいて色々なお話をしていただき、メンバーの方とも交流していただいています。

例えば、次の登山イベントに向けて、ガイドさんから必要な知識や技術を教えてもらったり、カメラマンさんに写真の撮り方をレクチャーしてもらったり、先日はアウトドアスタイル・クリエイターの四角友里さんに出ていただいたりもしました。

ーーー定例会以外にも、日頃からメンバー同士の交流は活発なのでしょうか?

佐藤さん
LINEやFacebookグループで連絡を取り合っていて、街で集まることもあります。
少しずつメンバー同士のやりとりも活発になってきていて、私も嬉しいです!

雑誌作りやコミュニティ運営に限らず、できることを考え続けていきたい

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