「遭難するわけない」は慢心かも……。実録から学ぶ、リスクを最小限に抑えるための対策とは?

2021/05/10 更新

山の経験値が高くなればなるほど、知識や自信がついていきます。「自分は遭難するはずない」と思っていても、もしかしたらそれって慢心かも……。何か起きても対応ができる、または起こらないようにするためには何が必要なのでしょうか。今回は実際に、「ちょっとした油断」が原因で遭難してしまった登山者にインタビュー。当日の状況とともに、今後実践していきたい「リスクを最小限に抑えるための対策」について伺いました。

提供:平田さん

何回も登ってるんだから、遭難するわけないっ!

出典:いらすとや、編集:YAMA HACK編集部
とある山に50回ほど登っているA男さん。地図も把握していて、景色もある程度見ればわかる。だから彼はいうんです。

「絶対に迷うはずがない」と。

ただそんな彼が

出典:いらすとや、編集:YAMA HACK編集部
初ルートへ挑戦する時、地図も準備していたにもかかわらず、道を間違えて自分の居場所がわからなくなってしまいました。

彼が遭難してしまった理由は何だったのでしょうか。

それは

出典:いらすとや、編集:YAMA HACK編集部
自分の感覚を頼りに歩いてしまったこと。地図を見るだけで、判断しているつもりになっていたのです。

これはあくまでも仮想のお話。ただ、もしかしたら明日は我が身かもしれません!

「自分は大丈夫」は、大丈夫じゃないかも

山の経験値が高くなればなるほど、知識や自信がついていきます。「自分は大丈夫」と思っていても、もしかしたらそれって慢心かも……。どんなに準備をしていても、遭難は誰にでも起こりうることなのです。

今回インタビューした平田さん(仮名)は、登山歴15年。日本だけでなく海外の未踏峰にも挑戦している登山者です。そんな彼が当日判断を誤り、遭難してしまいました。

平田さんはどんな対策をしていたら、よかったのでしょうか。当日の状況とともに、「遭難のリスクを最小限に抑える」ために実行するようになったことを伺いました。

馴染みのある山だから。「迷う」なんて思ってもいなかった

出典:PIXTA
彼の登山計画は、半年間準備をしていた「奥利根〜丹後山〜十字峡」の沢登りルート。利根川の源流を登るバリエーションルートで、奥深い谷間からスタートします。同行者も登山キャリアが長く、信頼あるバディだったとのこと。山域自体は20回以上経験していましたが、このルートは初の挑戦だったそうです。

「ちょっとした油断」は、なぜ起きてしまったのでしょうか。

遭難した原因は何でしたか?

出典:PIXTA
平田さん:分岐で道を間違えたことです。

同行者の「こっちだね」という言葉に疑いを持たず、自分も誤った選択をしてしまいました。お互い経験と信頼がある分、「この人が間違えるわけない」と思ったんです。

もちろん地図とコンパスで方向確認を随時していました。ただ今思うと「大丈夫だろう」という慢心により、「確実に判断すること」が疎かになってしまっていたんだと思います。

携帯にGPSアプリを入れていましたが、上手く座標をキャッチできていなかったので、確認をせずザックに入れっぱなしでした。そのため、正しいと思い込んだまま誤った道へ進んでいってしまったんです。

1番に考えたのは家族のこと。2番目に仕事のこと。

出典:PIXTA
見晴らしのいい尾根まで登ると、想定とは180度異なる景色が広がっていたそうです。そこでようやく自分が遭難したことに気づいた、という平田さん。

救助を呼ぼうにも電波がない。そんな状況のなかで、同行者とともに冷静に状況を整理して、最前の策を考えました。その時の心情と対応について伺います。

自分が遭難したとわかった時、どんなことを考えましたか?

出典:PIXTA
平田さん:家族のことや仕事に迷惑をかけたらどうしようという思いがずっとありました。不思議と自分のことではなく、周りの人のことを考えてしまうんです。

ただそうすると、「すぐに家へ帰るため」が先行して、ついムリな判断をしてしまいそうに。的確な判断ができないと思ったので、ただ自分が生きて帰ることだけに集中しました。

具体的にどんな行動をとりましたか?

提供:平田さん(本来いく予定だった尾根が目の前に)
平田さん:その日下山口に迎えを呼んでいたので、その人が救助を呼んでくれると思いました。そのため、見晴らしのいい尾根に宿泊。ただ翌日になっても救助がこなくて、このままでは水不足になると判断し、来た道を戻ることにしたんです。ある程度現在地がわかり、ロープやハーネスなどでの登攀経験のあるメンバーだったので、そう判断しました。

提供:平田さん(救助が来た時、発見しやすいようにとサバイバルシートを木に巻きつける)
平田さん:すると最初の誤った分岐あたりで、救助のヘリが来てくれたんです。驚きとともになぜこんな谷間で発見できたんだろうと疑問でした。

「ヒトココ(※ココヘリ の旧名称)持っていますよね!?」と救助隊の方にいわれてハッとしたんです、これのおかげだったのかと。

事前に家族へ山岳捜索サービスであるココヘリのIDと下山予定日を伝えていたので、いち早く救助の連絡をしてくれていたんです。何かあったときのお守として身につけていましたが、まさかこれに助けられるとは。

「本当に見つかるんだ」という感動と救助隊が来てくれたことに対しての安堵の気持ち、そして迷惑をかけてしまって申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。

家族も随時連絡を受けていたようで、状況を確認できて安心できたそうです。本当に持っていてよかったと心から思いました。

山へ向けて、家を出た瞬間から「遭難している」つもりで

出典:PIXTA
あらためて自分の知識や技術、装備の不足を実感したという平田さん。登山に対してどんな意識や準備が変わったのでしょうか。具体的な対策について伺いました。

遭難後、山登りに対して変わったことは何ですか?

出典:PIXTA
平田さん:山での緊急時を想像してから、出発するようになりました。緊急時用の装備は用意していたものの、実際に使用するシーンまでイメージできていなかったんです。

自分がどんな状況になっても、対応できるように「スタートから遭難しているつもりで」ありったけの準備をしておく。その大切さに気づいて、以前よりも積極的にできるかぎりの装備を用意するようになりました。

必ず準備するようになったものを教えてください。

提供:平田さん(ザックにつけている緊急時用のセット)

・ココヘリ
・GPS

平田さん:知識や技術の見直しに加えて、遭難対策の装備としては、この2つを必ずもつようにしています。今回もしも足を怪我して動けなくなっていた場合、ココヘリを持っていなかったら見つかっていなかったかもしれません。

また、スマートフォンのGPSアプリに加えて、単体機器も用意するように。機器には疎い私でしたが、登山のGPSツールを探すと本当に性能がいいものばかりで驚きました。

どんな状態になっても生きて帰れる知識や技術はもちろん、装備も常にアップデートすることで、遭難のリスクは最小限に抑えられるのではと思います。

登山者として、できる限りの備えを

出典:PIXTA
「これから遭難しにいく」といったら大袈裟ですが、そんな心持ちを持って登山への準備をすることは大切だと、今回のお話を聞いて感じました。

自分の知識や技術はもちろん必要ですが、そのほかにも安全管理のための装備は日々進化しています。リスクを最小限にするためにも、装備を積極的に取り入れていみてはいかがでしょうか。

自分のためにも、大切な家族のためにもありったけの備えをして登山へ出かけたいですね。

▼山岳遭難サービス「ココヘリ」について詳しく知りたい人はこちらをチェック


▼GPS・登山アプリについて詳しく知りたい人はこちらをチェック


▼遭難実例をほかにも知りたい人はこちらをチェック

\ この記事の感想を教えてください /
GOOD! BAD

関連する記事

関連する山行記録 byヤマレコ

この記事が気に入ったら
「いいね!」をしよう
YAMA HACK編集部 宮下

YAMAHACK記事編集担当。大学時代に入部したワンダーフォーゲル部をキッカケに登山好きに。マイテントを担いでソロ登山を楽しんでいます。登山の魅力や新しい発見を届け、1人でも多くの人に登山っていいなって思ってもらえるような記事制作に励みます。

登山専用コミュニティサイト「ヤマレコ」

アウトドアのすべてを、ひとつのアプリで。

150以上のアウトドアメディアの記事や動画、3万枚以上のみんなの写真も見られる!
アウトドアの「知りたい!」「行きたい!」がきっと見つかる!
お気に入りの記事や写真を集めて、スキマ時間に素早くチェック!