緊急事態発生!その日に帰れない時どうする?絶対に知っておきたい「ビバーク」の方法

2021/03/22 更新

バテて予定よりかなり遅れた、仲間が怪我をした、天候が急変した、道に迷った…その日のうちに下山できなかったり目的地につけない可能性が山では常にあります。夜の行動はリスクが高いので、そんなときは山の中でなんとかして一夜を越さないといけません。それがビバークです。でも果たして、いざという時それができるでしょうか。ビバークとは?という知識から準備・方法まで、どのようにしたらよいか、一緒に見ていきましょう。

ビバークってどういうこと?

撮影:筆者
計画した目的地の山小屋や下山口にその日のうちに辿り着けなくなってしまい、やむを得ず有り物の装備だけで山中で一夜を越すことを「ビバーク」といいます。
バテて予定よりかなり遅れた、仲間が怪我をした、天候が急変した、道に迷った…そんなことで計画は簡単に狂ってしまいます。
今までにビバークしたことがないとしても、それは単に運が良かっただけと言えるでしょう。

やり方を知らずにいきなり本番になって途方に暮れる前に、いつそうなっても落ち着いて対応できるように、しっかり知識を身につけて準備しておきましょう。

ビバークするのか、歩き続けるのか?その判断のポイントは?


撮影:筆者
ビバークするのか、それともなんとか目的地をそのまま目指すのか。初めてだとまずその判断で悩むと思います。

暗い中歩くのも慣れていて、何度も歩いたことのある道で、パーティのみんな体力に余裕がある。しかも天気が荒れる心配もない、ということならば、ビバークせずに目的地を目指すのも否定される選択肢ではありません。
しかし、いずれかでも不安があれば、暗くなるより前に余裕を持ってビバークを決断しましょう。

安全に夜を越せる場所を探し、シェルターを作り、お湯や非常食を用意して、有り物を最大限に活用して寝られる体勢を整えるにはけっこう時間がかかります。
これらを暗くなるまでにこなすことが大切です。

ビバークするために必要な装備

まずはビバークする上で欠かせない装備を確認しておきましょう。
言い換えれば、「結果的に使わなくても、普段からこれくらいの装備は持っていないと万が一の時に対応できない」ということです。
撮影:筆者
1これがないと生きていけません。重荷にならない程度に必ず余分を持ちましょう。
2非常食いざという時に力を出すために欠かせません。たいてい毎回持ち帰ることになりますが、定期的に更新しましょう。下山したら美味しく食べられるようなものを毎回作るのも◎。
3

火器

(ストーブ、バーナー)

火で暖をとれる、お湯を作れるだけで安心感が格段に増します。小さいものでよいのでいつも持っておきましょう。着火器は天候や高度によってつかないことがあるので火種も必ず持ちましょう。
4

燃料

燃料を忘れることは意外とあるので注意しましょう。火器を省略して固形燃料程度でも大いに役立ちます。
5コッヘル(クッカー)水を沸かすのに必要です。
6火種ライターやファイアスタータや耐水マッチなど。ライターはフリント式(ヤスリのついたダイヤルを手で回して火をつけるもの)なら、悪天候時や高所でもつかない心配がありません。
7ナイフ何かと役に立ちます。刃物がなくて困ることは意外と多いです。折りたたみ式でよいです。
8細引き(ロープ)ロープの太さや長さは行く山や状況によりますが、いずれにしても持っておいて損はないものです。写真のものはΦ6mm*20m。
9ヘッドランプわざわざ言わずとも日帰りでも持っていることとは思いますが念のため。
10着替え雨や汗で濡れた服をそのままにしておくとどんどん体温を奪われていってしまいます。面倒がらずに着替えましょう。使わなかったときには下山口の温泉の着替えに。(写真省略)
11防寒着その時期に夜をなんとか越せる防寒着を持ちましょう。いわゆるサバイバルシート も重宝します。(写真の番号はサバイバルシート)
12ツェルト登山用の簡易テントです。雨や風がなくても、あるとないとでは保温性に大きな差が出ます。
付属の張り綱だけでは使い勝手が悪いので、Φ3mm*1.5mくらいの細引きをあらかじめ各ループに取り付けておくとよいです。
※易しい日帰りの山などの場合には、湯を沸かす一式は持たずに魔法瓶にお湯を入れて持っておくことで代えてもいいでしょう。
※これらに加えて焚き付けがあれば、樹林帯ならばほぼ確実に焚き火ができますし(着火剤があればなおよし)、ろうそくがあれば焚き火がなくても安心感が増すことでしょう。
※樹脂やガラスなどの耐熱容器があれば、熱湯を入れて湯たんぽを作れます。

ビバークに適した場所

撮影:筆者(こんな東屋があればビバーク場所はすぐに決まるのだが…)
実際にビバークしなければならないとなれば、ただでさえ心細いでしょう。言わずもがなですが、安全で快適な場所を探しましょう。

安全性

石が落ちてくる、川が増水したら流される、倒木が倒れてくる、崖が崩れる、雪崩れるなど、山には色々な危険要素(ハザード)があります。それらができるだけないところを選びましょう。

快適性

雨風が和らぐ樹林帯、風を避けられる風下側、水に困らない湧き水や沢の近く、雨風をしのげる岩小屋など、少しでも条件の良い場所を探しましょう。

ツェルトを使った基本のビバークシェルター

雨風を避けつつできるだけ暖かく一夜を過ごすために欠かせないのが「ツェルト(ツェルトザック)」。簡単に言ってしまえば簡易テントです。膝を抱えて入るスペースだけの非常時専用のモデル、一枚の布として広げられてタープのように使えるモデル、大きさもいろいろあります。非常時にしか使わないのか、それともテントの代わりに軽量化の手段として積極的に使うのか、使う状況を考えて選びましょう。
使い方も語り出せばきりがないので詳しくは別の記事に譲るとして、ここでは主な方法を紹介します。

ツェルトについての基本はコチラの記事を確認

ツェルトビバークの方法 4パターン

①ポールと細引きを使って立てる
撮影:筆者(右側の支柱はトレッキングポールで、左側の支柱は木の枝を加工して作った)
一般的に紹介されることの多い張り方。
ポールはツェルト専用のものも売られていますが、それにしか使えません。トレッキングポールを流用したり、樹林帯では木の枝を加工して作ることもできます。

②張ったロープに吊り下げる
撮影:筆者
細引きに吊り下げて張ると、ポールを使って立てるよりも格段に楽に立てられ、しかも安定感も増します。ロープを使う登山の場合にはそのロープがそのまま役に立ちます。ただし、ロープワークには慣れている必要があります。

③横倒しに張る
撮影:筆者
3人以上のとき、風や雨の影響があまり大きくないときにはこのような張り方の方が広く使えてよいでしょう。
モデルにもよりますが、写真のように、ツェルトの短辺方向でも大人が十分に横になれる長さがあるものもあります。あらかじめつけておいた張り綱やロープを使って吊り下げ、衣服とツェルトが接しないようにしましょう。

④かぶる
撮影:筆者
撮影:筆者(ツェルトの中でカサをさすと、生地と
例えば雨風が強いなど、ツェルトを立てられる状況でないときは、頭からかぶります。
この際、写真のようにツェルトの中で傘をさしたり木から吊したりすると、ツェルトの生地が体と接するのを防げるので、雨や露に濡れるのを最小限にできます。

ビバーク応用編

ビバークというとツェルトを使うというイメージがありそうですが、自然の中には使えるものがたくさんあります。

岩小屋(岩屋、洞穴)

撮影:筆者(甲斐駒ヶ岳黒戸尾根八合目の岩小屋)
撮影:筆者(長野県の里山にある洞穴)
岩の多い山では、岩の比較的弱い部分が雨や風や寒暖差などによって浸食され、岩が折り重なっていたり、中に空洞ができたりして雨風がしのげる空間ができていることがあります。

ブッシュクラフト

撮影:筆者(左:シェルター外観、右:入口部に座ってみた)
樹林帯で木の枝が豊富にあれば、それらを使って仮の宿を作るのもよいでしょう。
写真では、立木に枯れ枝を立てかけ、間に細かい枝を噛ませ、そこに落ち葉をかぶせました。さらに枝を立てかけてロープで固定すると、落ち葉も飛ばず、屋根を維持できます。

雪洞やイグルー

撮影:筆者(筆者の掘った雪洞)
冬や春で、雪が概ね1.5m以上積もっていれば、雪洞を掘るのもよいです。外がどんなに荒れていても気づかずに熟睡できてしまうくらい、雪洞は快適です。慣れれば一人分を1時間ほどで掘れます。
撮影:筆者(イグルー名人作の雪洞。わかりやすいように雪ブロックを積んだだけの状態を撮影した。実際にはこの後で隙間を小さなブロックで埋めていく。)
また、雪をブロックで切り出せるようなら積み重ねてイグルーを作るのもよいです。雪洞と違って積雪深に関係なく雪が締まっていれば良いという利点があります。
こちらは作り方に少々コツが必要で慣れるのに時間もかかりますが、雪の扱いに慣れている方なら練習すれば1時間ほどでできるようになります。

雪の多い山域に行かれる方は練習しておくといざという時に役に立ちますし、いつでも作れる自信がつけば、テントを持たずに済むので軽量化にも役立ちます。

雪洞の作り方についてはこちらの記事を確認

住処ができたら居心地を良くしよう

非常食を食べる

撮影:筆者
心身が疲れていても喉を通りやすく食べやすいものを持ちましょう。お茶やスープの素もあるとよりよいですね。

暖をとる(焚き火をする)

撮影:筆者(雪の上でも太めの木作った土台の上で焚き火をすることができる。今回は撮影のため、安全な状態を確認の上行っております)
寒い夜をなんとかやり過ごすために火は大事です。しかしバーナーを持っていたとしても燃料には限りがあります。

焚火は基本的に法令により禁止されていますが、緊急時に限っては緊急避難として認められます。山火事にならないように最大限の注意を払いながら、節度を守って焚き火をしてしのぎましょう。火の粉が飛んでくると化学繊維の衣服には穴が空いてしまうのでお気をつけて。

山火事を防ぐために、体力や精神力の許す限り、以下のことに気をつけてください。

・燃えやすい落ち葉や枯れ草などをあらかじめよける。
・立ち去る際にはできる限り最後まで燃やす。
・燃え残りは水をかけたり、土をかけたり混ぜたりしておく。

※焚火はあくまでも緊急時の例です。基本的には、軽犯罪法、消防法及び関連法令、廃棄物処理法、自然公園法、自然環境保全法などさまざまな法律で禁止されているのでご注意ください。

有り物を駆使して寝る体勢を整える

撮影:筆者(見やすいようにツェルトの中には入っていません)
非常食を食べて温かい飲み物を飲んで落ち着いたら、いよいよ本格的に一夜を過ごす態勢に入りましょう。
地面と体が直に接していると体温を奪われやすくなるので、寝転がるにしても座っているにしても、ザックを敷くとよいです。その上で、着込めるものをありったけ着込んで、サバイバルシートがあればくるまりましょう。耐熱容器があれば、湯たんぽを作って懐に抱えておきましょう。とても暖かいです。

ビバークしないで済むために


撮影:筆者
ビバークしないで済むには、当たり前ですが計画通りに歩けばよいわけです。つまりは「自分の身の丈に合った計画を立て、アクシデントなく歩く」ということです。
予定が狂ってしまうようなアクシデントとは、怪我、道迷い、疲労(バテ)などが主なものでしょう。
これらを防ぐにはどうしたらよいでしょうか。

・余裕を持った計画を立てる
・ルート中のリスクを予め予測する

・丁寧に歩く
・時間をしっかり管理する
・現在地確認とルートファインディングを確実に行う

どれも細かなことですが、それが大事です。

細かなことをひとつひとつ大事にこなせない人、面倒くさくなってしまってこなす余裕のない人は、遭難のリスクを知らず知らずに高めてしまいます。自分を客観視する視点を常に持ち、意識して気をつけて行きましょう。

いざという時のために練習しておこう!

撮影:筆者
ビバークの方法は知っているだけでも知らないよりはだいぶましですが、実際にビバークしなくてはならなくなったときに初めてのことは思い通りにできずに不安がよけいに募るものです。

まずは、いつでも中断して帰れるところでビバークの練習をしてみましょう。不安だったら山仲間を誘ってやってみるのもよいですね。一度やったことがあれば、ぶっつけ本番よりもかなり精神的に余裕ができます。

「ビバークの体勢を整えるまでにこれだけの時間と体力が必要だから、これだけ前にはビバークを決断する必要がある」とか、「一夜越すとなると、防寒着は最低でもこれくらいないと死んでしまう」とか、気づくこともたくさんあるでしょう。基本の型に慣れてきたら、キャンプを楽しむつもりで色々なパターンに挑戦してみましょう。

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田村茂樹

登山ガイド/山伏。生き方に悩んでいた自分を救ってくれたお山に恩返ししたいと登山ガイドになる。日本の登山のルーツである信仰登山を再び日本によみがえらせることを夢見ている。大学で地学の研究をしていたため、地質や地形の解説も得意。https://www.tam-mountainguide.com/

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