ここまで頑張ったご褒美! 槍ヶ岳の絶景を拝める”穴場”の展望台
急斜面を過ぎて先へ進むと、次第に三俣山荘の整備が入りやすい場所になっていくということもあり、伊藤新道はそれまでの”踏み跡”から”登山道”らしくなってきます。
そのうちに突然、開けた場所が出現します。
この「展望台」までは、三俣山荘が整備を毎年入れ、”明確な登山道”として維持しています。
事実、三俣山荘で公開している地図でも紹介され、小屋から往復4時間15分(三俣⇒展望台が2時間、展望台⇒三俣が2時間15分)がコースタイムの目安となっています。
湯俣から三俣までの伊藤新道のうち、現在コースタイムを算出できるのはこの区間のみですから、歩行スピードが安定して計算できるくらい整備されているということがよく理解できます。
まだまだ続く森の道。しかし、もう歩きやすい登山道に
「展望台」と「三俣」の間は、”現役の登山道”としての伊藤新道の姿を今に残す重要区間でもあります。それだけに歩きやすく、グイグイと進んでいけます。
ここまでくると、数時間前には水に濡れながら歩いていたことを忘れそうになるほどです。
”ご神木”に”庭園”……。「森の」区間も見どころ豊富
激流が走っていた沢に比べれば少し地味ですが、「森」にも名所が点在しています。
例えば、ダケカンバの大木である”ご神木”、伊藤新道の開削者である伊藤正一さんが名付けた”第一庭園”、”第二庭園”、そして先に紹介した”展望台”が代表的なところでしょう。
もっとも、以前は草地だった”第二庭園”は、今は樹木に覆われて”庭園”らしさがなくなり、多くの人が知らずに通り過ぎてしまうかもしれません。しかし”第一庭園”は今も広々としていて気持ちがよく、休憩するのに適しています。
至近距離に迫った「三俣」。最後まで無事に歩きとおそう
”かぶり岩”付近までは尾根上を通っていた伊藤新道は、そこから先、鷲羽岳の山腹を横切るような形で三俣へと延び始めます。小屋まではあと1時間程度。気が緩みがちになりますが、登山道が崩れてしまった小さな沢なども通過しなければなりません。
誰が見ても危険な場所よりも、「こんなところで!」という場所で重大事故が起こることは珍しくなく、それは伊藤新道でも同様です。
鷲羽岳と三俣蓮華岳をつなぐ登山道に伊藤新道が接続すれば、三俣山荘はもうすぐ。小屋からは登山者たちの話し声が聞こえ、発電機の音もかすかに響いてきます。
ここまでくれば、さすがにほっとして気が抜けてしまいますが、もう”安全圏”といえる場所です。
「谷」と「森」をつなぐ登山者憧れのルート、「伊藤新道」のゴールは三俣山荘!
到着した三俣山荘は、伊藤新道の開削者である伊藤正一さんが建てた小屋。現在は長男の伊藤圭さんが跡を継いでいます。
三俣山荘では伊藤新道に関する情報がたっぷりと得られるので、宿泊する際はいろいろと尋ねてみるとよいでしょう。
昨年からは伊藤新道探訪ツアーも開始!
三俣山荘では、今回の調査に同行してくれたガイドの田村茂樹さんによる伊藤新道ツアーも案内しています。今回は伊藤新道を「下から上」へ向かって歩いた形で紹介しましたが、「上から下」の方向へ歩くことも可能なので、そういうことも含めて相談することもできます。
今年は新型コロナウイルスの影響で小屋締めの時期が早く、水量が減って伊藤新道の踏破にもっとも適した晩秋には入山しにくい状況でしたが、来年は参加しやすくなっていることに期待しましょう!
黒部源流・伊藤新道ツアー
本格的な復活を目指す、これからの「伊藤新道」
現在の伊藤新道は”通行不能”ではないけれど、”通行困難”なルート。しかし先に少し紹介したように、部分的には今も整備を怠らず、現在のご主人である伊藤圭さんは、近いうちに全面的に再通行できるようにしたいと考えています。
じつはそのために、すでに具体的な行動も起こし始めており……。詳しいことはいつか紹介したいと思っていますが、これからが実に楽しみなのです。
ラクには歩けないけれど、だからこそ歩き甲斐があり、誰もが簡単には見ることができない風景をたっぷりと味わう……。そんな得難い経験ができる「伊藤新道」。
みなさんもぜひ、いつか足を踏み入れてみてください!
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