机上登山で歩くルートを“言葉”で表現してみよう!
例えば登山に連れて行く知人に「明日はどんなところを歩くの?」と聞かれた時に、どこまで具体的な説明ができますか?
自分自身も初めての山であれば、SNSなどでの登山記録を参考にすることもあるでしょう。けれども全く同じルートが見つからなかったり、登山記録を投稿した人の主観が入っていたりすることもしばしば。
地形図という平面から山を立体的に想像し、ルートの全容をいかに詳細な表現で説明できるか。Aさんと一緒に、チャレンジしてみましょう。
目標は歩くルートをすべて“言葉で説明”できるようになること
“鷲尾”
今回Aさんが登山に連れて行く人は初心者だよね。
例えば前日に「どんなところを、どれくらい歩くの?」って質問されたら、どう答えるかな?
例えば前日に「どんなところを、どれくらい歩くの?」って質問されたら、どう答えるかな?
“Aさん”
むしろ登山地図を見ながら、登りは3時間で下りは2時間とか。
SNSの投稿を見ながら、このあたりからこんな景色が見られるとか。
“鷲尾”
確かにそれで大まかな概要はわかるね。
でも“どんなところ”を厳密に言うと「どのような地形を、どれくらいのアップダウンを経て歩くか」と言うことになるんだ。
これを“言葉”で表現することは、Aさんにとってもすごく大切だよ。
でも“どんなところ”を厳密に言うと「どのような地形を、どれくらいのアップダウンを経て歩くか」と言うことになるんだ。
これを“言葉”で表現することは、Aさんにとってもすごく大切だよ。
“Aさん”
そこまで説明できるかなあ。
“鷲尾”
では、一緒にやってみよう!
外秩父・官ノ倉山を例にルートを言葉にしてみよう!
“鷲尾”
では、このルートをなるべく詳しく言葉にしてみよう。
スタート地点は沢沿い、ゴール地点には池があるよね。その間の登山道はどんな地形を通っているか、言葉で表現してみよう。
“Aさん”
沢沿いを登る。
稜線にはピークがふたつある。
沢沿いを下る…そんな感じですかね。
稜線にはピークがふたつある。
沢沿いを下る…そんな感じですかね。
“鷲尾”
うーん、少し大雑把すぎかな。
もう少し、細かく言葉にしてみよう。今日はイメージしやすいように、現地の写真も用意したよ。
もう少し、細かく言葉にしてみよう。今日はイメージしやすいように、現地の写真も用意したよ。
“鷲尾”
まずは登山口。2つの尾根に挟まれた、谷沿いに進むことがわかる。
実際の写真でも登山道の両側に尾根から続く斜面があるよね。

“鷲尾”
赤丸のポイントから矢印方向の尾根を見上げたところ。
前景の木々で少し分かりにくいけど、低くなっているのがわかるかな。
これはつまり、コル。
前景の木々で少し分かりにくいけど、低くなっているのがわかるかな。
これはつまり、コル。

“鷲尾”
こちらの方が分かりやすいかな。これも尾根上で低くなっているから、コルだよね。
赤丸のポイントから矢印方向に反対側の尾根を見上げたところだよ。
赤丸のポイントから矢印方向に反対側の尾根を見上げたところだよ。

“鷲尾”
このあたりで谷沿いの登山道はおしまい。

“鷲尾”
この区間は、尾根と谷の間の斜面をトラバースしながら進む。
写真だと登山道の左側が高く、右側が低くなっているよね。
写真だと登山道の左側が高く、右側が低くなっているよね。

“鷲尾”
そして、尾根に出る。
登山道の両側が低くなっているのがわかるかな。
登山道の両側が低くなっているのがわかるかな。

“鷲尾”
もう少し登ると、地形図でも尾根を描く等高線が鋭くなっている。
写真で見ても、さらに明瞭な幅の狭い尾根上を進んでいるね。
写真で見ても、さらに明瞭な幅の狭い尾根上を進んでいるね。

“鷲尾”
ここが最初のピーク・石尊山の山頂。

“鷲尾”
いったん、コルに向かって下っていく。
写真でも下り坂になっているのがわかるね。
写真でも下り坂になっているのがわかるね。

“鷲尾”
下りきったところがコル。
ここから官ノ倉山へ登り返す。
写真奥に向かって上り坂になっているのがわかるかな?
ここから官ノ倉山へ登り返す。
写真奥に向かって上り坂になっているのがわかるかな?

“鷲尾”
官ノ倉山の山頂に到着。
背後に見えるピークは、さっき登った石尊山だね。
背後に見えるピークは、さっき登った石尊山だね。
“鷲尾”
官ノ倉山から、次のコルへ向けて下っていく。

“鷲尾”
このコルで、稜線とはお別れ。
北側の斜面へと下っていく。
北側の斜面へと下っていく。

“鷲尾”
この区間は、斜面をジグザグに下っているね。

“鷲尾”
これは赤丸のポイントから、官ノ倉山の北側に伸びる尾根を見上げたところ。

“鷲尾”
ジグザグ道が終わると、再び谷沿いの登山道になる。
写真だと藪に隠れて見にくいけど、青矢印のところに沢が流れているんだ。
写真だと藪に隠れて見にくいけど、青矢印のところに沢が流れているんだ。

“鷲尾”
谷沿いをさらに下ると、傾斜も緩やかになってきたね。

“鷲尾”
ため池から、来た道を振り返って見る。
両側の尾根に挟まれた谷沿いを下って来たのが、よくわかるね。
奥にそびえているのが、官ノ倉山。
両側の尾根に挟まれた谷沿いを下って来たのが、よくわかるね。
奥にそびえているのが、官ノ倉山。
地形図から言葉にした情報を、実際の登山で確かめてみよう!

“Aさん”
ここまで事前にわかっちゃうと、実際に行った時につまらなくなりません?
“鷲尾”
今回は写真も見せながら説明したからそうかも知れないけど、実際には地形図だけ。
わかるのはルート上の地形と地図記号からわかる大まかな植生やランドマークくらいなんだよ。
わかるのはルート上の地形と地図記号からわかる大まかな植生やランドマークくらいなんだよ。

“鷲尾”
例えば上の写真の鎖場は地図上だと赤丸の場所にあるんだけど、地形図では急な尾根というくらいしかわからない。
“Aさん”
なるほど。言葉にしたルートを実際に確かめに行くって感じですかね。
“鷲尾”
そう!実際に歩いてみて、事前に言葉にしたことが正しければ?
“Aさん”
自分の地図読みのスキルも、なかなかってことか!
“鷲尾”
その通り!それに足元の草花、野鳥の鳴き声、休憩中に食べるもの、地形図には収まらない遠くまでの展望…実際に歩いてみるからこその楽しい体験は、まだまだたくさんあるからね。
机上登山でより安全で楽しい登山を!
いかがでしたか。冒頭にもお伝えした通り、安全登山において事前準備は超重要。その準備の中で、地形図の出番がたくさんあることを少しでも理解して頂ければ幸いです。
机上登山ができるようになると、登山に行けない時でも地形図を見ているだけで登山気分を味わうこともでき、これは“等高線フェチ”である筆者の密かな楽しみ。
さあ、次回からはいよいよコンパスワークを登山のフィールドで実践するための知識をお伝えしていきます。
まとめ
▼机上登山しながら歩くルートを“言葉”で表現することで、登山道が通る地形を把握できる
▼地形によって異なるリスクを理解することで、天候や場所に応じた危険性を予知できる
▼ルートが複数ある山でも、どんな状況でどんなリスクがあるかを考えると柔軟なルート変更ができる