事前に想像できますか?地形によって変化するリスクの種類
安全登山にとって重要なのが、ルート上に潜む危険性を予知して、回避策を考慮しておく「リスクアセスメント」。地形によって変わるリスク、さらにそれに天候が加わって変わるリスク、その代表的な事例をご紹介しましょう。
今回は「ピーク」「尾根」「コル」「谷(沢)」「斜面」で想定されるリスクについてみていこう。
ピークで想定されるリスク〜落雷・滑落・熱中症&低体温症〜
・落雷
・周囲への滑落
・長時間滞在する場合は、熱中症や低体温症
槍ヶ岳では山頂直下の槍ヶ岳山荘に、雷警報器が設置されているほどなんだ。
ピーク上なら電波状況も良いことが多いから、これらの情報を入手しやすいんだ。
発雷確率の高い夏場は、こまめにチェックしよう。
尾根で想定されるリスク〜滑落・落雷・熱中症&低体温症〜
・両側斜面への滑落
・落雷
・森林限界上の尾根では、熱中症と低体温症
森林限界より上の尾根では、登山者自身が落雷の直撃を受けることが多いんだ。
樹林帯の中の尾根でも、近くの樹木への落雷の側撃で感電死する事例も発生しているから、油断は禁物。
だから厳しい日差しによる熱中症や、風雨による低体温症にも注意が必要だね。
コルで想定されるリスク〜強風・滑落〜
・強風による失くし物
・稜線が狭くなっていることによる滑落
稜線に対して横から風が吹いている時は、両側のピークに当たった風がコルに吹き込んで、いわゆる風の通り道になるんだ。
谷(沢)の終点がコルだということは以前教えたと思うけれど、つまりコルは両側の谷からの浸食が進んでいるから、同じ稜線でも必然的に幅が狭くなるんだ。
その極端な例がキレットだけど、そこまで急峻なコルでなくても両側の斜面への滑落のリスクはある。
すれ違いや、用を足すために登山道を離れる時は注意してね。
谷で想定されるリスク〜水難事故・転倒・落下物〜
・増水による水難事故
・湿った路面での転倒
・両側斜面からの落下物
常に水が流れている沢沿いはもちろん、普段は水が枯れている谷でも、大雨の時は水の通り道になる可能性がある。
山の中の谷は小さくて幅が狭いから、短時間でみるみるうちに水かさが増すことが多いんだ。
山間の急な傾斜を流れる水の力は物凄いから、鉄砲水に巻き込まれたり誤って沢に転落しての水難事故には注意が必要だね。
それに晴れている時でも、尾根から続く斜面に挟まれている谷はただでさえ日当たりが悪いから、足元が湿っていることもある。
滑って転倒したり、両側の斜面からの落下物(落石など)には注意して通過してね。
斜面で想定されるリスク〜落下物・滑落・登山道の崩壊〜
・斜面上部からの落下物
・斜面下部への滑落
・大雨の後は、谷筋との出合での登山道の崩壊
ガレ場の斜面で、上を歩いていた登山者が起こした落石の直撃を受けて、下を歩いていた怪我をすることはよくあるんだ。
ガレ場や急斜面では、歩き方にも要注意ですね。
これも覚えておかなくちゃ。
①人工的な法面状の平坦な斜面のトラバース
登山道は直線状になっている②斜面にある尾根をまたぐトラバース
登山道は高い方(山側)が内側のカーブを描く③斜面にある谷をまたぐトラバース
登山道は低い方(谷側)が内側のカーブを描く