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山を楽しむ秘訣は予習にあり!忘れちゃいけない「机上登山」って知ってる?(2ページ目)

事前に想像できますか?地形によって変化するリスクの種類

甲斐駒ヶ岳へ続く稜線/尾根特有のリスクとは?

撮影:washio daisuke(甲斐駒ヶ岳へ続く稜線/尾根特有のリスクとは?)

安全登山にとって重要なのが、ルート上に潜む危険性を予知して、回避策を考慮しておく「リスクアセスメント」。地形によって変わるリスク、さらにそれに天候が加わって変わるリスク、その代表的な事例をご紹介しましょう。

“鷲尾”
ところで、登山に行くのはいつだっけ?

“Aさん”
再来週です。まだ天気がどうなるかもわからないんですよね。

“鷲尾”
直前3日間くらいの天気予報をチェックしておけば、急な体調不良などを除いて、地形図から大体のリスクは予測できるんだ。

今回は「ピーク」「尾根」「コル」「谷(沢)」「斜面」で想定されるリスクについてみていこう。

ピークで想定されるリスク〜落雷・滑落・熱中症&低体温症〜

日本の山の中でもひときわ顕著なピーク・槍ヶ岳

撮影:washio daisuke(日本の山の中でもひときわ顕著なピーク・槍ヶ岳)
ピークで想定されるリスク

・落雷

・周囲への滑落

・長時間滞在する場合は、熱中症や低体温症

“鷲尾”
周囲よりもひときわ高い場所にあるピークで、何といっても注意すべきなのが落雷。

槍ヶ岳では山頂直下の槍ヶ岳山荘に、雷警報器が設置されているほどなんだ。


“Aさん”
食らったら一発でアウトなやつですね…。

“鷲尾”
今はスマホサイトやアプリでも、雷レーダーを確認できる
ピーク上なら電波状況も良いことが多いから、これらの情報を入手しやすいんだ。
発雷確率の高い夏場は、こまめにチェックしよう。

尾根で想定されるリスク〜滑落・落雷・熱中症&低体温症〜

戸隠山・蟻の塔渡り

出典:PIXTA(戸隠山・蟻の塔渡り)
尾根で想定されるリスク

・両側斜面への滑落

・落雷

・森林限界上の尾根では、熱中症と低体温症

“鷲尾”
尾根…特に上の写真のような“ヤセ尾根”では、両側の斜面への転滑落にも要注意。

“Aさん”
こんなヤバい場所には、行かないですけどね。

“鷲尾”
転滑落の心配がない広い尾根でも、落雷のリスクは忘れないで。
森林限界より上の尾根では、登山者自身が落雷の直撃を受けることが多いんだ。

樹林帯の中の尾根でも、近くの樹木への落雷の側撃で感電死する事例も発生しているから、油断は禁物。


“Aさん”
転滑落や落雷以外のリスクってあります?

“鷲尾”
これはピークにもあてはまるんだけど、特に高い樹木のない森林限界上では、登山者が陽ざらし・吹きさらしの状態になるんだ。

だから厳しい日差しによる熱中症や、風雨による低体温症にも注意が必要だね。

コルで想定されるリスク〜強風・滑落〜

強風の名所で知られる那須岳・峰ノ茶屋は、茶臼岳と朝日岳の間のコル

出典:PIXTA(強風の名所で知られる那須岳・峰ノ茶屋は、茶臼岳と朝日岳の間のコル)
コルで想定されるリスク

・強風による失くし物

・稜線が狭くなっていることによる滑落

“鷲尾”
コルでのリスクで真っ先に思い浮かぶのは強風。

稜線に対して横から風が吹いている時は、両側のピークに当たった風がコルに吹き込んで、いわゆる風の通り道になるんだ。


“Aさん”
いったん下って登り返す、コルは休憩に適したポイントなんですけどね。

“鷲尾”
なので休憩中には、ザックから出したものやウェアを飛ばされないように注意が必要だね。

“Aさん”
風の影響がない時なら、比較的リスクは少ない場所ですね。

“鷲尾”
もうひとつ、ピークとコルが連続する稜線上では、コルの方が稜線自体の幅が細くなる。
谷(沢)の終点がコルだということは以前教えたと思うけれど、つまりコルは両側の谷からの浸食が進んでいるから、同じ稜線でも必然的に幅が狭くなるんだ。

その極端な例がキレットだけど、そこまで急峻なコルでなくても両側の斜面への滑落のリスクはある。
すれ違いや、用を足すために登山道を離れる時は注意してね。

谷で想定されるリスク〜水難事故・転倒・落下物〜

八ヶ岳・北沢の登山道

撮影:washio daisuke(八ヶ岳・北沢の登山道)
谷(沢)で想定されるリスク

・増水による水難事故

・湿った路面での転倒

・両側斜面からの落下物

“鷲尾”
谷のリスクは何といっても水に由来するもの。

常に水が流れている沢沿いはもちろん、普段は水が枯れている谷でも、大雨の時は水の通り道になる可能性がある。
山の中の谷は小さくて幅が狭いから、短時間でみるみるうちに水かさが増すことが多いんだ。

山間の急な傾斜を流れる水の力は物凄いから、鉄砲水に巻き込まれたり誤って沢に転落しての水難事故には注意が必要だね。


“Aさん”
ルートが複数あるなら、大雨の時は谷を通るルートは避けた方が無難ですね。

“鷲尾”
そうだね。
それに晴れている時でも、尾根から続く斜面に挟まれている谷はただでさえ日当たりが悪いから、足元が湿っていることもある。

滑って転倒したり、両側の斜面からの落下物(落石など)には注意して通過してね。

斜面で想定されるリスク〜落下物・滑落・登山道の崩壊〜

大雨で橋が流失した足柄・矢倉岳斜面の登山道

撮影:washio daisuke(大雨で橋が流失した足柄・矢倉岳斜面の登山道)
斜面で想定されるリスク

・斜面上部からの落下物

・斜面下部への滑落

・大雨の後は、谷筋との出合での登山道の崩壊

“鷲尾”
斜面でのリスクは、斜面上部からの落下物と斜面下部への滑落。

ガレ場の斜面で、上を歩いていた登山者が起こした落石の直撃を受けて、下を歩いていた怪我をすることはよくあるんだ。


“Aさん”
自分も嫌ですが、他人に怪我をさせてしまうのはもっと嫌ですよね。
ガレ場や急斜面では、歩き方にも要注意ですね。


“鷲尾”
斜面の中腹を水平に横切るトラバースの登山道は、上部からの落下物と下部への滑落両方のリスクが常にあるから、より一層注意が必要だね。

“Aさん”
アップダウンがなくて体力的には負担が少ない分、トラバースの登山道では油断してしまいがちですよね。
これも覚えておかなくちゃ。

“鷲尾”
トラバースにも種類があって

①人工的な法面状の平坦な斜面のトラバース
登山道は直線状になっている

②斜面にある尾根をまたぐトラバース
登山道は高い方(山側)が内側のカーブを描く

③斜面にある谷をまたぐトラバース
登山道は低い方(谷側)が内側のカーブを描く

“鷲尾”
このうち③のケースの場合は、大雨の時に水の通り道になって、上の写真のように登山道がダメージを受けることもある。
“Aさん”
大雨の後にこういう場所を通る場合は、SNSの最新の登山記録とか、しっかり情報収集が必要ですね。

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