<MOBI GARDEN>の新作テントは、日本の山岳仕様
<MOBI GARDEN(モビ ガーデン)>は、2003年に創業の中国のテントブランド。中国のテント市場でトップシェアを獲得していて、コスパとクオリティーに優れた製品を多く手掛けています。
というのも、<モビ ガーデン>が所有する工場は、山好きなら誰もが知るトップブランドのテントの製作を手掛ける世界最大のテントファクトリー。その高い品質要求に応えてきた経験が、<モビ ガーデン>のテントにも注ぎ込まれているのです。
今回レビューする『LIGHT WINGS DAC UL1』は、本国モデルを日本の山岳仕様にアップデートしたもの。日本の輸入代理店が実際に北アルプスでテストを行い、強度や使い勝手を見直したテントです。
そしてなにより設営がラク! こんなテントを私は他に知りません。
2021年3月まで、コスパモデルを提供
しかし、高い品質を誇る工場でも時にミスはあるようです。
インナーテントの出入り口部がメッシュパネルのみだった本国モデルを、日本仕様の『LIGHT WINGS DAC UL1』では、メッシュパネルとナイロン透湿パネルの二重に変更する予定だったはずが・・・ナイロン透湿パネルのみになってしまったそう。
とはいえナイロン透湿パネルのみでも、使用に問題なし。メッシュパネルがないことで、本来は最小重量1,090gだったのが1,035gと軽量に。
そこでメッシュ&ナイロン透湿パネルの二重出入り口モデルが2021年3月に販売されるまでの間、ナイロン透湿パネルのみモデルは約28,000円という価格で提供されることになったそう。ちなみにミスで生まれたこのモデルを購入した方は、着払いによる送料自己負担のみでメッシュパネル付インナーテントを3月に受け取ることができるというから、ユーザーとしてはありがたいミスといえます!
そうは言っても、どんなテントなのかもわからず喜ぶ訳にもいきません。そこで、実際にフィールドで数回試し張りをした結果を報告しましょう!!
メカっぽい見た目のアウターポールを採用!
まず『LIGHT WINGS DAC UL1』のスペックは以下の通りです。
超軽量ソロテントは1,000g以下、山岳用ソロテントの多くは1,500g前後なので、このモデルは、軽めのテントといったところです。
インナーテントのボトムの厚さは20Dなのでかなり薄い素材ですが、ボトムを守る20Dのグラウンドシートを標準装備。破れや浸水から守ってくれます。
さて『LIGHT WINGS DAC UL1』の最大の特長は、形を作り、強度や居住性といったテントの個性のベースとなるテントポールが、外側に配されるアウターポールを採用している点です。
上の写真を見ての通り、インナーテントのように見えますが、これが完成形。ポールが外側にある見た目は、メカっぽさが際立ちます。
アウターポールを採用するテントは、インナーテントを装備せず、防水透湿生地のテント本体のみのシングルウォールテントが定番です。しかし『LIGHT WINGS DAC UL1』は雨風を避けるレインフライ、居住スペースとなるインナーテントからなるダブルウォールテントになっています。これは、かなり珍しいタイプのテントといえます。
また今回、日本専用仕様を企画するにあたり、こうしたメカっぽい見た目を意識したのか、カラーは本国仕様のレッドに対し、ガンダムっぽいブルーを採用したといいます。ポールもテント本体のカラーに合わせて、ブルーとグレーの配色に変更。これがかなりキレイなんです!
フライ、インナー、グラウンドシートを連結させた完全一体型
さらにこのテントは、インナーテントの底部を守るために標準装備されているグラウンドシートが、インナーテントとバックルで簡単に連結できる仕様になっています。
設営中にグラウンドシートが飛んでいってしまったり、グラウンドシートを敷き忘れてボトムに穴が開いた・・・なんてことにならないよう、常に連結しておくことも可能です。
そしてなんと、インナーテントとレインフライもバックルで連結できる仕様です。
つまりレインフライ、インナーテント、グラウンドシートのすべてを一体にできるので、設営はポールを四隅に留め、レインフライに装備されたフックをポールに掛けて吊り下げれば、完了!
アウターポール採用の理由は、見た目ではなく、この設営の簡単さを狙ったものだといえます。
次はその設営の仕方を紹介しましょう。
このテント以上に素早く設営できるテントは他にあるのか?
ポールは両端がY字に開いた1本ポールです。
山岳テントの定番は2本のポールをX字に配する仕様。設営のしやすさと強度を考慮したものです。また最近の超軽量テントでは、片側Y字の1本ポールが多く採用されいて、『LIGHT WINGS DAC UL1』の両端Y字1本ポールは、その中間的存在。
軽さと設営のしやすさ、そして強度をバランスよく融合させたタイプです。
設営時間は、わずか3分!
設営は、まずインナーテントの四隅の金具にポールを通します。風が強い場合は、金具の先に備わったストラップをペグダウンしてから行なうとよいです。
インナーテントの四隅にポールをセットすると、ポールは上の写真のような状態にカーブを描きます。
次に天頂部にあるポールを二股に分ける金具(ハブ)の下部に、インナーテントに装備された樹脂製のクリップを掛けます。
続いて、短いY字側(=足元側)のハブに、インナーテントのクリップを掛けます。
ここまでわずか2分!
2つのハブにクリップを掛けた状態がこちら。ここまで収納袋からテントを取り出し、ポールを伸ばして、クリップ掛けて、2分!
あとは、天頂側にあるフック、短辺側の大きなY字部分にある4つのフックをポールに掛けるだけ。
このフックは、意外と硬い樹脂製なので、着脱に多少の力が必要でした。
クリップとフックを掛けた状態。
最後に長辺側の前後をペグダウンして完成。約3分。慣れれば、さらに早く設営ができそうです。
アウトドアライターという仕事柄、これまで100張り以上のテントを設営してきましたが、この『LIGHT WINGS DAC UL1』が、説明書を読まずに初めて張っても迷いがなく、もっとも早く設営できたテントです。
設営・撤収のラクさは、テント選びの優先ポイント
特に今回は強雨の中での撤収の機会もあったのですが、その撤収も驚ほどラクにできました。
テント選びのポイントは、軽さ、コンパクトさ、耐風性、居住性、美しさ等々色々ありますが、なにより優先したいのは、雨や風が強い中での設営・撤収が簡単に素早くできること。
強風雨のテント泊で大変なめに遭った経験が思い出され、このテントならヒドい経験にならなかったかもしれないと感じました。
その他の機能もチェック!
居住性はいわゆる山岳テント的
室内最大高95cm。座って着替えがストレスなくできます。
横幅が頭側で105cmあるので、バックパックを横に置いて寝ることも可能です。室内には、天頂部にライト等を掛けられるループが1つ備わっていました。1人用山岳テントとしては少し広め。最近の軽量テントと比較すると上部の空間は狭めです。
前室の扉を留めるフックを装備
前室の扉を開けた際、レインフライの内側にフライ吊り下げと同様のフックがあり、扉をホールドできます。トグルをループに通す仕様のテントが多いですが、アウターポールを活かした使い勝手のよいギミックです。
前室は荷物を余裕で置けます
このテントは長辺側の横開きなので出入りもしやすく、前室も山岳テントとしては充分。容量50ℓパックなら、問題なく置けます。
インナーテントの開口部と前室の扉を開ければ、外の様子を寝転んで楽しめます。天気のよい日、穏やかな夜は、開け放って楽しむのもありです。
ガイラインもしっかり装備
小型カラビナ付きのガイライン3本を標準装備。日本仕様モデルに追加された短辺側のループと接続してペグダウンすれば、かなり強い風の中でも安心です。
足下側は、クリップの根元のループにガイラインを装着。かなり細いラインをブランドロゴがあしらわれた自在金具で長さ調節します。
ペグ袋に収納された小型カラビナ付きのガイラインとペグ。
ペグはこだわりのDAC J-STAKEを装備
ペグには、表面積が広く支持力の強さと曲がりにくさを高次元に両立した“DAC J-STAKE”を10本装備。固い地面に石で打ち込んでも、曲がりにくいペグです。
私が所有する某有名ブランドでも採用され、10年間、曲がることなく使い続けられています。そんなペグが、この値段のテントで標準装備されることに、時代の流れを感じます。
商品名にある通り、DAC社のポールを採用
商品名の『LIGHT WINGS DAC UL1』の『DAC』は、テントのトップブランドにのみ使われている韓国のポールメーカー『DAC』社のポールが採用されていることを表しています。使われるのは“DAC Featherlite NSL GREEN”で、軽量ながらもオールシーズン使用に耐える堅牢さが特長。しかも環境に配慮した製造工程でつくられたものです。
この『DAC』社製のポールは、どんなテントブランドでも使用できるものではなく、『DAC』社が認めた品質や機能性を持ったテントにのみ許されるもの。つまり、このテントはトップブランドと同等だと認められた証でもあるのです。
このテントの弱みは、「中国」のテントブランドということだけ
今回、北アルプスをはじめとする高山の強風・強雨の中でテストをした訳ではないので、実際の山での対応力はわかりませんが、雨や風の中、4回の設営テストをした感じでは、かなり高いスペックを持っていると感じました。
アウターポールの採用、レインフライ、インナーテント、グラウンドシートの完全一体型、それらの仕様による驚くべきほど簡単で素早い設営&撤収は、風に煽られ、飛ばされる可能性が低く、安全。山でのテント泊に慣れていないビギナー程、その恩恵を受けられることでしょう。それに約28,000円というコスパも魅力です。
唯一弱点があるとすれば、<MOBI GARDEN>が中国のテントブランドだということ。近年の中国のアウトドアブランドのクオリティーの高さは、少し前の「値段なり」の安さだけが売りだった時代とは比べものにならない程に上がっています。そうした偏見や固定観念のない自由な考えのハイカーならば、このテント、おすすめです。
それでは皆さん、よい山旅を!