アイキャッチ画像撮影:筆者(左からフライクリークHV UL2 EX、タイガーウォール UL2 EX、コッパースプール HV UL2)
担いでも寝ても快適! <ビッグアグネス>の登山用テント

撮影:筆者
軽量性と居住性のバランスの良さに定評がある<BIG AGNES(ビッグアグネス)>のテント。特に登山用テントは、ダブルウォールでありながらシングルウォールレベルの軽量性を誇ります。
それでいて、しっかりとくつろげる空間があり、設営が簡単なところも人気。最初のテントや2つ目のテントに、<ビッグアグネス>を検討中の人も多いのではないでしょうか。
でも、どれがいいのか迷ってしまう・・・

ざっと2人用テントを並べてみても、種類が多く迷いますね。機能やデザインはどれも魅力的。
そこで今回は、登山向けテントの中から軽量さが人気の3モデルをピックアップ。特徴や使い勝手を徹底調査してみました。
今回試したのは、この3モデル

いずれも2人用で1㎏弱の軽量モデルです。1人用だとさらに軽量コンパクトですが、テント内での居住性や使用人数の応用範囲が広いので、あえて2人用にこだわりました。
それでは早速、各モデルの使用感をチェックしていきましょう。
※試し張りの仮止めなので、ペグは浅く打っています。実際に使用する場合は、適切に打つようにしてください
①フライクリークHV UL2 EX|定番ロングセラー軽量テントの日本仕様版

撮影:筆者
ビッグアグネスの定番テント「フライクリーク」を日本の気候に合うように改良したのが、この「フライクリークHV UL2 EX」。
US仕様はインナーの半分がメッシュですが、日本仕様は足元と出入口の開閉部にメッシュがある程度。冬以外の3シーズン用になっています。今回紹介するテントでは唯一、短辺側1ドア仕様です。
携行性をチェック

撮影:筆者
38Lのバックパックと比較。ポールはバックパックの中かサイドポケットに縦に入れることになります。

撮影:筆者
テント本体は柔らかいので、底部にも縮んでうまく収まりました。
設営手順をチェック
撮影:筆者
設営手順は以下の通り。
ビッグアグネスの代表的テントと言われるだけあり、特に迷うことなくサクっと設営完了。3点ポールなので、1本分のフロアへの差し込みや吊り下げがないという点で、かなり作業量が少なくなります。
■色分けされたポールやバックル

撮影:筆者(左:前方 右:後方)
ポールの先端やフライシートのバックルの色が前後で異なっており、どのポールをどこに固定すればいいのか一目瞭然。設営・撤収ともに、はじめててでも戸惑うことはないでしょう。これは今回紹介する3テントに共通しています。
居住性は?
■ソロには余裕のある広さ 
撮影:筆者
1人ではかなりゆったりと使え、バックパックを横に置いても楽々寝ることができます。インナーテント・フライシート共に、落ち着いた色なのでリラックスできそうな雰囲気。室内は足元に向かって低く狭くなっています。
■出入口付近は十分な室内高 
撮影:筆者
出入口付近の頭上は結構余裕があり、クリアランスは十分。ただし、足元に向かって低くなっているので、2人使用の場合、向かい合って座るのは難しそうです。
■靴を置ける前室 
撮影:筆者
前室はテントの短辺側でひとつなので、あまり広くはありませんが、靴を置くには十分。荷物は室内へ入れることになるでしょう。
■出入口の上半分は開閉式メッシュ 
撮影:筆者
出入口の上半分は開閉式のメッシュ仕様。足元もメッシュになっています。換気用ベンチレーションは特にないので、出入口の開閉で換気することになります。
ちょっと気になる点
■透けるほど薄いフロアがちょっと不安 
撮影:筆者
フロアはインナーテントの壁面と同じような生地感でかなり薄く、手が透けて見えます。これは、今回の3テント共通で、よほど整備された地面や芝生でなければ、このまま使うのはちょっと不安。山の幕営地の場合、フットプリント(※別売)が必須になりそうです。市販のエマージェンシーシートなどを代用しても良し。
※フットプリント…テントのフロアと地面との間に敷くシート。フロアの耐久性や防水性の向上が目的
■かなり細いコード

撮影:筆者
各コーナーやガイラインはかなり細いコードを使っています。強い素材でも、細ければ強度は低くなり、また、経年劣化の影響も受けやすいので、長く使う場合は交換が必要になるかもしれません。
どんなシーンや人に最適か

撮影:筆者
軽量性重視のため、堅牢性や耐久性は多少犠牲にした感じはありますが、ヘビーな使い方でなければ十分使用できるレベルです。2人用の広さで1kgちょっとなので、以下のようなシーンや人におすすめです。
②タイガーウォール UL2 EX|広々しかも2ドアで居住性アップ

撮影:筆者
タイガーウォールは、フライクリークの骨格を継承しつつ、テントを横方向に広げるためのポールがトップにあるので、テント内、特に上部が広々としています。
長辺側の両側に出入口があり、広い前室を2か所とれるので、荷物を置くスペースが充実。居住性は格段にアップしています。「タイガーウォール UL2 EX」も日本仕様ということで、メッシュ部分が少なくなっている3シーズン対応テントです。
携行性をチェック

撮影:筆者
収納サイズはフライクリークとほとんど変わりません。こちらもポールは別袋なので、バックパックに縦に収納します。

撮影:筆者
フライクリークと同じようにやわらかいので、横向きにしてもバックパックの底部にすんなりと収まりました。
設営手順をチェック
撮影:筆者
設営手順は以下の通り。
フライクリークとほとんど同じですが、4の部分で、下画像のように横方向のテンションを掛けるポールを取り付ける作業があります。
撮影:筆者
ここがフライクリークと大きく違うところですが、特に手間もなく設営できました。
居住性は?
■フロアの広さはフライクリークと同じ 
撮影:筆者
フライクリークと同じフロア面積で、こちらも1人なら余裕の広さ。
■頭上は広々 
撮影:筆者
中央部分の横にポールが入っているのでサイドが立ち上がり、2人で使っても向かい合って座ることができるぐらいのスペースがあります。
■広い2か所の前室 
撮影:筆者
出入り口がテントの長辺側なので、かなり広い前室を作ることができ、靴以外の荷物を置くことも可能な広さです。しかも2か所なので、2人での使用時はそれぞれの荷物を置いておくこともでき、室内をもっと広く使えます。
■大きめのメッシュポケット 
撮影:筆者
天井には、小物を片付けるのに便利な大きめのメッシュポケット付き。
■風通りがいい両側メッシュドア 
撮影:筆者
両サイドのドアは開閉式のメッシュパネル。開けると室内を風が通り抜け、暑い時も快適に過ごせます。
ちょっと気になったところ
■フライクリークよりも、さらに薄いフロア 
撮影:筆者
フライクリークのフロア素材は20デニール(※)、タイガーウォールは15デニールのリップストップシルナイロン。フライクリークでもかなり薄いと感じましたが、タイガーウォールはもっと薄くなっています。フットプリントは必須ですね。
※デニール…生地を編んでいる糸の太さを表します。一般的に、同じ素材・加工であれば数字が大きいほど丈夫になります。
■フライクリークと同じ細いコード

撮影:筆者
コーナーやガイラインなど、テント固定のためのコードはフライクリークと同じ細さ。不安感は拭えません。
■鮮やかな黄色の室内 
撮影:筆者
フロアも含め全面が黄色の室内なので、ちょっと落ち着かないという人もいるかもしれませんね。
どんなシーンや人に最適か

撮影:筆者
フライクリークと同じく、軽量性重視で耐久性はちょっと低め。しかし、室内の広さ、左右が開く2ドア仕様などの快適性は◎。以下のようなシーンや人に向いています。
③コッパースプール HV UL2|キャノピを作れるユニークなテント

撮影:筆者
フライクリーク、タイガーウォールは3点ポールでしたが、「コッパースプール HV UL2」はインナーテントの空間が大きくなる4点ポール構造。今回紹介するテントの中では、一番広さを感じます。
このテントのユニークなところは、トレッキングポールを使ってキャノピ(ひさし)を作れるところ。山岳テントとしては珍しい仕様です。インナーテントは上半分がメッシュなので、夏場も快適に過ごせます。
携行性をチェック

撮影:筆者
前出の2テントと違い、ポールもテントと同じ袋に収納します。明らかに長く、「バックパックに入る?」と思いましたが、ポールを抜いて別にしてしまえば大丈夫。

撮影:筆者
幕体サイズが大きいので、収納サイズも大きめ。バックパックの大きさにもよりますが、長いのでこんな風にクニャッとなってしまいます。別の袋に入れたり、コンプレッションバッグを用意してもいいかもしれませんね。
設営手順をチェック
撮影:筆者
設営手順は以下の通り。
前出2テントとほとんど同じですが、4点ポール構造なので、差し込みとフックを掛ける箇所が1本分多くなり、その分作業が増えます。
撮影:筆者
タイガーウォールと同じように、テントスペース確保のための横ポールがあるので、その接続作業も必要です。
居住性は?
■窮屈さを感じさせないテント内部 
撮影:筆者
前出のフライクリークやタイガーウォール同様、足元に向かい少し狭くなる形状のフロア。しかし、4本ポールでウォールが立ち上がっているため、格段に広く感じます。
これなら、2人使用でもそれほど窮屈さは感じないでしょう。インナーテント自体は白なので、室内は落ち着いた印象です。
■頭上の空間も広々、余裕のスペース 
撮影:筆者
画像で見ても、前出の2テントとは違う空間の広さを感じてもらえるでしょう。ドアは大きく開くので、出入りも楽です。
■余裕の前室が2か所 
撮影:筆者
タイガーウォール同様、長辺側2ドアで広い前室を2か所とれます。余裕がある室内と前室をうまく使えば、のびのびと過ごせそうです。
■上部メッシュのインナーテントで暑さや蒸れを低減 
撮影:筆者
インナーテントは上半分がメッシュ仕様。しかも、フライシート上部には開閉できるベンチレーションが付いています。夏の暑さや蒸れがかなり低減され、テント内の結露も抑えられます。ただし、メッシュを閉じることはできないので、気温が低い場所や時期には向きません。
■両側のフライを跳ね上げ「キャノピー(ひさし)」ができる 
撮影:筆者
このテントの外見で、一番ユニークなところがココ。手持ちのトレッキングポールを利用し、両側の出入口を簡単に「キャノピー(ひさし)」にすることができます。山岳テントでこのようにできるのは珍しいですよね。コンパクトチェアに座れば、のんびりと優雅な時間を過ごせそうです。
ちょっと気になったところ
■やっぱり薄いフロアと細いコード 
撮影:筆者

撮影:筆者
タイガーウォールほどではありませんが、透けて見えるぐらい薄いフロア。フットプリントを敷かないと不安です。コード類も同じく細いので、耐久性も不安。3つのテントはいずれも、あまりハードな使い方には向かないようです。
どんなシーンや人に最適か

撮影:筆者
インナーテントの半分がメッシュということで、冷え込む環境での使用は厳しく、必然的に夏のキャンプ、しかも高所以外での使用に限定されそうです。とはいえ、これだけの広さと機能で1kg台というのは大きな魅力。
3つのテントを使ってみて・・・

撮影:筆者(①フライクリークHV UL2 EX、②タイガーウォール UL2 EX、③コッパースプール HV UL2)
3つのテントのいいところ・気になるところを、一気に紹介しました。
共通するのは、「軽量性」と「居住性」の高さ。
今回は試し張りのため、山岳環境での使用感までは確認できませんでしたが、耐久性にはやや不安が残るところ。特にフロア素材は、筆者が知る限り、他メーカーの山岳テントと比べて薄く、また、各コード類もかなり細いと感じました。軽量化するためではありますが、ハードなシーンでの使用は想定していないのでしょう。
ただ、一番重いコッパースプールでさえ、1.47kg!これは何にも代え難いメリット。したがって、使用するシーンとしては、長期縦走や山稜のテント場のような
過酷な環境が予想されるシーンではなく、林間の穏やかなキャンプ場を利用してピークハントするような登山に向くテントと言えそうです。
3モデルの仕様比較表
今回紹介した3つのテントの仕様をまとめました(クリックすると大きく表示されます)。

作成:筆者
ITEM
ビッグアグネス フライクリークHV UL2 EX
【おすすめ用途】
◎林間や森などの穏やかな幕営地の3シーズンのキャンプ
◎1ドアでいいので、できるだけ荷物を軽くしたい人
ITEM
フットプリント:フライクリークUL2HV
重量:113g
ITEM
ビッグアグネス タイガーウォール UL2 EX
【おすすめ用途】
◎林間や森などの穏やかな幕営地の3シーズンのキャンプ
◎軽量性も大切だけど、テントでの時間を楽しみたい人
ITEM
フットプリント:タイガーウォールUL2
重量:170g
ITEM
ビッグアグネス コッパースプール HV UL2
【おすすめ用途】
◎林間や森などの穏やかな幕営地の夏のキャンプ、海辺にも
◎2人使用前提の人、テント生活重視で1人で広々とくつろぎたい人
ITEM
フットプリント:コッパースプール HV UL2
重量:170g
軽量性と居住性にこだわるなら<ビッグアグネス>
北米で高いシェアを誇る<ビッグアグネス>は、日本の山岳でもたびたび見かけるようになり、確実にユーザーを増やしているよう。なんといっても軽量性は、他メーカーのテントとは一線を画しています。
今回試してみた3モデルとも、軽さと設営・撤収の手軽さ、居住性には感心しました。「とにかく軽い方がいい、でも居住性にもこだわりたい!」そんな人にぜひおすすめしたいテントです。