目次
眺望ゼロ、達成感微妙。低山って本当に楽しいの?

でも山登りはしたい…。そんな時、救世主的な存在が「身近にある低山や里山」です。
ただし標高が高い山と比べて眺望は期待できなさそうだし、日帰りがメインだし、正直おもしろくなさそう。

「低山小道具研究家」を名乗るこの人物なら、低山の魅力を知っているかもしれません。
低山を知り尽くす「低山小道具研究家」ってどんなひと?

仕事にするほどハマることができる「低山の魅力」とは何なのでしょうか?
自転車とアウトドアライフ(遊び)
「身近にある山=低山」もワクワク探検に変わる!

ライター
吉澤
吉澤
毎日低山に行ってるようですが、どんなところが魅力なんでしょうか?
モリカツ
さん
さん
まず僕が低山(里山)で遊んでいるのは、子どものころに楽しんだ「秘密基地作り」の延長なんです。
子どもだから水も地図も傘も持たずに山に入って遊んでいました。低山って、本当はそれくらい気軽に歩き回れる場所なんです。
子どもだから水も地図も傘も持たずに山に入って遊んでいました。低山って、本当はそれくらい気軽に歩き回れる場所なんです。
ライター
吉澤
吉澤
気合を入れて向かう登山とは違うようですね。具体的に低山ではどんなことをして遊んでいるんですか?
モリカツ
さん
さん
寺社仏閣を見に行ったり、三角点を探したり、古地図に記されている道がいまでも残っているか確かめたり、鉄塔を探索したり。楽しみ方はいろいろあります。
ライター
吉澤
吉澤
いままで見向きもしませんでしたが、低山にはいろいろな要素があるんですね。
モリカツ
さん
さん
ほかにも秘密の休憩スポットを見つけたり、その土地の歴史を知ったりなど、「発見」や「気付き」があるのが低山のおもしろさではないでしょうか。
ライター
吉澤
吉澤
でも低山って意外に遭難が多いと聞きます。初心者が気軽に歩くには危険では?
モリカツ
さん
さん
難しく考える必要はありませんよ!子どものころを思い出して、「裏山探検」のようにとらえるといいと思いますよ。
大人でもいつもと違う道=裏道を探検気分で歩きたくなる。裏山探検はその延長です。
大人でもいつもと違う道=裏道を探検気分で歩きたくなる。裏山探検はその延長です。
探検の相棒は「地図」。でも登山地図じゃないよ

普段有名な山を歩くときには、昭文社の『山と高原地図』のようにルートやコースタイム、休憩場所などがわかりやすく記されたものを使っているひとも多いのでは。でも低山はカバーされていないことが多いです。これがまず低山歩きのハードルの高さ。
ライター
吉澤
吉澤
そもそも低山ってルートの探し方がわからない人が多いと思うんです。
モリカツ
さん
さん
まずは「地形図」を用意しましょう。
地形図とは国土地理院が発行している主に等高線と地図記号が記されている地図のこと。全国を網羅しており、登山道は「徒歩道」として記載されていることが多いです。地形図を開いて「歩けそうなルート」を探します。
地形図とは国土地理院が発行している主に等高線と地図記号が記されている地図のこと。全国を網羅しており、登山道は「徒歩道」として記載されていることが多いです。地形図を開いて「歩けそうなルート」を探します。
モリカツさんが活用しているのは、「スーパー地形」というスマートフォンのアプリ。ひと昔前までは紙地図を購入する必要がありましたが、アプリで簡単に確認することが可能です。これで地形図を開いて「歩けそうなルート」を探します。
またこのアプリは地形図だけではなく、「今昔マップ」や「植生図」といったさまざまなレイヤーがあるので、地図を見ること自体が楽しくなります。

ライター
吉澤
吉澤
「歩けそうなルート」とはなんですか?? 登山道(=徒歩道)を歩くのではないんですか?
モリカツ
さん
さん
低山には整備されている登山道のほかに、実は秘密の道がたくさんあるんです。
そういう未知の山トレイルに目星を付けて、「もしかしたらこういうルートでも歩けるかも?」と想像するのも、低山のおもしろさのひとつです。
そういう未知の山トレイルに目星を付けて、「もしかしたらこういうルートでも歩けるかも?」と想像するのも、低山のおもしろさのひとつです。
ライター
吉澤
吉澤
なんだか、わかるようでわからないような…。実際のフィールドで教えてください!
モリカツ
さん
さん
ではいつも行く山に探検に行きましょうか!
「登山者ほぼゼロ」の低山。道を探して探検だ!
やってきたのはモリカツさんがよく行くという高尾駅の南に位置する里山エリア。高尾山口駅から大勢が登る、いわゆる「高尾山」とは違って、登山者の姿はほぼゼロ。ここで低山の歩き方を学びます。
この地形図の中心には「徒歩道(いわゆる整備された登山道)」が見当たりません…。一体どこに道があるのでしょうか?
境界線がある尾根には道があるかも?

ここでチェックしたいのが、県境や市区町村の「境界線」です。これらが尾根上にある場合、そこには道がある可能性が高いと言います。
モリカツ
さん
さん
所有権の関係で土地の区別をわかりやすくするために、境界線上は切り開かれていることが多いんです。

実際に向うと確かに道があった

今回はエリア内にある神社へ行くことを目的に、このようなルートで低山を歩きます。スタート地点から「郡市の境界線」がある尾根上を歩き、周回して再びスタート地点に戻ってくる計画。

モリカツ
さん
さん
何が現れるかわからないワクワクを楽しみながら歩くのも低山のおもしろさのひとつです!
周りの緑にも興味を持ってみよう

モリカツ
さん
さん
左右で土地の所有者が違うので、こういう植生の違いが現われるんです。ちなみに左は針葉樹林で、右は薪炭林(しんたんりん)ですね。
※薪炭林(しんたんりん)とは薪や炭の原料となる木材を採取するために作られた林のこと。ナラなどが生えている

モリカ
ツさん
ツさん
このエリアでは境界線の目印にホウの木を植えることが多いようです。ほかに背の高いモミの木も目印にされています。

モリカツ
さん
さん
「今度はあの尾根を歩いてみようかな〜」なんて、次の計画を考えながら歩くのもおもしろいですよね。
ピークはないけれど、意外と眺望はある!

低山時間を楽しくする「小道具」を持っていこう

そこでモリカツさんに、愛用の道具とともにに「低山での過ごし方」を教えてもらいました。
話を聞いた場所は森勝さんが見つけた秘密のポイント。登山道から少し脇道を入ったところにあるので、人目を避けて休憩ができます。こういう開けた場所を地図で探したり、脇道で当たりをつけて発見するのも、低山の魅力のひとつです。
ひと手間かかる茶器で一服。ポータブル茶の間作り

さらに、いまいるような人目につかない場所があれば、ひとりで静かに休憩できます。
小型ピクニックシートはつかの間のリビング代わり

いまは手の平サイズに収まる商品が複数メーカーから発売されています。もちろん携帯座布団も忘れずに。
ハンモックがあればお昼寝だってできるぞ

ただし山道のすぐ近くは他の登山者の迷惑になることがあるので注意が必要。できるだけ人目につかない場所で楽しむといいでしょう。ゆらゆら揺られながら寝過ごしてしまっても、人里がすぐ近くにあるから安心ですよ。
油断は禁物!低山だからこそ知っておきたい安全策
モリカツさんの話を聞きながら低山を歩いていると、なんだか散歩でもしているかのように気軽に低山を楽しむことができます。ただし危険がないとはいえません。注意点とその対策をチェックしましょう。
下調べで「セーフゾーン」を把握しよう!

トラブルを回避するためには下調べが大事になります。いまはインターネットで簡単に最新情報を収集できるので、歩いている人の有無や危険箇所がないかなどを調べましょう。いちばん安全なのが、事前にセーフゾーンを歩いて、下山可能かを調査すること。目で見て確認するのが大切です。
そして自分が歩くエリアの概念図を作成します。東西南北があって、歩く尾根(コース)の方角や「セーフゾーン」の場所などを紙に書き出します。上のような簡単な概念図でも、一度自分の手で書くことで方角をしっかり頭で覚えることができます。

こまめにコンパスで方角確認をしよう

歩きながらはもちろん、休憩地から出発するときなど、進行方向の方角が間違っていないかを確認します。
後ろを振り返って、歩いてきた道を確かめる

分岐点や脇道にそれる場合などは、特に念入りに後ろを振り返って戻る道の景色もチェックしましょう。
もしもに備えて道具も準備

また、いまやGPSで現在地を確認したり救助要請したりなど、スマートフォンは必需品。モバイルバッテリーも忘れずに用意しましょう。
モリカツさんは休憩時間のときに、ファイヤースターターで火を付けたり、ロープワークの練習をするとのこと。これは万一に備えて持っていても、普段から練習していないといざというときに使えないからだそう。
低山遊びの極意とは、自分だけの「庭」を山に持つこと!

紹介してもらったコツを押さえて低山を歩いていると、ほかにも多くの発見があります。石碑やベンチ、椅子といった人工物から、寺社仏閣の縁起からたどる土地の歴史などさまざまです。そして歩いた道のログを取り、見つけたモノを地図上でポイントしていると、そのうちに自分だけの地図ができ上がり、まるでそこが庭のような感覚になるんだとか。
今回歩いたエリアでモリカツさんが作った地図を見せてもらうと、「妖怪ポスト」や「秘密基地」「見晴らしの良いベンチ」など気になるポイントが散りばめられており、なんだか「宝の地図」を眺めているようでワクワクします。
「低山って眺望もないし、楽しみ方がイマイチわからない…」なんて思っているひとも、「裏山探検」感覚で近所の山に登ってみると、いろんな発見があるかもしれませんよ!