【高山だけが登山じゃない】身近な「低山」の楽しみを裏山探検隊で見つけるぞ!

2020/10/04 更新

眺望もなく、ピークハントの達成感も少ない。アルプスのような山と比べて、そんなイマイチ面白さがわからない「低山」。でもほぼ毎日のように低山に登るひとにその魅力や遊び方を訊いてみると……。道を探すところから登山が始まる裏山探検、始めてみませんか?


アイキャッチ画像出典:PIXTA

眺望ゼロ、達成感微妙。低山って本当に楽しいの?

低山
出典:PIXTA
新型コロナウイルス感染拡大防止もあり、今年は日本アルプスなど標高が高い山に行くことを諦めた人も多いのではないでしょうか?

でも山登りはしたい…。そんな時、救世主的な存在が身近にある低山や里山です。

ただし標高が高い山と比べて眺望は期待できなさそうだし、日帰りがメインだし、正直おもしろくなさそう

低山
出典:東京ウラヤマラボ
そんなことを考えていたところ、なんとネット上で毎日のように低山を歩いている人を発見! 何やら低山には低山ならではのエッセンスがあるようです。

低山小道具研究家を名乗るこの人物なら、低山の魅力を知っているかもしれません。

低山を知り尽くす「低山小道具研究家」ってどんなひと?

モリカツ氏
撮影:YAMA HACK編集部
その「低山小道具研究家」とは、森勝(もり・まさる)さん。「モリカツさん」の愛称で知る人ぞ知る存在。自身のブログ「自転車とアウトドアライフ」やyoutubeでは、おすすめ山道具や低山の遊び方などを紹介しつつ、登山道がない低山でルートを見つける術などをイベントで教えることを仕事にしている、まさに低山のプロフェッショナルです。

仕事にするほどハマることができる「低山の魅力」とは何なのでしょうか?

自転車とアウトドアライフ(遊び)

「身近にある山=低山」もワクワク探検に変わる!

低山 森勝さん
撮影:YAMA HACK編集部
ライター
吉澤
毎日低山に行ってるようですが、どんなところが魅力なんでしょうか?

モリカツ
さん
まず僕が低山(里山)で遊んでいるのは、子どものころに楽しんだ「秘密基地作り」の延長なんです。

子どもだから水も地図も傘も持たずに山に入って遊んでいました。低山って、本当はそれくらい気軽に歩き回れる場所なんです。

ライター
吉澤
気合を入れて向かう登山とは違うようですね。具体的に低山ではどんなことをして遊んでいるんですか?

モリカツ
さん
寺社仏閣を見に行ったり、三角点を探したり、古地図に記されている道がいまでも残っているか確かめたり、鉄塔を探索したり。楽しみ方はいろいろあります。

ライター
吉澤
いままで見向きもしませんでしたが、低山にはいろいろな要素があるんですね。

モリカツ
さん
ほかにも秘密の休憩スポットを見つけたり、その土地の歴史を知ったりなど、「発見」や「気付き」があるのが低山のおもしろさではないでしょうか。

ライター
吉澤
でも低山って意外に遭難が多いと聞きます。初心者が気軽に歩くには危険では?

モリカツ
さん
難しく考える必要はありませんよ!子どものころを思い出して、「裏山探検」のようにとらえるといいと思いますよ。

大人でもいつもと違う道=裏道を探検気分で歩きたくなる。裏山探検はその延長です。

探検の相棒は「地図」。でも登山地図じゃないよ

スマホの地図
撮影:YAMA HACK編集部(スマホのアプリの地図を活用)
山を歩くには、まず地図が必要。
普段有名な山を歩くときには、昭文社の『山と高原地図』のようにルートやコースタイム、休憩場所などがわかりやすく記されたものを使っているひとも多いのでは。でも低山はカバーされていないことが多いです。これがまず低山歩きのハードルの高さ。
ライター
吉澤
そもそも低山ってルートの探し方がわからない人が多いと思うんです。

モリカツ
さん
まずは「地形図」を用意しましょう。

地形図とは国土地理院が発行している主に等高線と地図記号が記されている地図のこと。全国を網羅しており、登山道は「徒歩道」として記載されていることが多いです。地形図を開いて「歩けそうなルート」を探します。


モリカツさんが活用しているのは、スーパー地形」というスマートフォンのアプリ。ひと昔前までは紙地図を購入する必要がありましたが、アプリで簡単に確認することが可能です。これで地形図を開いて「歩けそうなルート」を探します。

またこのアプリは地形図だけではなく、「今昔マップ」や「植生図」といったさまざまなレイヤーがあるので、地図を見ること自体が楽しくなります。

低山 アプリ
出典:スーパー地形図アプリ(地形図がチェックできるアプリならなんでもOK)
ライター
吉澤
「歩けそうなルート」とはなんですか?? 登山道(=徒歩道)を歩くのではないんですか?

モリカツ
さん
低山には整備されている登山道のほかに、実は秘密の道がたくさんあるんです

そういう未知の山トレイルに目星を付けて、「もしかしたらこういうルートでも歩けるかも?」と想像するのも、低山のおもしろさのひとつです。

ライター
吉澤
なんだか、わかるようでわからないような…。実際のフィールドで教えてください!

モリカツ
さん
ではいつも行く山に探検に行きましょうか!

「登山者ほぼゼロ」の低山。道を探して探検だ!

やってきたのはモリカツさんがよく行くという高尾駅の南に位置する里山エリア。高尾山口駅から大勢が登る、いわゆる「高尾山」とは違って、登山者の姿はほぼゼロ。ここで低山の歩き方を学びます。

地図1

出典:国土地理院地図、編集:吉澤英晃(中央に位置する権現谷の周囲を歩く予定) ※画像をクリックして拡大
この地形図の中心には「徒歩道(いわゆる整備された登山道)」が見当たりません…。一体どこに道があるのでしょうか?

境界線がある尾根には道があるかも?


地図2

出典:国土地理院地図、編集:吉澤英晃 ※画像をクリックして拡大
ここでチェックしたいのが、県境や市区町村の「境界線」です。これらが尾根上にある場合、そこには道がある可能性が高いと言います。
モリカツ
さん
所有権の関係で土地の区別をわかりやすくするために、境界線上は切り開かれていることが多いんです。


境界
撮影:YAMA HACK編集部(今回は町田市と八王子市の境界標が登山道にありました)

実際に向うと確かに道があった


低山

出典:国土地理院地図、編集:吉澤英晃 ※画像をクリックして拡大
今回はエリア内にある神社へ行くことを目的に、このようなルートで低山を歩きます。スタート地点から「郡市の境界線」がある尾根上を歩き、周回して再びスタート地点に戻ってくる計画。

低山 踏み跡
撮影:YAMA HACK編集部
目星を付けた尾根の末端(スタート地点)に到着すると、登山口という標識はないにもかかわらず、本当に踏み跡がありました。この先に何があるのでしょうか?
モリカツ
さん
何が現れるかわからないワクワクを楽しみながら歩くのも低山のおもしろさのひとつです!

周りの緑にも興味を持ってみよう

撮影:YAMA HACK編集部
歩いていると道を挟んで右と左で生えている木の種類が違うことに気付きました。自然とこうなったのでしょうか?

モリカツ
さん
左右で土地の所有者が違うので、こういう植生の違いが現われるんです。ちなみに左は針葉樹林で、右は薪炭林(しんたんりん)ですね。

※薪炭林(しんたんりん)とは薪や炭の原料となる木材を採取するために作られた林のこと。ナラなどが生えている

低山 ホウの木
撮影:YAMA HACK編集部
へー、と賢くなったつもりになりながら先へ進むと、今度はほかの木と比べて葉が大きな「朴(ホウ)の木」に出会いました。この木だけ異様に目立っています
モリカ
ツさん
このエリアでは境界線の目印にホウの木を植えることが多いようです。ほかに背の高いモミの木も目印にされています。


低山 モミの木
撮影:YAMA HACK編集部/編集:吉澤英晃
教えてもらったことを気にしながら歩いていると、遠くの尾根にモミの木を発見! あそこにも土地の境界線あって道が存在するのかもしれません。
モリカツ
さん
「今度はあの尾根を歩いてみようかな〜」なんて、次の計画を考えながら歩くのもおもしろいですよね。

ピークはないけれど、意外と眺望はある!

低山 展望
撮影:YAMA HACK編集部
こうやって「低山の仕組み」を知ると楽しくなります。ウキウキしながら歩いていると、ちょっとした展望スポットに到着しました。遠く望むのは新宿副都心。低山でもこんなに見晴らしのいい景色を眺めることができるんですね。

低山時間を楽しくする「小道具」を持っていこう

低山 秘密
撮影:YAMA HACK編集部
お昼の時間になったので、ここでひと休み。山頂を目指すための行動時間が長い高山とは異なり、短いルートでの計画がしやすい低山では、休憩時間を長く設定しやすいです。また行程も日帰りとなれば、多少重たい荷物を背負っても大丈夫

そこでモリカツさんに、愛用の道具とともにに「低山での過ごし方」を教えてもらいました。

話を聞いた場所は森勝さんが見つけた秘密のポイント。登山道から少し脇道を入ったところにあるので、人目を避けて休憩ができます。こういう開けた場所を地図で探したり、脇道で当たりをつけて発見するのも、低山の魅力のひとつです。

ひと手間かかる茶器で一服。ポータブル茶の間作り

茶器
撮影:YAMA HACK編集部(茶器は中国メーカー<Boundless Voyage>の商品。椅子は<ヒルサウンド>の「BTRスツール」。テーブルは<アクシーズクイン>の「シノギチャブダイ」)
まず森勝さんのバックパックから出てきたのは、なんとチタン製の茶器。さらに三脚の椅子と木製のちゃぶ台をセットすれば「くつろぎスポット」の完成です。山でお茶といえばコーヒーが思い浮かぶのですが、ゆっくり日本茶を飲むなんて新鮮です。

さらに、いまいるような人目につかない場所があれば、ひとりで静かに休憩できます。

小型ピクニックシートはつかの間のリビング代わり

低山 ピクニックシート
撮影:YAMA HACK編集部(敷物は<コクーン>の「タイフーンブランケット ミニ」)
椅子とちゃぶ台がなくても、例えばピクニックシートがあればそれだけでも快適な休憩スペースを作ることが可能です。整備が行き届いてない低山にはベンチや椅子がないこともしばしば。そんな状況でも、これがあるだけでお尻を汚さずに済みますし、荷物を広げてもOK。

いまは手の平サイズに収まる商品が複数メーカーから発売されています。もちろん携帯座布団も忘れずに。

ハンモックがあればお昼寝だってできるぞ

ハンモック
撮影:YAMA HACK編集部
さらにハンモックを楽しむのもいいですね。低山は樹林に囲まれているので、ハンモックを設置できる場所が多い点が標高が高い山との違いです。

ただし山道のすぐ近くは他の登山者の迷惑になることがあるので注意が必要。できるだけ人目につかない場所で楽しむといいでしょう。ゆらゆら揺られながら寝過ごしてしまっても、人里がすぐ近くにあるから安心ですよ。


油断は禁物!低山だからこそ知っておきたい安全策

モリカツさんの話を聞きながら低山を歩いていると、なんだか散歩でもしているかのように気軽に低山を楽しむことができます。

ただし危険がないとはいえません。注意点とその対策をチェックしましょう。

下調べで「セーフゾーン」を把握しよう!


低山 概念図

撮影:YAMA HACK編集部(今回歩いたルートの概念図。歩くコースと方角、セーフゾーンだけをシンプルに書くのがコツ) ※画像をクリックして拡大
トラブルを回避するためには下調べが大事になります。いまはインターネットで簡単に最新情報を収集できるので、歩いている人の有無や危険箇所がないかなどを調べましょう。いちばん安全なのが、事前にセーフゾーンを歩いて、下山可能かを調査すること。目で見て確認するのが大切です。

そして自分が歩くエリアの概念図を作成します。東西南北があって、歩く尾根(コース)の方角や「セーフゾーン」の場所などを紙に書き出します。上のような簡単な概念図でも、一度自分の手で書くことで方角をしっかり頭で覚えることができます

低山 セーフゾーン
撮影:YAMA HACK編集部(街がある方角がわかっていれば道に迷っても落ち着いて行動できる)
セーフゾーン」とは道路や人里など、目指して行けば命の危険が少なくなる方角のこと。今回は東に道路が走っており、南に人里がありました。もし山の中で道に迷っても、とりあえず東か南に向かえば安全地帯に出ることができます。

こまめにコンパスで方角確認をしよう

低山 コンパス
撮影:YAMA HACK編集部(愛用しているコンパスのメーカーは<東京磁石>)
道迷いを回避するために、まめにコンパスを見る癖をつけましょう。モリカツさんのおすすめは小型コンパスを手首などに付けて、いつでもチェックできるようにすること。

歩きながらはもちろん、休憩地から出発するときなど、進行方向の方角が間違っていないかを確認します

後ろを振り返って、歩いてきた道を確かめる

低山
撮影:YAMA HACK編集部
遭難を防ぐ方法として、来た道を戻るという手もあります。でも、いざ戻ろうとして後ろを振り返っても、見覚えのない景色で帰り道がわからないことがよくあります。

分岐点や脇道にそれる場合などは、特に念入りに後ろを振り返って戻る道の景色もチェックしましょう。

もしもに備えて道具も準備

低山 道具
撮影:YAMA HACK編集部(コットンの表面をナイフで削ると綿ができる。これが火種になりファイヤースターターで火を付けることが可能)
ここ最近は台風の被害で道が崩れていることが多いといいます。そんな場面では手がかりにできるロープがあると安心です。

また、いまやGPSで現在地を確認したり救助要請したりなど、スマートフォンは必需品。モバイルバッテリーも忘れずに用意しましょう。

モリカツさんは休憩時間のときに、ファイヤースターターで火を付けたり、ロープワークの練習をするとのこと。これは万一に備えて持っていても、普段から練習していないといざというときに使えないからだそう。

低山遊びの極意とは、自分だけの「庭」を山に持つこと!


低山 自分だけの地図

作成:森勝さん ※画像をクリックして拡大
紹介してもらったコツを押さえて低山を歩いていると、ほかにも多くの発見があります。石碑やベンチ、椅子といった人工物から、寺社仏閣の縁起からたどる土地の歴史などさまざまです。そして歩いた道のログを取り、見つけたモノを地図上でポイントしていると、そのうちに自分だけの地図ができ上がり、まるでそこが庭のような感覚になるんだとか。

今回歩いたエリアでモリカツさんが作った地図を見せてもらうと、「妖怪ポスト」「秘密基地」「見晴らしの良いベンチ」など気になるポイントが散りばめられており、なんだか宝の地図」を眺めているようでワクワクします

「低山って眺望もないし、楽しみ方がイマイチわからない…」なんて思っているひとも、「裏山探検」感覚で近所の山に登ってみると、いろんな発見があるかもしれませんよ!

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吉澤英晃
吉澤英晃

群馬県出身。大学時代に所属した探検部で登山を開始。以降、沢登り、クライミング、雪山、アイスクライミング、山スキーなど、オールジャンルで山を楽しむ。登山用品の営業職を経て、現在はフリーの編集・ライターとして活動中。

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