「山でハンモック」というけど、どれを選べばいいの?
YAMA HACKでも何度か取り上げてきた「山でハンモック」という遊び方。
インテリアなどでもハンモックを目にする機会が増えましたが、いざアウトドアで使うとなると、どんなメーカーからどんなハンモックが出ているのかがよくわからない。しかも大半が海外メーカーのもので代理店もバラバラとあって、実際に店頭で商品を比較するのは難しいですよね。
とあらば、YAMA HACKが「張り比べ」をやってみようと思います!
「低山あそびの達人」に助太刀を頼みました
今回一緒にハンモックを張り比べてもらったのは、低山小道具研究家の森勝さんことモリカツさん。
アウトドア道具のレビューブログ(http://www.morikatu.jp/)やYouTubeなどの発信やイベントを通じて、裏山(ウラヤマ)遊びの楽しみ方を伝える達人なのです。
さっそく本題なのですが、モリカツさんにとって「いいハンモック」ってどんなのですか?
さん
おっと、張り比べる前から結論が!
さん
確かにベッドのシーツも綿か化繊かと言われると、綿のほうが質感がいいですね。でも問題は「重さ」。アウトドアで持ち運びを考えると、綿のハンモックはハードルが高い。
さん
その間を各社行ったり来たりしている状況。最初に言ったように普通がいちばんなんです
とはいえ、こういう道具は「ふむふむ、なるほど〜」とギミックを味わう楽しみもあるので、そこも踏まえて張り比べていきたいと思います!
まずはハンモックの構造をおさらい
ハンモックは「木にかけるのヒモ部分(1と2)」「寝るための布部分(3)」でできています。
ただ各メーカーのギミックとして、1と2が一体だったり、逆に2と3が一体だったりと微妙に組み合わせが異なる場合があります。またそれぞれを連結するパーツも、トグルだったりカラビナだったりと違いがあります。
「ウーピースリング」という特殊なヒモの存在
山用のハンモックには「軽量化」をするためにパーツを極力少なくしたものがあります。そういうものに使われているのが、「ウーピースリング(Whoopie Slings)」というもの。
これは写真のようにヒモの一部が中空になっていて、その中にヒモが通っていて「輪っか」になっているものです。わかりやすくいうと、「自在結び」の調節機能を結ばずに作ったもの。ヒモ同士の摩擦で動かなくなるという仕組みなのです。
あと今回紹介するハンモックには、ハンモック本体が単体で販売されており、同じメーカーのヒモを選ぶことや他社のヒモを組み合わせることができるものもあります。
さん
さすがは達人。組み合わせで自分好みのハンモックにするとは!
今回選んだのは6つのハンモックです
ハンモックの構造を知ったうえで、実際のハンモックレビューへと移ります。
今回は以下のような基準で選んでいます。
では張り切っていってみましょう!
入門部門:お値段抑えめ、最初の1張りに
「入門部門」として選んだのは、重さは400g以上・1万円以下の3点。テントなどの登山必需品と異なり、あそび専門のハンモックにお金をかけられないというひと向けです。
EXPED|独自のストラップは慣れると便利
<EXPED>はハンモックとロープがセットになったキットと別売が選べます。ハンモックは今回紹介するトラベルと、軽量タイプのライト、広さが約1.4倍のワイドの3種類。
オプションとして、モスキートネットとアンダーキルト(ハンモック下部の冷えを防ぐキルト)があり、ハンモック泊も視野に入れるならばありな選択です。
1は木にかける部分ですが、ツリーストラップにソフトカラビナ(ヒモでできたカラビナ)を通して使います。
2はEXPED特有のスリットの入ったロープ。この穴に結び目を挿入して張り具合を調整していきます。
3は本体生地の拡大。ハニカム模様のプリントがされていますが、これは滑り止め。ギミックが細かい!
4はスタッフサック。ジャストサイズ。
さん
実はEXPEDは耐久性を高めるためか生地が変わりました。旧モデルにあった伸びがなくなったと感じました。
モデル名 | Travel Hammock Kit |
本体価格(税込) | 9,680円 |
総価格 | 9,680円 |
サイズ | 243✕143cm |
収納サイズ | Φ11✕18cm |
重量 | 300g+110g(ロープ) |
総重量(ロープ込) | 410g |
耐荷重 | 150kg |
ロープの有無 | 込 |
COCOON|今回唯一のリッジライン付きモデル
モリカツさんがプライベートでも使用しているという<COCOON>。その理由はトラベルシーツのブランドならではの肌触りや質感のよさ。ハンモックの展開はこの1種類のみですが、モスキートネット付もあります。
1は別売のハンモックストラップ。幅は2.5cmと標準的ですが厚みが少しあるので、よれにくいです。
2は本体とのジョイント部分。金属製のカラビナは誰が見てもわかりやすい構造です。
3の右側に出ているロープがリッジラインです。反対側に延びているので、これが真っ直ぐになるよう設営すると、誰でもきれいに張ることができます。
4のスタッフサックは本体から細いヒモでつながっています。このことで収納しやすく、また雑に入れてもジッパを閉めれば小さくまとまります。
さん
あとCOCOONはトラベルシーツのブランドなので、本体の質感はいちばんいいと思います。コンパクトな割には肌
モデル名 | ウルトラライトハンモック |
本体価格(税込) | 9,350円 |
総価格 | 12,430円 |
サイズ | 325✕148cm |
収納サイズ | 17cm×7cm |
重量 | 240g+40g(カラビナ) |
総重量(ロープ込) | 500g |
耐荷重 | 140kg |
ロープの有無 | 別:ハンモックストラップ(3,080円/220g) |
sea to summit|我道を行くデザインで目立つ!
キッチン用品やスリーピングマットなど幅広いアイテムが揃う<sea to summit>。今回紹介するなかでは、重量や大きさも含め、山というよりはキャンプ寄りのハンモックになります。独自のギミックも重量を考えなければ、シンプルでわかりやすい仕組みになっています。
1はツリーストラップ。1.5cmと幅が狭いので、樹皮を傷つけないような保護も一緒に行いましょう。
2と4は本体とのジョイント部分。ハンモック側のフックにバックルを引っ掛け、ロープを引っ張って調整します。このバックル構造はザックやベルトなどよく見かけるものなので、理解しやすいです。
3は生地の拡大部分。肌触りは軽量ハンモックとして標準的。縫い合わされたスタッフサックではなく、コンプレッションバッグに収納するようになっています。
さん
モデル名 | プロハンモックセット(シングル) |
本体価格(税込) | 8,800円 |
総価格 | 8,800円 |
サイズ | 300✕150cm |
収納サイズ | 10✕10✕19cm(実測) |
重量 | 560g |
総重量(ロープ込) | 560g |
耐荷重 | 180kg |
ロープの有無 | 込 |
UL部門:少々値は張るが「軽さは正義」!
「UL部門」として選んだのは、重さは400g以下・1万円超えの3点。ULというだけあって、最も軽いものは本体+ヒモでたったの189g! またこの3点は最初に説明した「ウーピースリング」を使っているのが、入門部門と大きく異なる点です。
Hummingbird Hammocks|手の平にのる最小最軽量の決定版!
ハンモック+ロープの軽さを求めるならば、ダントツで圧勝のアメリカ発<Hummingbird Hammocks>。200gを切るのはこれだけです。完全に手のひらに収まるサイズなので、ポケットに入れてさっと出かける軽やかさがあります。ラインナップとしては、1.5人用のシングルプラス、2人用のダブルがあります。
またタープやネット、アンダーキルトなど、ハンモック泊向けのオプションが揃っているのも特徴的です。
1のツリーストラップは2.5cmと幅はありますが、やや薄めなのでよれないように気をつけたいです。
2はジョイント部分。木側のロープの穴にボタンを通し、
3は「ひばり結び」という方法で結ばれた本体。ハンモックの端にだけ負担がかからないようにした工夫です。
4はスタッフサック。手のひらに載る小ささですが、生地も薄いので難なく収まります。
さん
肌触り、通気性、伸び、サイズのどれも及第点ですが、その分恐ろしいほどコンパクトで軽量、持っていても邪魔にならない軽快さと椅子としても設営しやすいメリットがあります。
モデル名 | シングルハンモック |
価格(税込) | 14,850円 |
総価格 | 20,900円 |
サイズ | 264✕127cm |
収納サイズ | 10✕10✕5cm |
重量 | 147g |
総重量(ロープ込) | 189g |
耐荷重 | 140kg |
ロープの有無 | 別:ツリーストラップ (6,050円/42g) |
DD Hammocks|すっと身体を包み込む抜群の安定感
<DD Hammocks>はイギリスのブランドで、キャンプやブッシュクラフトなどのシーンでよく知られています。なので、登山やULシーンでは紹介されることが少ないのですが、10種類ものハンモックが揃っています。ただキャンプなどがメインなので、今回はいちばん軽いスーパーライトというアイテムを紹介します。
1と2はツリーストラップとロープ部分。両端が輪っかになっており、ソフトカラビナでハンモックと連結します。中指あたりにあるビーズは、ウーピースリングのストッパー。モリカツさん曰く「ビーズを使うのが、ブッシュクラフトっぽいですね」とのこと。
3と4はハンモック本体。4を見ると、端の折返し部分がやや厚く、縁の部分がちょうど良い枕にもなります。
さん
モデル名 | DD SuperLight Hammock |
本体価格(税込) | 14,800円 |
総価格 | 14,800円 |
サイズ | 270✕140cm |
収納サイズ | 14✕20✕9cm(実測) |
重量 | 270g |
総重量(ロープ込) | 270g |
耐荷重 | 100kg |
ロープの有無 | 込 |
eno|撤収がしやすい、絶妙サイズのスタッフバッグ
<eno>はフェスやイベントでハンモックを販売することからスタートしたメーカー。カラフルな「DoubleNest」シリーズが代表的なアイテムですが、ロングトレイルハイクなど軽量に携行するためのモデルが「SUB」シリーズ。今回の「SUB6」のほかに、「DoubleNest」と同じサイズ感の広めタイプ「SuperSub」があります。
1は別売の軽量タイプのツリーストラップ。ダイニーマ製のウーピースリングになっています。
2の連結部分はトグルを入れる仕組み。説明がなくてもわかりますが、ちゃんとタグで説明がついていて親切。
3は生地の拡大。リップストップナイロンが使われています。
4のスタッフサックは余裕があるサイズ。収納サイズが実際より大きくなってしまいますが、きつきつで収まらない!!というストレスがないのは楽。
さん
モデル名 | SUB6 Ultralight Hammock |
本体価格(税込) | 10,450円 |
総価格 | 15,400円 |
サイズ | 267✕119cm |
収納サイズ | 13✕17✕6cm、7✕13✕5cm(実測) |
重量 | 165g |
総重量(ロープ込) | 327g |
耐荷重 | 136kg |
ロープの有無 | 別:Helios Suspension System (4,950円/162g) |
6つをわかりやすく比較してみました
ロープの仕組み、収納袋、本体のファブリックなど、それぞれの個性が出たハンモック6選。より比較しやすいように、以下でまとめたいと思います。
収納サイズ部門|等倍比較で並べると、明らかな違いが!
寝心地部門|形状とファブリックの質感が決め手
次はモリカツさんの寸評付きで「寝心地ベスト3」を紹介します。
総評:気になる項目のベスト3を発表!
ハンモックを購入するなかで、気になるポイントを「◎=1位」「◯=2位」「△=3位」でまとめました。
軽さ | 広さ | 収納サイズ | 寝心地 | 価格 | |
EXPED | − | − | − | − | ◯ |
COCOON | − | ◎ | △ | ◯ | △ |
sea to summit | − | ◯ | − | △ | ◎ |
Hummingbird | ◎ | − | ◎ | − | − |
DD | ◯ | △ | − | ◎ | − |
eno | △ | − | ◯ | − | − |
寝心地重視のひとはハンモック本体の評価となる「広さ」「寝心地」を、持ち歩きなどのラクさ重視の人は「軽さ」「収納サイズ」を基準にバランスを見るといいと思います。
ハンモックがあると、山の非日常感がアップ!
ここまで見ても、ハンモックはギミックが多く、考えれば考えるほどどれがいいのかわからなくなるかもしれません。
が、道具よりまずは体験。山でゆらゆら寝転がると、見上げた木々の隙間の日差しや風の音など、普段とは違った「山の時間」に気づくことができます。
ここで紹介したものは、山に携行して使うことを前提に選んでいますので、どれでも大丈夫。まずは近場のキャンプ場や小さな山で試してみてください!
今回紹介した商品はこちらで購入できます
cocoon(コクーン)| ウルトラライトハンモック
sea to summit(シートゥーサミット)|プロハンモックセット(シングル)
hummingbird hammocks(ハミングバードハンモックス)|シングルハンモック
※ハミングバードのツリーストラップは「ハイカーズデポ」などULギアショップなどで取扱いがあります。
DDハンモックス|スーパーライトハンモック
DDハンモックス|WEBSHOP
eno(イノー )| SUB6
eno(イノー)| ヘリオスサスペンションシステム