物作りの世界への憧れ
もともとは神戸ザックの愛用者に過ぎなかった宇都さん。しかしある時、神戸ザックのお店に遊びに行ったとき、後に師匠となる星加さん(神戸ザック代表)の一言に気持ちを動かされたそう。
「師匠が高齢で、そろそろお店を畳むことを考えているという話を聞きました。その時に、『これから使うザック、どうしよう』と切実に考えたんです。それで『それなら自分で作ろう』と。仕事に不満はないと言いながら、製造からアフターサービスまで一貫して関わるような“物作りの世界”への憧れがあったんだと思います。」
ところが、師匠は弟子をとったことは一度もなく、何度も弟子入りを断られたそう。それでも粘り強く頼み込んだ末、なんとか弟子入りを許されました。その後、2018年にザック職人として独立。
とりあえず始めて、改良を重ねる
「2018年の独立当初は、色々悩みました。生地の仕入れ先もなかなか見つからないし、デザインも完全に納得するには至らなかった。そんなときに友人からかけられたのが『巧遅は拙速に如かず』という言葉。完璧でなくとも、まずは始めてみることが大事なんだと思います。」
その後、数多くのモニターさんの意見をもとに改良を重ねました。そして2019年、1年以上のモニター期間を経て、<うと鞄工作所>を正式にスタート。ようやく、自身でも納得のいくデザインに仕上がってきたそうです。
「デザインはほとんどオリジナルですが、ショルダーハーネスの形は神戸ザックのものをベースに改良を加えています。」
しかし、宇都さんの使いやすさに対する探求心は果てることなく、これからも使いやすさの進化は止まりそうにありません。
「あと一歩なんです。背面パッドやショルダーベルトへの使用に耐えるウール素材が見つかれば完璧なんですが、耐久性やコストなど問題は山積で…でも、近い将来に『臭わないザック』は実現したいです。」
「あくまで道具」という人から「道具そのものが好き」という人まで
「登山の楽しみ方は色々あると思います。僕自身、バリエーションルートに挑むときもあればテント場でのんびり過ごして楽しむこともあって、これといったスタイルは決めていません。」
そんな宇都さんが作るザックは、それぞれのスタイルで楽しむ登山者に広く受け入れられる汎用性があります。登山の楽しみ方が人それぞれ異なるように、オーダーの傾向も人それぞれなんだとか。
「ストイックな登山をする方の場合、初めからオーダーの具体的なイメージが出来上がっている事が多いです。一方、『自分専用の道具が欲しい』という思いがあっても、具体的なイメージを持てない初心者の方もいる。その場合には、話を伺いながら具体的な仕様をこちらから提案するという事も多いです。いずれにせよ、必ず対話を重ねて、お客さんと一緒に納得のいくザックを作り上げていくことを大事にしています。」
「高級品」にはしたくない
「革の登山靴のように、メンテナンスしながら長く使う。そんな風に、道具に愛着を持って使ってもらいたいと思っています。」
長く使える物と聞くと、いわゆる「高級品」を想像してしまいますが、決してそんなことはありません。
「お金持ちしか買えないものは作りたくない」と話す宇都さんのザックは、オーダーメイドでありながらも価格は4万円から(ウエストベルトの無い中型ザックであれば3万円から)。市販のザックに少し上乗せした金額で購入できるのは非常にうれしい点です。
”自分専用”が最大の価値
<うと鞄工作所>のザックの最大の価値は“自分専用”であること。背負い心地はもちろん、細かな使い勝手へのリクエストにも対応しています。
「お客さんからの反応やリクエストを直接頂けるのが一番嬉しい。」
そう話す宇都さんは、お客さんと相談しながら、日々試行錯誤をしています。
例えばザック前面をデイジーチェーンやメッシュポケットへ変更したり、ウエストベルトに大きなポケットやギアラックを付たりといったカスタムは定番。
中にはザックの底部に行動食のゴミを入れるスリットを付けて欲しいというニッチなオーダーもあったそうです。
「今後もオーダーならではの製作にこだわっていきたい。うちでしか作れないザック、うちで作る必要があるザックを作り続けていきたいと思っています。」
人それぞれの楽しみ方に共感し、それを反映したザック作りをする<うと鞄工作所>。皆さんも宇都さんに思いを共有して、長く使えるザックをオーダーしてみてはいかがでしょうか。
ザックのオーダーはメール/インスタグラムから
現在、オーダーはメールまたはインスタグラムのダイレクトメッセージにて受け付けています。具体的なザックのイメージがある方も、漠然としたイメージしかない方も、まずはお気軽に連絡してみてください!早速、私もオーダーさせていただこうと思います。