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「半シュラ」という道具を知ってますか?

どんな商品なのかというと、上の写真がいわゆる「半シュラ」になります。「半シュラ」とは「半身シュラフ」の略語であり、呼び名の通り下半身だけに中綿が封入されているシュラフ(寝袋)なんです。
なんだか中途半端な感じが否めないですが、一体どうしてこんな寝袋が誕生したのでしょう??
「半シュラ」誕生の舞台裏はアルパインクライミングにあり

半シュラが生み出された背景には、アルパインクライミングという特殊なアクティビティの存在があります。ときに岩壁に張り出した猫の額ほどのスペースに座って夜を明かすこともあるアルパインクライミングでは、パフォーマンスを上げるために1gでも荷物を軽くする必要がありました。
どうしたら装備を軽くできるか。クライマーたちが試行錯誤を積み重ねた結果誕生したのが、一部の中綿を省くことで軽量化を図った半シュラなのです。
でもそれがなぜにいま注目なのか、まずは「一般的なシュラフ」と比べながら解説していきます。
「半シュラ」は普通の寝袋と何が違う?

今回は登山用品の総合メーカー<モンベル>から、半シュラフとしてリリースしている「ダウンハガー800 ハーフレングス #3」と、使われているダウンの質が同等のノーマルタイプ「ダウンハガー800 #3」を借りました。なお「ダウンハガー800 #3」は3000mの夏山で広く使われているモデルになります。
さっそく左のノーマルタイプと並べて見てみると、右の半シュラの違いは一目瞭然。まずフードがありません。さらに胸元辺りがすっきりしていますね。
あれ? 上半身にダウンがない・・・

※薄い生地がついているかどうかはメーカーによって異なります

「軽い・コンパクト・安い」の三拍子!


続いて半シュラはどうでしょうか。

シュラフが500mlのペットボトル以下というのは、けっこう驚異的な数値です。
収納サイズもコンパクト


中綿が少ないから価格も安い!
価格や適応身長、適応温度なども確認してみましょう。モデル名 | 税別 価格 | 適応 身長 | 適応温度 |
【半シュラ】 ダウンハガー800 ハーフレングス #3 | ¥19,000 | ー | 快眠温度域: 3℃以上 使用可能限界温度: −2℃ |
【ノーマルタイプ】 ダウンハガー800 #3 | ¥30,000 | 183cmまで | コンフォート:4℃ リミット:−1℃ エクストリーム:−16℃ |
まず注目すべきは価格差です。中綿が少ないだけで半シュラはだいぶお得に感じます。
ただし適応温度の使用可能限界温度は−2℃と高め。ノーマルタイプのエクストリーム温度は−16℃なので、14℃も違いがあります。この差を埋めるのが、半シュラを使いこなすコツになってくるのです。
半分で大丈夫か、実際に寝てみた!

実際にスペック上の適応温度はノーマルタイプと比べて14℃も違いがありました。この差を埋めるために、半シュラを使うときは保温着やレインウェアを着込む必要があります。

寝心地は悪くないけどウェアのチョイスが難しい・・・

ただし中綿が入っていない部分は保温着などに頼ることになるのですが、実はこれが難しい……。
というのも、保温着にはシュラフのような対応温度域の表記がないので、何℃まで対応する保温性を有しているのかというスペックを、往々にして私たちは知らないからです。持参した保温着が薄ければ寒くなり、ハイスペック過ぎると今度は暑くなってしまう。これが半シュラの現実です。
実際に外で一晩寝てみたのですが、そのときは着込んだ保温着が薄かったせいで、下半身は暑くて上半身は涼しいというアンバランスな状態になってしまいました。
半シュラは◯◯な山行におすすめ!

実際に商品を使ってみての感想は「経験値があればどんな山行にもおすすめできる」になります。経験値があるというのはもちろん、自前の保温着でどれほどまでの寒さに絶えられるのかを、山行を通して把握している状態を指します。そういった経験値があれば寒さが厳しい冬山でもレイヤリングを工夫して快眠できる人もいるでしょう。
ではそういった経験値がない人はどうすればいいのか。使いこなすにはややハードルが高い商品であることに間違いはないので、寒さの心配が少ない夏のキャンプや低山などで徐々に実践を重ねていくのが理想的といえます。体感温度は人によって違うので、例えば「この半シュラとこの保温着があれば夏の3000mの山でも大丈夫だよ!」とは言えないのです。
ほかにもこんな半シュラがあります。
ニッチな商品ではありますが複数のメーカーが半シュラをリリースしています。一部を紹介しましょう。モンベル|ダウンハガー800 ハーフレングス #3

カラー:バルサム(BASM)
収納サイズ:∅12×24cm(2.4L)
快適睡眠温度域:3℃~
使用可能限界温度:-2℃
モンベル|ダウンハガー800 ハーフレングス #3
<プロモンテ> 半身用シュラフ100g
素材:表地/ナイロン100%(超軽量20Dナイロン)
中綿/ホワイトダックダウン100g(国内洗浄)
サイズ:長さ150×肩幅70×足幅50cm
収納サイズ:タテ17.5×ヨコ9.5cm
重 量:約270g(羽毛量/約100g)
カラー:ブルー×ネイビー
構造:シングル構造
付属品:収納袋
原産国:日本
中綿/ホワイトダックダウン100g(国内洗浄)
サイズ:長さ150×肩幅70×足幅50cm
収納サイズ:タテ17.5×ヨコ9.5cm
重 量:約270g(羽毛量/約100g)
カラー:ブルー×ネイビー
構造:シングル構造
付属品:収納袋
原産国:日本
パタゴニア|ハイブリッド・スリーピング・バッグ(レギュラー)

重さ:490 g 素材:(シェル)Y字型フィラメント・テクノロジーを採用した、0.85オンス・15デニール・パーテックス・クアンタム・リップストップ・ナイロン100%。DWR(耐久性撥水)加工済み。ブルーサインの認証済み。(裏地)1.2オンス・15デニール・リップストップ・ナイロン100%。DWR加工済み。(インサレーション)850フィルパワー・アドバンスト・グローバル・トレーサブル・ダウン
パタゴニア|ハイブリッド・スリーピング・バッグ(レギュラー)使いこなせば、登山がより軽快になるツールです!

経験値がない状態ですぐに3000m級の夏山などで使うことはおすすめしませんが、1gでも荷物を軽くしたいという人は、低山から徐々に始めて経験を積んでいくのがいいでしょう。
荷物が軽くなれば消費する体力が少なくてすむので、一日で歩く距離を延ばしてより多くの景色を楽しんだり、夕飯のメニューを豪華にしたり、別の楽しみの割合を増やすことができますよ。
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<プロモンテ> 半身用シュラフ100g