【遠隔で山道具アドバイス!】ハイカーズデポにみる「オンライン接客」の可能性(2ページ目)

接客時間は45分ということで、具体的な商品や質問がはっきりしていたほうが有意義な接客を受けられそうですが、「最近のお勧めアイテムは?」とか「ひと通り店内を見てみたい」といったザックリとした要望でもOKとのことです。

店からの返信メールにある指定のURLをクリックすると、ブラウザ上でZoomが開きます。で、指定のIDとパスワードを打ち込むと別ウインドウが開いてミーティング画面。実に簡単です。

ちなみに、今回の体験取材用に私が選んだ質問は、今話題のMSRの高効率バーナー「ウインドバーナー」について。ウェブサイトや雑誌の記事を読んで基本的な商品知識はあるが、まだ実際に使ったことはない、と事前に伝えています。

ウインドバーナー

土屋智哉さん本人のマンツーマン接客はじまる

接客を始める土屋さん

撮影:筆者(実際のZoom画面より。メイン画面は店内で接客する土屋さん。上部に筆者)

土屋さん
さて、MSRのウインドバーナーということで、実際にお湯を沸かしながらお話を進めていきましょう

寺倉
へぇ〜、そんなこともできるんですね。なかなか新鮮です

実際に湯を沸かしてみる土屋さん

撮影:筆者(画面の向こうで実際の商品を使用し、湯沸かしを実演中)

土屋さん
ご要望に応じていろいろなシーンをお見せしながら説明できるのが、いわゆるオンラインストアとの大きな違いですね

寺倉
たしかにそうですね。では、着火したバーナー部分をよく見せていただけますか。「炎が見えない」と書かれた記事が多かったもので

疑問点を見せて解決

撮影:筆者(「炎が見えない」という商品特性をわかりやすく解説中)

土屋さん
はい、ここですね。ニクロム線が赤化している状態がよくわかると思います。いかがです?

寺倉
ははぁ、なるほど。たしかに炎自体は見えないけれど、火が付いているかどうかは一目瞭然ですね

土屋さん
ですよね。だから使用上はなんの問題もないと思います。ほら、もう沸いてきましたよ

寺倉
手に持ったときのサイズ感がわかりやすいですね

土屋さん
そうなんですよ。そこがオンライン接客のいいところだと思います

Zoom画面筆者側

撮影:筆者(先ほどの接客を筆者側から見るとこんな感じでした)

意外とあり?!メリットデメリットを検証

Zoom接客使用ツール

提供:ハイカーズデポ(オンライン接客での使用ツールであるPCとスマートフォン)

ハイカーズデポのオンライン接客は、とりあえずの試験運用ということもあり、ノートPCとスマートフォンという身近な機材でスタートしています。

カウンターで接客できる小さめのアイテムはノートPCでじっくりと、店内をぐるりと回って見せるときや、バックパックやツェルトのなどディテールをさまざまな角度から説明するときには、スマートフォンに切り替えて、ハンディカメラ代わり使います。

商品を見せるのに、スマホのカメラをフル活用

土屋さんが言うように、サイズ感がわかりやすいという点は、オンライン接客の大きなメリットに思えます。小さなアイテムは手に持って見せ、たとえばバックパックは土屋さんが背負って見せ、ツェルトでは中に入って寝転んでみたり……。

ザックを背負う土屋さん

撮影:筆者(実際にザックを背負って見せてくれる土屋さん)

実際の人が使っている様子を見ることで、サイズ感をイメージしやすいんですね。また、わかりにくい部分はアングルを変えてもらったり、カメラを近づけたり遠ざけたりと、要望通りに工夫して見せてくれます

アイテムの特徴や使い方などはオンラインストアでもわかりやすくまとめられた画像や動画がありますが、オンライン接客の場合は、わかりにくい部分をいちいち巻き戻す必要もないし、わからない点は瞬時に要望できる。それも大きなメリットに思えます。

でも「ぶらぶら買い物」の楽しさは……

物量が多いハイカーズデポ通常店内

提供:ハイカーズデポ(お店に行けばいろいろなアイテムを直に見ることができる)

では、オンライン接客でできないこととはなんでしょうか。

ひとつは当然ながら、商品に触れることができない点です。なので、手に持ったときの重さや、手触り、質感といったあたりがわからない。実際の店頭だったら、意外に重要な選択肢になる要素ですね。

また、目的が明確でないショッピングが苦手です。「なにかおもしろいモノ、ないかな?」と、店内をぶらぶら見て回る楽しみってあるじゃないですか。それができない。

もちろん、手持ちのスマートフォンで店内をくまなく見せてもらうことは可能です。けれども、店内を見て回るペースや、気になった箇所をじっくり見たいときはその都度指示しなければならないので、いわゆる「ぶらぶら」ショッピングとは、ニュアンスが違ってくるわけです。

オンライン接客のメリット・デメリットをおさらい

というわけで、「オンライン接客」体験取材のまとめです。

メリット
・手触りや匂い、試着や試し履き以外は、店頭での接客に近いものが得られる
・オンラインストアと比べると、わかりにくかったサイズ感やディテールが明快に
・買いたいアイテムが決まっていたり、いくつかの商品を比較したい人には特に有効
・自分の条件を加味した突っ込んだ相談の場合、メールより手軽で、電話より具体的
・場合によっては、友達2、3人と同時にオンライン接客を受けることもできる
・電車やクルマに乗って実際に店に足を運ぶ必要がない

 

デメリット
・メールで事前に日時を特定させる必要がある
・オンラインアプリの使用は慣れない人には敷居が高い
・ウエアの試着やシューズの試し履きができない
・ぶらりと店内を見て回るには自由度が足りない
・「ついつい衝動買い」のチャンスが少ない

緊急事態宣言明け、実店舗営業を再開

5月25日に東京都の非常事態宣言が解除された翌週、ハイカーズデポを訪ねてみました。この日(6月3日)東京都による「ステップ2」移行を受けて、店舗営業を再開する直前でした。

店舗営業を自粛していた2ヶ月間は、3人いるスタッフのうち、遠方のふたりは在宅で主にウェブ関連の仕事、店に近い土屋さんともうひとりで毎日店舗に出勤していたとのこと。電話とメールの問い合わせも多く、また、春夏商品の入荷時期で、毎日のように荷受けが続いたそうです。

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