【YAMAライターリレー#10】わたしの「好きな山」を紹介していいですか?

2020/06/17 更新

YAMA HACKで執筆しているライターは、北は北海道、南は九州、海外はカナダまで各地にいます。なかなか普段お互いに会うことがないライター陣から、どんな山が好きか、いま山に行けない時間をどんなふうに過ごしているのか、私の好きな「YAMA HACK」記事でリレーを繋いでいきます!


アイキャッチ画像撮影:筆者(甲斐駒ヶ岳黒戸尾根のシンボル二本剣と富士山)
この企画は、全国にいる「山好き」のYAMA HACKライター陣が「読者の皆さんに知ってほしい好きな山」「自分のおうち時間の過ごし方」をリレー形式で紹介するものです。

ひとりひとり、家にいても山を思う気持ちは同じ。みなさんともその気持ちをシェアしていきたいと思います!
前回は<早太朗>さんでした。


はじめまして、<田村茂樹>です

撮影:近藤浩子(甲斐駒ヶ岳に登拝し勤行する筆者)
登山ガイドです。
登山道で歩く山ももちろん良いのですが、それは山の魅力のほんの一部分。登山道を外れたり、いろんな時期に登ったり、登山以外にいろんな切り口(たとえば、山菜・きのこ採り、山伏、狩猟、林業など)で山に関わったりすると、もっと山をよく知ることができ、一体感を味わえます。そんな風に、山のいろんな姿を自分自身も知ってそれを多くの人に伝えたいと思っています。

中でも山の歴史や信仰に興味があり、山伏修行を毎年行っています。山伏(修験者)たちは、山で得た気づきや知識を祈祷師・占い師・カウンセラー・医師・薬剤師・各種施術師・気象学者・天文学者など一人何役もの立場で市井に還元してきました。

そんな先人たちのように、山と深く関わり、よく知り、自分の血肉とし、昔の山人たちが持っていた身体と心と智慧を取り戻し、次世代へと繋いでいきたいものです。

私の山遍歴

撮影:筆者(学生時代に剱沢でアルバイトしたときの一コマ)
父親の影響でハイキングやちょっとした山登りには小さいころから行っていましたが、本格的に山を登るようになったのは社会人になってからです。

入社してから初めて取った長期休暇で立山に行ったときのことです。天気を甘く見ていたのでしょう、悪天候に捕まり、雨風の中を必死に耐えてテント場に辿り着きました。

死ぬかと思いましたが、帰ってきて、生きることに対する気持ちが新たになった自分に気づきました。自分を救ってくれた山に恩返しをしたい。自分にできる恩返しって何だろうということで思いついたのがガイドという仕事でした。

山伏になったその大元のきっかけもこの山行だったと言ってよいでしょう。それから登山の経験を多く積み、それまで未経験だったジャンル(沢登り、バックカントリースキー、岩登りなど)はガイドさんに手ほどきをしてもらいながら、ガイドの試験を受けて合格し、今に至ります。

私が書いた記事はこちら


夢のような1日を味わえます! <伊藤新道>

北アルプスの奥地に行く最短ルートとして、湯俣から三俣山荘までを直接結ぶ登山道「伊藤新道」がありました。湯俣を出発して湯俣川を遡り、尾根に取り付いて高度を上げて三俣山荘に至ります。

今では残念ながら噴気活動などによって湯俣川沿いの桟橋や吊橋を維持できなくなって、半分は沢歩きが必要になり、沢登りやビバーク、長時間歩行など様々な技量が求められるバリエーションルート的なルートになっています。

しかしその一方で、総合力が求められる登り甲斐のあるルートとなりました。刻々とめまぐるしく変化していく景観も大きな魅力です。

私は数年前にテレビ番組の撮影で伊藤新道を歩いて以来、歩く度にその魅力に圧倒されています。トレーニングを積んで、技量のある方やガイドとともにぜひ味わってみてください(筆者もご案内しております)。

【ここが好き①】日本離れした荒々しい自然美

撮影:筆者
湯俣川周辺は硫黄尾根方面を中心に火山活動が活発で温泉水が流れ込んでおり、川の中に藻は生えず、川の左右の岩壁も崩れやすくなっています。

このため、周辺の山と比べて極端に緑の割合が低く、海外の砂漠の赤茶けた渓谷を思い起こさせるような荒々しい光景が広がっています。日本とは思えないような渓谷美を堪能することができます。

【ここが好き②】奥山らしい豊かな原生林

撮影:筆者
湯俣川から上がって尾根に取り付くと、三俣山荘近くまで、奥山の豊かな原生林の中の登りです。伊藤新道を湯俣から三俣山荘まで通して歩こうと思うと、適期は水の少なくなる秋。

原生林の瑞々しく鮮やかな紅葉と抜けるような青空。そのコントラストは筆舌に尽くしがたいものです。

【ここが好き③】槍ヶ岳の大展望台!

撮影:筆者(伊藤新道途中にある展望台から見る槍ヶ岳)
槍ヶ岳はどこから見ても魅力的な山ですが、中でもこの展望台からの槍ヶ岳は格別です。左には北鎌尾根、右には西鎌尾根と手前から伸びていく硫黄尾根が絶妙な塩梅で重なり、左右に大きく翼を広げたような姿を見せてくれます。

この展望台までの道は北アルプスの一般ルートよりは少し歩きにくいものの道ははっきりしています(時期によって整備がまだのこともあるので、詳しくは三俣山荘に問い合わせてください)。三俣山荘からも往復5時間程度でアクセス可能です。

【ここが好き④】冒険心くすぐられるルート

撮影:編集部(腰上まで水に浸かって伊藤新道最大の核心部である第三吊橋跡を遡行する筆者)
桟橋や吊り橋を維持できなくなってしまったために沢歩きが必要になった伊藤新道ですが、「冒険」といった趣の別の魅力を生み出したように思います。「大自然の懐に飛び込んで遊ばせてもらう」そんな山登りの原点とも言える感覚を思う存分味わえます。

伊藤新道についてはこちらに詳細があります。
北アルプス黒部源流ホームページ

山の恵みのお肉をいただく<おうち時間>

撮影:著者(左上:冷凍庫いっぱいになって半ば困ることもある鹿肉、右下:獲れたばかりの新鮮な鹿の肝臓で作ったレバニラ)
山への関わり方は登山以外にもあります。山菜・きのこ採り、林業、炭焼き、渓流釣り……猟もそのひとつです。

服部文祥さんと一緒に初めて釣りをしながら沢登りをしたとき、岩魚を釣って、頭を叩いて気絶させて、捌いて食べました。獲物を自分の手で獲って命を奪って食べた経験は衝撃的でしたが、人間である前に動物としてこの感覚は大事なものだと直感的に感じました。まさに「いただきます」です。

農家は獣に作物を食べられるのを何とか防ぎたいものです。例年はガイドも忙しい春から秋はあまりお手伝いできませんが、今年は時間があるので、罠をかけて、獲って、鉄砲で撃って、捌いてお肉をいただいています。

いつかかるか分からないので毎日罠を見回り、獲物がかかれば一日がつぶれるというのはプレッシャーですし解体は重労働ですが、獲物がかかったときや美味しく料理できたときの喜び、お肉の力が身体に宿る感覚はなんとも言えないものです。

私がハマったYAMA HACK記事

<黒田猫太郎>さん 「羽黒山|東北のパワースポットを巡る!神秘のハイキングコース2選」

私も山伏修行でたびたび訪れる羽黒山の魅力を余すことなく紹介していただいています。思い入れのある山だけに、思わずうなずくところばかりです。今年は出羽三山での修行も新型コロナウイルス感染症の影響ですべて中止となっていますが、早くまた登って拝みにに行きたいものです。


次のバトンは<黒田猫太郎>さん。よろしくお願いしまーす!

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田村茂樹
田村茂樹

登山ガイド/山伏。生き方に悩んでいた自分を救ってくれたお山に恩返ししたいと登山ガイドになり、日本の登山のルーツである信仰登山の復権をライフワークとしている。大学で地学の研究をしていたため、地質や地形の解説が得意。https://www.tam-mountainguide.com/

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