鉄砲水
そこまで頻繁には起こりませんが、沢沿いでは鉄砲水のリスクもあります。地震によって大きな崖崩れが起き、沢や川の流れを堰き止めてしまうとそこに水が溜まり、「天然ダム」となります。
どんどん水が溜まり、せき止めた土砂が水の重みに絶えられなくなると、ダムは決壊して、鉄砲水となって下流に流れ下ります。流れの激しさもさることながら、水量も一気に増えるので、あっという間に行動不能に陥ることも考えられます。
今回の地震の現場のひとつでもある上高地も、実はこのようにしてできた場所です(上図参照)。
元々は岐阜県側に流れていた梓川が焼岳の近くにあった火山の噴火で堰き止められて天然ダムができ、現在の大正池付近から徳沢周辺に至る広い範囲がダム湖となりました(地質学の世界では「古上高地湖」と呼ばれています)。そこに約5000年間にわたって周りから土砂が流れ込んで天然ダム湖が埋まったことで、大正池から横尾に至る長い平坦な場所ができたのです。
また、このダム湖が長野県側に決壊し、山肌をえぐって流れ下った跡が釜ヶ淵から下流の渓谷地形です。
大自然にある「リスクのひとつ」として地震を考えよう
登山は大自然を楽しむ活動ですが、道迷いや転滑落や気候急変など、リスクも様々あります。地震もその中のひとつです。
必要以上に怖がることはありませんが、計画した山のある地域で地震が多くなっていたら、「登らない」という選択を考えましょう。
今回のような地震も、先年の御嶽山のような噴火も、普段はあまり考えないことかもしれませんが、登山計画を立てる際に地図や天気予報を調べるのと同じように、こうしたリスクがないかも最新情報を確認してから山に向かうようにしましょう。