地震の原因とリスク

【上高地で群発地震!】山の成り立ちから「地震」の原因とリスクを考えてみた

2020年春、上高地など北アルプス周辺でたびたび地震が起きています。実はこの地震の発生は北アルプスの生い立ちとも非常に深く関わっている可能性が高いのです。そんな山の自然を学びながら、登山やハイキング中に地震に遭ったらどうなるか、そのリスクも一緒に考えてみましょう。

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アイキャッチ画像出典:PIXTA

2020年春、北アルプスが揺れている!!

神城断層地震でできた地割れ

出典:PIXTA(2014年に長野県白馬村・小谷村を中心に被害をもたらした神城断層地震でできた地割れ。左が高く、右が低くなっている。この間に断層が走っている)

GWも過ぎると、山も空き、新緑も目に鮮やかになります。梅雨もまだで爽やかな晴れも続きます。

例年ならば残雪の山々を独占するには絶好の時期ですが、今年の春は北アルプスで地震が多発しています。4月22日に始まり、5月27日現在、震度1以上の地震がなんと約100回も起こっています。

長野県=地震県という印象はないけれど……

日本で起きる大地震というと、東日本大震災や関東大震災や、近く起きるのではないかと言われている東南海地震のように、太平洋岸を想像する方が多いと思います。

しかし内陸の長野県でも、大地の割れ目がずれる「活断層」は少なくなく、2014年11月の白馬小谷地域を中心に大きな被害をもたらした神城断層地震(上写真)のような地震も起きています。

正確なことは今後の研究で解明されることと思いますが、今回の地震もこのような「活断層」の活動による可能性が大いにあります。そして、それが実は北アルプスが今のような山脈に成長したこととも大いに関係しているのです。普段登っている山も生い立ちを知ればもっと身近になります。この機会にちょっと勉強してみましょう。

あの「北アルプス」はこうして誕生した!地震との深い関係

北アルプス 地震との深い関係

北アルプス南部の地下断面推定図(画像制作:編集部、原山智ほか著「飛騨山脈東半部における前期更新世後半からの傾動・隆起運動」論文中の図を改変)

東日本大震災は日本列島が東側から押されてたまった歪みが解放されることで起きました。

同じように北アルプスが含まれる中部地方も東側から押されています。逃げ場を失った大地は上に高くなっていきます。この際に、高くなっていく山の部分とそれより下の大地の塊の間に割れ目(断層)ができ、これに沿って山がずり上がっていきました。このように高くなった山が氷河で削られてできたのが、現在の槍・穂高連峰です。

登山でもお馴染みの地形図を作っている国土地理院が観測した結果によると、穂高岳周辺は年間5mmずつ高くなっていっているそうです。このように、北アルプスが高くなるのに伴って地震が起きているというのが今回の地震の原因のひとつの候補です。

火山が多いのも地震に関係がある?

活火山

出典:PIXTA

また、北アルプスには、元々火山だった山が削られてできた山が多くあります。その山々を形作ったマグマが今も浅いところにあり、おかげで北アルプス周辺には温泉がたくさんあります。

地中でこのマグマからガスが吹き出すことで地震が起きることがあり、これも今回の地震の原因の候補です(1998年夏に3カ月にわたって槍・穂高周辺で起きた群発地震の原因と思われるのはこちら)。

地下の浅いところにマグマがあり、しかも群発地震というと、焼岳の噴火を危惧する方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは2020年5月27日現在、噴火の徴候はないとのことです。

現時点では、どちらが正解か、あるいはどちらも関係しているのかはわかりませんが、今後の研究で明らかになると思います。

 

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自然公園財団 上高地支部

登山中の地震は危険!4つのリスクが隠れている

登山者

出典:PIXTA

北アルプスのみならず、日本の山と切っても切れない地震のリスク。実際に山を登っている最中に起きたらどんなことが起こりうるか見ていきましょう。同じことは自家用車やバスなどアプローチでも起こりうることにもご留意ください。

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