【上高地で群発地震!】山の成り立ちから「地震」の原因とリスクを考えてみた

2020/06/08 更新

2020年春、上高地など北アルプス周辺でたびたび地震が起きています。実はこの地震の発生は北アルプスの生い立ちとも非常に深く関わっている可能性が高いのです。そんな山の自然を学びながら、登山やハイキング中に地震に遭ったらどうなるか、そのリスクも一緒に考えてみましょう。


アイキャッチ画像出典:PIXTA

2020年春、北アルプスが揺れている!!

出典:PIXTA(2014年に長野県白馬村・小谷村を中心に被害をもたらした神城断層地震でできた地割れ。左が高く、右が低くなっている。この間に断層が走っている)
GWも過ぎると、山も空き、新緑も目に鮮やかになります。梅雨もまだで爽やかな晴れも続きます。

例年ならば残雪の山々を独占するには絶好の時期ですが、今年の春は北アルプスで地震が多発しています。4月22日に始まり、5月27日現在、震度1以上の地震がなんと約100回も起こっています。

長野県=地震県という印象はないけれど……

日本で起きる大地震というと、東日本大震災や関東大震災や、近く起きるのではないかと言われている東南海地震のように、太平洋岸を想像する方が多いと思います。

しかし内陸の長野県でも、大地の割れ目がずれる「活断層」は少なくなく、2014年11月の白馬小谷地域を中心に大きな被害をもたらした神城断層地震(上写真)のような地震も起きています。

正確なことは今後の研究で解明されることと思いますが、今回の地震もこのような「活断層」の活動による可能性が大いにあります。そして、それが実は北アルプスが今のような山脈に成長したこととも大いに関係しているのです。普段登っている山も生い立ちを知ればもっと身近になります。この機会にちょっと勉強してみましょう。

あの「北アルプス」はこうして誕生した!地震との深い関係

北アルプス南部の地下断面推定図(画像制作:編集部、原山智ほか著「飛騨山脈東半部における前期更新世後半からの傾動・隆起運動」論文中の図を改変)
東日本大震災は日本列島が東側から押されてたまった歪みが解放されることで起きました。

同じように北アルプスが含まれる中部地方も東側から押されています。逃げ場を失った大地は上に高くなっていきます。この際に、高くなっていく山の部分とそれより下の大地の塊の間に割れ目(断層)ができ、これに沿って山がずり上がっていきました。このように高くなった山が氷河で削られてできたのが、現在の槍・穂高連峰です。

登山でもお馴染みの地形図を作っている国土地理院が観測した結果によると、穂高岳周辺は年間5mmずつ高くなっていっているそうです。このように、北アルプスが高くなるのに伴って地震が起きているというのが今回の地震の原因のひとつの候補です。

火山が多いのも地震に関係がある?

出典:PIXTA
また、北アルプスには、元々火山だった山が削られてできた山が多くあります。その山々を形作ったマグマが今も浅いところにあり、おかげで北アルプス周辺には温泉がたくさんあります。

地中でこのマグマからガスが吹き出すことで地震が起きることがあり、これも今回の地震の原因の候補です(1998年夏に3カ月にわたって槍・穂高周辺で起きた群発地震の原因と思われるのはこちら)。

地下の浅いところにマグマがあり、しかも群発地震というと、焼岳の噴火を危惧する方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらは5月27日現在、噴火の徴候はないとのことです。

現時点では、どちらが正解か、あるいはどちらも関係しているのかはわかりませんが、今後の研究で明らかになると思います。

 

上高地エリアの最新情報はこちら

自然公園財団 上高地支部

登山中の地震は危険!4つのリスクが隠れている

出典:PIXTA
北アルプスのみならず、日本の山と切っても切れない地震のリスク。実際に山を登っている最中に起きたらどんなことが起こりうるか見ていきましょう。同じことは自家用車やバスなどアプローチでも起こりうることにもご留意ください。

転倒・滑落

出典:PIXTA
小さい地震であれば立っているときは気づきませんが、大きな地震になればバランスを崩すこともあります。岩場にいるときに地震が起こったら……ぞっとしますよね。

落石・崖崩れ

出典:PIXTA
山には不安定な岩が多くあります。地震が起こればかろうじてバランスを保っていた岩が落ちてきたり、崖が崩れてきたりする可能性があります。雨が続いて地盤が緩んでいるときはなおさらです。

今回も上高地の遊歩道上でも大きな落石が起き、遊歩道の通行自粛要請が出されている区間もあります。平地だからと安心せず、今いる場所に潜むリスクを敏感に感じ取るように心がけましょう。

雪崩

出典:PIXTA
雪がある時期には雪崩も大きなリスクです。雪の層は時間が経つにしたがってだんだんと固く締まり、層同士もより強くくっついていきますが、崩れないで絶えられる限度は当然あります。

地震によってその限度以上の強い力がかかれば、雪の層は崩れ、崩れた雪がさらに周りの雪を巻き込んで雪崩になります。粉雪はさらさらでとても軽く感じますが、固く締まった雪は何十cmか身体に乗っただけでも、まったく身動きがとれなくなります。油断は禁物です。

今年は新型コロナウイルス感染症の流行に伴う登山自粛が広がっており、一般登山者がほとんどいなかったため人的被害はありませんでしたが、今回も地震に伴って大きな雪崩が何回も起きています

鉄砲水

出典:PIXTA
そこまで頻繁には起こりませんが、沢沿いでは鉄砲水のリスクもあります。地震によって大きな崖崩れが起き、沢や川の流れを堰き止めてしまうとそこに水が溜まり、「天然ダム」となります。

どんどん水が溜まり、せき止めた土砂が水の重みに絶えられなくなると、ダムは決壊して、鉄砲水となって下流に流れ下ります。流れの激しさもさることながら、水量も一気に増えるので、あっという間に行動不能に陥ることも考えられます。

出典:原山智・河合小百合「上高地の学術ボーリング」講演要旨
今回の地震の現場のひとつでもある上高地も、実はこのようにしてできた場所です(上図参照)。

元々は岐阜県側に流れていた梓川が焼岳の近くにあった火山の噴火で堰き止められて天然ダムができ、現在の大正池付近から徳沢周辺に至る広い範囲がダム湖となりました(地質学の世界では「古上高地湖」と呼ばれています)。そこに約5000年間にわたって周りから土砂が流れ込んで天然ダム湖が埋まったことで、大正池から横尾に至る長い平坦な場所ができたのです。

また、このダム湖が長野県側に決壊し、山肌をえぐって流れ下った跡が釜ヶ淵から下流の渓谷地形です。

上高地の成り立ち
古上高地湖の誕生(画像制作:編集部、原山智氏作成の参考資料図を改変)

大自然にある「リスクのひとつ」として地震を考えよう

地震のリスク
出典:PIXTA
登山は大自然を楽しむ活動ですが、道迷いや転滑落や気候急変など、リスクも様々あります。地震もその中のひとつです。

必要以上に怖がることはありませんが、計画した山のある地域で地震が多くなっていたら、「登らない」という選択を考えましょう

今回のような地震も、先年の御嶽山のような噴火も、普段はあまり考えないことかもしれませんが、登山計画を立てる際に地図や天気予報を調べるのと同じように、こうしたリスクがないかも最新情報を確認してから山に向かうようにしましょう

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田村茂樹
田村茂樹

登山ガイド/山伏。生き方に悩んでいた自分を救ってくれたお山に恩返ししたいと登山ガイドになり、日本の登山のルーツである信仰登山の復権をライフワークとしている。大学で地学の研究をしていたため、地質や地形の解説が得意。https://www.tam-mountainguide.com/

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