ケガで変わった「登山」への向き合いかた
そんな努力が実って、Wさんは事故から3カ月弱で登山を再開します。
ボルダリングジムやフリークライミングなどにも復帰していきますが、やはり以前ほどのポテンシャルは発揮できなかったよう。右足の筋肉が落ち、痛みもあるために爪先に荷重をかけられない状態やリスキーな登山スタイルへの向き合い方など、心身ともに変化が起こりました。
【Wさんの証言】
身体面では、ちょっとした段差も越えられなかったり思うように着地ができない。ひたすら静かに歩くしかないという感じでしたね。精神面では、リスクの高いリードクライミングやアイスクライミングはあまり「やる気」が起こらなくなりました。他にも登山の楽しみ方はさまざまですからね。
そんなWさんは、結果としてリードクライミングは10カ月後に復帰しました。ただしケガの原因となったアイスクライミングは、いまだに再開していないそうです。
1年経って再手術。あなたは頑張りぬけますか?
事故から約13カ月後の2020年3月。Wさんは骨折箇所を固定していたボルトとプレートを抜釘する手術を受けました。骨にはボルトの穴が空いており、切開した足も腫れており、またしばらく登山はお預けです。
けれども、事故直後は半年は登山不可能と言われた状態から驚くべきスピードでカムバックしたWさんなので、いまも登山再開に向けて前向きに行動しています。
同じ状況や部位ではないにせよ、誰もが遭遇する可能性のある「登山中のケガ」を、今回はWさんの協力で紹介させていただきました。
ケガをするのはほんの一瞬ですが、そこから心身ともに登山ができるようになるまでには、Wさんのケースでも1年以上という時間がかかっています。みなさんが登山をする際に、少しでも「一瞬のあとに起こりうること」を思い出してもらうことで、より安全な登山を心がけてもらえればと思います。