容量30ℓのバックパックは、登山でオールラウンドに使えます!
バックパックの大きさ=容量の違いは、登山の行程に対応するためのもの。日帰りなら30ℓ、山小屋泊なら50ℓ、テント泊縦走なら70ℓというように。
最近では収納する道具やウェアが軽量コンパクトになったので、容量30ℓのバックパックひとつで、デイハイクや山小屋泊はもちろん、超コンパクトな道具を揃えた温暖な季節の山行であればテント泊も可能です。
小さいけれど、しっかり背負える機能満載
ひとつでいろいろな登山に使える=ユーティリティーな容量30ℓのバックパック。しかし、その特長や機能には、ブランドごとにかなり大きな違いがあります。
そこで今回、6ブランドのNEWバックパックを紹介する上で、
といった「背負い心地」「動きやすさ」「収納性」に関わるポイントを重点的にチェックしました。
デイハイク・山小屋泊を想定した荷物を収納してテスト
また、より実際の登山に近づけてテストするため、筆者がいつも山行に使っている装備を収納してみました。
日帰り登山、山小屋泊も可能な装備一式です。
それでは、紹介していきましょう!
小型パック随一の背負い心地のよさなら『スタウト 35』
“適切にデザインされたバックパックは、身にまとうものであって背負うものではない”とは、グレゴリーのフィッティングの哲学を象徴する言葉です。
その「身にまとう」感覚を腰まわり、そして背中に感じられ、バックパックと身体の一体感によって、荷物の重さがかなり軽減されている印象を持ちました。
まるで大型パックのような機能性の高さ
背負う人の背面長に合わせたサイズという考え方を、バックパックで展開したグレゴリー。
このパックは10センチ単位で背面長を調節可能。その調節パネルと荷重を分散させるアルミ製フレーム、腰骨をガシッと掴むような感覚のウエストベルトによって、バックパックは身体に違和感なくフィットします。
サイドポケットは、バックパックを背負ったままでも収納したボトルを着脱しやすい位置と角度。フロントのメッシュポケットは大きめで、濡れたレインウェアを収納するにもよいサイズです。
パック上部の雨蓋の裏側にはレインカバーを標準装備しています。
背面長を背負う人に合わせられること、さらにショルダーベルト、ウエストベルトのサイズも筆者の身体に最適だったこともあるのでしょう。フィット感、肩と腰の荷重分散のバランス、動きのよさは、近年背負った小型パック随一です。
整理整頓好きハイカーには『テルス 35』
歩行中、また休憩時、使いたいモノをすぐに取り出せることは、なによりもストレスを軽減します。そんなつくり手の考えを、いくつもあるポケットの大きさ、位置、アクセスのしやすさから感じられるバックパック。整理整頓が好きなハイカーなら、このパックの機能性を最大限に活用できるでしょう。
腰にグイッと荷重が載る感じが気持ちいい
雨蓋はコの字型に、フロントポケットはセンターでジッパー大きく開閉可能。内部のジップポケットには、レインカバーも収納されています。
サイドポケットは大きくマチが取られ、コンプレッションベルトを締めることで、いろいろな大きさや太さのモノをしっかりと収納可能です。
薄手のショルダーベルト、ウエストベルトは、軽量化のためと思われます。しかし、この薄さがベルトのしなやかさとなっていて、歩行時の動きによく対応してくれます。
ウエストベルトは身体にバックパックを近づけるスタビライザーと連動していて、ベルトを引いた際に荷重が腰に載ります。それによりバックパックのブレを抑え、身体との一体感も生まれます。
収納性の高いクライミングパックなら『セプター 35』
ミステリーランチのバックパックの特長は、背面側にあります。背面長を調節できるショルダーベルトから背中上部に続く、スライド式ヨークと呼ばれるパーツが肩にソフトにフィット。
カーボンファイバー製のフレームは、動きにしなやかに追随。ウエストベルトはガチッと腰をホールドするでのはなく、やわらかく張りつく印象です。
35ℓ以上の収納力を装備
ウエストベルトは、内側のウレタンフォームと、外側のパック本体を引き寄せるスタビライザーとの二重構造。
ヘルメットやロープを挟める上蓋を開けると、本体収納口の他に、ジップポケットと大きなフロントポケットが備わっています。このフロントポケットはマチ付きでかなりの収納力があるため、35ℓ以上の容量になり、テント泊装備も余裕で詰め込めそうです。
本体前面のアイゼン等を固定するバンジーコード、ウエストベルト、そしてフレームは取り外し可能。軽量化したアタックザックとして活用するためで、クライミング用のバックパックならではの仕様です。
だからこそボトル等を収納するサイドポケットも省略されたシンプルなつくりで、ハシゴやロープ、鎖場等のある登山コース向き。
とはいえ肩、背中、腰のラインに沿った立体的な背面システムも、ミステリーランチらしさです。まるで高機能な現代版背負子のようで、多くの荷物を収納する程、よさが増すように思えました。
気軽に山へと向かわせてくれるのは『スティングレー 25』
今回紹介するパックのなかでもっとも小さな25ℓ容量。背中のラインに沿ってカーブする3D構造のパネルを装備。
腰まわりは包み込むようなカーブ状になっていて、腰骨を上下から挟むように三角形を描くストラップベルトが配されています。これによりバックパックが背中にカチッと固定されます。
デイパック的気軽さにデイパック以上の収納性
モデル名の『スティングレー』とはアカエイのこと。背面側から見ると下部が広がり、エイのようなカタチになっていることが由来と思われます。
本体はジッパーで大きく開き、収納や取り出しがしやすい仕様です。
またフロントパネルには左右別々のジッパーポケットを装備。小さいながらも、小分け収納が可能です。
チェストストラップは伸縮素材で、締め付けを軽減するだけでなく、激しい動きにも対応。両サイドにはメッシュポケットが備わり、長尺ものはサイドのストラップで固定可能。
メーカーが”ヘビーユーザーにこそ使ってほしい”と語るこの小型パックは、デイパックのような気軽さに、デイパック以上の機能性と収納力を持たせ、「今日も山に行こうよ!」と誘ってきます。
暑い季節に快適さを提供してくれるのは『リムシリーズ 35』
「エアバックサスペンションシステム」と呼ぶ、背面にピンと張られたメッシュパネルと、背中とパック本体に隙間をつくるようにカーブするアルミ製フレームを採用。サスペンションの名の通り、歩行時のパックの揺れを吸収、動きにもフィットします。
さらにメッシュ地、パックとの空間はムレも軽減。蒸し暑い夏場の森林ハイクで、背負ってみたいと思わせます。
ポケットは大きく、収納力あり!
ウエストベルト、サイドに備わったポケットはどちらも大きく、伸縮性に富んだ素材なので、収納力十分。
またフロントのバンジーコードは本体サイドまでまわり、ワンアクションでコンプレッションできる独特の仕組みです。軽量化を求めたものですが、この仕組みはかなり扱いやすいと感じました。
筆者は10年以上前にこのリムシリーズのバックパックを愛用していました。デザインはかなり変わり、クッション性に富んだサスペンションシステム、背負い心地、軽さも進化し、よりアクティブなハイク向きのバックパックになったように思います。
他ブランドではほとんど見ることのない白っぽいグレーカラーは、意外と山の風景に馴染むカラーです。
毎週山に登るハイカーこそ選びたいのは『キトラパック30』
くるくると巻いて閉じるロールアップ式の開口部は、大きく開き、荷物の収納、取り出しがとにかくしやすいです。
背面には「3Dフィット・ステー」と呼ぶ背中のラインに沿ったアルミ製フレームを内蔵。上半身は動きやすい反面、腰骨を包むようなデザインのウエストベルトによってしっかりとホールドされ、バックパックのブレが少なく、歩きやすいです。
防水バッグを内蔵し、雨に強い
本体内部には「アクアバリアサック」と呼ぶ防水バッグを内蔵。収納物が雨などの水濡れから守られ、安心です。
また小型パックながら1気室、2気室切り替え可能で、ジッパー開口部も装備。レインウェアや着替え等、パック下部に収納したものをラクに取り出せて便利。
ショルダーベルトには、左右共にボトルを収納できるポケットを備えます。サイドポケットからよりも当然ラクに取り出せ、ストレスフリーです。
最近のモンベルのバックパックは、いずれも利便性が増し、背負い心地も向上しています。このパックはさらに防水という機能を備え、悪天候になるほどに、選んでよかったと思えそうです。
毎週のように山を登るというハイカーは、天候不順に遭遇する確率も高まります。だからこそ、悪天に強いこんなバックパックが有効です。
身体にフィットするものを選ぼう!
今回紹介した主要6ブランドの容量30ℓ前後のバックパックは、それぞれに特長に違いはありますが、いずれもも機能的で背負い心地のよいものでした。
しかし、その機能を体感、使うための第一歩は、アウトドアショップや登山専門店で試着し、自分の身体にフィットするモデルかを確かめることから始まります。サイズの合わないウウェアは機能以前の問題なのと同様、バックパックもサイズの合ったものを選んでください。
それでは、よい山旅を!