『シームレスダウンハガー』は世界初の隔壁レスのダウン寝袋
この春、モンベルから『シームレスダウンハガー』シリーズというダウン寝袋が新発売されました。
『シームレス』とは、縫い目がないという意味ですが、この新しいダウン寝袋にないのは、寝袋内を隔てて封入したダウンの偏りを防ぐ『隔壁』です。
この隔壁をなくしたことで、ダウンの保温力を最大化、縫い目も少なくなり冷気の侵入を抑制、同時に軽量コンパクト化も促進。元々評価の高いモンベルの寝袋が、さらに進化したのです。
そこで今回はその『シームレスダウンハガー』シリーズから、「シームレス ダウンハガー900 #5」と、さらに防水透湿性素材を本体に採用した「シームレス ドライ ダウンハガー900 #3」に、実際に包まって感じたことをレポートします。
と、その前に『シームレスダウンハガー』と通常の寝袋の違いを解説しましょう。
いや、ちょっと待って!そもそも 『隔壁』ってなに?
中綿にダウンを封入するダウン寝袋。ダウンは綿毛のようなもので、大きな袋状の中に入れると、多いところと少ないところの偏りができがちです。
寝袋は、ダウンの膨らみによる空気の層が保温力を生み出します。だからダウンが少ない場所は、空気の層が小さく、冷えます。そこでダウンの偏りを防ぐために、通常の寝袋は袋の中に壁をつくり、箱のような構造にしてダウンが偏るのを防いでいます。その壁が『隔壁』です。
だから、この隔壁をなくしてしまったら、ただの袋になり、ダウンが偏り、保温力が低下してしまうはずなのですが・・・。
隔壁の代わりに偏りを防ぐのは『蜘蛛の糸』
ダウンの偏りを防ぐためにモンベルが考案した方法は、『蜘蛛の糸』です。
「蜘蛛の巣のように、糸にダウンを絡みつかせれば、隔壁がなくてもダウンの片寄りを防げるかもしれない」。
そう考えてダウンを絡めとる特殊な糸を開発。「スパイダーヤーン」と名付けたこの糸をスリーピングバッグ内部に張りめぐらせることで、全体に一定量のダウンを均一に保持することに成功したのです。
そして、その隔壁をなくしたことで生まれるメリットが、いくつかあります。
シームレス=隔壁をなくしたメリットは大きく3つ
1)高品質ダウンの保温力を最大化
先に解説したのボックス構造のイラストでわかる通り、隔壁によって寝袋内が小さな箱状になっていると、ダウンの膨らむスペースがどうしても抑えられてしまいます。
でも上のイラストのように隔壁がなくなれば、ダウンは寝袋内で大きく膨らみ、大きな空気の層を生みだし、ダウンが持っている保温力を最大限に発揮できます。
2)縫い目が少ないので、冷気の侵入を防ぎ、保温性もアップ
隔壁は寝袋の生地に縫い留められているものです。その縫い目からは、冷気が侵入してきたり、暖気が逃げてしまうこともあります。
ですが、隔壁がなくなり縫い目も少なくなったので、保温力を低下させる原因のひとつが改善されることになります。
縫い目=小さな針の穴から入る冷気、抜ける暖気なんて、大したものではないと思うかもしれませんが、これが氷点下の世界ともになると大きな違いがあるのです。
3)スパイダーヤーンが冷える部分を抑制
ボックス構造によっては、背中側のダウンが圧力の掛かっていない部分に偏ってしまい、保温力が低下することも考えられました。
しかしスパイダーヤーンは、圧力が掛かっても一定量のダウンを保持できるので、背中の凹凸に応じて空気の層をつくり、保温力をある程度維持できているんじゃないかと思われます。これ、保温力アップの画期的な方法です。
実際に『シームレスダウンハガー』に入って寝てみました!
シームレス化は大きさではなく、軽さに貢献
左が「シームレス ドライ ダウンハガー900#3」、右が「シームレス ダウンハガー900#5」です。
隔壁と縫い目をなくし、スパイダーヤーンを採用したことで、どれくらい収納サイズがコンパクトになったのだろうかと期待していましたが、同社のダウンハガー800の同番手とまったく同じ収納サイズでした。
しかし重量は下記の通り。
<#5>
シームレス化とさらに高品質な900フィルパワーのダウン採用の効果が、はっきり見られます。