機能に加え「デザイン」が加わったのが90年代でした
最近のアウトドアウェアは90年代的なデザインやカラーリングを意識したものが増えています。90年代はアメカジをベースにした「渋カジ」と呼ばれるストリートファッションも流行りました。アウトドアウェアが幅広くファッションにも取り入れられ、機能性の高さや着心地のよさに、デザイン性がプラスされました。それは30年経ったいま、改めて見ても十分にセンスがいいものです。
そこで、今回は90年代を振り返りつつ、今年発売された90年代的アイテムを紹介したいと思います。
まず90年代を振り返る上で紹介したいのが、90年代半ばに創刊されたアウトドア雑誌『OUTDOOR EQUIPMENT』です。上の2枚の画像が、95年発行の「バックパッキング特集号」のページの一部。今から25年前のアイテムですが、まったく古さを感じないどころか、むしろ今の感覚でカッコよく見えませんか?
この雑誌、登山ではなくバックパッキング、釣りではなくフライやルアーフィッシング、ボートではなくシーカヤックやカヌー等々のアウトドアアクティビティを、アメリカ西海岸発祥のアウトドアブランドのウェアや道具とともに紹介ていました。ちなみにこの記事を書いているPONCHOは、この雑誌の創刊間もなくからのの編集部員だったのです。
改めて雑誌を見返して感じるのは、いま以上にツートンカラーのウェアが多くあったなぁということ。
ツートンカラーは単なるデザインではなく、バックパック等を背負った時に当たる肩・腰まわり、さらにクライミング等の動きに対応して耐久性の必要な肘から袖口までを補強した布を活かして使っています。いわば機能性とデザイン性を併せ持った仕様なのです。
それまでは単色がメジャーでしたが、この90年代頃からザ・ノース・フェイス、シエラ・デザイン、マーモットといったアウトドアブランドが、ツートンカラーを多く発売。現在でもブランドのキーとなるデザインになっています。
また既存のアウトドアブランド以外に、ナイキ、アディダス、リーボックなどのスポーツブランドも、アウトドアウェアやシューズを多く手掛けたことも90年代の特徴です。しかしアウトドアブームが下火になった00年代に入ると、それらスポーツブランドのアウトドアアイテムはほとんど見かけなくなります。
でも近年、再び90年代テイストをまとって復活しているので、注目です。アウトドアブランドとはアプローチの異なる機能、ファッション性にあふれるデザインは、アウトドアの楽しみ方の幅を広げてくれています。
エポックメイキングは<マーモット>ドライクライム ウィンドシャツ
90年代を振り返って、真っ先に思い浮かべるウェアがひとつあります。それは91年に発売され、現在に至るまでで機能、デザインにほぼ変わりがなく、多くのアウトドア好き、山好きに愛されてきた<マーモット>のドライクライム ウィンドシャツです。今でいうところのソフトシェルや行動保温着の元祖といえるシャツ&ジャケットです。春~夏は防寒アウター、秋~冬は保温ミッドレイヤーやインナーとして使える、まさにオールシーズンウェア。ツートンカラーのデザインも、90年代的です。
このウェアのポイントは、マーモット独自素材の「ドライクライム」が採用された内側の生地です。吸湿速乾性、保温性を持ち、肌触りのよさも提供。表地で撥水、防風性を備え、着心地は軽くしなやか。その対応力の幅の広さは最新ウェアに負けず劣らず、30年もの間、信頼をえ続けたこと唯一無二の存在。90年代を代表するエポックメイキングといえます。
しかし、残念ながら19年秋冬にていったん廃番。現在店頭にあるものが手に入る最後になりそうです。
今手に入る、90年代的ウェア&シューズを集めてみました!
さて、ここからは今シーズン手に入れられるウェア&シューズで、筆者が90年代的だとセレクトしたものを紹介します。
まずは、
パタゴニア|メンズ・マイクロD・スナップT・プルオーバー
パタゴニアがシンチラ・フリースを発売したのは85年ですが、93年からは同社はペットボトルからリサイクル・ポリエステルを使用したウェアを展開。そのひとつがシンチラ・スナップTです。
現在では、軽量で濡れてもすばやく乾くリサイクル・ポリエステル・マイクロフリース100%製となり、今シーズンは上の写真のような90年代的パステルカラーを用意。トレッキング、ハイキングシーンで十分に機能する定番フリースジャケットで、街着としても重宝します。
90年代は「エコ」「リサイクル」といった環境問題への意識が高まった時代でもあります。多くのアウトドアブランドも、パタゴニア同様に地球環境に配慮したアイテムを開発しはじめました。そこで「90年代」を単にファッションのワードとしてだけで捉えるのではなく、山を楽しむ、地球を楽しむ一員として、環境に対してどんなことができるかを考えるワードとしても認識したいです。
コロンビア|ヴィドラ II ベスト
当時、流行していた渋カジでは、細かなポケットを多く備えた<コロンビア>のフィッシングベストをネルシャツと組み合わせるスタイルがありました。また山でもハイカーが、同様にマルチポケットのベストを着用する姿を多く見かけました。こちらは写真好き、野鳥好きが、小物を収納する便利さゆえのチョイスだったと思います。
重ね着した際に腕のゴワゴワ感がなかったり、背中側がメッシュになって通気性がよかったり、いろいろ利点がありながら、組み合わせが難しいと感じるのか、最近ではベスト愛用者は少数派です。でも紹介している「ヴィドラⅡベスト」のように、多くのブランドでラインナップされていて、90年代なスタイリングを楽しむためにはチャレンジしたいアイテムです。
ザ・ノース・フェイス|ロングスリーブヌプシシャツ
前述の通り、ツートンカラーが多かった90年代。ツートンカラーで一世を風靡したのは、<ザ・ノース・フェイス>のダウンジャケットやマウンテンパーカでした。そのデザインを、なんとシャツに落としたこんだモデルがこれ。ぱりっとした生地は天然素材のような雰囲気で、しかし撥水性を持ったナイロン100%。静電気抑制、UVガード等のアウトドアで重宝する機能も備えています。ユニセックスモデルなので、小さいサイズは女性でも着用できます。
カリマー|トライトンライトスモック
アースカラー、ネイチャーカラーと呼ばれる、ナチュラルで淡いカラーが流行したのは90年代後半でした。さらに軽量化のため、またフロントに大きなポケットを装備、フロントジッパーは胸までのスモックタイプ=アノラックスタイルは、バックパックのウエストベルトを締めた際にゴワつきがないことで、多くのアウトドアブランドが採用。それらをしっかり踏襲、肌ざわりのよい素材で着心地をアップさせたのが、この撥水耐風スモックジャケットです。ポケッタブル仕様で携帯性にもすぐれています。
マーモット|アルピニストクライミングジャケット・パンツ
<マーモット>というと、最近はファッション的な雰囲気が強くなっていますが、90年代は先進的なクライミングウェアをはじめ、テントや寝袋等のギアが評判でした。そしてこのアルピニストクライミングジャケット、パンツは、まさにその時代のデザインをベースに、最新素材でアップデートしたもの。価格もジャケットが7万円台と当時同様にハイエンドですが、運動性の高さ、フィット感を知れば納得の一着です。
グラミチ|レクタスチャックワラパンツ
82年に登場したクライミングパンツの元祖<グラミチ>。日本で広まったのは90年代に入ってからでした。
クライミングの動きに対応すべく、180度開脚を可能にした股下部の当て布、ガゼットクロッチが柔道着にヒントを得たとうのは有名な話。また着脱、調節が容易なウェビングベルトの採用、太股部はゆったりしていて裾に向かってテーパードするシルエットは、アウトドアでは裾のバタつきを抑え、見た目には足長効果を発揮。紹介しているレクタスチャックワラパンツは、撥水性、ストレッチ性にすぐれた素材で、太股脇の大きなポケットが特長です。
アディダス ファイブテン|ファイブテニー
クライミングをする岩場までの間に履くローカットのアプローチシューズ。登山靴といえば、それまでハイカットのトレッキングブーツが主流でしたが、90年代からスニーカーのようなローカットのアプローチシューズが少しずつ浸透。
そんな中、クライミングシューズを手掛ける<ファイブテン>は、1985年にステルスラバーと呼ぶグリップ力に長けたアウトソールを開発。日本で正式に販売されたのは2002年からですが、筆者が実際に山でテストした際、地面に吸い付くようなグリップ性の高さに驚きました。
そのファイブテンは昨年からアディダス傘下に入り、写真のファイブテニーを発売。そのカラーリングは、なんとも90年代らしいものです。
カブー|シンセティックストラップキャップ
93年に米国シアトルにて誕生した<KAVU>。ブランド名は、航空用語の視界良好という意味の「CAVU」を文字ったもの。サンバイザーからヒントを得たストラップキャップを発売すると、瞬く間にアウトドアフリークの支持を得ました。日本でも発売からすぐにアウトドアの定番キャップとして定着。鉢まわりに配されたウェービングテープがアクセントとなり、紹介しているシンセティックストラップキャップは、速乾性のよい化繊素材を採用。アウトドアウェアともよくマッチします。
集めたアイテムをコーディネートしてみました!
今回紹介したアイテムを使ってコーディネートしてみると、なんとも爽やかなハイキングスタイルになりました。このまま街を歩いても違和感のない雰囲気ですし、どこか西海岸的自由さも感じられます。皆さんも、90年代アイテム是非試してみてください。
それでは、よい山旅を!