なぜ「トレックライズ」を使う人が多いのか?
山岳のテント場でよく見かけるテントと言えば、モンベルの「ステラリッジ」、アライテントの「エアライズ」と「トレックライズ」の3つ。その中のひとつ「トレックライズ」は、出入り口の方向やフライの色合いなど、ほかの2つとちょっと違うと思いませんか?果たして、愛用している登山者はどんな理由でトレックライズを選んでいるのでしょうか?
※筆者注:記事中で筆者愛用のトレックライズの画像が出てきますが、旧型なので、インナーテントが黄色です(現行型はクリーム色)。しかし、機能的にはほとんど変わっていませんので、そのまま掲載しています。
安心!快適!簡単!「トレックライズ」を選ぶ理由とは
多くの登山者から愛されているトレックライズ。実は、筆者もユーザーの一人です。実際に使用している筆者が特徴と魅力をご紹介していきましょう。
「ヒマラヤでも、ウラヤマでも」使える“安心感”
トレックライズを製造している「アライテント」。アライテントのモットーは「ヒマラヤでも、ウラヤマまですべての人にアライテント」。1965年創業で当初よりツェルトを作り続け、その後自立型ドームテントを発売、一貫して山岳テントやタープを開発してきました。
スタッフほぼ全員が「山ヤ」、しかも全員ミシンを使え、20年前のテントも修理できるそう。まさにプロ、熟練した職人集団が作るテントなので、安心感があります。ちなみに、アライテントのテントには「Ripen」との表記がありますが、これは「熟練」という意味です。
快適なテント泊ができる「居住性」
トレックライズは、厳冬期での使用を想定していない3シーズン用。3シーズンでのテントの快適性を左右するのは保温性よりも通気性です。トレックライズは、大きく開いた出入口や空気の通りを考慮したベンチレーションが特長で、暑い日でも熱がこもりにくくなっています。テントの中は、心地よい風が通り抜けてとっても気持ちいいですよ。
初心者でも簡単に設営撤収できる「設営性」
トレックライズは切れ目のないスリーブ式、フレームを入れるだけで立てられます。例えば、現行型「モンベル ステラリッジ」は吊り下げ式、フレームを立てて吊り下げるという2段階なので慣れないとちょっとわかりにくい(あくまでも筆者の感想)。トレックライズは、建てるだけならフレーム2本を端から入れてしまえば終わり。筆者も初めて建てたとき、ものすごくわかりやすくて迷いませんでした。
愛用者の方には、他にもたくさんの理由があると思いますが、「安心!快適!簡単!」というのは皆さん同じでしょう。
迷ったらこれで比較!「エアライズ」とは何が違う?
同じアライテントには「エアライズ」というテントがあります。どちらも登山用テントなので、どちらを買うべきか迷ってしまう人も。実は、筆者もそうでした。実際、「エアライズ」と「トレックライズ」の違いは何でしょうか?
スペックを比較してみました
それぞれの1人用テントのスペックを比較してみました。それぞれの違いをメリットデメリット交え解説します。
【ポイント1】重量サイズが違う
重量、サイズともに大きく違いませんが、わすかにトレックライズ>エアライズとなっています。居住性重視のトレックライズとしては、必然的にこうなってしまうことは仕方がないでしょう。しかし、登山用テントとしては問題ないなスペックです。
【ポイント2】出入口が違う
・設置位置が長辺側で卵型
メリットとしては、大きく開くことでスムーズに出入りできることや、前室の幅を広く取れるため便利です。デメリットとしては、2人以上利用の場合、入口側の人をまたがないと出入りできず、就寝中に起こしてしまうことも。また、狭い岩棚への設営時、出入り口が崖側になるので設置が困難になるというデメリットもあります。
・接続位置がフレーム側
出入口の接続位置(テントのつながっている部分)がフレーム側であるメリットは、全開したときにテントにぶら下がったままになること。エアライズのように、フロア(床)側に接続の場合、全開時は出入り口がフロアに落ち、出入り口を踏んだり、結露した出入り口内側がシュラフを濡してしまったりすることがあります。実際に使って初めてわかる、トレックライズのメリットです。
・メッシュが外側の内外一体型
エアライズの場合、メッシュが内側なので、一度外側を開けて下に丸めて固定し、メッシュを閉じるという手間がかかりますが、トレックライズの場合、メッシュが外側の内外一体型なので、外側を開ければ出入りでき、内側を開ければメッシュ状態になります。換気したいときは、ワンアクションで済むのでとっても楽です。これに関して、山での使用時のデメリットは特に見当たりません。
【ポイント3】ベンチレーションの位置が違う
トレックライズのベンチレーション(空気の換気口)は出入口の向かい側なので、出入口からスムーズに換気できます。夏や低山では快適ですが、冬や春秋の高山ではちょっと寒いかもしれません。エアライズは垂直側に配置することにより敢えて空気を動きにくくすることによる保温重視となっています。
※エアライズ3には、垂直側に加え正面側にもベンチレーションあり。
【結論】山でのテント泊を楽しむのならトレックライズ
ここまで、愛用者が選ぶ理由や、エアライズとの違いをご紹介しました。総合すると、
あなたにピッタリな「トレックライズ」は?
ここからは、トレックライズの全ラインナップをご紹介。あなたにピッタリのトレックライズが見つかります。
なお、カラーと素材はすべて共通です。
【カラー】
本体:クリーム
フライシート:フォレストグリーン
グランドシート:グレー【素材】
本体:28dnリップストップナイロン(東レ「ファリーロ」中空糸使用)
フライ:30dnリップストップナイロンPUコーティング
シート:40dnナイロンタフタPUコーティング
フレーム:NSL9フェザーライト(DAC社製)
究極の1人用|トレックライズ0
一番コンパクトなトレックライズ。0番であることからもわかるように、1人用としてもちょっときつめです。荷物を極力少なくしたいミニマリストに。小柄な方にもおすすめ。
トレックライズ0
重量 | 1250g |
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サイズ | 設営時:間口205cm×奥行80cm×高さ100cm(前室張出40cm) 収納時:28×φ13cm(42×φ13) フレーム:38cm |
1~2人用|トレックライズ1
ソロ用途としてはこれがおすすめ。大人1人とバックパックを置いても、十分なスペースが確保できます。テント場でよく見かけるトレックライズはこれ。1~2人用ですが、正直なところ2人利用はかなりきついです。
トレックライズ1
重量 | 1460g |
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サイズ | 設営時:間口210cm×奥行110cm×高さ105cm(前室張出45cm) 収納時:30×φ14cm(42×φ14) フレーム:38cm |
2~3人用|トレックライズ2
カップルやご夫婦、子ども連れなどにおすすめ。筆者はこれで、パートナーとテント泊を楽しんでいます。大人2人&中身無しのバックパックなら、割とゆったりと過ごせますよ。3人はちょっと無理かも。
トレックライズ2
重量 | 1680g |
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サイズ | 設営時:間口210cm×奥行150cm×高さ110cm(前室張出50cm) 収納時:32×φ16cm(49×φ16) フレーム:38cm |
これがあればトレックライズがもっと快適に!
実は機能を拡張できるオプションが多いのも、トレックライズの魅力。テント泊登山はもちろん、幅広いシーンに使用できる便利なオプションをご紹介します。
何かと便利なキャノピ|トレックタープBeyond&コンパクトポール
トレックライズのキャノピ(ひさし)になるトレックタープ「Beyond」。キャノピがあれば雨や夜露にも安心です。また、日陰を作ることができるので、昼間、テントの前でのんびりできます。トレッキングポールでも建てられますが、コンパクトポールがあったほうが、高く上げられ出入りが楽になります。ただし、朝は裏側が結露していることがあるので、出入り時、背中をぬらさないように注意しましょう(筆者経験済み)。
テント内の収納マスター!|ギアハンモック
何かと小物が散らかりがちなテント内。特に宿泊数が長くなると足の踏み場が建……。「ギアハンモック」は、テント上部のスペースに小物棚を作ることができ小物を片付けることができるので、テント内がスッキリ。ただし、天井が低くなってしまうのが難点。朝、起きぬけに頭をぶつけてしまうこともあります(筆者経験済み)。
トレックライズがデラックスに!|DXフライシート
エアライズよりも前室は広いとはいえ、雨の日の調理や汚れもの置き場など、狭く感じてしまう前室。標準フライシートの代わりにDXフライを使えば、わずか310g~350gの重量アップで、前室の奥行が70cmになり、トレックライズの居住空間が格段にアップします。コンパクトな2ルームテントのような使い方もでき、ツーリングテントにもおすすめです。
【素材はすべて共通】
本体:40dnリップストップナイロン(ウレタンコーティング)
フライフレーム:NSL9フェザーライト(DAC社製)
「トレックライズ」で山をのんびりじんわり楽しもう
トレックライズ最大の魅力=◯◯◯◯は「のんびり」。大好きな山で、ゆっくりと過ぎる時間の中、非日常をのんびり楽しみ、満点の星の下、さわやかな朝を迎える……そんな、時間を過ごしたいならトレックライズです。ピークハントや縦走もいいですが、たまには、山をじっくり楽しんでみませんか?