『国立公園』には知られていないことが沢山ある
国立公園といえば、日本の美しい自然を満喫できる場所として知られた存在。自然の景観だけではなく、野生の動植物、歴史文化などの魅力に溢れています。
そのため、自然を保護するために「厳しいルールがあるエリア」というイメージがある人も多いのではないでしょうか?
尾瀬ハイキングの厳しいルール
本州最大規模の高層湿原が広がる『尾瀬国立公園』には「尾瀬ルール」という歩行時のマナーがあります。
・湿原には立ち入らない
・靴底の汚れをしっかり落として移入植物の侵入を防ぐ
・動植物をとってはいけない
など、美しい自然を守るため、厳しい管理体制がしかれています。
耳を疑う噂話
そんな厳しいルールがある尾瀬国立公園ですが、「魚を取ってもいい」という噂があることをご存知でしょうか?
この噂話、にわかには信じがたい…
そこで今回、ことの真偽や国立公園について、詳しい専門家にお話を伺いました。
教えてくれた人
東京農業大学 地域環境科学部 准教授
下嶋 聖(シモジマ ヒジリ)さん
プロフィール
国立公園の目的は〇〇保護
尾瀬ルールには「動植物をとってはいけない」と書かれていますし。
(※法律的な観点での話であり、マナーとしては絶対にNGです)
魚も保護の対象になるんじゃないですか?
<国立公園の定義>
日本を代表するすぐれた自然の風景地を保護するために開発等の人為を制限するとともに、風景の観賞などの自然に親しむ利用がし易いように、必要な情報の提供や利用施設を整備しているところであり、環境大臣が自然公園法に基づき指定し、国が直接管理する自然公園です。
魚は風景には含まれない
高山植物を取るのはNG、なぜなら風景が乱れてしまうから。でも魚をとっても風景は変わりませんよね?
だから「魚類は取っちゃダメ」とは書けないんです。
問題はルールが現代に対応していないこと
世界初の国立公園はアメリカのイエローストーン国立公園で、1872年に指定されました。日本では1931年に国立公園法が制定され、1934年に初めて国立公園が指定されています。日本の国立公園は、世界的にみても長い歴史があるんです。
でも、それって特に問題がないから長い間そのままという裏返しとも言えるんじゃないでしょうか?
ですが、「どういう風景であるべきか」「それに見合った利用方法はどんなものか」という議論がされてないんです。
使い方は時代によって変わるものなので、この部分がリンクしていないんです。
それって何が問題なの?
例えば、トレイルランニングの大会など、新しいことをやりたくても、規制があって開催できていない状況です。
昔の基準で決められたことが、ずっとそのままであることが問題なんです。
他にもある国立公園の意外な実情
「ここから国立公園ですよ!」みたいなポイントが分かりにくいというか…
南アルプスの椹島にある看板のようなものがあると判断しやすいですけど。
そして厳密には、椹島周辺は国立公園に含まれていないんですよ。

てっきり国立公園内だと思ってました…
そのため、範囲が限定的になり「どこからどこが国立公園か分からない」というケースが生まれているんです。
「もっと多くの人に興味を持って欲しい」
そもそも、どうして国立公園ってあまり深く知られていないのでしょうか?
国立公園やそこで働くレンジャーなどの存在もあまり認知されていない。
だから国民全体の興味関心が集まりにくいという構図になってしまっていると思いますね。
新しい価値観やスタイルなど、時代に合わせてルールもカスタマイズしていくことが大切なんです。
普段何気なく歩いている登山道は、場所によって様々な事情が異なります。そんなことを考えながら登山をすると、新しい発見があるかもしれません。
本記事を読んで少しでも国立公園に興味を持ってもらえたら幸いです。