「万が一」に遭遇してしまった時にするべきことは?
いくら安全登山を心がけていても、山岳事故がいつ起こるかは誰にも予測できません。「自分は大丈夫」など、正常性バイアス(*1)がかかっていることは誰にでもあること。
実際にトラブルに直面したら「どうしたらいいのかわからない・・・」なんて方も多いのではないでしょうか?
本記事では、そのようなパニックに陥らないための具体的な対応方法をご紹介します。
※1 心理学用語で、「自分にとって都合の悪い情報」を無視したり、過小評価してしまう人の特性のこと。自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価する
遭難原因の約40%は転倒・滑落
警察庁の発表によると、令和元年夏期における遭難の原因『転倒』『滑落』とあわせれば全体の約40%をしめているんです。
あなた自身にも、同行者にも、すれ違う他の登山者にも、山岳事故のリスクは常にあることを忘れてはいけません。
覚えておくべきこととは?
山岳事故に遭遇した時、どのような対応を取るべきかを、元東京都山岳連盟救助隊隊長の金子 秀一さんに教えてもらいました。
今回は【友人が転倒し、自力下山が不可能である】とした場合をベースに、具体的な対応方法を説明します。
これだけは押さえて!取るべき行動
ポイントは「自力での下山が不可能」であれば「救助を要請する必要がある」ということを理解することです。
その際に重要になるのが現在地情報です。登山用アプリではGPS情報も取得できるので、インストールしておくといいでしょう。
あとは体力温存のため、あなた自身の保温につとめましょう。
状況を伝えることができれば、必ず的確な回答をもらえます。
想定されるシチュエーションQ&A
危険のある場所だったら?
あなた自身の安全を優先し、安全な場所へ移動してください。その後、行動チャート④項からを実施してください。事故発生場所から近い場所に安全な場所があるはずです。
滑落して見えなくなったら?
行動チャート③項以外を実施してください。転落または滑落した方向を確認しておき、通報の際に「東側」「西側」などの情報を通報した際にで伝える必要があります。
電波が入らない場所だったら?
行動チャート①項から④項を実施し、電波が入る場所が分かっていれば移動して⑤項からを実施する。山頂付近で電波が入る場合もあるが、それが事前にわかっていなければ、山頂へ移動せず下山してください。別パーティの登山者がいたら、通報をお願いしてください。
予備知識として覚えて欲しいこと
自分自身の安全を確保できなければ、遭難者を助けることはできないんです。
「落ち着く」=「行動を起こせる」
正直、「落ち着け」と言われても、状況次第では落ち着いていられる自信がないです…
訓練をつんでいる人でさえ、普段通りのパフォーマンスを発揮することは困難です。
では、一般の登山者にはやっぱりハードルが高くないでしょうか?
パニック状態では次の行動を起こすまでに時間がかかってしまう可能性があります。たとえ平常心でなくとも、行動が起こせるかどうかが肝心なんです。
本日教えていただいた内容が事前に分かっていれば、素早く次の行動に移せるというわけですね。
忘れないことも肝心
行動指針を登山計画書に記載しておくだけ行動に移しやすくなります。下記の<画像>または<テキスト>をコピーして緊急時に確認できるように利用してください。
本記事をオフラインでも開けるブックマークに登録することなど、読んだ今から『行動』しましょう!
<画像>
<テキスト>
①落ち着くこと
②自身の安全確保
③けが人の安否確認
④現在地(事故発生場所)のメモ
⑤警察への通報
⑥通報後の行動確認
教えてくれた人
公益社団法人 東京都山岳連盟救助隊
元隊長 金子 秀一さん