落ち着くってどういうこと?これだけは覚えて欲しい【山岳事故に遭遇した時の対応方法】

2020/03/09 更新

もしも、あなたの目の前で事故が発生したら対応できますか?「落ち着いて冷静に対処」ってどう言うこと?具体的な手順は?様々な疑問を現役の救助隊に聞いてみました。非常時の対応方法をわかりやすく解説します。登山計画書にも添付できるようにしてありますので、最後までチェックし、行動に移しましょう!


アイキャッチ画像出典:PIXTA

「万が一」に遭遇してしまった時にするべきことは?

山での転倒
出典:PIXTA
いくら安全登山を心がけていても、山岳事故がいつ起こるかは誰にも予測できません。「自分は大丈夫」など、正常性バイアス(*1)がかかっていることは誰にでもあること。
実際にトラブルに直面したら「どうしたらいいのかわからない・・・」なんて方も多いのではないでしょうか?
本記事では、そのようなパニックに陥らないための具体的な対応方法をご紹介します。

※1 心理学用語で、「自分にとって都合の悪い情報」を無視したり、過小評価してしまう人の特性のこと。自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価する

(引用:Wikipediaより抜粋)

遭難原因の約40%は転倒・滑落

令和元年 態様別山岳遭難者構成比(夏期) 警察庁の発表によると、令和元年夏期における遭難の原因『転倒』『滑落』とあわせれば全体の約40%をしめているんです。
あなた自身にも、同行者にも、すれ違う他の登山者にも、山岳事故のリスクは常にあることを忘れてはいけません。

覚えておくべきこととは?

山岳事故に遭遇した時、どのような対応を取るべきかを、東京都山岳連盟救助隊の金子 秀一さんに教えてもらいました。
編集部 生井
山で事故に遭遇したらどうしたらいいのでしょうか?

金子さん
まず前提として、対応方法には【絶対的な正解】のようなものはありません。

編集部 生井
「ケースバイケースだから」ということでしょうか?

金子さん
そうですね。確かにそう片付けるのは少し無責任に感じられるかもしれませんが、状況に応じて冷静に判断することが最も重要なんです。
今回は【友人が転倒し、自力下山が不可能である】とした場合をベースに、具体的な対応方法を説明します。

これだけは抑えて!取るべき行動

①落ち着くこと ②自身の安全確保 ③けが人の安否確認 ④現在地(事故発生場所)のメモ ⑤警察への通報 ⑥通報後の行動確認
行動チャート
金子さん
季節を問わず、有効な対処方法は上記になります。通信手段はスマートフォンです。
ポイントは「自力での下山が不可能」であれば「救助を要請する必要がある」ということを理解することです。

編集部 生井
110通報をするとどんなやり取りがあるのでしょうか?

金子さん
基本的には質問に答える形式なので、聞かれたことに回答してください。
その際に重要になるのが現在地情報です。登山用アプリではGPS情報も取得できるので、インストールしておくといいでしょう。

具体的に聞かれること
・あなたの情報(名前、電話番号、年齢)
・友人の情報(名前、電話番号、性別、年齢、容態)
・自分たちのいる位置情報(経度、緯度、標高)
 

編集部 生井
通報後の行動はどうしたらいいのでしょうか?

金子さん
携帯電話の電源を切らずに、現場を動かないこと。予備バッテリーがあれば準備しておくこと。
あとは体力温存のため、あなた自身の保温につとめましょう。

通報後の行動
・携帯電話は電源を切らない
・現場を動かない(電波が悪くなる可能性がある)
・無駄なネットはやらない(電池残業確保)
・予備バッテリーの用意
・自身保温(体力温存)
・ヘリコプターが到着したらタオルなどで合図
 

編集部 生井
通報後のことまで考えると、覚えることが結構多いですね・・・

金子さん
自分での判断ができない場合に最適なのは「警察に質問する」ことです。
状況を伝えることができれば、必ず的確な回答をもらえます。

想定されるシチュエーションQ&A

危険のある場所だったら?

あなた自身の安全を優先し、安全な場所へ移動してください。その後、行動チャート④項からを実施してください。事故発生場所から近い場所に安全な場所があるはずです。

滑落して見えなくなったら?

行動チャート③項以外を実施してください。転落または滑落した方向を確認しておき、通報の際に「東側」「西側」などの情報を通報した際にで伝える必要があります。

電波が入らない場所だったら?

行動チャート①項から④項を実施し、電波が入る場所が分かっていれば移動して⑤項からを実施する。山頂付近で電波が入る場合もあるが、それが事前にわかっていなければ、山頂へ移動せず下山してください。別パーティの登山者がいたら、通報をお願いしてください。


予備知識として覚えて欲しいこと

①落ち着くこと ②自身の安全確保 ③けが人の安否確認 ④現在地(事故発生場所)のメモ ⑤警察への通報 ⑥通報後の行動確認
金子さん
頸椎を損傷していたら背負うこと自体が致命傷になります。また、あなたが転倒した場合は、友人のみならずあなたも行動不能となります。

編集部 生井
先ほどの話でもあった通り、「自分で判断できないこと」はやるべきでない、ということでしょうか?

金子さん
そうですね。上記の行動はもちろん控えた方がいいのですが、基本的には前述の「取るべき行動」を実践することの方が重要です。その方がスムーズにことが運ぶと思います。

編集部 生井
なるほど。迷ったら聞けばいいのか。

金子さん
ただし、「指示されたこと以外はやってはいけない」「指示されたことは必ずやらなければならない」という訳ではありません。天候やあなたの体力など状態をあなた自身で考え、無理な場合は動かないでください。
自分自身の安全を確保できなければ、遭難者を助けることはできないんです。

「落ち着く」=「行動を起こせる」

北アルプス
出典:PIXTA
編集部 生井
お話を聞いて改めて感じたことが一つあります。
正直、「落ち着け」と言われても、状況次第では落ち着いていられる自信がないです…

金子さん
本音を言うと、深刻な事故であれば、深呼吸してもお茶を飲んでも一服しても落ち着けないですよ。
訓練をつんでいる人でさえ、普段通りのパフォーマンスを発揮することは困難です。

編集部 生井
やっぱりそういうものなんですね、、、
では、一般の登山者にはやっぱりハードルが高くないでしょうか?

金子さん
「落ち着く」ということは「何をすればいいのか考えられること」だと言い換えることができます。
パニック状態では次の行動を起こすまでに時間がかかってしまう可能性があります。たとえ平常心でなくとも、行動が起こせるかどうかが肝心なんです。
編集部 生井
なるほど。なんとなく分かったような気がします。
本日教えていただいた内容が事前に分かっていれば、素早く次の行動に移せるというわけですね。

忘れないことも肝心

行動指針を登山計画書に記載しておくだけ行動に移しやすくなります。下記の<画像>または<テキスト>をコピーして緊急時に確認できるように利用してください。
本記事をオフラインでも開けるブックマークに登録することなど、読んだ今から『行動』しましょう!

<画像>
①落ち着くこと ②自身の安全確保 ③けが人の安否確認 ④現在地(事故発生場所)のメモ ⑤警察への通報 ⑥通報後の行動確認<テキスト>

①落ち着くこと
②自身の安全確保
③けが人の安否確認
④現在地(事故発生場所)のメモ
⑤警察への通報
⑥通報後の行動確認

教えてくれた人

金子さん公益社団法人 東京都山岳連盟救助隊
隊長  金子 秀一さん

公益社団法人 東京都山岳連盟

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YAMA HACK編集部 生井
YAMA HACK編集部 生井

YAMA HACK編集部。大学時代に山岳部に所属し、縦走からクライミングまでオールラウンドに活動。トレイルラン・ボルダリング・沢登りなど、山を軸とした様々なアクティビティの魅力を発信してきます。

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