“行動時に使える保温着”があるって知ってる?
ダウンジャケットなどの『インサレーション(保温着)』は冬山の必需品。休憩などの寒い時に着ると、温かくて脱ぎたくなくなってしまいますよね。
しかし、保温着として多くの人が愛用するダウン(羽毛)素材は、汗や外気などの濡れに弱く保温性がなくなるため、着たまま行動するのは良くないというのはご存知ですか?
こうした行動時に着用できる保温着は『アクティブインサレーション』と呼ばれ、新しいタイプのミドルレイヤー(フリースやソフトシェルの代わり)として人気を集めています。
今回ご紹介する<MILLET>のブリーザーシリーズは、そんなインサレーションの弱点だった“行動時の着用”を、高次元で可能にしたアクティブに使える保温着です。
「呼吸するジャケット」ブリーザーシリーズ
ブリーザーシリーズは、2019年秋に登場した最新モデル。シリーズには「ライトジャケット」「トイフーディ」「ウォームジャケット」の3種類が展開されています。その中でも今回注目したいのは、冬の登山に特化した「ライトジャケット」と「トイフーディ」。
実際に山で着用し、その機能を試してみました。
「ライトジャケット」&「トイフーディ」を細かくチェックしてみた
まずは「ライトジャケット」と「トイフーディ」の【着用感】や【特徴】をチェックしてみましょう。
体に馴染むようにフィットする着用感
モデルは身長169㎝、体重60㎏。ライトジャケットはSサイズ(日本Mサイズ)、トイフーディはMサイズ(日本Lサイズ)を着用。胸部や肩回りの立体裁断により、どちらも着た瞬間からやんわりと体にフィットする感覚があります。
海外メーカーでXSサイズ、国内メーカーでSサイズの登山ウェアがピッタリなことが多いですが、ブリーザーシリーズは規格が小さめな印象で、普段よりもワンサイズ上を選んでも良さそうです。
裏地には両者の特徴がハッキリ
ライトジャケットは保温性のある起毛メッシュを貼りつけた、中綿なしの薄手ジャケット。触れると起毛の温かさを感じます。
トイフーディはパフパフした柔らかい感触の中綿入りフーディ。メッシュの裏生地と表生地の間に高い保温性・通気性・伸縮性を持った中綿『3DeFx+®︎』が採用されています。
どちらも軽量で携行性バツグン!
ブリーザーシリーズは表生地に超軽量ストレッチ素材『BREATHER(ブリーザー)』を採用し、アクティブインサレーションの中でもトップクラスの軽量性を実現。
ライトジャケットは左ポケットにポケッタブル収納が可能。トイフーディも公式ではありませんが、画像のようにクルクル丸めてフード内に入れ込むことでコンパクトにすることができます。
気持ちいいほどに水を弾く超撥水生地
上画像のテストでは「防水性素材か?!」と思うほどの圧倒的な撥水力を発揮。その後、シャワーを3分間当て続けても内部への浸透はありませんでした。
また通気性の高さもポイントで、シリコン由来の撥水成分が外からの濡れを強力に防ぎつつも、目には見えない小さな隙間が通気性を確保し、衣類内のムレを外へと放出してくれるそうです。
メンテナンスが超簡単!!
ブリーザーシリーズは家庭で丸洗いができるのでお手入れがとても簡単。レインウェアなどのように撥水処理をする必要もなく、普段通りの洗濯・乾燥で撥水機能が維持されます。
細部をチェックした感想は「シンプルなライトジャケット&多機能なトイフーディで、シーン毎に使い分けができそうだな」という印象。
この機能が実際に山でどのようなポテンシャルを発揮するのか、いよいよ検証に移っていきたいと思います。
八ヶ岳を縦走してライトジャケット&トイフーディの違いを大検証!
▼検証時期・場所▼
時期:12月中旬
場所:【八ヶ岳】赤岳(2,899m)〜硫黄岳(2,760m)の縦走▼検証時の気温▼
・出発時(標高約1,700m)…気温-6℃ + 無風
・樹林帯(標高約1,700m〜2,500m)…気温-3〜-5℃ + 微風
・稜線、山頂(標高約2,500m〜2,899m)…気温-5℃ + 風速5〜10m前後▼検証時のレイヤリング▼
ベースレイヤー + ミドルレイヤー①(薄手のフリース) + ミドルレイヤー②(ライトジャケット or トイフーディ)
12月中旬とは思えない少ない積雪量でしたが、冬の八ヶ岳らしい冷たく乾燥した風が吹く中での検証になりました。
ライトジャケット&トイ・フーディを、【樹林帯】や【稜線上】などのシーンごとに着替え、【動きやすいか?】【温かいか?】【汗はしっかり処理されるか?】に着目し、両者の機能と機能の違いレビューしていきます。
【検証①】ライトジャケット|軽くて暖かい、ずっと着ていたいウェア
【樹林帯の行動】ストレスを感じさせず、快適に足を進められる
出発早々に「これはずっと着ていられる!」と思ったのがライトジャケット。
裏起毛のメッシュは、衣類内を温かく保ちながらもストレスを感じることなくムレを外へと流してくれます。
今回、ライトジャケットの下にフリースを重ねてちょうどいい感覚でした。気温が氷点下になる場合は、今回のようにミドルレイヤーを下に1枚足しても良さそうです。
【稜線上の行動】アウターレイヤーを重ね着する必要がありそう
森林限界を過ぎた辺りから、急に風が強まり体感温度は-10℃を超える状態に。急に寒さを感じたため、このレイヤリングの上にハードシェルを着用しました。
着用後は、ハードシェルが外気を防ぎライトジャケットが内部を温めてくれているような感覚で、寒さを感じることなく行動ができました。防風性には限界があるので、冬山の稜線上では積極的にアウターレイヤーを着るようにしましょう。
【快適性】動きやすくサッと脱着できるジャケット
とてもよく伸びる生地でストレッチ性は抜群!腕の上げ下げも肩回りの動きも、全くストレスを感じさせません。
冬のトレランやランニングシーンのジャケットとしても活躍するでしょう。
ライトジャケットは脱着がとてもしやすく、空気をまとうようにサラッと着れるので、ストレスなくスピーディな行動に移せるのが好感触でした。軽量&コンパクトで邪魔にならない大きさなので、いざという時の保温着としてザック内に入れておくのも良さそうです。
続いてはトイフーディの検証へ移っていきましょう!
【検証②】トイフーディ|ハードな雪山であればあるほどパフォーマンスを発揮!
【樹林帯の行動】樹林帯でずっと着るにはレイヤリングを選ぶか?
トイフーディに着替えてみると、保温力が一段階違うことがわかります。温かさが絶妙で、”適温のちょっと上(温かいなーと感じるくらい)”を保ってくれているような印象。また通気性のある中綿(3DeFX+®️)により、ムレは留まることなく外へと処理されていきます。
今回のレイヤリングでは厚着をしすぎたので汗をかいてしまいましたが、下に着ていたフリースを脱いだところ快適な状態に。山の標高や気温に応じてレイヤリングの調整が必要になりそうです。
【稜線上の行動】強風や冷たい風でも心配なし!
トイフーディのポテンシャルを最も感じたのは稜線上でした。
ライトジャケットは稜線でハードシェルを着用しましたが、トイフーディは下にフリースを着用していれば寒さは気にならないレベルでした。風の侵入はわずかに感じるものの、しっかり衣類内が保温されている印象です。
また、急に寒くなったり悪天になったとしてもこの上にハードシェルを羽織ればいいので、”まだ後ろ盾がある”という安心感が冬山での冷静な判断に繋がります。
【快適性】アウター代わりにガシガシ使える
中綿がある分、動きにくさがあるかな?と思ったのですが、ライトジャケットと同様の優れたストレッチ性が備わっています。
赤岳〜硫黄岳の岩稜帯でも突っ張るような動きにくさは感じず、体の伸ばしたい方向に生地が伸びてくれる印象です。

後日、検証と同じレイヤリングにてアルパインクライミングで使用。
検証時と同様に文句なしの保温性・ストレッチ性を発揮し、ハードな雪山でも扱いやすいことがわかりました。
またバラクラバにもなるフードはヘルメットを装着した状態でもフィット感抜群。強風でもバタつくことなく頭部を温かく保ってくれます。
【気になった点】『防水・防風』ウェアではないので注意
強いて言うのであれば「防水・防風ウェアではない」ということだけ頭に入れておく必要があります。ブリーザーシリーズは驚異的な撥水力が特徴なのは間違いありません。ちょっとした雨や雪であればアウターを着る必要がないほどでしょう。
しかしあくまでも撥水ジャケットなので、「悪天の中の行動時」「風が強い中での行動時」は積極的にハードシェルなどを着るようにしましょう。
【結論】用途やシーンに合った自分にピッタリなチョイスを!
検証を経てわかったことは、ブリーザーシリーズは「使用シーンがしっかりと区分けされている」ということ。上画像は、今回の検証時の全体像を概念図化したものです。
それを元にした、それぞれのおすすめ使用シーンは以下の通り。
次世代の行動着!ブリーザーシリーズで冬をアクティブに楽しもう
動きやすく快適な行動着としての機能に加え、高い保温性と撥水性を持ち合わせた次世代ウェア。
アクティブインサレーションのブリーザーシリーズは、ミドルレイヤーという概念を超えて、アウターレイヤーに近い感覚かもしれません。
検証をした「ライトジャケット」と「トイフーディ」は、両方持っていても使い分けができるのがポイントです。初心者から上級者まで、全ての登山者に対応するブリーザーシリーズ。自分のスタイルに応じた1着をチョイスして、冬山をもっとアクティブに楽しんでみませんか。