ココヘリ「ライフビーコン」は雪崩ビーコン代わりになるか、雪山検証してみた!

2020/01/17 更新

雪山を登る際に避けられないリスク「雪崩」。雪崩ビーコンの携行が推奨されますが、なかなか携行率が上がらない。そこで今回着目したのは、ココヘリの新サービス「ライフビーコン」。ひょっとしてこれ、雪崩ビーコンとしても活用できるかも…? そんな仮説を実際に雪山で検証してみました。


アイキャッチ画像撮影:washio daisuke

ココヘリが「ライフビーコン」なるものをリリースしたらしい

ココヘリの新サービス「LIFEBEACON(ライフビーコン)」

加入者が発信機を持って登山することで山岳地域での素早く正確なヘリ救助を可能にした会員制サービス「ココヘリ」が、登山以外にも使える新サービスをリリースしました。

その名も「ライフビーコン」。最近は財布や鍵などに小型の発信機を装着して落とし物・無くし物を防ぐ“探し物アプリ”が増加中ですが、このライフビーコンもBluetooth機能を利用して貴重品探し、子供・ペットの迷子防止、巨大駐車場でのクルマ探しなどに活用できるサービスです。

もしや、ライフビーコンは雪山登山にも使える…?

撮影:washio daisuke(雪の立山室堂で私が検証します!)
あくまでも“探し物アプリ”のための端末が「ライフビーコン」ですが、山岳遭難における捜索・救助活動に定評のあるココヘリの新サービス。そこで編集部から、とあるミッションが。
編集部
ライフビーコンと名称に「ビーコン」が入っているから、ひょっとしたら雪崩ビーコンのように使えるかも??

このアイデアを検証するために、筆者は雪山へと向うことになりました。

まずはライフビーコンを手に入れよう!

この「ライフビーコン」はココヘリとは別サービスとして展開されていますが、「ライフビーコン」と同等のBluetooth機能が搭載されているのが「ココヘリプレミアム」「ココヘリ プレミアム L」になります。通常のシンプルコースには含まれていないのでご注意を!

ココヘリ サービス詳細
▶︎「ココヘリプレミアム」については、この記事をチェック!


各端末の電波機能をわかりやすく整理すると、以下のようになります。

ココヘリ 端末紹介

雪山登山前に「ライフビーコン」のセットアップを

ライフビーコンの使用には、発信機とスマホの事前設定が必要です。
設定方法
・「ライフビーコン」アプリのスマホへのダウンロード
・発信機のID番号とアプリをダウンロードしたスマホとのペアリング
・スマホと発信機を近づけてのキャリブレーション
キャリブレーションというのは「電波表示がどこで最大になるかを決める作業」です。

アプリ上では数字で電波強度を表示しますが、キャリブレーションを行なった位置が「100」となり、そこから離れると数値が低くなります。

▶︎アプリのダウンロードはこちらから(IPhone推奨)
App Store|LIFE BEACON
Google Play|LIFE BEACON
ペアリングとキャリブレーションはこちらの動画をご覧ください。

「雪崩ビーコン」vs「ライフビーコン」…雪山で捜索できるかやってみた!

ところで、「雪崩ビーコン」は雪山登山やバックカントリースキーをする人以外にはあまりなじみがないものですよね? 

まずは「雪崩ビーコン」と「ライフビーコン」の機能を比べてみよう!

ITEM
アルバ EVO4(エボ4)3アンテナアバランチビーコン
・捜索モード:100%デジタルモード&3本アンテナ
・最大受信範囲(縦):60m  
・捜索受信幅(横):40m/140°
・サイズ:135mm×76mm×28mm
・重量:220g
・バッテリー寿命:発信時/250時間・受信時/40時間
スマートフォンを始め他の電子機器との干渉管理にも優れています。

「雪崩ビーコン」はこちらのモデル。コンパクトで比較的安価ながら3本のアンテナが内蔵されており、ストラップベルトの着脱でON/OFFが行われ先端の赤い部品を引くことで捜索モードに切替るという直感的な操作が魅力です。

「ライフビーコン」は電波飛距離最大200m、重さはわずか8g、1回の充電で6ヶ月持続します。

検証ルールをご紹介

撮影:washio daisuke(雪崩ビーコン)
ルールは以下の通り…

・捜索者は「雪崩ビーコン」使用経験のない登山初心者
・約200m離れた地点、積雪約1mの雪面の深さ約50cmに両ビーコンを埋めて隠す
・両ビーコンを捜索して雪中から見つけ出すまでの時間を測定
*このルールは一定の条件下で設定したもので、実際の雪崩と同一のシチュエーションではありません

さあ、捜索スタートです!

専用機器の力はいかに?【雪崩ビーコン編】

撮影:washio daisuke(雪崩ビーコンの画面)
まずは「雪崩ビーコン」で検証。画面上の数字が「雪崩ビーコン」の埋没点との距離(m)を表します。

捜索開始地点から距離が表示され、円を描いて発信される電波に沿って矢印の向きを頼りに近づきます。距離表示、矢印とともに、捜索対象との距離を警告音で知らせます。近づくと警告音も小刻みになり、緊迫感が音声でも伝わります。

距離が1mを切った時点で雪面に機器を近づけてさらに場所を絞り込み、「雪崩ビーコン」を無事に発見。所要時間は約5分でした。

秘めたポテンシャル開花なるか?【ライフビーコン編】

撮影:washio daisuke(ライフビーコンの画面)
続いて「ライフビーコン」で検証。スマホのアプリ画面右の数字が大きいほど、埋められた場所(埋没点)に近いことになります。この数値は距離(m)ではなく、キャリブレーションを行った際のスマホとの位置関係で決まり、最大は100となります。

まず200m離れた位置からアプリを起動させましたが、数字は0のままの状態。埋めたおおよその方向はわかっていたためそちらに進むと……埋没点から約20m程のところでアプリの数字が“12”を示しました!

ここからはスマホ画面とのにらめっこ……数字が大きくなる方向に進み、数字が小さくなったら「あれ?通り過ぎたかな?」と引き返すことを繰り返し、埋没点の真上でそれまでの最大値“59”が表示され、無事に「ライフビーコン」を発見。アプリが反応してからの所要時間は同じく約5分でした。

対戦を通してわかったこと

捜索に要した時間はいずれも5分、無事に見つけることができましした。今回の検証を通じてわかったことは以下になります。

・「雪崩ビーコン」の矢印表示や警告音など雪崩捜索に特化した機能はやはりわかりやすい
・「ライフビーコン」はある程度の近距離でないとアプリが反応しない

検証でひとつひっかかったのが、「なぜ電波飛距離約200mのライフビーコンが約20m地点からしか反応しなかったのか?」とう点。この点をAUTHENTIC JAPAN株式会社の谷山純治さんにうかがいました。

谷山さん
おそらく電波特性と雪質が影響していると考えられます。

ライフビーコンで使用しているBluetoothは2.4GHz。一方雪崩ビーコンは中波の457KHz。

電波は周波数が高くなると「直進性」が強くなります。雪の粒子の間(空気)をぬって電波が進むのですが、湿った雪が端末を覆っている状態になると、直進性の強い電波=Bluetoothは減衰が顕著に現れます。

一方、雪崩ビーコンは山岳地帯の様に電子機器がない環境を前提に設計しているため低い周波数を使用することが可能です。また直進性が低いため、雪の構造を無視しての受信が可能。そのためカタログ値に近い数値で使用することができたのだと思います。


雪質や電波特性を考えると、やはり現段階では捜索専用機器である雪崩ビーコンの携行は必須と言えます。

気になる電子デバイス同士の干渉は?

今回実地検証はしませんでしたが、もうひとつ気になったのは「電子デバイス同士の干渉」

雪崩ビーコンに対して電子デバイスが干渉してしまい、性能が十分発揮できないことがわかっています。スマートフォンなどは雪崩ビーコン使用中は電源を切り、バックパックに入れて50cm以上離すなどの対策が必要なのです。

この点も谷山さんにうかがいました。
谷山さん
プレミアムを含むココヘリ端末は現在は電源ボタンがなく常時オンとなっています。ライフビーコンには電源ボタンがありオンオフが可能です。

でもいずれも雪崩ビーコンへの電波干渉はありません。

ということは、ココヘリやライフビーコンは雪崩ビーコン代わりにならなくても、遭難時を考えると携行しておくのがいいですね。

そもそも、なぜ「雪崩ビーコン」は必要なの?

「まさか自分が雪崩に遭遇することはないのでは?」と思う方も多いでしょう。

しかしながら、地形・降雪量・気温など様々な要因で発生する雪崩。条件さえ揃えば、起こりうる自然現象なのです。

出典:PIXTA(涸沢カールで発生した雪崩で出来たデブリ)
それを示すかのように、比較的メジャーなフィールドでも実際に雪崩事故が起きています。北アルプス・穂高連峰の懐にある涸沢カールでは、2019年のゴールデンウィークに雪崩が発生し、複数の登山者が巻き込まれました。2011年4月には小屋明け準備中の涸沢ヒュッテを雪崩が襲い、スタッフが負傷するという事故も。

命を救えるかのカギを握る、20分の「生存曲線」

雪崩完全埋没者の生存曲線 雪崩に埋もれた遭難者が救助されて生還できる「生存曲線」は、雪に埋没してから約20分で急激に降下。

あなたや仲間が雪崩に遭ったら“捜索”から“救助”までを20分以内に完結することが、生還の可能性を高めるひとつの目安となります。

雪崩事故の死亡者の半数は「登山者」

出典:PIXTA(ヨーロッパアルプスで撮影された雪崩発生の瞬間)
欧米ではスキーヤーが巻き込まれることの多い雪崩ですが、日本では死者の半数を登山者が占めています。決して「他人事」ではありません。

雪山登山でのビーコン携行に大きなネックになるのが「価格の高さ」。比較的安価なモデルでも3万円代から高価なモデルになると5〜6万円代。登山パーティ全員が携行して、初めて現場での初期捜索活動に活用できるのですが、かなり高額な出費になりますね。

しかし、報道で多く取り上げられるバックカントリスキーでは、「雪崩ビーコン」携行がツアー参加条件になっているほど。

スキー場のような圧雪・整備されていない雪の斜面を行動するという点では、バックカントリースキーも雪山登山も同じですよね。しかも万が一雪崩に遭遇した際には“逃げ足”の速さにおいて、登山者はスキーヤーより遥かに不利になります。

ライフビーコン付きココヘリができること

出典:PIXTA(遺体発見までに時間がかかることも多い雪崩遭難)
一般的な雪崩ビーコンが電波を発信し続けるのは300時間程度、一方「ライフビーコン」は1回の充電で約6ヶ月持続します。

警察や救助隊の捜索活動は一定期間で打ち切られるもの。山岳会などに所属していれば有志による捜索が継続して行われる場合もありますが、遺体の発見が春から初夏の雪どけ時期までずれ込むこともあります。

死亡保険金も行方不明の状態だと支払われないので、遺体発見まで遺族は精神的にも経済的にも苦しめられることになります。
遺体発見までの時間短縮にも「ライフビーコン」の出番はあるのではないでしょうか。

雪山へ行くなら、雪崩ビーコンを携行しよう!

撮影:washio daisuke
雪崩のリスクがある雪山登山にチャレンジするのであれば、雪崩ビーコンにプローブ(ゾンデ)・ スコップを加えた“アバランチギア”の携行は必須と言えます。

今回の検証では「ライフビーコン」で捜索できましたが、あくまでもおおよその埋没点がわかったうえでのこと。実際の雪崩は雪質も規模も異なるので、検証通りとはいかない可能性が大いにあります。

結論として、「ライフビーコン」は、雪崩捜索専用の「雪崩ビーコンの代用品」とするのは難しいと言えます。しかし、ないよりはあったほうがより心強いとは言えるでしょう。

あなたや大切な登山仲間をいち早く見つけるために、ココヘリへの加入と併せ「雪崩ビーコン」を含めた“アバランチギア”を携行して、雪山登山を楽しんでください。

紹介されたアイテム

アルバ EVO4(エボ4)3アンテナアバ…
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washio daisuke
washio daisuke

*登山の総合プロダクション・Allein Adler代表* 登山ガイド・登山教室講師・山岳ライターなど山の「何でも屋」です。 得意分野は読図(等高線フェチ)、チカラを入れているのは安全啓蒙(事故防止・ファーストエイド)。 山と人をつなぐ架け橋をめざしています。

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