伝えたい人にほど伝わらない現実

撮影:YAMA HACK編集部
YAMA HACKのアンケートによると、地図アプリをインストールしている人は2,419人中868人(約35%)。これは私たちにまだ届ける力が足りないていないということであり、これから解決しないといけない課題でもあります。
「本当に必要な人へ情報が届かない」ということが、安全登山の情報発信をしていて一番難しく感じます。
そうですね。もちろんYAMA HACK読者の中にも安全登山の意識が高い人もいて、そういった人は記事を読んでくれます。
でも普段から「遭難」を意識しない人ほど危険なのに、そういった人ほど自分にとって関係ないテーマだと思ってスルーしてしまうんです。そもそも、登山の情報にまったく触れない人もいますし・・・。
人間は自分にとってメリットのある情報、当事者意識のある情報しか選び取らないですからね。
そこは強く感じます。だから興味がない人にも届いてほしいと思って、真面目なテーマでもあえて記事をネタっぽく作ったりしますね。
例えば、Twitterとかで拡散されたりすると、遭難に対する意識が顕在化していない人にも届く可能性があるので。
正しいことが教科書のようにならんでいることも大事。でも、それ以上に読んでくれた人に何か伝わったり残ったりすることのほうが大切でしょ?
学校の教科書だと全然わからないけど、マンガだと歴史のこととかわかりやすくなったりするのと似たような感覚ですかね。
きちんと伝わるのであればネタっぽくなくてもいいんですけどね(笑)。
まぁ(笑)。あと、見せ方にばかり目がいって肝心の中身がダメダメでは論外。そこは専門の方に監修を依頼したりして内容には注意をしています。
僕たちの思いに共感して協力してくださる人が増えたことは、本当にありがたいですね。
「安全登山」という言葉をなくして、当たり前に

撮影:YAMA HACK編集部(山岳ガイドをつけての登山研修。自分たちも常に勉強です)
まだまだ多くのやるべきことがあるYAMA HACK。最後に、登山メディアとして今後どのような姿を目指すのか話しました。
登山を楽しむための道具として使ってもらえるようにしたいですね。
冒頭にあった登山を始めるきっかけの多様化。これはもう止められません。だったらそれに合わせて、登山の専門知識のない人でも興味が持てたり、きちんと理解できる情報が揃う場所にします。
登山業界の人って本当に山が好きな人が多くて知識も豊富なんです。でも、その人たちが持っている貴重な知識や技術が伝わっていない人もいる。
理由はいろいろあるんですけど、この「伝わらないギャップ」を埋めることで、いろんな趣向の登山者が自分の楽しいスタイルで山を楽しめるようにしたいです。
このギャップを埋めるのが編集者の仕事ですね。「良いコンテンツを作り続ける」ってシンプルだけど、一番大事なことだと思います。
良いものなのに伝わらない、理解されないって一番もったい。登山のプロでないからこそわかる一般登山者の視点で、このもったいないギャップを埋めていきます。
最終的には「安全登山」っていう言葉をなくしたいんです。
安全のための知識や技術は絶対に必要です。でも、安全に配慮して行動することが当たり前になれば、わざわざ「安全登山」という言葉で特別視しなくてもいいと思うんです。
いいと思います。安全登山に関することが中心だったけど、それ以外にも何かありますか?
楽しい部分の情報発信も、もちろん続けますよ。今は山のデータベースを作っています。それを活用して、自分に
おすすめの山を選んでくれるようなサービスを作成中です。
あとは、登山者も多様化しているので、それぞれの人が楽しめるコンテンツを作りたいですね。YAMA HACKの中にお気に入りの雑誌があるようなイメージ。登山好きの人がちょっと暇な時に「YAMA HACK見るか」ってなってもらえるような、身近な存在になれるようにします。
これからもYAMA HACKをよろしくお願いします

撮影:YAMA HACK編集部(山岳ガイドをつけての登山研修)
編集長は変わりますが、YAMA HACKが目指す姿は変わりません。今後も、「登山を楽しむ人を増やしたい」「たくさんの人に山の素晴らしさを知ってほしい」という思いで楽しい記事から真面目な記事まで、読者の皆さんに役立つ情報提供を行っていきます。
これからもどうぞ、よろしくお願いします。

撮影:YAMA HACK編集部
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